彼女を作りたい 作:入力速度を考慮して
多くの感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
想像以上の反響に嬉しい限りです。
初めての作品なので通知欄を確認してませんでしたが、これからはこまめにチェックしていきます。
期末試験はキンクリしました。
夏。
日差しが強く、1年で最も暑い季節。
学生にとっては長期休暇があるため好きな人も多いのではないか。
高度育成高等学校に通う俺も例外ではなく、目出度く夏休みに入っていた。
「天笠、デッキにプールあるぞ!」
「坂柳側に誰が付いていくかよ。天笠さん!あっちのバイキング美味しそうです!」
「いや、ここは映画を観て精神を落ち着かせるべきだ。幸いにも俺オススメの『シャーク
「待て、どれも楽しそうだ。順番に廻るぞ」
そして今、豪華客船に乗って船旅を満喫している。
この学校に入って本当によかった。
『それで?私の連絡を無視していたのは、浮かれてはしゃいでいたから、と』
「いや、これは新たな戦場となるであろう場所を偵察していたんだ。勘違いしてもらっては困る」
プールで遊び、食事を楽しみ、他に何をしようかと考えていたところ着信に気づいた。
無視しようかと思ったが、橋本に出ろって言われたからしょうがなく取ったが……激おこプンプン丸じゃないか。後で履歴を確認しよう。
『笑顔で遊び回っていたとのタレコミがあるのですが』
「擬態だ。他のクラスを欺くためにはそうする必要があった」
そう、決して自分の欲を満たす為に遊んでいた訳ではない。地理の把握や人目がつかない場所を探しているついでだ。そこにあったものを経験するのも仕方がないことだ。うん、しょうがない。
クラスメイトすら騙してしまう演技力、自分が怖いぜ。
『私は一人寂しくお留守番しているのですが』
「ハルくん」
「すまん坂柳、人に呼ばれたからまた後で連絡する」
『は?ちょっとまっ……』
「お前、なんて事を……うわっ、俺にかかってきた」
ひよりが来てくれて助かった。あのままでは分が悪いからな。
いや、俺は何も悪いことはしていないし負けてもいない。戦略的撤退だ。
橋本には悪いが何事にも犠牲は必要だ。お前の陣営の姫なのだから頑張ってご機嫌取りしてくれ。
「何か用があったか?」
「はい、私もたまにはクラスのために動かなきゃですからね」
「試験のことか。坂柳が居ないからな、Aクラスは葛城が筆頭となって動くはずだ」
「それがわかれば十分です。では、また後ほど」
それだけの為に俺を探していたのか?いや、タイミング的には有難かったが。てっきり部屋で読書ばかりしていると思っていたが、クラス貢献もしっかりしているらしい。
俺も遊んでばかりいないで、綾小路を探しに行くか。
◆◇◆◇◆◇
「綾小路」
天笠陽輝。東京都高度育成高等学校1学年Aクラス在籍。
初めての邂逅より情報を集めていたが、なるほど、Aクラスに相応しい人物だ。
今までテストと名のつくものは全て満点。他を圧倒する運動能力。人柄もよく、Aクラスの2トップが取り合うのもわかる。俺の友達だしな。
「単刀直入に聞く。お前の目的は何だ」
ペーパーテストで測れない知性もある。Aクラスを目指す上で、壁のひとつとなるのは確定的だ。
「入学試験、全教科で50点を取っているのは知っている。過去問に気づき、Cクラスとの問題を解決したのもお前だな?」
「個人情報が全然守られてないな」
「ポイントは便利だからな。退学者を救ったお前も知っているはずだ」
過去問の事を直接聞いたのは失敗だったな。目をつけられるのがもう少し後であったら他にもやりようがある。しかし、友人を頼ってみる事をしてみたかったし満足だ。
「俺は、俺の自由が守られるならば何でもいい。その為に勝利が必要だと言うならば、最後に勝っているのは俺だ」
「なるほど。負けるのは嫌いか?」
「ん?」
「俺は大嫌いだ」
負けることは嫌いではない。勝利に近づくのであれば喜んで負ける。
そこの点は違っているが、勝つ事が全てという点ならば同じだ。
「似たもの同士だな」
「そうだな。これからはライバル兼親友として、よろしく」
「ああ」
伸ばされた手を握り返す。
俺の邪魔をするのであれば叩き潰すまでだが、それはそれとして親友を大事にするのは別だ。
夏休みには遊びに誘ってみよう。
◆◇◆◇◆◇
綾小路と別れた後は橋本たちAクラス集団に合流した。疲れた顔をしているが何かあったのだろうか?
「お前、この旅行が終わったら覚悟しておいた方がいいよ。マジで」
その時は綾小路をダシにして逃げる。
「おい、島だ!」
男子連中で駄べりながら外の景色を見ていたとき、誰かが叫んだ。それと同時に船内にアナウンスがかかる。
やはり勉学以外も評価に入れていたか。この試験で各クラスの能力の幅がハッキリとするはずだ。
先程綾小路に啖呵を切った手前、無様に負けるなど有り得ない。
続々と集まる生徒の中に、葛城の姿を発見した。
「天笠」
「葛城、お前が今回の指揮を執るならばしっかりと見ておけよ」
——試験が、始まる。
島に上陸し真嶋先生から特別試験の説明があったが、重要な内容はリーダー当てについての事くらいだな。
上手くいけば自クラスに+150、他クラスに-100のクラスポイントを与えられる。最悪なのは自分たちのリーダーを当てられ、他クラスのリーダーを外し-300になること。
これさえ頭に入れれば問題ない。それよりもこの試験は最初が肝心だ。さっさと行動しなければ他クラスと大きく離されてしまう。
「葛城、拠点は何処にするんだ?」
「俺たちは洞窟に向かう」
あそこか。篭れば他クラスに見つからない立地だし問題ないな。
「場所は把握している。俺は先に食料を探しに行くが構わないか?」
「天笠なら大丈夫だと思うが、気をつけてくれ」
許可も取ったし、森を散策する。先生に袋は貰えるか聞くのを忘れない。幸いにも0ポイントで手に入った為、他の何かにも使えるかもな。
国が運営するこの学校のことだ。生徒に危害が加えられる可能性があるものは排除しているはず。そうでなければ生徒を優劣つけている運営側が無能の烙印を押されてしまう。
この島に危険な動植物はいないと見ていいが、一応警戒しておく。
まず探すのは水辺だ。飲料水の確保にも、植物の生育にも欠かせない。それさえ見つければ後は芋づる式に食料が見つかる。
上陸前に島の周囲を巡航していた時に河口を見つけていたから、そこを目指せばいい。
足元に気をつけながら移動すること十数分、目当ての川にたどり着いた。
見た目は透明で異臭もしない。国の手が入っていることを前提に口をつけてみるが、水質にも問題はなさそうだ。後でお腹が痛くなったらヤバいけど。
作物があるならこの周辺だと判断し重点的に探すこと5分。
「まさか、無人島に畑があるとはな」
人の手が入った島である事は確定した。一先ず収穫出来るだけ袋に詰め、この場所を忘れないようにして洞窟に向かう。残りは後で何人か連れてくれば大丈夫だ。
そういえば坂柳陣営は静かだったな。頭領が居ないからか、はたまた何らかの指示が出されているか。クラスを陥れるような真似をしなければ放置でいいか。
まあ、葛城は慎重派だから変な判断はしないだろうな。
「天笠。俺たちAクラスは、Cクラスと同盟を結ぶ」
は????