バーゲストが思い切るお話

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バーゲストと立香のお話

物陰から、食堂で談笑している青年を取り囲むサーヴァントを睨むように見ている者が一人。

その名は妖精騎士ガウェイン。もといバーゲストは悶々としている。

理由は単純で、立香の周りにいるサーヴァントを羨んでいるのである。

「立香とあんな近くで…羨ましい」

と愚痴めいた言葉を漏らすバーゲスト。

「立香も立香です。わ、私という者が居ながら他のサーヴァントとデレデレと…」

実際、立香の周りには妻や彼女や姉やらを自称するサーヴァントが引っ切り無しに侍っている。バーゲストも例に漏れず、立香の彼女だと自負している。ただ、彼女は踏ん切りがついておらず、立香とお近づきになれずにいたのだ。

そんな彼女は、その周りにいるサーヴァントらに羨望の眼差しを向けている。

「どうしたらいいのかしら…」

小声で呟き、ふと拳に力が入ってしまう。

まだ行動に移せていない自分に苛ついているのだ。

ただ、その苛つきは後日爆発してしまう事件が発生する。

 

今日も今日とてストーキングをするバーゲスト。ただ、立香の周りにいるサーヴァントがいつもと違うことに気が付いた。

「な…あやつは…!」

そのサーヴァントは、

「メリュジーヌ!」

「おや、バーゲストじゃないか!久しいね」

妖精騎士ランスロット。真名をメリュジーヌ。バーゲストと同じように、かつて異聞帯ブリテン側に召喚されたサーヴァントの一人である彼女は、玉座であると言わんばかりに、得意げに立香の膝の上に座っていた。

 

 

「バーゲストはもう召喚されてたんだね。いいなぁ」

「え、ええ。」

(ですが…)

バーゲストはここで疑問を抱く。

(他のサーヴァントがなぜいない?)

いつもならマスターLOVE勢が立香を囲っているはずであり、立香が一人でいることが珍しいのだ。だからこそ一日の多くを立香に付き纏うことに費やす彼女は不思議に思わざるを得ない。自ずと眉が寄ってしまう。

すると、

「ああ、他のサーヴァントは誠心誠意、心を込めて説得したら納得して譲ってくれたよ」

とバーゲストの訝し気な視線を感じ、あっけらかんに言うメリュジーヌ。

(説得…ですって!?)

嘘だ、と直感的に感じたバーゲスト。それもそのはず、マスター絡みで暴走するサーヴァントを説得するなど、一筋縄ではいかないはずだ。

すると、立香がメリュジーヌに苦笑いしつつ話しかける。

「あれを説得っていうのかな…」

「あれは僕なりのやり方だからね」

「だとしても模擬戦闘でボコボコにするとは思ってなかったんだけど」

「でも、これで僕が最強だってことがわかったでしょ?僕さえいれば問題無いってね!」

どうやら言葉を交わして説得したのではなく、物理的に説得したようだ。

他のサーヴァントを圧倒するメリュジーヌの力に慄くバーゲスト。

「ところでマスター!今日はどこへ行く?早くデートしようよ!」

「あと30分で周回に行かないとダメだから、また今度ね」

「むぅ…じゃあ今から30分間しかデート出来ないのかー」

「話聞いてた?」

立香を独占して仲睦まじげにおしゃべりをしている、と感じたバーゲスト。自分よりも打ち解けていると思ってしまった彼女は、もはや手段を選べなくなっていた。

(もう、なりふり構っていられないようですわね!!)

バーゲストは、いつの間にか獣を狩る目になっていた。

 

 

 

メリュジーヌがマスターLOVE勢を一掃した本日。

バーゲストは立香の自室の前で仁王立ちになって佇んでいた。

さながら城を守る兵士のようである。

時刻は午後十一時を過ぎ、立香の就寝時間が近づいているにも関わらず、彼女は何をしているのだろうか。

(他の人に取られる前に、力づくで奪ってやります)

そう、今まで遠くから立香を見つめていただけだった彼女は、決心したのだ。

今日、マスターと恋仲になるために。

(念入りな準備などありませんが、必ずや勝ってみせます)

バーゲストを突き動かしたのは、焦燥感と束縛欲。

日に日にスキンシップが増すサーヴァント達に後れを取るまいと、また、誰にでも平等に接している立香を完全に自分のモノにしようと思ったからだ。

そして、決定的だったのはメリュジーヌが台頭したことである。

だからこそ、勝負に出た。

(私は逃げ隠れしませんわ、立香!どこからでもかかってきなさい!)

