龍騎のヒーローアカデミア   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

お久しぶりです。

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第二十話 障害物競走 後編

 

 爆煙が晴れていく。

 

 ロボットの残骸が転がる中、龍騎は右拳を軽く握った。

 

「よし! これで通れるな!」

 

 進路を塞いでいた仮想ヴィランの姿は、もうない。

 後ろから走ってきた生徒達も、最初こそ目の前の光景に足を緩めたが、すぐに我に返って駆け抜けていった。

 

「助かった!」

「ありがとう、ヒーロー科!」

 

「おう! 頑張れよ!」

 

 龍騎が手を上げて応える。

 その肩を、小さくなったドラグレッダーが尻尾で叩いた。

 

「ガォ!」

 

「……ん?」

 

 相棒の顔を見る。

 それから、脇を通り過ぎていく生徒達を見た。

 

「あっ! 俺も走らなきゃじゃん!」

 

 慌てて駆け出した龍騎を見て、実況席から盛大な笑い声が響いた。

 

『おおっと城戸! 障害物を全部ぶっ壊して満足してたのかぁ!? これはレースだぜ、レース!!』

 

『……あいつらしいな』

 

 相澤が、疲れたように息を吐く。

 

『だが、あれだけ壊しても余力はある。ここからどう追い上げるかだ』

 

 龍騎の足が地面を蹴る。

 加速した赤い身体は、先ほど自分を追い越した生徒達へ瞬く間に追いついた。

 

「悪い! 通るぞ!」

 

 人と人との隙間を抜け、残骸を跳び越える。

 そのすぐ横を、ドラグレッダーが並んで飛んだ。

 

「轟達、随分先に行っちゃったな」

 

「ガォォ」

 

「分かってるって! こっから追いつく!」

 

 助けたことを後悔する気はない。

 けれど、このまま負けていいと思っているわけでもなかった。

 

 せっかくの体育祭だ。

 緑谷とも、全力で競おうと約束した。

 

 ならば、最後までやるだけだ。

 

◆◆◆

 

 出久の呼吸が、少しずつ荒くなっていた。

 

 全身に力を巡らせる。

 どこか一か所に集中させず、一定の出力を保つ。

 

 特訓で繰り返してきたことだ。

 それでも、次々と障害物が現れる状況で続けるのは、単に走るのとは違っていた。

 

(肩に力が入ってる。落ち着け……!)

 

 出久は拳をわずかに緩めた。

 

 前方には轟の背中が見える。

 さらに爆豪が、爆破の勢いを使って距離を詰めていた。

 

 右腕には、ロボットの装甲板を抱えている。

 自分が砕いた仮想ヴィランから外れたものだった。後続のロボットへの盾にするつもりで拾ったが、結局、真司が道を開いてくれたため、まだ手元に残っていた。

 

 捨てれば身軽になる。

 だが、先に何が待っているか分からない。

 

(もう少し、持っていこう)

 

 走り続ける出久の前で、地面が途切れた。

 

 深い峡谷。

 その中にいくつもの足場が立ち、細いロープで繋がっている。

 

『落ちたらそこで大きくタイムロス! 渡り方はお前ら次第だぜ!!』

 

「これ……結構、高いな……!」

 

 思わず足元を見た。

 すぐに視線を上げる。

 

 轟は既に、氷を使って先へ進んでいた。

 爆豪もロープに頼らず、空中で爆破を繰り返している。

 

 出久は装甲板を脇に挟み直した。

 

(僕も、今なら……!)

 

 緑の光が脚を走る。

 足場の縁を踏み切り、次の岩柱へ跳んだ。

 

 着地。

 膝を曲げて衝撃を逃がし、すぐに次の足場を確認する。

 

 届く距離。

 踏み込める場所。

 跳んだ先にいる生徒。

 

 速く動けるからこそ、見落としてはいけない。

 

 組手の最中、真司に何度も言われたことを思い出す。

 

 出久は顔を上げたまま、次の足場へ跳んだ。

 

◆◆◆

 

「うわ。今度は崖か」

 

 龍騎が峡谷の手前へ到着した頃、先頭集団は既に向こう岸へ近づいていた。

 

