心を無くした男と、嘘つきな王サマ   作:朝霧=Uroboross

30 / 33

 えー、皆々様、大変お久しゅうございます。この場を借りて、ご挨拶申し上げまする。
 リアル事情で就活からややブラック気味な仕事量(量以外はホワイトなのでご心配なく)など、大変混み合った云々がありまして、遅れに遅れて申し訳ない。

 ということもありまして、作風がやや変わったように感じてしまうかもですが、消えた遺作で終わらせたくないので、最後まで走りたいと思います。よろしければとうか、最後までお付き合い下さいまし。







第五次聖杯戦争/Anvoid Vortigern
おわりのはじまり


 

 

 ────それは、誰にも望まれずに産まれた。

 

 きっかけは、ささいなことだった。男女の軽い触れ合い、たった一度の過ちから産まれた、望まれないもの。

 疎まれ、蔑まれ、己の腹から生まれたソレ(・・)を、不和の元凶として差別した。おぞましい、化け物であるかのように。

 

 それが周囲にバレて通報され、ソレ(・・)は施設へと預けられた。けれど、善悪さえもモノを知らないので、本来ならば正しく育てられるべき情緒というものは、全くの伽藍堂のように欠けていたのでした。

 しばらくして学校へ通い、他者と関わるようになっても、周りはまるで腫れ物のように扱い、誰一人として彼の側には近寄らないのでした。そんなものが、果たして正しく社会へと溶け込めるのでしょうか。

 

 やがて、正しい社会の中に居場所を見失ったソレ(・・)は、闇へとその身を浸していきました。醜く腐った、人の暗い側面を深く切り取った世界へと。

 ソレ(・・)は何も知りません、その世界の闇以外には。ソレ(・・)は何も感じられません、腐った人々への嫌悪以外には。ソレ(・・)は誰も信じません、信じたところで結局何もないのだから。

 

 どうせいつか消えてしまう、どうでもいい存在のことなんて。

 皆みんな、どうでもいいのです。

 

 

 

 

 ──────だから、嘘と虚構で塗りたくりましょう。見て見ぬふりをしてきたモノに、その命を刈り取られるその時まで────

 

 

 

 

 

 

 

 「1つ目の親は、事故だった。あれは本当に偶然で、周りの白い目に耐えきれず夜逃げしたら、たまたま通りかかったトラックにはねられたんだと」

 

 「2つ目の親は、なんなんだろうね。結局は偽善で、オレが他と違って混じれないと分かると、腫れ物みたいにしてきたンだわ。ま、出た後にめでたいことがあったらしいし、それからは知らないね」

 

 「3つ目がこっちの親。ま、典型的な魔術師だったよ。無から有を創ることで根源を形容する、なんて無茶しようとしてたけどサ」

 

 「それがどうなったって?……さぁてね。姿がないってことは、まぁそういうことなんだよ」

 

 

 命乞いするかのようにみっともなく、ただ喚き散らすだけのズダ袋に、道化師は冷たく告白する。過ぎたことだとつまらなそうに、他人事のように宣うその手元では、歪な形の短剣を弄ぶ。

 

 ────おかしい、有り得ない。こんなはずでは──

 

 男の脳内では、その言葉ばかりが反芻していた。

 聖杯戦争において、栄えある時計塔から選出された、文字通り選ばれた魔術師(存在)。マスターとなり、自身の英霊(サーヴァント)である『キャスター』を従えて、己の願いを叶える────はずだった。

 

 それが気付けば、己がサーヴァントには契約を切られた上に工房まで焼かれた。幸い、九死に一生を得て命からがら逃げ遂せたと思えば、今度はこれだ。

 

「────どうしてこんなことに、とか思ってるでしょ」

「いやサ?キミがあのキャスターと契約できないのは知ってたんだよ。相性最悪だしネ」

 

「けど、本来なら死んでもおかしくないのに、キミは生き延びた。それはダメだよ。ちゃんと死んでくれないと、お話がパァだ」

 

 恐ろしいほどの理不尽。猿轡を噛まされ簀巻きにされた男────アトラム・ガリアスタは戦慄する。

 魔術は使用不能、抵抗は無意味、会話は不可、文字通りの詰み。次第に、身体が震える。

 

 

「────やぁ、マスター。こっちは終わったけど、ソレとうするんだい?またあの時みたいにする気かな?」

「んー…いや、コレは使わないよ。粗大ゴミの方がまだマシって感じ」

 

 せせら笑うような悪魔達の会話が、遠く聴こえる。

 呼吸が上手くできない、身体が怖気づいて────あぁけれど、気付いてしまった。己の胸から生える、その凶器に。

 

