「───疾れ明星!全てを灼き消す焔と変われ!!」
「───全力!全開!!」
この異空間にはあかりが幼少から魔法の訓練を行っていたことにより、大量の魔力があちこちに漂っていた。
しかしその豊潤な魔力が一気に渇れ果てる。
その原因は二つの集束魔法
二つの魔法は周囲の魔力を極限まで互いに奪い合う。
そして
「ルシフェリオンブレイカーッ!!!」
「スターライトブレイカーッ!!!」
魔力の吸収が終わり
あかりのルシフェリオンから赤色の光の奔流が
なのはのレイジングハートからは桜色の光の奔流が
それぞれ相手を呑み込もうと放たれる。
そして
あかりとなのはの中間にて
激突した。
「おおおぉぉおぉおおぉぉお!!!」
「ぁあぁああぁあぁあぁああ!!!」
圧倒的な閃光と凄まじい轟音に負けず
二人の姉妹は気合いと共に魔力を更に込めていく。
そして二つの閃光はせめぎ合う。
「キリエさんに夜天の書を奪われた時を忘れましたか、なのは姉さん!!
どれほど大層な綺麗事を並べ立てようと!
それがどんなに正しさに満ちていようと!
勝てなければ何の意味もないという現実を!!」
あかりが吐き出した言葉と共に
赤色の閃光が桜色の閃光を徐々に押す。
「超えられるものなら、超えてみせてください!!!」
「…くっあ!!」
なのはの閃光は更に押し込まれる。
間近へと迫るあかりの閃光
しかし
なのはの目から光が失われない。
その目が絶望に染まることはなく
また微塵も諦めの感情は湧いていない。
そしてその折れない精神が
なのはの閃光がはねのけられるのを
ギリギリのところで踏みとどませる。
最後の最後でなかなか押しきれない状況にあかりは
「……いい加減諦めてくださいよ!?
諦めて!!沈んでください!!
どう足掻いたところであなたは勝てません!!」
「……諦め…ない。私は、絶対に…っ!!」
「こ、の…!」
「あ、かり…。あかりは、すごいよ。
たった一人で、まだそんなに小さいのに、
ここまで、本当によく頑張った。
でもね…」
赤色の光の奔流が間近へと迫ってきているが
それでもなのはは言葉を紡ぐ。
「人は…一人で生きていくことは絶対にできない!!
今までは上手くいっててもいつか破綻する時が必ず来る!!」
「そんなことない!私は絶対に…」
「百歩譲って上手くいったとしても!
その先には誰もいない!!
あかりの勝利を喜んでくれる人なんて誰も!
自分が変わらなくちゃ…、自分から歩み寄らなきゃ…、
どんなに頑張っても心から笑顔になることは、
未来に光がさすことはないんだよ!あかり!!」
「うるさい!!!」
その時だった。
なのはの力が増したのか
あかりがなのはの言葉に乱されたのか
なのはの桜色の閃光があかりの赤色の閃光を
押し返し始める。
これには驚愕したあかりは目をこれ以上ない程に見開く。
そうしている間にも桜色の閃光はあかりへと迫ってくる。
「くっ…!…なんで!?どうして!?
私の覚悟より…なのは姉さんの想いの方が強いっていうのですか!?」
そして
とうとう
なのはの集束魔法があかりを呑み込んだ。
「う、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
私が…、負ける?
「い、いや…。いやです!!
ここで負けたら、私は。私は!!
今までいったい…何の、ために…!!」
そうあかりは叫ぶと
なのはの集束魔法に呑み込まれ意識が遠くなりつつも
必死に左手を動かす。
動かした先にあるのは
ガーゼで被われた左目
「っ!?ダメ!!あかり!!!」
なのはは思い出す。
あかりの左目は絶対に安静しなくてはならないことを
しかしあかりはなのはの叫びを無視し
左目のガーゼに手を掛け
ガーゼを引きちぎるようにし外してしまう。
そして無理矢理左目を開け、魔力を込める。
「ぐ、うううううぅぅぅぅぅっ!!」
左目から血が溢れ
尋常ではない痛みがあかりを襲うが
それでもあかりは魔力を込めるのを止めない。
そして次第にあかりから青色の炎が噴出する。
(っ!?まさか、あの時の…!
ユーリちゃんを倒したあの巨人を…!?)