 ロープの上では、何人もの生徒が慎重に足を運んでいる。

 そこへ無理に割り込めば、誰かの足場を揺らしかねない。

 

 龍騎は、隣の相棒へ顔を向けた。

 

「ドラグレッダー。頼めるか?」

 

「ガォォ!」

 

 小さな龍が空中へ躍り出た。

 その身体が伸び、真紅の装甲を持つ巨大な龍へ戻っていく。

 

 龍騎は跳躍した。

 下を通り抜けたドラグレッダーの背へ着地し、身体を低くする。

 

「よし、行くぞ!」

 

 雄叫びと共に、真紅の龍が加速した。

 

 ロープを渡っていた生徒が、頭上を見上げる。

 

「はあ!? そんなんありかよ!?」

 

「龍に乗るとか、ずるくね!?」

 

 叫び声が、後ろへ遠ざかっていく。

 龍騎は進行方向を見据えた。

 

 先ほどまで小さかった向こう岸が、みるみる近づく。

 

『ここで城戸が一気に来たぁ! 相棒に乗って峡谷を突破! こいつは速ぇぞ!!』

 

『竜も城戸の個性の一部だ。あの連携まで含めて、あいつの強みだな』

 

 向こう岸の上で、龍騎が背から跳び下りる。

 着地からそのまま走り出すと、ドラグレッダーも再び身体を小さくし、横に並んだ。

 

 前方に見慣れた体操服が見える。

 

「見えた!」

 

 真司の声が弾んだ。

 まだ距離はある。

 だが、もう背中を捉えた。

 

◆◆◆

 

 最後の関門で、先頭の速度が落ちた。

 

 轟が地面を見ている。

 爆豪も、着地する場所を選んでいた。

 

 地雷原。

 

 出久の前方で爆発が起こり、土煙が上がった。

 踏んだ生徒が悲鳴を上げて転がる。

 

 競技用に調整されたものだ。

 それでも、まともに巻き込まれれば足は止まる。

 

(最後に、これ……!)

 

 フルカウルの出力を抑え、出久は足を止めた。

 脚が重い。

 呼吸を整える間にも、轟と爆豪は進んでいく。

 

 ここで一度力を抜けば、身体は少し楽になる。

 だが、その間に二人との差が広がる。

 

 後ろからも、足音が近づいていた。

 

 振り返る。

 赤い鎧が見えた。

 

(城戸君……!)

 

 もう、ここまで来ている。

 

 ロボットを倒し、他の生徒を助け、それでも追いついてきた。

 強い。

 

 このまま同じように走ったら、追い越されるかもしれない。

 

 出久は、腕の中の装甲板へ目を落とした。

 

 目の前では、地雷が爆発している。

 爆風で舞い上がった土が、こちらへ降ってきた。

 

 装甲板。

 爆発。

 空中なら、地雷を踏まずに進める。

 

(……使える?)

 

 出久はしゃがみ込んだ。

 地面に薄く被せられた土を払い、埋まっている地雷の位置を確かめる。

 

 ひとつでは足りない。

 必要なのは、前へ飛び出すための勢いだ。

 

 装甲板の縁で土を寄せ、露出させた数個の地雷を狭い範囲へ集める。

 周囲の生徒の位置も確認した。

 

 誰も、すぐ近くにはいない。

 

(乗る角度を間違えたら、上に飛ぶだけだ。身体を支えて、前へ……!)

 

 板を構える。

 脚へ、再び力を巡らせた。

 

◆◆◆

 

「緑谷?」

 

 龍騎は、先でしゃがみ込んでいる出久を見つけた。

 

 一瞬、脚を痛めたのかと思った。

 だが、出久の視線は地面と前方を行き来している。

 手には、ロボットの装甲板。

 

 何かをしようとしている。

 

 龍騎が地雷原へ踏み込んだ。

 足元の土が盛り上がり、爆発する。

 

「うおっ!」

 

 衝撃で身体が浮いた。

 すぐに足を着き直し、前へ進む。

 

 鎧があるから、競技用の爆発では大きな傷は負わない。

 ただし、足場を崩されれば加速は止まる。

 

「ドラグレッダー、もう一回――」

 

