彼女を作りたい 作:入力速度を考慮して
5月の初め。
普通の学校であれば入学より1ヶ月たち、新しい友達も増え生活に慣れてきた時期であろう。
だがこの学校は普通ではない。今朝確認したポイントを見れば一目瞭然だ。
「おはようございます、天笠くん」
「おはよう、坂柳」
登校しクラスメイトに挨拶をするが、みんなクラスポイントについて話している。隣の席を除いてだが。
「予想通りでしたか?」
「以前も話したがこれはまだ予想に過ぎない。先生から説明を受けてから判断するべきだろう」
「天笠くんは考えすぎだと思いますがね」
外れたら恥ずかしいし、予防線をはっておく。
ポイントについては予想通りであろうがクラス編成についてはまだ何もわかっていないしね。
(各クラスの噂、一之瀬がBクラスであること、それにひよりのポイントから想像出来るがな)
この学校の謎を考えながらクラスメイトとコミュニケーションをとっていればホームルームの時間になった。
「これより各クラスのポイント並びに先日の小テストの結果を発表する。質問はその後にしろ」
担任の真嶋が貼り出した表には小テストの得点、その横にクラスのポイントが書かれていた。
Aクラス 960cp
Bクラス 690cp
Cクラス 490cp
Dクラス 0cp
「やはり、か」
「こんなにもわかりやすく別れてしまうのですね。Dクラスは逸材ですよ」
「それはある意味正解かもな」
「というと?」
「説明はまた後でだ」
真嶋にいくつか生徒が質問しているが、これでわかったことがある。
ひとつは実力至上主義と言ってもいい校風。
そして
(クラス変動がある、即ちクラス対抗の何かがあるということか)
そうなるならば色々対策をしておきたいが、まずは隣の席のお姫様のご機嫌取りが優先かな。
◆◇◆◇◆◇
昼食時、普段ならば教室で仲のいい奴らと一緒に食べているのだが、今日は食堂でとることになった。
女の子2人とね!!
これマジ?夢じゃないよな?ウチのクラスの美少女オブ美少女って言ってもいい神室と一緒にご飯!坂柳も色々ちっちゃいが可愛いし。
すまんみんな、俺はこの天国を楽しんでみせる!
「なにか変なことを考えましたか?」
「気のせいだ」
ひよりと同じくらいとか考えてませんよ。
「さて、説明をここまで引っ張ったのですから余程重要なのでしょうね?」
「まあな。クラス対抗についてだ」
箸を取ったのもそこそこに話を進めたがる坂柳だが、もうちょいこの時間を楽しんでもよくないか?緊張して世間話は出来んけど。
てか神室もなんか喋れ。見てるだけでも満足だけど。なんかいい匂いする。
「それとDクラスに関係が?」
「大前提として、クラス編成には学力、コミュニケーション能力が関わっているはずだ」
「各クラスの様子とポイントを見ればそれは分かります」
そう、これはわかりきっていることだ。だが腑に落ちない点がある。
学力に問題があるであろうDクラスの面々が、なぜ日本有数の進学校であるこの高度育成高等学校に入学できたかだ。先の2つの観点のうちどれかが優れているだけでは説明できないだろう。
そして日本で活躍できる人材を育成するという方針が正しいならば、他のファクターも評価に入っていると考えていい。
つまり比較的優秀な者たちを蹴落とすだけの
それに一之瀬のような例がある。本来ならばAクラスにいてもいい様な人材が、過去のことで評価を落としているだけで、なめてかかれば足元をすくわれる可能性だってある。
そうであるならばAクラスは少々拙いかもしれない。
「この学校に入学できたということを評価するべきだろう」
「なるほど。
「そうだ」
やはり坂柳は優秀だ。身体にハンデがあるにもかかわらずAクラスに居るだけある。ある意味ひよりの上位互換だな。それでも負けないけど。
「学力だけの試験であるならば問題ないだろう。だが他の能力を試すようであるならば、未知数な下のクラスの方が脅威になる。下のクラスという表現が正しいかは別だがな」
「ですが私たちが組めば敵は居ないですよね?」
「俺は勝てればいいだけだ。派閥なんてあってもなくても構わない」
「そうですか……」
少し落胆したような坂柳だが、俺は負けたくないのだ。その時に勝てる方に助力するのが普通だろう。葛城は普通にいいやつだし、坂柳は可愛いけど。
そもそも派閥争いがあるっていうのが高校生っぽくない。君たち本当に学生か……?
