心を無くした男と、嘘つきな王サマ 作:朝霧=Uroboross
どうも、皆さんお久しぶりです。
今回は虚映の追想回みたいなのなんですが、ちょっと、というかだいぶ鬱成分とグロテスク成分高めなので、苦手な人は流し読みか、ブラウザバック推奨です。
あと久々なので、オベロンのキャラがフワッと、中身がぐだっとしてきてます。申し訳ない……。
──夢だ。誰かの、夢だ。誰かは解っているが、
灰色の世界だった。色のない、死後の世界があるのならば、まさにこの通りの世界なのだろう。命の流れが感じられない、色褪せた世界。
────彼は独りぼっちでした。ずっーとずぅーっと、独りぼっちでした。助けを求めても、救いが欲しくても、誰も助けてくれず、誰も救ってはくれませんでした。
どれほど努力しても、どれほど功績を重ねても、誰も彼を見ずに、その血と汗を流した日々を知らず、褒められることも、祝福されることもありませんでした。
彼は、神様にすら見棄てられてしまったのです。
『オマエ、ほんっとつかえねー』
『おもしろくなーい』
幼少期、彼は年を経るごとに、一人になっていきました。だんだん、だんだん、周りには誰もいなくなっていきました。
そうして年月は経ち、少年となりました。
『アイツだよ……』
『うわぁ、ないわぁ…』
彼は、一人は嫌でした。なので、仲良くしようと、明るく接していきました。けれど、彼に返ってきたのは、侮蔑と差別と、そして嘲笑でした。
彼は、人を信じることをやめました。彼は、人と共に歩むことをやめました。彼は……ヒトを憎みました。
『でさー……そうそう……』
『えー?……それさー……』
『……………』
彼は一人でした。彼は独りでいました。彼は、独りが心地好くなっていました。
助けを求めた"
誰にも救われず、誰にも見向きもされなかった彼は、次第にねじ曲がっていき────遂にはその歯車すらも、狂ってしまいました。
『ゲホッ……いやぁ、はは……ここまでかね…』
少年は青年となり、夜の街で独り、赤い染みを洒落た服につけて、灰色の壁にもたれかかりながら空を仰いでいた。
その歩んだ道のりは、常道のものではなく、取り付く島を喪った、憐れな漂流者の成れの果て。殺しに殺し、その果てに砕け散った決意の先。殺戮にのみ、己の生ける道を見出した、愚者の末路。
『ははっ……ロクでもねぇ、な……』
こうして、灰色の世界を生きた男は跡絶えた────
「────はッ、はぁ……なんだよ、コレ…」
気持ち悪い、吐き気がする。なんだ、アレは。あんなもの、妖精國の奴らの方がまだマシじゃないか。いや、どっちもどっちだけどさ。
侮蔑と差別と嘲笑と、血と殺戮と狂笑と。あの狂ったニンゲン共の世界で、まるで自滅を望むかのように、笑ってアイツは死んだ。
「──それが、オレの前世さ。オベロン」
「……前世、ね。俺のマスターだからロクでもないと思ってたけど、予想以上だったよ」
「言うねぇ。まぁ……実際そうだったけどな」
へし折れて倒れた十字架の上に、自嘲染みた笑みを浮かべる"
正直、不愉快だった。でも、どこか腑に落ちた。彼の異常性は、ここから来ていたってわけ、ね。
「それで?いつまで続くのさ、コレは」
「さぁ?わかんね。てか、解ってたら苦労しねーよ」
うーん、こうやって相手するとつくづく感に障るなぁ。まぁ別にいいけどさ。俺としては、マスターがどういう奴であろうと、
「そら、また続きが来るぞ。見たくもないけどな」
「それは同感」
──くるくるくるくる、まわる"
いきつく先は、"
──むかーし、むかし。あるところに、声をあやつる一族がいました。彼らは声をつかって、いろんなことができました。
けれども、ある時からそれができなくなりました。こまった彼らは、しかたがないので、自分たちのからだをいじりはじめました。
それでもダメだったので、こんどはダレカのからだをいじっていきました。声をあやつる力がほしくてほしくて……
────そのうち、彼らはしたかったことを見失ってしまいました。
そんな彼らに、とあるこどもがうまれました。彼らはおおいによろこびました。『これでようやくとどく』、『これでとどいてみせる』と。
けれども、その願いはかないませんでした。
