彼女を作りたい   作:入力速度を考慮して

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 中間試験が無事に終わった。

 過去問があるためみんな上々の結果に終わったが期末試験はこうはならないだろうから頑張ってほしい。

 

 試験期間中に変わったことと言えば坂柳から下の名前で呼ばれるようになったことだ。なんで??

 あとは綾小路から過去問の有無を聞かれたのでPDFファイルを投げといた。恩を売るにも丁度いいしAクラスの面々にも他クラスを警戒して欲しいからな。戸塚とかは要注意だ。

 

 月が変わりポイントも変動した。

 

 Aクラス 1056pt

 Bクラス 703pt

 Cクラス 492pt

 Dクラス 87pt

 

 どこのクラスもポイントは増えているが、Dクラスの変位は目を見張るものがある。今回はサービスしたがこれからは手助けを極力控えよう。退学者を1人救った奴がいるようだしな。

 

「で、なんでポイントが振り込まれていないの?」

「なぜ俺に聞く」

 

 そして、どうやらこの学年は平穏を嫌っているらしい。

 特別試験がないのに問題を起こすとは。

 

「オイオイ、俺の大親友にしてこのクラスのスーパーウルトラミラクルナイスガイなお前にもわからない事があるとはなあ」

「……CクラスとDクラスが揉めている」

「ほら、知ってるじゃん」

 

 綾小路から連絡が来てたからな。

 橋本が言うように1年生のポイント配布が遅れている。原因はやはりと言うべきかDクラス周辺だ。

 

 この際、危険分子を炙り出すのに使ってしまうか。手伝いを要請されても見かけ上だけ取り繕って観察に徹する。この件が解決出来なければそれまでの集団だ。

 

「それで、誰に聞いたの?堀北さん?」

「誰だそいつ」

「あの美少女をご存知ない!?……あっ、お前には可愛いかわいい椎名ちゃんがいるもんな」

「椎名さんはただの幼馴染ですよ。勝手なことを言ってはいけませんよ?」

「そうだが、なんで坂柳が知っている」

 

 過去問に気づき、ポイント制度を熟知している者を見極めてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 彼と出会ったのは、偶然(必然)だった。

 

 明るく物怖じしない人が集まった私のクラス。その中でみんなの輪に入らない子がいた。その子に声をかけたのが全ての始まり。

 

『椎名さん、でいいのかな?私は一之瀬帆波!よろしくねっ』

『椎名ひよりです。よろしくお願いします』

 

 孤立しがちな彼女を心配に思い積極的に関わっていたが、それも必要なかったかもしれない。

 クラスメイトもいい子が多く、彼女自身容姿が優れているためクラスのマスコットのような位置におさまった。頭もよくて勉強を教えてもらっている子も出てきた。順風満帆な滑りだしだったと思う。

 

 そんなある日。

 話の流れでポイント制度の事について議論していたが、彼女が「その事をよく理解しているであろう人物を知っている」と言って会わせてくれることになった。

 

 それが彼だった。

 

『天笠陽輝だ。ひよりが世話になっている』

『ど、どうも』

 

 初めはかっこいい人だなあ、なんて思っていたが、彼の考察を聞いていくうちに印象は変わっていった。

 自分と同じ新入生、だがこの学校の謎に誰よりも深く理解を示しているのではないかと思える叡智。それが自分の罪を明かすことになるなんて思いもしなかった。

 

『先も述べたように、この学校は優秀な者からクラスが割り当てられると予想している。この予想が正しいならば一之瀬がBクラスに居ることが不思議でならない』

『……えっ?』

『ひよりからは学業優秀、品行方正だと聞いている。運動が壊滅的に苦手だと言うならまだわかるが、それでも俺のクラスの戸塚よりは全体的に優れている』

『い、いやあ、照れるなあ……なんて』

『ハルくん?そこまでにしておいた方が』

『他の何かがマイナス要素になっているのか?考えられるのは過去の内申くらいだが、何を見落としているのだ』

『ハルくん!一之瀬さんの様子が!』

 

 身体が震えてしょうがなかった。

 私が犯してしまった罪。

 こんなにも早く知られてしまうなんて。

 

 いや、それも甘えだ。罪には罰を。当たり前なことが起きてしまっただけだ。

 自分の罪と向き合わずに逃避し、誰も知らない場所で一からやり直そうとした、浅はかな私に対する罰なのだと思った。

 

 それから、2人には自分の過去を打ち明けた。

 知って欲しくない。でも、聡明な彼はいつか気づいてしまうだろう。ならば自ら懺悔した方が潔い。

 それだけの理由だった。

 

『ごめんなさい……こんな犯罪者が同じ学び舎にいて欲しくないよね……』

『いや、初対面なのにデリケートな話をしてしまった俺が悪かった。すまない』

『ハルくんは要反省ですね。それに、()()()()()。私は貴方がいてくれた方が嬉しいですよ』

『えっ……?』

 

 軽蔑されると思っていた。どんな罵詈雑言が吐かれてもおかしくないと思っていた。

 でも、違った。

 

『過去に犯した罪は消えない。それは正しいかもしれない。だが、償った罪まで背負い込むのはよくない。人は、間違えるがそれを改め進む事ができる生物だ。それに、家族のことを想う気持ちは誰にも否定させやしない』

『私は今の帆波ちゃんしか知りません。過去がどうであれ、今の帆波ちゃんは尊敬に値する人物です。その人を誇りに思うことは間違いじゃないって胸を張れます。無責任かもしれませんが』

『でもっ、それでも……っ』

 

 こんな事を言ってくれるのは2人が心優しいからであって、私が許されている訳じゃない。それはわかっている。

 でも

 