あれを出されたら集束魔法でも撃ち抜けるかわからない。
なのはは戦慄する。
そして
「
しかし
「ぐっ!?く…そ…っ!!」
左目の痛みのせいか、それとも魔力不足のせいか
いずれにしても巨人が顕現することはなく
あかりを守るようにあばら骨と右腕の骨が顕現しただけであった。
「うううううあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
しかしあかりは、あばら骨で閃光を遮断しながら右腕を振り上げる。
それにより集束魔法の軌道が逸れ、あかりは集束魔法の範囲外へと逃れる。
なのははそれを受け集束魔法を止める。
またあかりも青色の炎の噴出を止める。
そうして眩い閃光が晴れると
「はあー…っ。はあー…っ」
全身血だらけのあかりの姿が現れる。
不完全なフォーミュラの多大な負荷により胸の傷口は完全に開き血が止めどなく溢れ
顔に至ってはかきむしった時と左目からの血で、もはや血がついてない箇所の方が少ない。
激しい出血であかりの身体が寒さで震える。
誰が見ても戦える状態ではない。
気絶するのが当然で死んでもおかしくない程の出血量
しかしあかりは気を失うことなく、なのはを睨み震える身体で杖を必死に構える。
「………………!!」
そんな妹の様子に僅かにではあるがなのはが気圧される。
あのなのはが、である。
しかしそれも無理はない。
それくらいあかりは、今までなのはが戦ったどの敵よりも鬼気迫っていた。
「…もうやめてあかり!それ以上戦ったら本当に死んじゃうよ!!」
「私は…、負けない。負けるわけには、いかない。
ここで勝つことまで見失ったら、私は…!!
もう、これ以上…、
私の今までを否定しないで!!!」
あかりはそう叫び、なのはへと向かって飛ぶ。
しかしその速度は今までのそれに比べると遥かに遅い。
「…っ。あかりーーーっ!!」
これ以上戦わせたら本当に不味いことになる。
なのははあかりを迎えうつべく同じくあかりへと向かって飛ぶ。
次の一撃で終わらせるために
その時であった。
『あなた何でも一人でやろうとするから心配なのよ』
あかりの脳裏に
『何かあったら一人で抱えこまずにすぐに言うんだよ?』
大切な人達の言葉が甦る。
『ジュエルシードを渡してくれないのは残念だけど、でもあなたは私を…町を助けてくれた。だからありがとう。』
…
『なのはから聞いたんだけどあんたも何か悩んでることでもあるの?』
…なんで
『しっかりしてるのはいいことやけど小さいうちは甘えておいた方がええで』
なんで今さら私は
『お前が我が臣下の…シュテルの縁者だからだ』
こんな言葉を
『君に何かあればシュテるんが…ううんシュテるんだけじゃない。王様もボクも悲しむ。』
思い出して…
『…あなたは私にとって妹のような存在です。私はあなたも失いたくはないのですよ』
…
『私は、別にあの子を…シュテルを恨んでいるわけじゃないんだよ?』
そして
『妹がお姉ちゃんに遠慮しないの。分かった?』
あかりの身体から
力が
戦意が
なくなった。
激突の寸前にあかりから戦意がなくなったことに気づいたなのは
あかりは勢いそのままになのはの胸の中に顔をうずめることとなる。
「…く、そ。…くそぉ」
そしてそのまますすり泣く。
なのはは少し驚いた顔をするが、あかりの身体を優しく両腕で抱きしめる。
「……………私の…負け、です」
「…うん」
ようやく…
ようやくあかりの心に向き合うことができた。
私の腕の中で泣き続けるあかりを見て
長く掛かっちゃったな、と思う。
本来なら二年前の…それこそ神社で出会った瞬間に気づいてこうして抱きしめてあげるべきだった。
本当に、時間を掛けてしまった。
でも…でもようやく、たどり着いた。
「………なのは姉さん。私は…間違っていたのでしょうか?」
あかりは涙を流しながらもなのはに問いかける。
「私が今まで歩んできた道のりは…、私の選んだ選択は…、全て間違いだったのでしょうか?」
「…正直に言うなら確かな答えは私にもわからない」
なのはのその答えにあかりはギクリと身を固くする。
「私もこの道が正しいと信じて進んでいるだけ。
他の人から見たらどこかで間違えているように映るかもしれない」
「そんな…。じゃあなんで私は…」
「でもね、あかり。これだけは言える。
それが正しくても、間違いであっても、
少なくとも私はこの先で後悔するようなことは絶対にないって
それだけは胸を張って言える」
「後悔…」
ここに至るまでの選択に後悔しているのか
そう問われるとあかりは心が苦しくなるのは確かなのである。
「そう。ここに来るまで私は私の心に従って戦ってきた。
もちろん失敗もあったよ?もっとこうすればよかったんじゃないかって反省することもある」
あかりともっと話をしていれば…
あかりが病室で寝てる時に何度も思ったことである。
「でも、それでも私は、今までの選択に…今まで誰かを助けるために戦ってきたことに後悔はしていないの。
反省と後悔は違う。
これが私の…高町なのはの生き方だって胸を張って言える。
失敗があったとしてもそれを受け入れることができる。
自分の心に従って選んだのだから」
「…」
「間違いかもしれない。悪意や残酷な現実に負けてしまうかもしれない。
でもね、それよりも大事なのは自分の心を裏切らないことじゃないかなって私は思うの」