いや、ひよりも女子にはグループ順位があるとか言ってたしそんなもんなのかな。クラスって括りでやってるのは意味わからんけど。
話もひと段落したし、飯も食べ終わったから先に帰ろうかな。この後なに話せばいいのかわからんし。
「では、俺は先に戻る」
「はい、また教室で会いましょう」
「またね」
神室が「またね」って返してくれた!少なくとも悪い印象ではないということじゃない?勝ったわ。今までの俺ナイス!
めちゃめちゃ気分よくなったし、スキップしながら帰ろうかな!?
やっぱり気持ち悪いから普通に帰ろう。でも心がぴょんぴょんするのは止められない。神さまありがとうございます!
◆◇◆◇◆◇
「今の話、あんたなら最初っからわかっていたんじゃない?」
「私の意見と彼の意見が一致することが重要なのですよ」
「ふーん」
天笠くんが教室に戻るのを見ながら先程の様子を思い出す。
少人数であるのだから話をする時は目が合ってもおかしくない。
だが彼の視線とは終ぞ交わうことがなかった。
「天笠くんの様子はどうでしたか?」
「目は合わなかったわ。ときどき胸に視線を感じたけど」
「あらあら。天笠くんもお年頃ですからね。やはり異性との接触が苦手なのでしょう」
「あの顔で?ウソでしょ」
「容姿と人間性には関連がない人もいますよ」
橋本くんからは男子の集団では普通に会話出来ていると知らされている。異性にだけ免疫がないことは彼を引き入れることに使えるかもしれない。
(椎名さんとは浅からぬ縁のようですし、ちょっかいを出すのも面白いかもしれません)
「それにしても、随分と買ってるわね」
「勉学も運動も出来るのですから、これ以降の戦いには使えるでしょうからね」
「それだけの理由?」
「それ以上の理由は必要ありません。私たちもそろそろ戻りますよ」
「はいはい」
4月末に行われた小テスト。高校1年が解くには難しい問題ですら完答できる頭脳。
頭が切れるのはわかっていた。私たちのグループにだけ伝えていたこの学校のルール。葛城くんたちが気づかないのであればそれを責め立てようとしていた。
しかし、彼は葛城くんにだけポイント制度の説明をしていた。クラスの不足分を補うように。
それを見た時、彼を測りたくなった。このクラスにも使える者がいるのだと喜ばしくなった。想像を超えた化け物だとは気づかずに。
『天笠くん、ゲームをしましょう』
『え、なぜ』
『クラスメイトと親睦を深めようということです。嫌ですか?』
『いい、ですけど』
初めのうちは距離をはかりかねているのか、敬語であったことが可愛らしく思っていた。そんな印象は直ぐに崩れてしまったが。
3連敗。得意のチェスで彼に負けた数字だ。
『いや、今までの人間相手では一番強かったと思うぞ』
『ふふ、もしも勝っていたら私の下僕にしようと思っていたのですが』
『え、こわ』
ボードゲーム、それもチェスという1分野については彼に敵わなかった。いや、恐らく頭脳系では彼に勝つことは難しいかもしれない。
だが、今はそれだけだ。勉強が出来るだけの人間はいらない。
彼は搦手や悪知恵などに弱いような印象を持つ。思うに人の裏などに関わらない人生を送ってきたのだろう。
このことは彼の弱点になりうる。
生まれながらの天才と作られた天才には埋めがたい差がある。
だが真の天才は1人だけでいい。
(彼を潰して私の下に置くのが一番愉快なことです。ですが、それが叶わないのならば……)
彼のものになるのも一興だろう。
主人公:天笠陽輝(あまがさはるき)
主人公はないよりはあったほうがいい派です。何がとは言わないけど