心を無くした男と、嘘つきな王サマ   作:朝霧=Uroboross

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ミナサマー。朝霧でございます。いつも誤字報告ありがとうございます。毎度助かっています……いや本当に。

今回はセイバーvsバーサーカーpart2です。まぁ、オベロンはその性分上裏方メインなので、そう目立った活躍しないのがなんとも……w

あと、申し訳ないのですが、これからは個人的に忙しくなることもあって、更新がかなり遅れてしまうことが多発すらと思われます。
なるべく、最低限一週間に一話は投稿できたらいいなと思っておりますので、気長にお待ち下され。







ご愁傷サマ

 

 ────はぁ、呆れた。汎人類史のアルトリア……いや、"騎士の王(アーサー)"としてのアルトリアは、こんなにも脆いのか。これじゃ、あのカルデアの藤丸 立香(クソ野郎)の方がまだマシだったな。

 アイツの犯した行いを、その結末を象徴するヤツと一緒に見せつけてやっただけなのに。それでもうあんなに狼狽えている。あの愚かな女王(モルガン)よりもなおバカじゃないのか?

 

 ほら、力が全く入っていない。腰も引けている。それじゃあ全然ダメだ。だからそうやって追い込まれていく。これで"失意の庭"に放り込んだら、絶対戻ってこられないでしょ、彼女。

 

「はぁ……いつまで御上り気分なのさ、キミは。あぁ、そうか。騎士の誉れとかいうのがあるからじゃないかな?いっそ、彼みたく全部かなぐり捨てたら楽になるんじゃない?」

「……………」

 

 反応ナシ、ね。これはもうダメだな。精神が折れてる、立ち直りそうな見込みもない。アンタは、その程度なんだな。

 バーサーカーもさっきからずっと唸って叫んでばっかりだし、もういいだろ。さっさとマスターと合流して、この後(・・・)に備えないと。はぁ……全く、時間の無駄だったな。

 

『──────―』

「ん?」

 

 なんだ?これ。なんの──────まさか。クソッ、それは想定外(・・・)だ。そこまで脆いとは、考慮していなかった!

 

「(マスター、カリヤが墜ちた)」

『は?いや早くね!?まだ(こっち)やっと戦い始めるとこだぞ!?』

 

 あーもーッ、やられた!バーサーカーのマスター(マトウカリヤ)が先に参るとは。令呪ありきでの制御だと言うのに、よりにもよってこのタイミングで『夢幻』に墜ちるのかよ。なにも貧弱すぎるだろう!?

 そうだ、バーサーカーはどうなった────あぁ、殺ったのか。腹部の鎧を深々と突き抜けて、刀身の前半分が背中から生えているように見える。────やっぱり、魔力切れのバーサーカーじゃあ無理があったか。

 

 とは言え、それならそれで目的は達成した(・・・・・・・)と言えるし、後は細かい調整だな。流石に喚ばれたのが性急な状況なのもあって、あんまり準備できてなかったし。

 ──それで、彼女はこれでもまだ、聖杯を求めるんだね。憐れだなぁ……もうあの聖杯は、キミの望んだ聖杯ではないと言うのに。

 

「(予定が狂った……どうする?マスター)」

『とりま、セイバーの足止めだな。無茶有りきだが、コッチが終わるまでなんとか耐えろ。んで、頃合いみて"やられたフリ"だ。出来るな?』

 

 やれやれ、誰にものを言っているんだか。と言いたいところだけど、流石に厳しいものがあるかなぁ。別に彼女の相手をするのがキツいわけじゃないけど、後者の"やられたフリ"っていうのがどうにも……。

 バーサーカー ────騎士ランスロットと対峙するのが前の彼女なら、まだどうにかなったけど、今の彼女だと負ける方が難しい(・・・・・・・・)。けど、ここいらで退場しておかないと、また、厄介なことになる。さて、どうしたものか……。

 

「──感動のフィナーレなとこ悪いけど、まだ俺がいるのを忘れないで欲しいかな」

「……そこをどけ、ヴォーティガーン。私には、成さねばならないことがある」

 

 霊体化を解いて彼女の前、というか、上階へ行くための道に立ちはだかる。ホントはこういうの、柄でも趣味でもないんだけど。

 幸い、まだ偽装魔術は効果を示している。まだ彼女には、『汎人類史の"卑王ヴォーティガーン"』として映っているはずだ。そこだけが今のところ救いかな。

 

「俺にも"役割"があってね……解ってくれよ?俺だって、やりたくてやってるわけじゃないんだからさ」

「減らず口を……貴様だけは、ここで倒す!」

 

 んー、こりゃあ聞く耳すら持ってくれないか。ま、仕方ないか。一番信頼していた騎士が、自分のせいで狂ってしまって、更には仇敵と一緒にいるなんて。

 俺だって真底嫌になるね。って言っても、信頼できるやつなんて、そもそもいないけど。──あぁ、(マスター)は別として、ね?

 

 それを知ってか知らずか、彼女は未だ"偽装"させている聖剣を振りかぶり、俺に向かってくる。だから俺は、ここで新しい"武器"を見せつけてやった。

 

「なっ!?貴様、それは────ッ」

「いいだろう?『堕穢せし湖光(ケイオス・アロンダイト)』、まさしく君と彼の"()"というわけさ」

 

 目に見えて彼女の顔が歪む。当然も当然か。何せ、さっきまで対峙していた親友の剣が、今再び自らの壁となって現れているんだから。

 自分の行いのせいで狂気に陥った、最も信頼した騎士。それを自らの手で討って、なおその友の剣が敵も共に現れる……いやぁ、なかなか悪趣味なお話だ。これを考えたヤツは正気を疑うね。

 

「甘くみたかい?残念、俺だってコソコソしてばっかりじゃないんだから──さッ!!」

「ぐぁっ!!」

 

 何度も何度も、軽く振るわれる剣を打ち合わせ。そして、その剣擊のうちに競り合ったところを、剣を払いながら弾き飛ばす。まるで羽虫のように吹き飛ぶね、本当に大丈夫なのかい?

