自分の為にも情報纏め。
これ、花水樹様のイラストと水着ルーナのキャラクター詳細より、プロットなしで書きながら今シナリオ作ってるから後々回収出来ない伏線があるかも……頑張れ未来の自分!
特異点の場所は636年のイングランド外れの島、アイル。
人理定礎値は、E−の判定が下されない程の小さな歪み。故に —— 判定。
近未来観測レンズ・シバは、この特異点をいずれ勝手に修正されて元に戻るものと100%で断定。
特異点突入後、カルデアとの謎の通信途絶。
四十度超えという、謎の異常気象。
ルーナの不明の体調不良。
灼熱の日輪が地面を照らす中、彼らは浜辺を歩き続ける。
探索の為に歩き始めて、凡そ一時間。しかし何かしらの目立った進展はなく、レイシフト当初より事態は変わらない。
「暑いね………」
「そうですね先輩………流石に少し………」
何か具体的な異常といえば、この異常なる猛暑だけ。
空を見上げれば、レイシフト当初よりは僅かに傾いた太陽。ずっと空に太陽が浮かんだままなのではという不安はとりあえず解消された。ちゃんと時間経過という概念はあったのだから。
「なんだろう、この気温は…………昼や太陽という概念に何か異常があるのかな。夜になったら何か変わるかも」
「では探索を中断し、拠点作りを開始しますか?」
「うーん………」
悩んで、これからどうするかを考える。
明確な敵性勢力が居れば話は分かりやすく、いつもの微小特異点のように、何かしらのエネミーを倒すだけで事態は解決されたのだろう。だが今回の事情は少し話が異なる。明確な異常に対する解決策が、まだ見当たらないのだ。
しかもこの暑さ。付近の森でなら日差しを遮れるが、それでは事態は解決しない。森で野宿するよりは手頃な拠点を作り、探索の足がかりにする方が良いだろう。
「マシュ、ちなみに私達ってどれくらい歩いた?」
「今計測しますね………えっと——あ、あれ?」
「………大丈夫? 何かあった?」
「い、いえその………あれ、何で………」
「………異常?」
慌てるマシュの姿に、不穏な影を感じながら立香は返した。
次の瞬間、やっぱり勘違いでしたと笑って後輩が誤魔化してくれるなら、ただ微笑ましいだけだが、こういう風な反応から杞憂に終わった試しは、まだ一度もない。
「えっと、はい……座標が更新されていません。確かに私達は歩いた筈ですし、周囲の風景も変わっている筈なのに、マップ内ではレイシフト時の座標のところに私達は残り続けています」
「——そっか、ありがとう。
令呪を使用して、一度空の太陽に向けて宝具を全力解放してみようか悩んじゃうね」
重なる異常。実害はないが、不穏な影が忍び寄っている気配。
こういうのは少し怖いな、と思いながら立香は空の太陽に目を向けた。直視するのが難しい程の光。一番の異常である、暑すぎる気温を作り出している元凶。
アルトリアさんやルーナさんの直感が働かないのだから、あの太陽自体は悪い物ではないのだと思うが、何かの起点や楔になっている可能性はある。
機械的な言い方をするなら、ジャミング装置か。
しかし、カルデアに戻らねば令呪は補填出来ない以上、三回限りの切り札はそう簡単に使えない。太陽に向かって宝具を解放しても、事態が好転するかは分からない。
事が起きるまで待機は、果たして正しいのか正しくないのか。
だが、時間という概念はある。
つまり、あの太陽はいつか沈む。故に夜という概念は恐らくある。夜も夜で何かの異常があって、昼夜という異常を回し続けている島だったら地獄極まりないが。
「マスター。一つ伝えたい事があるのですがよろしいですか?」
「……どうしましたか?」
拠点を作り、夜の場合はどうなるのか確かめてみるべきか……と思案していた立香に、アルトリアが進言をする。
「いえ、些細な事ではあるのですが、一つ気になったので。
この島の年代と、我が故郷に近い故なのか普段よりも力が十全となっています。知名度補正がかかっているのでしょうか。
生前の自分に近付いている……そんな感覚です」
「おぉ………ただでさえ強いのに更に……ホントだ。ステータスの殆どがAランク……」
「恐らく、私以外の騎士達もそうかと思います」
立香は右腕に着けたリングから端末を起動し、同行サーヴァント達のステータスを把握する。そして、事実その通りだった。
此方から魔力をあまり流していないというのに、魔力全開状態のステータスとほぼ同義。並み居る存在では太刀打ち出来ないだろう。
「ん………?」
「えぇ、それともう一つ。私達の霊基がかなり安定しています。もし、マスターからの接続を切ったとしても、しばらくステータスが劣化しないくらいには」
端末から彼らの情報を確かめていると、一つ見覚えのないスキルが彼らに付与されていた。いや、見覚え自体はある。ただそれが彼らのクラスではおかしいというだけで。
「単独行動………」
「はい。私達円卓の騎士に、本来なら存在しないスキルが付与されているのです。本来なら良い事なのですが、何かおかしいなと。
もしかしたら私達のステータスが向上しているのは、我が故郷に近付いているからなのではなく、この特異点内の異常の一つなのかもしれません」
「成る程………確かにこの島だと、知名度と呼べる程に人々の想念があるとは思えないし、何かの異常の一つなのかも」
立香はアルトリアと会話し情報を整理しながら、ステータスを更に確認する。
彼らは一様にアーチャークラスの単独行動スキルを保有していた。ランクはE+。元から単独行動を保有しているトリスタンはランクが上昇してA。
念の為、エミヤも確認して見るが、彼はそのままのBランク。つまり、円卓の騎士という存在に付与されている特殊概念の可能性が高いという事。詳しい理由は分からない。
「ん………んん?」
「どうしましたか先輩?」
「いや、なんでだろう…………マシュには単独行動のスキルが付与されてない」
「え……? 他の皆さんが単独行動スキルを獲得しているのに、私には無いのですか?」
「うん……無い。マシュはいつものマシュだった」
そう告げたマシュは、皆と同じではない事に少し残念そうで、しかし一切の異常がない自分に安心したようだった。
それもそうだろう。この不透明な状況下の場合、原因の分からないステータス向上とスキル獲得は何かしらのデメリットを背負ってしまっているのかもしれないのだから。
「…………はい——はい?」
「ど、どうしました先輩。今度は何が……」
「え、いや……え………?