こどもは、彼らからの愛情が、つくりものであるとわかっていました。わかってしまいました。
だから、こどもは彼らを殺しました。
こどもは知っていました。彼らの目の中になにがあるのかを。
こどもは知っていました。彼らが、本当は愛情なんてないことを。
こどもは知っていました。彼らから与えられるのは、全て自分のためではないことを。
子供じゃないコドモは、知ってしまいました。
──ここでも、自分が求めたものはないのだと。
だから、コドモは殺しました。助けを求めるコエに対して、『お前達もやってきたじゃないか』と。
だから、殺しました。『誰も助けようとしていなかったろうに』と。
だから、殺しました。『充分殺し尽くしたんだから、今度はアンタらの番だよ』と。
屍の山を築いた、虚ろを映す少年は、やがて死を笑う道化師になりました。
そうして彼は、無差別な
死に意味は無く、追い求めることは徒労であり、努力にもまた価値はなく。自らに愛する資格はなく、また愛される資格もなく。愛を嗤い、情を嗤い、嗤いわらって遂には何もなく。
空っぽの伽藍堂は、何かを想うこともなく、童話のような暖かさは飾り物で、英雄譚のような明るさは仮面で。
どうしようもないほどにまで狂い堕ちた彼が願うのは、『ただ、独りでいること』だったのです。それこそが、彼の求まる救いだと信じて────。
「──前世でお前のことを知ったのは、手慰みにゲームをしていた頃さ。しびれたよ、憧れたよ。けれど、それはアンタに対しての侮辱に他ならない。
だから、お前が"ニンゲンを嫌悪する"のなら、オレは"ニンゲンを嘲笑う"。お前が"ニンゲンは気持ち悪い"と言うのなら、オレは"ニンゲンは面白い"と言おう。
それがオレ。『朝露 虚映』にして『アルレッキーノ』というニンゲンさ」
あぁ、そうか。オレが人間や妖精達に対して"気持ち悪い"と思ったのに対して、コイツは人間達に対して"無関心"なのか。手を出されたからやり返す、ソイツがやったから仕返す、ただそれだけ。
俺が『ブリテン島の自滅願望』からうまれたなら、コイツは『人類が造り上げた自滅装置』。いずれコイツは、人間共の積み重ねた罪の数だけ殺し尽くすであろう、粛清者になる。
酷い話だ。否定して、否定して、己の思うがままにしようとして、結局は自滅のための粛清機構を造り上げてしまうなんてね。まるで妖精國の妖精たちみたいだ。
「どうだい?オベロン。オレも随分と"くだらない"だろう?」
「……はぁ」
……全く、どうしてこのマスターはこうなのかな?ま、境遇を考えたら仕方ない、か。
くだらない、本当にくだらない。身勝手なエゴを押し付ける、気持ち悪いあの人間共と俺を一緒にしないでほしいよ。
「マスター。敢えてそう呼ばせてもらうよ。俺は基本的に、全てどうでもいいんだよ。君の過去も、経験も、俺からすればどうでもいい。
けど一つだけ、本心で聞かせてもらう。
──アンタ、今楽しいんだろう?」
「──────」
マスターの目が見開かれる。なに?解ってなかったとでも言いたいのかな?
確かに、今までのマスターの人生はドン底もいいところ。暗い穴の底、まさに奈落の穴を落ちていっているに相応しいほどだ。
けれど、俺と共にいるときのアンタは、憎たらしいほどにまで楽しんでいただろう。初めはメンドクサそうにしてたけど、それでも俺と一緒のアンタは生き生きとしていた。
「隠すなよ、だったらそれでいいじゃないか。俺とアンタで、最高のシナリオを書いてやって、"
────『ザマァみろ』ってさ」
「──ぷっ、あっははははは!!いいね、それ最ッ高。中指立てて嗤ってやらぁ」
そうそう、こうじゃないとね。確かに、俺は汎人類史だって、何であれ気持ち悪いとしか思えないさ。
けれど、マスターだけは。アンタだけは、気の知れた悪友とでも言うのかな。そういうものを、感じている。まぁ、死んでも口には出さないけど。
「さぁ、そろそろ夢の終わりだ、マスター。いけるかい?」
「当たり前だろ、誰にものいってやがる。とことん引っ掻き回してやらぁよ」
間もなく、夜が明ける──────。
ちなみに、この裏ではセイバーvsランサー戦、つまり『ディルムッドの怨み』が行われています。
あのディルムッド、充分アヴェンジャー適正ありそうだよなぁ……くわばらくわばら……。