彼女を作りたい   作:入力速度を考慮して

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 中間試験。

 学校側が教え子達の成果を測る為に用意し、ある程度のレベルに達していない者には罰を与えることもある。多くの学生が忌避し恐れるものだ。ライバルに負けないため、親に怒られないため、赤点を取らないために勉強する者もいる。満点以外取ったことないからわからないけど。

 

 この学校では赤点が退学に繋がるため、ボーダーラインに近い者は必死になって机に向かっている。ということで

 

「戸塚、場合分けを面倒くさがるな。失点に繋がるぞ」

「ウッス、天笠先生!」

 

 勉強会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも何故勉強会など開く必要があるのか。葛城は気づいていなかったのか?」

「何かがあることは気づいているはずですよ。それに対するアプローチが苦手なのでしょう」

 

 放課後、クラスの勉強会に顔を出し躓いている者にアドバイスをしながらまわっていた。Aクラスの面々であれば心配はないが、万が一ということもある。退学者が出ることによるペナルティの有無がわかってない状況では慎重にならざるを得ない。

 

 まあこの行為自体が意味をなさないがな。

 

「過去問の存在、天笠くんはどの段階で気づきましたか?」

「小テストの難易度及び真嶋先生の発言だな」

「『Dクラスですら全員突破できる』との事でしたからね。随分と優しい先生ですよ」

 

 勉強会も終わり、後は寮に戻るだけという段階で俺は坂柳と一緒に歩いていた。

 人を迎えに行くから遠回りだぞと伝えても「着いていきます」というからこうなったが、やはり女の子の隣は慣れない。クラスでは一番関わっている異性なのだが一対一となると緊張する。俺、臭くないかな。

 

「それにしても行動が早いですね。それ(過去問)、ポイントで買いましたか?」

「チェス部の先輩方に情報を賭けてもらった。ポイントを減らすのは拙いからな」

「あそこの先輩には私もお世話になりましたね」

 

 話題はやはり中間試験のことになるが、この子先輩からポイント巻き上げてたりするのかな?容赦がなさすぎる。チェスに勝っておいて良かった。

 

 手の中にある過去問は先程坂柳と葛城に渡した物の原本だ。

 あの小テストは異常であったが、この学校の性質を知らせる絶好の合図でもあった。これ見よがしに『普通ではないぞ。疑え』とアピールしていた。これだけ判断材料があれば後は対策するだけになる。坂柳もそれは理解しているな。

 

「いつみんなに知らせるんだ?」

「私は明日には渡しますが、葛城くんはもう少し焦らすのではないでしょうか」

「堕落させたくない葛城と、使えるものは使う坂柳か。らしいな」

「ふふ、今回は差はありませんが私が勝つところを見せてあげます」

 

 現状であれば優劣はつけがたい。しかしこの超攻撃型お嬢様が負けるとは考えにくいな。

 

 俺が勝つことに変わりないけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 坂柳を連れ、待ち人がいる図書室に着いた。

 道中は坂柳が話題を提供してくれるため無言にならずにすんだが、自分から話しかけることが出来ないのがなんとも情けない。モテる男は女の子を退屈にさせないというし、今度橋本に弟子入りしよう。

 

「なにやら騒がしいですね」

「いつもより生徒が多いからな。揉めることもあるだろう」

 

 普段ならば人も疎らで静かな空間である図書室が、試験も近いことからか今日はやたらと賑やかであった。なにやら奥の方で騒いでるみたいだけどどうしたんかな。

 近づいてみればよく知る姿がそこにはあった。なに、お前当事者だったの?

 

「ひより、この騒ぎはどうした」

「ハルくん」

「げ、天笠と坂柳!」

「おいっ、もう行くぞ!不良品どももせいぜい頑張るんだな!」

「んだとコラァ!」

 

 小物じみたセリフを吐いてどっか行った奴らが騒ぎの元か?言動からしてCクラスっぽいけど。

 

「にゃはは〜……私だけで鎮めようと思ってたんだけど、天笠くんが来てくれたおかげで助かっちゃったね」

「あっちが勝手に逃げただけだ。それで、何があったんだ?」

「実はね……」

 

 一之瀬が説明してくれたが、ふーむ、番外戦術ってやつか。龍園らしい、小賢しいことを考えるな。こっちに害を及ぼせば今度こそ潰しておこう。

 てか一之瀬近い、パーソナルスペースどうなってるの!?可愛いしいい匂いだしおっぱい大きいし天使すぎる。もう好き……

 

「一之瀬さんも天笠くんもありがとう!」

「友達が困ってたら助けるのが当たり前だよ〜」

 

 なんか可愛い子が増えた。一之瀬と知り合いっぽいけど類は友を呼ぶってやつ。てか美少女が多すぎるんだよねこの学校。これ程までに入学出来たことを感謝したことはない。神様仏様ひより様!