「ぅ、ぉぇ……?」

「サヨウナラ、そしておやすみなさい、アトラム・ガリアスタ君。キミの犠牲は、この世界にとって必要で必然だった。よく眠りたまえ」

 

 

 

 

 

 

時計塔の魔術師、サーヴァント:キャスターの元マスター

 

アトラム・ガリアスタ

サーヴァントとの不和により重傷。

 その後行方不明となるが、現場の状況として死亡と推定される。

 

以上によって、退場済みとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日は真上に差し掛かり、生徒たちでガヤガヤと賑わう校舎。原の空き具合が気になり、授業への興味がまばらになりがちな時間帯。

 

「ほらお前たち、昼メシが気になるのはわかるがちゃんと聴けー」

「はーい、すいませーん」

 

 教師と生徒の間柄でありながらも、気安い笑い声が響く教室。板書には小難しい文字の羅列から、噛み砕かれて簡略化された解説が書き連なっている。

 

「お、丁度いいな。んじゃ、今日はここまでってことで。課題は忘れんなよー」

 

 板書の端まで書いたとこりで、午前最後のチャイムが鳴らされる。

 騒がしく席を立ち、思い思いに友人たちと語り合いながら、中には学食へ駆けていく者、空腹に耐えきれず弁当を広げる者など、多種多様に笑っている。

 

「ねぇねぇ牧島先生(・・・・)!一緒にお昼いかない?」

「あっ、ずるいぞ!こっちが先だったのにー!」

 

「やめんさい君たち。そもそも先生は別で弁当あるし、片付けもあるんだから君たちで行ってきなさい」

 

 ブーイングを受けながらも、呆れたように返す。その返答を聞いて拗ねたように、けれど答えが分かっていたかのように生徒たちは出ていく。

 その最中、一人の生徒が迷いなく隣へと歩いてくる。

 

「先生、俺も片付け手伝うよ」

「おー衛宮(・・)、毎度毎度すまんなぁ。でも、たまにはお前さんも好きに行ってきていいんだぞ?」

「気にしないで下さいよ、これも好きでやってるんです」

 

 ────穂群原のブラウニーこと、『衛宮 士郎』。いずれ来たる運命の中核。されども、今はまだ見守るべき子供の一人。

 彼が板書を消し、牧島は教材を片付ける。その後、「あとやっとくんで、お昼行って下さいよ」と宣う彼を後にして、教員室へと戻る。

 

「むっふふー。相変わらずモテモテですなぁ、牧島先生?」

「はは、ご冗談を。思春期の距離感ってヤツですよ、藤村先生」

 

 どこか、虎を思わせる空気をまとう教師──藤村 大河と途中で合流する。茶々をいれながらも他愛ない話をしながら、時として生徒に挨拶したり、注意したりして廊下を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて日は落ち、誰もいなくなった学校から出る。

 帰路に着く最中、浮かべていた優しげな笑みは酷薄なものへと変わり、穏やかであったはずの空気が冷たくなっていく。

 

「おかえりなさい、虚映兄さん(・・・・・)

「はい、ただいま桜ちゃん。なんか変わったことあった?」

 

「いいえ。────あぁでも、マスターの反応は何人か。もう始まっているんですか?」

「んーん、本番はまだよ。ま、でも準備するに越したことはないよネェ」

 

 そう宣う彼の視線の先には、目隠しをした背の高い女性。そして、真っ黒なツギハギのマントに身を隠したナニカ。

 

 

 

 

 牧島 疑正(まきしま ぎせい)──穂群原学園に、ここ最近新しく来た地理学の教師。また、心理学を修めているのもあって、そっち方面でよくカウンセリングを受け持っていることもある。

 

 だが、その正体こそ、第四次聖杯戦争の勝者かつ第五次におけるイレギュラー枠の参加者。本来ならば、ギルガメッシュが担っていたはずの例外枠。

 

 ──道化師モドキの死神、『朝露 虚映』

 今、伽藍堂の悪魔が再び動き出す──────

 

 

 

 

 

 






 以上、今回はリハビリを含めてここまでとします。
ガリアスタ氏にはどの道絶望してもらいます。なんて顔してるんだい、ステキだね。

 基本的にはUBWのルートで行きつつ、HFを断片的に混ぜていくのが面白いかなと組んでおります。
近いうちにまた更新いたしますので、気長にお待ち頂けると幸いです。


 あ、地球大統領は天井でした(血涙)。
 おかしい…超高速でイドまで進めたのに…(月は実装時にやった組です)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。