 その言葉を、轟音が遮った。

 

 出久のいた場所で、土煙が膨れ上がる。

 そこから、緑の光を纏った少年が飛び出した。

 

「うわっ!?」

 

 龍騎が顔を上げた。

 

 出久は装甲板を足元へ押しつけるようにして、空中を突き進んでいた。

 爆風を受け止めた板ごと、前へ押し出されている。

 

 その身体が、轟と爆豪の頭上へ迫った。

 

『緑谷、跳んだぁああ!! 地雷を使って自分を打ち上げやがった!!』

 

「デク……!?」

 

 爆豪が見上げる。

 轟も、空中の出久を目で追った。

 

 龍騎は一瞬、呆気に取られた。

 

 それから、笑った。

 

「お前、そんなこと考えてたのか!」

 

 自分に教わった動きだけで勝負するのではない。

 出久は、目の前にあるものから、自分の進み方を見つけたのだ。

 

 嬉しかった。

 

 けれど、感心している場合ではない。

 

「俺達も行くぞ、ドラグレッダー!」

 

 龍が大きくなる。

 龍騎はその背へ跳び乗った。

 

「追いつくぞ!」

 

 低く身を伏せる。

 真紅の龍が、地雷原の上を駆け抜けた。

 

◆◆◆

 

(このままじゃ、途中で落ちる!)

 

 出久は前方を見た。

 ゴールへ続く入口まで、まだ距離がある。

 

 地面が近づいてきた。

 後方では爆豪の爆発音が続き、さらに龍騎とドラグレッダーが迫っている。

 

 誰も、諦めていない。

 

 当然だ。

 皆、本気で一位を狙っている。

 

 出久は身体を捻った。

 装甲板を両手で持ち直し、下へ向ける。

 

 近づく地面。

 土の下に見える、地雷の輪郭。

 

 板を振り下ろす。

 

 接触した、その瞬間。

 脚を引き上げ、フルカウルで身体を支えた。

 

 爆発。

 

 強烈な衝撃が両腕を伝わる。

 歯を食いしばった。

 

 板を離す。

 もう一度押し出された身体が、地雷原の外へ飛び込んだ。

 

「っ……!」

 

 地面を転がる。

 手を着く。

 

 痛い。

 けれど、動く。

 

 出久は立ち上がった。

 

 通路の先に、スタジアムの光が見える。

 

(あと少し……!)

 

 走る。

 

 後ろで、重い着地音がした。

 

「緑谷ぃ! 待てー!」

 

「待たないよっ!」

 

 思わず答えた。

 真司が笑った気配がする。

 

 振り返らない。

 そんな余裕はなかった。

 

 脚へ力を巡らせる。

 腕を振る。

 

 特訓で何度も走った。

 息が切れても、足が重くなっても、真司は隣にいた。

 

 今は、その真司が後ろから迫っている。

 

 勝ちたい。

 

 教えてくれた相手だからこそ、ここで勝ちたかった。

 

◆◆◆

 

『さあ、先頭が戻ってくるぜ!!』

 

 スタジアム中の視線が、入口へ集まった。

 

 最初に飛び出してきたのは、緑谷出久。

 そのすぐ後ろに、仮面ライダー龍騎。

 

 観客席から歓声が上がる。

 

「緑谷少年ま!」

 

 オールマイトが、思わず身を乗り出した。

 

 緑の光を纏う身体は、最後まで走り続けている。

 後ろから迫る龍騎にも、譲らない。

 

 龍騎が腕を振った。

 差が縮まる。

 

 出久も、歯を食いしばって踏み込む。

 

 ゴールラインへ、二人が飛び込んだ。

 

『一着、緑谷出久ぅうう!! 二着は城戸真司!! 最後は僅かな差だったぜ!!』

 

 出久の足が、数歩先で止まった。

 両膝に手を着き、肩で息をする。

 

 聞こえていた。

 確かに、自分の名前が呼ばれた。

 

「……一位」

 

 声に出してみる。

 まだ実感が湧かなかった。

 

 その横で、龍騎が頭を仰いだ。

 

「くっそー! あとちょっとだったのに!」

 

「ガォォ」

 