 

「改めて、はじめまして!わたしDクラスの櫛田桔梗っていいます。友達をいっぱい作ることを目標にしてるから、天笠くんもよかったら連絡先交換しましょ!」

「知ってるみたいだがAクラスの天笠陽輝だ。よろしく」

「天笠くんは有名だからね!知り合えて嬉しいよっ」

 

 マジか何で有名なのか気になる。「あいついつもキョドってるよね〜」「それ、ウケる!」とかだったら泣く自信あるぞ。

 てかこの子グイグイくるね。心臓に悪すぎる。ひよりが緩衝材になってくれればいいんだけど、なんか坂柳と話してるし。

 

 一旦男子の方へ退避!

 って思ったけど4人中2人は睨んできてるし1人はキレ散らかしてるしで、なにこのアウェー感。実質1人しか選択肢ないじゃん。Dクラス怖っ。

 しかもその1人はめちゃめちゃ見てきてるし。俺の顔になんかついてる?

 

「どこかおかしかったか?」

「いや、初めて見る顔だったからな、どこのクラスかと考えていた」

「ならよかった。Aクラスの天笠陽輝だ。よろしく」

「Dクラスの綾小路清隆だ」

 

 話してみたら普通にいい子だった。握手しようぜって手差し出したら握り返してくれたし。

 

 でも手を握った感じ、思ったよりもガッシリとしていた。着痩せするタイプか?とりあえず身体能力は注意した方がいいだろう。

 やはり未知数なDクラス、関わりを持つならこいつだな。

 

「綾小路も連絡先を交換しよう」

「わかった。よろしく」

「友達が1人増えて嬉しいよ」

「俺も同じだ」

 

 満足気な顔で端末を見てる姿からは脅威を感じない。普通にいい奴じゃん。ごめん裏の意図があって……すまん……今度橋本たちと一緒に遊ぼうな。

 

「試験範囲が違うですって?」

「うん、間違いないよ」

 

 綾小路と親睦を深めていればなにやら問題が発生したみたいだ。Dクラスの1人が血相を変えて図書室を出て行った。

 にしても試験範囲を正しく教えていない茶柱先生は何の意図があってそうしたんだ?

 自分の持ちクラスをこれ以上下げても意味ないだろうが、わざと追い詰めているように感じる。

 

 もしそうであるならば正攻法では全員を救えることは出来ない。生徒たちがそれを理解し裏道を探させようとしているのか?

 考えすぎかもしれないが、担任も含めて厄介だな。警戒するに越したことはない。

 

 坂柳はクラス内のみに目を向けている印象だが、油断していれば万が一もありえるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

「あなたが椎名ひよりさんですね。はじめまして、坂柳有栖です」

「椎名ひよりです。()()ハルくんがお世話になってるそうで」

 

(おや?……なるほど、そういう事ですか)

 

 天笠くんがDクラスの方と一之瀬さんと会話しているのを尻目に、椎名さんとコンタクトをとるが、なかなかどうして面白い。

 

()()()()は優秀な方ですからね。頼りにさせてもらっています」

昔から1番に拘る癖がありますから。そちらのクラスでも変わらないみたいですね」

 

 独占欲は強いようで、少しでも関係性を匂わせれば眉を釣り上げて対抗してくる。

 

 しかしなるほど、昔から。

 天笠くんが自然に振る舞える異性なのだから、親族か昔馴染みとの予想は当たっていると見ていい。

 

(椎名さんを利用して天笠くんを手に入れようと考えてましたが、逆の方が面白そうですね)

 

 後に会った者に最愛の人が盗られた時、果たしてどんな反応をするのか。

 

「私、欲しいと思ったものは絶対に手に入れる質なので」

「昔から、好きな本は大事にだいじに保管しておくんです」

「あら、読書好きなのですね」

「そうなんですよ」

 

 微笑みながら互いに牽制を入れていく。この人には負けないという強い意志が感じる。

 

 ああ、そうだ。闘争というのはこうでなくてはならない。このピリついた空気感。互いに譲らない意志を持ってぶつかり、そしてそれに勝利するからこその至福。

 

「連絡先を交換しましょう。今後お役に立つかもしれません」

「ハルくん経由は手間がかかりますからね」

「ええ、陽輝くんに迷惑をかけないようにですね」

「ふふふっ、そうですね」

 

 目的は同じ。どちらが早く手にするかのレース。参加者は今後増えるかもしれないが、平凡な者は相手にならない。

 

「ひより、坂柳も帰るぞ」

「今日のお夕飯はどうしますか?」

「陽輝くん、私もご一緒してもよろしいですか?陽輝くんの手料理が気になります」

「えっ、名前」

「どうかしましたか?」

「いや、まあいいけど」

 

 彼を間に挟み3人並んで寮へ向かう。

 外は夕焼けで真っ赤に染まっていた。

 

「坂柳さん、お身体が悪いのであれば無理はいけませんよ?」

「心配ありがとうございます。ですが大丈夫です」

 

 たとえスタートが遅れていたとしても、1番は譲らない。

 




綾小路(こんな奴がAクラスにいるのなら、堀北は厳しいな……それに友達だと言ってくれたいい奴だ。俺の青春はここから始まるかもしれない。いや絶対そうだ)
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