心を無くした男と、嘘つきな王サマ   作:朝霧=Uroboross

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どうも、皆さんお久しぶりです。

今回は虚映の追想回みたいなのなんですが、ちょっと、というかだいぶ鬱成分とグロテスク成分高めなので、苦手な人は流し読みか、ブラウザバック推奨です。

あと久々なので、オベロンのキャラがフワッと、中身がぐだっとしてきてます。申し訳ない……。



オベロン②:記憶

 

 

 ──夢だ。誰かの、夢だ。誰かは解っているが、だれか(・・・)は判らない。

 灰色の世界だった。色のない、死後の世界があるのならば、まさにこの通りの世界なのだろう。命の流れが感じられない、色褪せた世界。

 

 

 

 

 

 

 

 ────彼は独りぼっちでした。ずっーとずぅーっと、独りぼっちでした。助けを求めても、救いが欲しくても、誰も助けてくれず、誰も救ってはくれませんでした。

 どれほど努力しても、どれほど功績を重ねても、誰も彼を見ずに、その血と汗を流した日々を知らず、褒められることも、祝福されることもありませんでした。

 

 彼は、神様にすら見棄てられてしまったのです。

 

 

 

 

『オマエ、ほんっとつかえねー』

『おもしろくなーい』

 

 幼少期、彼は年を経るごとに、一人になっていきました。だんだん、だんだん、周りには誰もいなくなっていきました。

 

 

 そうして年月は経ち、少年となりました。

 

『アイツだよ……』

『うわぁ、ないわぁ…』

 

 彼は、一人は嫌でした。なので、仲良くしようと、明るく接していきました。けれど、彼に返ってきたのは、侮蔑と差別と、そして嘲笑でした。

 彼は、人を信じることをやめました。彼は、人と共に歩むことをやめました。彼は……ヒトを憎みました。

 

 

 

 

『でさー……そうそう……』

『えー?……それさー……』

 

『……………』

 

 彼は一人でした。彼は独りでいました。彼は、独りが心地好くなっていました。

 助けを求めた"(ダレカ)"は、独りになっていくことを、気のせいだと言った。それは、お前の独りよがりだと言った。

 

 誰にも救われず、誰にも見向きもされなかった彼は、次第にねじ曲がっていき────遂にはその歯車すらも、狂ってしまいました。

 

 

 

『ゲホッ……いやぁ、はは……ここまでかね…』

 

 少年は青年となり、夜の街で独り、赤い染みを洒落た服につけて、灰色の壁にもたれかかりながら空を仰いでいた。

 その歩んだ道のりは、常道のものではなく、取り付く島を喪った、憐れな漂流者の成れの果て。殺しに殺し、その果てに砕け散った決意の先。殺戮にのみ、己の生ける道を見出した、愚者の末路。

 

『ははっ……ロクでもねぇ、な……』

 

 こうして、灰色の世界を生きた男は跡絶えた────

 

 

 

 

 

 

 

 

「────はッ、はぁ……なんだよ、コレ…」

 

 気持ち悪い、吐き気がする。なんだ、アレは。あんなもの、妖精國の奴らの方がまだマシじゃないか。いや、どっちもどっちだけどさ。

 侮蔑と差別と嘲笑と、血と殺戮と狂笑と。あの狂ったニンゲン共の世界で、まるで自滅を望むかのように、笑ってアイツは死んだ。

 

「──それが、オレの前世さ。オベロン」

「……前世、ね。俺のマスターだからロクでもないと思ってたけど、予想以上だったよ」

「言うねぇ。まぁ……実際そうだったけどな」

 

 へし折れて倒れた十字架の上に、自嘲染みた笑みを浮かべる"虚映(マスター)"の姿。彼の言う通りなら、ここは彼の夢の中。もっと言えば、彼の『記憶』の中にいるってことか。

 正直、不愉快だった。でも、どこか腑に落ちた。彼の異常性は、ここから来ていたってわけ、ね。

 

「それで?いつまで続くのさ、コレは」

「さぁ?わかんね。てか、解ってたら苦労しねーよ」

 

 うーん、こうやって相手するとつくづく感に障るなぁ。まぁ別にいいけどさ。俺としては、マスターがどういう奴であろうと、契約の上(・・・・)では従うよ?そりゃあね。

 

「そら、また続きが来るぞ。見たくもないけどな」

「それは同感」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──くるくるくるくる、まわる"選択(ドア)"。

 

 いきつく先は、"奈落の底へ(ナベのなか)"────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──むかーし、むかし。あるところに、声をあやつる一族がいました。彼らは声をつかって、いろんなことができました。

 けれども、ある時からそれができなくなりました。こまった彼らは、しかたがないので、自分たちのからだをいじりはじめました。

 

 それでもダメだったので、こんどはダレカのからだをいじっていきました。声をあやつる力がほしくてほしくて……

 

 

 ────そのうち、彼らはしたかったことを見失ってしまいました。

 

 

 

 

 そんな彼らに、とあるこどもがうまれました。彼らはおおいによろこびました。『これでようやくとどく』、『これでとどいてみせる』と。

 