…………今ルーナさんのステータスとかを確認したんだけど………なんか幸運以外の全ステータスA+になってる……更に何なら【単独行動 EX】ってあるんだけど」
「え……ええ!?」
一瞬端末の故障かと疑うが、別にそんな事はなく、あり得ない程に高いステータスを表示し続けていた。
確かに彼女はカルデアのサーヴァントの中でも優れたパラメーターを持つとはいえ、流石にこの上昇量はおかしい。狂化の補正がかかっており、尚且つ勇猛のスキルを持つギリシャの大英雄、ヘラクレスと素で勝負して鍔迫り合えるレベルである。
しかも、他騎士と違って単独行動スキルもだ。
元よりルーナさんは単独行動のスキルを保有しているとはいえ、この高ランクはおかしい。というか、単独行動 EXなんて今まで初めて見た。英雄王ギルガメッシュや、神霊というかなり特殊な現界をしている三神の一柱、エウリュアレでもA+なのだ。
しかも恐らく、彼女の場合は特殊故のEXなのではなく、E〜Aのランクでは収まらない規格外故のEX。
もはや規格外の単独行動など、マスター不在でも行動出来るのではないか。
「円卓の騎士にのみ付与されている単独行動スキル…………じゃあ何故マシュには付与されない…………」
周りの驚きの中、ルーナは眉間に皺を寄せながら思案に耽っていた。
「それに何故、私だけがここまでの恩恵を受ける………いいやこれは本当に単独行動スキルなのか? 単独行動というスキルに現れているだけで…………これは私達をこの特異点に固定しようとしている………?
いいや…………なら何故……これはどういう事だ…………一つの事象ではなく、複数の事柄が重なっているのか?」
「ルーナさん?」
告げる言葉にルーナは気付いたのか、溜息を吐きながら彼女は沈めて意識を取り戻した。
「いや、何でも無い………結局私には答えが思い浮かばなかった。情報が増えただけで、何も纏まらなかったな」
彼女の言葉が、周囲の皆の総意であった。
円卓の騎士に関係する何かがあるのは分かったが、しかしそれが何なのかは分からない。マシュに効かない理由は、誰も口にしないが彼女はデミ・サーヴァントであるからなのか。しかし、ではルーナは。
ルーナもカルデアの内の英霊の中では、一、二を争う程に特殊な現界であるからか。じゃあ、何故彼女は多大な影響を受けているのか。何と何が関係しているのか。
ただ、分からないなりに感じ取れる事がある。
あまり、この特異点では油断しない方が良いという事。それと恐らく、ステータス向上のメリットは、ただメリットばかりではない何かがあるという事。
不穏な気配が全員を襲う。
誰にも分からない何かが、水面下で進行しているのではないかという焦り。
その中、ランスロットは気付いた。ルーナが明らかに不調をきたしている顔色だという事に。
「ルーナ………? 少し、顔色が悪くないか………?」
「あぁ………まさか熱中症というものを実感する日が来るとは思っても見なかった。もしくはこれが霊基不調という奴なのか」
「…………大丈夫ですか!」
「分からない。命に別状はない。
……さて、これがステータス向上と単独行動スキルの不可解なランク上昇の反動だとしたら、あまり喜んでもいられないな」
ランスロットとマシュの心配に対しても、彼女は平静かつ気丈に答えた。
ただ、気分が良くない事に変わりはないのだろう。顔色を悪くし、吐き気を堪えるようにルーナは眉間に皺を寄せ、睨みつけるように瞳を細めていた。
彼女が苦痛を耐えている時の表情だ。
「……霊基不調状態での無理な活動は、霊核に損傷を与える原因になり得ます。ここはまず探索を中断し、日差しを遮れる拠点作りを開始しましょう。
太陽と昼という存在が、カルデアの通信を遮る結界になっている可能性もあります。夜になれば、また何かが進展するかもしれません」
「そうだね。マシュの言う通りだ。
これは……モルガンさんやメディアさんのような人達を連れて来た方が良かったのかもしれないね」
「結果論ですから仕方がありません。それに、円卓という存在以外を弾く何かが張られている可能性もありますからね」
マシュの言葉に、それもそうだと立香は意識を改める。