…さながら敵を迎え撃とうとしているようである。

 

 

そうこうしている内に、本日の周回を終え、やや疲れ気味になった立香がやってきた。

「マスター!少し時間を貰えるだろうか」

と立香の自室の扉の前に立ち塞がって話しかけるバーゲスト。

「え、うん、いいよ。どこで」

「マスターの部屋が近いので、そこでどうだろうか」

「あっはい」

戸惑い気味の立香を差し置いて食い気味に話す。

(一つ目の関門は抜けましたわ)

バーゲストは心の中でガッツポーズを取り、二人は部屋に入っていった。

 

(こ、ここが立香の部屋…)

初めて立香のプライベートな空間に踏み込んだバーゲストは、緊張していた。

「それでどうしたの?こんな時間に」

「そ、それはですね」

(頑張るのよ私!ここで躊躇している場合ですか!)

自分で自分を鼓舞するバーゲスト。

「メリュジーヌのことなのですが…」

「メリュジーヌ?」

「ええ、彼女と決闘させていただきたいのです。」

「…決闘かぁ」

立香は難色を示している。立香としてはサーヴァント同士が私怨や個人的な理由で争うことを嫌がっているからだ。全てのサーヴァントが平和に生活できるような環境にしたい彼にとって、決闘は好ましくないと思っている。

ただし例外はある。メリュジーヌの件だ。メリュジーヌはマスターLOVE勢をもろともせず、立香は恋人であると発言をし、そこから口論に発展。立香が仲裁を試みるも、事態が収束せず、決闘で決着をつける運びになったのだ。

しこりが残るのは不味い。と立香が断ろうと口を開こうとしたその瞬間。

「もし、メリュジーヌに勝利した暁には…」

一呼吸置き、バーゲストは頭を下げながら、叫んだ。

「私はあなたのことが好きです!私と、デートしていただけませんか!」

「!?」

(言ってしまいました言ってしまいました言ってしまいました!)

立香は突然の告白に驚いている様子だ。それに対してバーゲストは、見た目はクールに装っているものの、頬は赤みを帯びている。

幸か不幸か、お辞儀していたことで、顔は見られていない。

そんな中、バーゲストは恐怖に似た感情を覚えていた。

立香は誘いを断ることが上手い。

だからこそ、断られていたらどうしよう、嫌な顔されていたらどうしようと頭の中は不安で一杯だった。

「バーゲスト」

立香から呼びかけられ、顔を上げる。

すると、予想に反した返事が返ってきた。

「俺もバーゲストが好きだよ」

「ふぇ?」

「バーゲストはあまり話しかけてきてくれなかったし、俺が話しかけても遠慮そうにするから、嫌われてるのかなって」

「えええええええええええ!?」

バーゲストにとっては青天の霹靂であった。まさか、自分が片思いしていたはず立香と、両想いだったとは考えもしていなかったからである。

「だから、告白してくれてすっごく嬉しいよ」

「マスター…」

全身が、心臓を中心に燃え出している感覚に襲われている。

苦しいほどに心臓が締め付けられているようだ。

「だからさ、俺の恋人になってくれませんか。バーゲスト」

驚きと嬉しさで、息が詰まりそうになる。

まさか、立香が、と動揺を隠すことができない。

息を落ち着かせて、立香と相まみえる。

まっすぐとバーゲストを見つめる青い瞳。

返事など、一つしかあるまい。

「マスター、いえ、立香。私は立香を愛しています。あなたの番となりましょう」

「ありがとう、バーゲスト。じゃあ、これからよろしくね!」

「ええ…ええ!」

かくして、めでたくカップルが誕生した。

(自称などではない!嘘偽りのない、まごうことなき恋人!)

ハイテンションになっていくバーゲスト。

(私が、立香の唯一の…!)

嬉しさからか、気持ちを抑えることが出来なくなっている。

バーゲストの心の中は、まるで火山のよう。

今までため込んでいたごちゃまぜな感情が、文字通り噴火してきだした。

嫉妬、淫欲、独占欲、情愛、優越感、満足感、安心。

だから、なのであろう。バーゲストは、もう、たかが外れた様子で、

「もう…我慢しなくて良いのですね」

「え」

「暴走してしまう私をお許しください!ですが、もう、正式に、恋人なのです!好きです大好きです愛してます立香!!!」

「ちょ、落ち着いて!バーゲストォォォ!!」

立香に襲い掛かるのであった。

二人の恋人生活は始まったばかり。ゆっくり、ではなく、猛スピードで愛を育んでいくようだ。




バーゲスト、可愛いよな。わかる。

バーゲストが主役の恋愛小説あんまねぇなってことで書いた。
他の人も書いてくれよぉ!!
まあ、登場させといてなんですが、うちのカルデアにはメリュジーヌいないんですけどね。
負けヒロイン感出してごめんねメリュジーヌ。うちのカルデアに来たら(多分)書くから。

誤字脱字は知らせてくれるとありがたし。


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