『それでも自分を許せないというなら』

 

『俺たちが許そう』

『そういう事です』

 

 限界だった。涙が溢れてとまらない。

 こんな私でも、許してくれる人がいる。それだけでこんなにも救われた気持ちになれるなんて。

 

 それから私が落ち着くまで2人に慰められ、ご飯も一緒にいただいた。

 ひよりちゃんとはこれまで以上に仲良くなったと思う。初対面の私にここまでよくしてくれる天笠くんは天の遣いなのかなって思ったり。

 

 でも、まだ自分のことを許せる気ではない。そんな日が来るとは思っていなかった。

 

 それでも

 

 1歩だけ、前に進めた気がした。

 

 

 

 

 

「帆波ちゃん、行きますよ」

「うん、天笠くんが待ちくたびれちゃったら申し訳ないもんね」

 

 ひよりちゃんの声で現実に意識を戻される。そうだった。Cクラスに対抗する為にAクラスにも協力を求めないといけないんだ。

 うん、ちゃんとしないとねっ。

 Aクラスの中でも頭1つ飛び抜けた存在。彼ならばこの事件を丸く収める方法を思いつくだろう。

 Dクラスのみんなを引き連れてる足が速くなってしまうのは、きっと気のせいだ。

 

「お待たせっ、天笠くん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

「それで、殴ってしまったと」

「Aクラスに目撃者がいるならば教えて欲しいのだけれど」

「目撃者は期待しない方がいい」

 

 また、女子の知り合いを増やしてしまいました。

 DクラスとCクラスの騒動を解決すべく、ハルくんにお手伝いしてもらっていますが、それでも納得いきません。平田くんや綾小路くんではダメだったのでしょうか?

 いや、私の感情だけでそのような事を言ってはいけませんね。堀北さんも十分優秀ですし、この事件の行く末を任せるに足るでしょう。それにハルくんに見蕩れたりしてないのは安心感があります。

 ひと時の苛立ちで私の株を下げないようにしないと。

 

 しかし、こんなにもムカムカするのは先程来たこのメッセージが原因でしょう。いや、そうに違いありません。

 

『今回は私の陽輝くんを貸してあげます』

 

 何が私のだ。

 どうやら彼女は買ってもいない商品を自分のモノと勘違いするような人のようですね。高校生にもなってそんな当たり前の事が理解出来ていないなんて……Aクラスに相応しくありませんね。

 悪影響を及ぼす可能性があるのでハルくんの近くにいて欲しくもありません。どうにかして彼女から離さなくては。

 

「ひよりちゃん、私たちも行くよ〜」

「……はっ。すみません、ボーッとしてました」

「事件現場に今から行くよっ。実況見分ってやつだね!」

「了解しました」

 

 どうやら話も進んだらしく、現場を見て何か手がかりを探すようです。

 ですがこう言ってはなんですが、何も見つからないと思います。

 私がもしもCクラス側であれば、自分たちから仕掛けておいてそれの裏を盗られる様なものを残さないからです。

 そうなるとこの行為には違う意図がある事になりますが、それもハルくんを見ていればわかります。

 

 現場についたハルくんは素早く周囲を確認し、その後視線を一点に止めました。綾小路くんを見ているようですが何故でしょうか。

 天井を見た事に意味があるなら、監視カメラの有無を確認したのですかね。

 

 まあ、ハルくんは今回は何もしないでしょう。何かを見定めようとしている感じです。

 坂柳さんとは違ってハルくんの事なら何でもわかりますから間違いないです。やはり私の勝利は揺るぎません。

 

「天笠くんは何か気づいたかにゃ?」

「……いや、ここが暑いということくらいしか思いつかないな。期待してもらって申し訳ない」

「いやいや、大丈夫だよっ。確かに暑いね〜、溶けちゃいそう」

 

 まあ、私も気づいておきながら言いませんが。帆波ちゃんのようにいい子ではないのです。それよりもハルくんが警戒しているであろう綾小路くんを観察することが優先ですね。

 

 その後、改めてこの件のすり合わせをして解散になりました。

 今日は夕食後に読書をして、わざと寝落ちする手にしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 結局、あの後はAクラスで目撃者がいるかを聞いただけで静観していたが……事件はCクラス側が訴えを取り下げたことで終結した。

 

 あんなにも勢いがあったCクラスが落ち着くということは決定的な証拠があったか、もしくは自分たちも痛い目を見ると判断したか。

 

(あの時、綾小路は真っ先に天井を確認していた。監視カメラが無いことに気づき、それを利用したとなると……)

 

 綾小路清隆は要注意人物として見ていい。何を間違ってあいつがDクラスにいるのかはわからないが、ダメもとで先生に聞いてみるか。

 

 そして今最も問題なのが

 

「……間違いであればいいのだが、心なしか坂柳の機嫌が悪いように感じる」

「よくぞお気づきで。どうやらある男子の部屋から朝方に女子が出てくるのを見た方がいるようでして」

「それは大変だー。風紀が乱れているな〜」

 

 この野郎、ひよりが泊まっていった次の日に会ったのはお前だけだぞっ。

 

「橋本お前……っ。いや、ひよりは幼馴染だから問題はない」

「問題大ありですよ。Aクラスともあろうものが風紀を乱しているのですから。これは罰を受けませんと」

「俺は飯奢ってくれればいいぞ」

「私たちだけで情報は止めてるのですから感謝してください。今度のお休みに私の荷物持ちをお願いしますね?」

 

 なんで???

 




ひより(運よく人に見つかりました。これで私とのウワサが流れれば他の子に対する強い牽制になりますっ)ニコニコ
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