この不可解な現象の中でも、世界に名を轟かせる大魔術師なら何かを解析出来たのかもしれないが、特異点突入の際に戦力と連携力を重視した事実は変わらない。
それに、二人は何か別の事に意識を持っていっていて、特異点調査という面倒な事は円卓に全てぶん投げた事も、少し理由であるが。
「よし。日没の六時まで後二時間くらい。それまでに森の木を少しだけ拝借させて貰って、簡易のキャンプを——」
「マスター、警戒を——何かが来ます」
耳が良いからか、何かの異常に一番早く気付いたトリスタンが警戒の言葉を告げる。
瞬時に切り替わる意識。鋭く冷え切る思考。
故に浮かぶ、マスターとしての役割。
即座に振り返り、隣の赤髪の騎士が睨む森の中を同じく立香は睨む。油断はなかった。それが役目だからだ。
戦場での油断は命取りであるが故に、戦いの場では何も役立てない自分が、まずはやらねばならない事。
歴戦の英雄達の主となった自分が、少なくとも彼らの足手纏いにならない為の責務。
「——
自分に魔術の知識などはなく、最奥も深淵も手にかける事など出来ず、その一端に踏み入れる事すら烏滸がましい。
運良く生き残った、48人目の一般人という称号を誰よりも理解しているのは、正にこの自分なのだ。故に、メディアさんといった優れた魔術師の教えを貰おうと、精々が今出来る事の精度と速度が上がるくらいしか伸びしろはなかった。
だからこそ、藤丸立香は告げる。
一番役に立った魔術の知識は、カルデア最古参のエミヤからの教えである。
魔術とは己の戦いである。故にイメージしろ。意識を変革しろ、と。
故に告げる変革の言葉。魔術などからっきしの自分が、礼装を媒介に魔術を行使する為の宣言。
浮かぶ魔力。可視化される光。
礼装を包む術式を即座に解放する準備は済ませた。何故そうなるかまでは何一つ理解出来ていない。しかし、魔術を行使するやり方だけは完璧に頭に叩き込んでいる。
今着ている支給服のスキル以外に、支援礼装に溜めた魔力を媒介に、今は着ていない戦闘服、魔術協会制服、アトラス院制服の礼装スキルを起動する準備も終え、立香は森の暗闇を睨み続ける。
そして来た。平和な島には明らかに相応しくないだろう、異常存在の群れ。
「pefe!pefe!nz:q!d93hkby:@y!8.xue!8.xue!」
「………ッ、来た!」
途端に森から溢れる、夥しい数をした謎の影。人型をした暗闇。
人語を解さず、理解し難い不気味な何かを叫びながら蠢く黒い何かは、明らかに人間の常識では測れない何か。凡そ、この世にあってはならない汚点そのもの。
立香達は、それに見覚えがあった。
残留霊基。歴史の歪みに残る、英霊の情報を模ったバグ。即ちシャドウサーヴァント。
だが、その黒い影達には、シャドウサーヴァントのような圧力はない。英霊という現象の影ですらない低級霊。もしくは亡霊の群れ。そう例えるに相応しい異物が、立香達を襲いに来ていた。
「…………何かに釣られたか……? もしくは、私の何かに反応してか……?」
「考えるのは後にしましょう。この量は余りよろしくない」
数えるのすら嫌になる程の、夥しい数の群れを見て、瞬時にガウェインは剣を握る。
その反応を見て、同じくルーナも追従して剣を虚空より握った。投影で作り出すのとは違う英霊としての己が持つ神秘。即ち、最強に位置する星の聖剣。その堕ちたる姿。
「暑い、なぁ……………」
「……本当に大丈夫ですかルーナ? ここは私達にお任せを」
戦闘の為にと傘を放った瞬間、襲う灼熱と日輪。
具合の悪そうにしているルーナを気遣ってか、アルトリアは小さな笑みと共に黒い影達の集団に向かい、それに円卓の騎士達も続いた。
刹那に斬り捨てられ、霧散していく黒い影。同時に拳を振り上げ、もしくは刺突するかのように腕を引く、人型の暗闇達。人語など解さない化け物。
つまり——明確な敵性エネミーである。
「——マシュ!」
「——はい! 戦闘を開始しますッ!!」
それを命とし、人類最後のマスターが唯一"契約"をするサーヴァントが行動を開始する。
前方には生い茂る森。後方には広大なる大海原。太陽が傾きかけながら、未だに灼熱を保ち続ける浜辺の中、彼らは戦闘を開始した。
「——は、ぁ………ッはぁ…………!」
一人、太陽の下——内側から暴走しながら。