「いや、お前は頑張ってくれたよ。俺が最初、のんびりしすぎた!」

 

 ぼやく真司の後ろで、轟と爆豪もゴールする。

 

『続いて轟焦凍、三着! 爆豪勝己、四着!!』

 

「クソが……!」

 

 爆豪が、出久を睨む。

 途中まで自分達の後ろにいたはずの相手が、一位を取った。

 

 しかも、ただのまぐれではない。

 走る力も、跳ぶ力も、明らかに以前とは違っていた。

 

 爆豪の掌から、小さな爆発が漏れる。

 

 轟は呼吸を整えながら、出久と龍騎を見ていた。

 

 城戸に気を取られていた。

 だが、競うべき相手は一人ではなかった。

 

 轟の視線を受けても、出久はまだ顔を上げられない。

 全力で走り切った脚が、震えている。

 

 その背中を、ぽん、と手が叩いた。

 

「やったな、緑谷!」

 

 顔を上げる。

 変身を解いた真司が、隣に立っていた。

 

「城戸君……」

 

「あの最後のやつ、びっくりしたぞ! 地雷で飛ぶなんて、よく思いついたな!」

 

「途中で、このまま走ってたら追いつかれるって思って……それで、あの板が使えそうだったから……」

 

 息の合間に、出久が答える。

 真司は頷いた。

 

「そっか。ちゃんと自分で考えたんだな」

 

 その言葉に、出久の胸が熱くなった。

 

 真司のおかげで、力を使えるようになった。

 しかし、今日の最後の一歩を選んだのは、自分だった。

 

「……うん!」

 

「でも、次は負けないからな!」

 

 真司が拳を差し出す。

 

 出久は、一度その拳を見た。

 それから顔を上げ、自分の拳を軽く合わせた。

 

「僕も、負けないよ」

 

 真司が、嬉しそうに笑った。

 

 観客席のオールマイトも、静かに口元を緩めた。

 

 相手の背中を追いかけるだけだった少年が、今日は先にゴールへ辿り着いた。

 その勝利を、隣にいる友人が喜んでいる。

 

「……よく頑張ったね、緑谷少年」

 

 呟きは、観客の歓声に紛れた。

 

◆◆◆

 

 続々と生徒達が帰ってくる。

 

 飯田が走り込み、常闇が続く。

 それぞれの個性を生かして関門を突破してきた者達が、順位を確かめて息を吐いた。

 

 真司の傍らでは、小さくなったドラグレッダーが胸を張っている。

 

「ガォ!」

 

「分かってる。肉だろ? ちゃんと約束は守るって」

 

 その声を聞いて、出久が笑った。

 

 やがて、予選通過者が出揃う。

 上位四十二名。

 

 モニターの一番上には、緑谷出久の名前があった。

 その下に、城戸真司。

 

 出久は、もう一度その表示を見上げた。

 

 嬉しい。

 嬉しいけれど、これで体育祭が終わったわけではない。

 

 ミッドナイトが、前へ進み出た。

 

「それじゃあ、予選を突破した皆には、次の種目に挑んでもらうわ!」

 

 モニターが切り替わる。

 

 表示されたのは、騎馬戦。

 

「騎馬戦か。今度はチーム組むんだな」

 

 真司が言う。

 出久も頷きかけた、そのときだった。

 

 順位に応じて与えられるポイントが、説明される。

 そして、一位の得点が映し出された。

 

 一千万。

 

「……え?」

 

 出久の笑顔が止まった。

 

 周囲の空気が変わる。

 次々と、視線がこちらへ向いた。

 

 爆豪も。

 轟も。

 他のクラスの生徒達も。

 

 先ほどまで勝利を祝ってくれていた歓声とは違う。

 自分が、狙うべき相手になったのだ。

 

「い、一千万……!?」

 

「うわ。緑谷、凄い点数だな」

 

 真司が、モニターと出久を交互に見る。

 

 ドラグレッダーまで、興味深そうに出久の顔を覗き込んだ。

 

 出久は、引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

 

 ようやく掴んだ一位。

 その重さを知るのは、これからだった。

 




一年も放置してすみません。

またチマチマ投稿していきます。

では、また∠( ゚д゚)
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