 けれども、その願いはかないませんでした。

 

 こどもは、彼らからの愛情が、つくりものであるとわかっていました。わかってしまいました。

 

 

 だから、こどもは彼らを殺しました。

 

 こどもは知っていました。彼らの目の中になにがあるのかを。

 

 こどもは知っていました。彼らが、本当は愛情なんてないことを。

 

 こどもは知っていました。彼らから与えられるのは、全て自分のためではないことを。

 

 

 

 

 子供じゃないコドモは、知ってしまいました。

 ──ここでも、自分が求めたものはないのだと。

 

 

 だから、コドモは殺しました。助けを求めるコエに対して、『お前達もやってきたじゃないか』と。

 

 だから、殺しました。『誰も助けようとしていなかったろうに』と。

 

 だから、殺しました。『充分殺し尽くしたんだから、今度はアンタらの番だよ』と。

 

 

 

 

 屍の山を築いた、虚ろを映す少年は、やがて死を笑う道化師になりました。

 そうして彼は、無差別な粛清(救済)も、無情な殺戮(研究)も、理想を体現した英雄(ヒトゴロシ)も。笑い嗤って、最後には自分を嗤うのです。

 

 

 死に意味は無く、追い求めることは徒労であり、努力にもまた価値はなく。自らに愛する資格はなく、また愛される資格もなく。愛を嗤い、情を嗤い、嗤いわらって遂には何もなく。

 

 空っぽの伽藍堂は、何かを想うこともなく、童話のような暖かさは飾り物で、英雄譚のような明るさは仮面で。

 どうしようもないほどにまで狂い堕ちた彼が願うのは、『ただ、独りでいること』だったのです。それこそが、彼の求まる救いだと信じて────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──前世でお前のことを知ったのは、手慰みにゲームをしていた頃さ。しびれたよ、憧れたよ。けれど、それはアンタに対しての侮辱に他ならない。

 

 だから、お前が"ニンゲンを嫌悪する"のなら、オレは"ニンゲンを嘲笑う"。お前が"ニンゲンは気持ち悪い"と言うのなら、オレは"ニンゲンは面白い"と言おう。

 

 それがオレ。『朝露 虚映』にして『アルレッキーノ』というニンゲンさ」

 

 あぁ、そうか。オレが人間や妖精達に対して"気持ち悪い"と思ったのに対して、コイツは人間達に対して"無関心"なのか。手を出されたからやり返す、ソイツがやったから仕返す、ただそれだけ。

 

 俺が『ブリテン島の自滅願望』からうまれたなら、コイツは『人類が造り上げた自滅装置』。いずれコイツは、人間共の積み重ねた罪の数だけ殺し尽くすであろう、粛清者になる。

 酷い話だ。否定して、否定して、己の思うがままにしようとして、結局は自滅のための粛清機構を造り上げてしまうなんてね。まるで妖精國の妖精たちみたいだ。

 

「どうだい?オベロン。オレも随分と"くだらない"だろう?」

「……はぁ」

 

 ……全く、どうしてこのマスターはこうなのかな?ま、境遇を考えたら仕方ない、か。

 くだらない、本当にくだらない。身勝手なエゴを押し付ける、気持ち悪いあの人間共と俺を一緒にしないでほしいよ。

 

「マスター。敢えてそう呼ばせてもらうよ。俺は基本的に、全てどうでもいいんだよ。君の過去も、経験も、俺からすればどうでもいい。

 けど一つだけ、本心で聞かせてもらう。

 

 

 ──アンタ、今楽しいんだろう?」

「──────」

 

 マスターの目が見開かれる。なに?解ってなかったとでも言いたいのかな?

 確かに、今までのマスターの人生はドン底もいいところ。暗い穴の底、まさに奈落の穴を落ちていっているに相応しいほどだ。

 

 けれど、俺と共にいるときのアンタは、憎たらしいほどにまで楽しんでいただろう。初めはメンドクサそうにしてたけど、それでも俺と一緒のアンタは生き生きとしていた。

 

「隠すなよ、だったらそれでいいじゃないか。俺とアンタで、最高のシナリオを書いてやって、"抑止力(アラヤ)"に言ってやれよ。

 

 ────『ザマァみろ』ってさ」

「──ぷっ、あっははははは!!いいね、それ最ッ高。中指立てて嗤ってやらぁ」

 

 そうそう、こうじゃないとね。確かに、俺は汎人類史だって、何であれ気持ち悪いとしか思えないさ。

 けれど、マスターだけは。アンタだけは、気の知れた悪友とでも言うのかな。そういうものを、感じている。まぁ、死んでも口には出さないけど。

 

「さぁ、そろそろ夢の終わりだ、マスター。いけるかい?」

「当たり前だろ、誰にものいってやがる。とことん引っ掻き回してやらぁよ」

 

 

 

 

 間もなく、夜が明ける──────。

 

 

 

 






ちなみに、この裏ではセイバーvsランサー戦、つまり『ディルムッドの怨み』が行われています。

あのディルムッド、充分アヴェンジャー適正ありそうだよなぁ……くわばらくわばら……。

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