 それでも彼女は、その身に許される限り態勢を整えて、また俺に向かってくる。よくもまぁ飽きないものだねぇ。

 

「いやほんと、似合ってる似合ってるー。そうやって泥まみれになっている方が、割とお似合いなんじゃない?」

「黙れっ!貴様に……貴様に、私の何が解る!!」

 

 さぁ?そんなの知らないって。はぁ、ウンザリするなぁ……。マスターの方はどうなっているんだ?っと────へぇ、あの固有結界、破壊しちゃったんだ。ってことは、あのグルグルしてるのは、俺と同じ(・・・・)『対界宝具』ってワケね。

 そりゃアレを見ちゃったら、いの一番に警戒してしまうわけだ──────

 

「────Vorrrrrtigerrrrrn(ヴォォォォティガァァァァン)ッ!!」

「は?────ッ!?なんだよ、まだ生きてたのかよアンタ……ッ!」

 

 おいおいおい、流石にこれはびっくりだ。アンタ胴体貫かれてたじゃないか。それでもまだ動けた────いや違う、これは……!そうか、俺の『夢の終わり(スキル)』か!

 カリヤにかけたスキルの効果で、カリヤ自身がもう二度と目覚めることが無くなった。だが、底上げされた魔力だけは残って、なおも〈バーサーカー〉に注がれていたとすれば!

 

「────は、ははははは!いいね、最高(最悪)だ」

「Aaaaaaa────ワが、王ヨ……」

「ランス、ロット……」

 

 ははっ、マジか。これはたまげたな。この土壇場で自我を取り戻す?そんな奇跡ありかよ。ホント、ふざけてるだろ、コレ。

 けど、コイツももうギリギリ。俺と本格的にやり合える程の力は残っちゃいない。ならどうするか、そんなの分かりきってる。

 

 

 

 ────分かりきっているから、利用させてもらうよ。

 

 

「Aaa……ワが王よ、こコハ私ガ…。ハやく、サキへ……ッ!」

「行かせるかよ────"羽虫(モース)"共!!」

 

 一応、逃がさないという体でモース共を呼び出して、彼女へとけしかける。あぁ、もちろん、俺は〈バーサーカー〉とやりあってるから無理ね。うん、ムリ。

 さて、マスターから合図がかかるまで時間稼ぎといきたいけれど────稼げるか?コレ。うーん、時間を稼ぐだけだとちょっと難しいな。他も並行してなのもあって、割と難易度高いね。

 

『────〈プリテンダー〉、アーチャーが撤退した。足残すなよ』

「(了解)」

 

 どうやら、タイミング良くあっちも終わったようだ。それに、こっちも仕留める態勢に入ってるしね。彼女の方は……うわ、モース全部仕留めていったとか、正気?流石聖剣に選ばれた兵器サマ。やることが違うねぇ。

 っと、余所見してる場合じゃなかったな。こっちも集中しないと。ていうかあの構え、〈バーサーカー〉で持ってる宝具じゃないよね?あれは流石にマズイから、こっちも"偽造宝具"の展開をさせてもらうとしようか。

 

「────"最果(サいは)テニ(いタ)れ、限界(ゲンかイ)()えよ。彼方(カなタ)(オウ)よ、コの(ヒかり)御覧(ごラん)あレ!"」

 

「────"夢見た理想は潰え、抱きし願いは(つい)に失せた。幾多もの血に濡れし我が晃望、虚空にて瞠目するがいい!"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縛鎖全断(アロンダイト)過重湖光(オーバーロード)!!』

 

 

混沌開闢・無底湖光(ケイオスヴォイド・ヴォーティガーン)!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 







"偽造宝具"『混沌開闢・無底湖光』
ランク:A+(仮) 種別:対軍宝具(仮)

ケイオスヴォイド・ヴォーティガーン。本作オリジナル宝具。『堕穢せし湖光』を持つオベロン・ヴォーティガーンのみが放てる、仮想戦技(スキル)。
『縛鎖全断・過重湖光』と似て、剣内部に貯蔵された魔力を放出するのではなく、剣技として発現させるもの。しかし、完全に同じというわけではなく、貯蔵された魔力量によって効果が違ってくる。

1~2段階目、最大容量のうち、五割以下までは『縛鎖全断・過重湖光』と同じもの。だが、五割以上となる3段階目からは、"オリジナルと同じ効果を持った斬擊"を飛ばすことができる。
そして、限界容量である4段階目に至っては、『堕穢せし湖光』による攻撃の全てがオリジナルと同じになり、使用者本人のパラメーターも更に一段階上げる仕様となっている。

ただし、その効果故に使用者を限定しており、オベロン、または虚映以外には使うことができない。更に、限界容量まで使いきると、よっぽど所有魔力量が高い者でもなければ、再充填には早くとも向こう10年近くかかる代物。
加えて、この宝具使用後は『堕穢せし湖光』自体が脆く、壊れやすくなるという欠点があり、一度発動すると段階に関わらず、約24時間は再使用が非常に困難(不可能ではないが、二回目以降はほぼ確実に壊れる)となってしまう。

製作者いわく、『性能はいいのに、突貫工事のハリボテ気味が目立つ不良品』とのこと。



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