…そっか。
だから私は、負けたのですね。
他者だけではなく、自分自身すらも捨ててしまっていたから
「…帰ろう?あかり」
そしてあかりは
なのはの手を取った。
ーーーーーーーーーー
管理局に帰ってきた私となのは姉さんは二人揃って医務室に直行
そして私は再び病室送りとなりました。
病室にて私となのは姉さんはたくさんの人からこっぴどく怒られました。
父さんや母さん達家族、フェイトさんやはやてさん達、リンディさん………
切りがないので省きますが、それだけ大勢から怒られました。
私だけではなくなのは姉さんまで怒られたのは、重傷の私を相手に戦闘を行ったことと百歩譲って止めるためだったとしても禁じていたフォーミュラまで使用したためでした。
まあ私はその三倍は怒られましたけどね
当然と言えば当然ですが
重傷の身で動いたこと、起きた途端管理局に敵対行為、なのは姉さんとの戦闘行動、治療中の傷を完全に開く、下手をすれば死んでいたこと、失踪しようとしたこと………
怪我をする前の問題行動も含めると役満もいい所ですね。
一通り怒られた後、まず私は
「ごめんなさい」
病室にて私はフェイトさんとはやてさん達に頭を下げる。
病室を抜け出したことに対する謝罪…ではありません。
それは先程さんざんやりました。
そうではなく
プレシアさんとリインフォースさんを見殺しにしたことへの謝罪
自分がこの後どうなるのかわかりませんが
わからないからこそ、今のうちに謝っておきたいとそう思ったのです。
「…」
「…」
私の今までの行動とその理由を話している間、フェイトさん達は静かに聞いていました。
そして今、私が頭を下げている時も
なのは姉さんがハラハラした顔で見ているのが伝わってきます。
そして
私の頭に手が二つ置かれます。
私はビクリと身体を震わせます。
一瞬叩かれるのではと思ったからです。
しかし
「…ありがとう。私を助けてくれて。
母さんにアリシアの…お姉ちゃんの願いを思い出せてくれて」
「…よう頑張った。ホンマによう頑張った。
たった一人で、すごい頑張り屋さんや」
そんな私の予想に反し
二人は私の頭を撫でます。
「…なんで」
「うん?」
「なんで責めないんですか!?
なのは姉さんから聞いていましたけど意味がわかりません!
私…私はプレシアさんとリインフォースさんを…」
「それは違う」
私の叫びをフェイトさんは静かに遮る。
「母さんがあの最後を迎えたのも、私に幸せになるように言ったのも全部母さんの意志。
だからあかりのせいじゃない。絶対に」
私への気遣いだけではなく、それだけは絶対に譲らないという強くも優しい目でフェイトさんは私を見ます。
「そうや。あかりちゃんのせいやあらへん。
むしろ一年半前の暴走を止めるのを手伝ってくれたり、今回の夜天の書の奪還といい、私としては感謝しとるくらいや。
間違っても責める気持ちなんて持っとらんよ」
そうはやてさんは負の感情がまるで込もってない目で私を見ます。
「あ…」
二人の言葉を聞いた私の目からまた涙が零れます。
フェイトさんとはやてさんはそんな私の頭をただ優しく撫でてくれます。
そしてその様子をなのは姉さんはホッとした様子で眺めていました。
フェイトさん達に謝罪し、少し日数が経ちシュテル姉さん達がエルトリアに帰る日が来ました。
そして帰る前に私の病室へと訪ねて来ました。
シュテル姉さん達は再び人の形を取ることに成功したみたいです。
私よりも更に幼い身体になっていますが…。
シュテル姉さん達はユーリさんを助けた御礼を改めて言った後
怪我と正体がバレてしまったことへの謝罪をしてくれましたが
「謝罪はいりません。
怪我は私の油断が原因ですし、正体がバレてしまったことも…正直この先どうなるかという怖さはありますが、
なのは姉さんとぶつかって心は大分楽になりましたから」
私がそう言うとシュテル姉さん達は謝罪を止めました。
そして
「何かあったらレアスキルでエルトリアに飛んでください。
絶対に私が助けますから」
そう言い残し、シュテル姉さん達は病室を後にしました。
そしてシュテル姉さん達はエルトリアへと帰っていきました。
…
……
………
月日は流れて
「あかり、そろそろ行くよ?準備は大丈夫?」
学校の放課後
なのは姉さんが私を訪ねて教室へとやって来ます。
「はい。大丈夫です」
私は返事を返し、教室の出口にいるなのは姉さんの下に行きます。
「うん。それじゃ行こ」
なのは姉さんが私の手を引き、一緒に廊下を歩きます。
あれから数ヶ月後
怪我は順調に治り無事に退院しました。
左目に関してはなのは姉さんとの戦いで無理をしたのが尾を引いたのか
定期的に通院を行い、長期的に治すという形となりました。
よって今でも包帯で眼帯はしています。
皆から絶対に取るなと念を押されました。
そして肝心の私の処遇ですが…
どうやら私が寝てる間に既にリンディさん達が動いてくれていたこともあり
身柄の拘束まではギリギリでいかなかったみたいです。
その代わり管理局への無償奉仕をすることとなりました。
いわゆる飼い殺しというやつですね。
発信器まで持たされて、絶対に逃がさないという意志を感じます。
まあそれでも当初予想していた処遇よりも人権を保証してくれている分かなりマシだと思います。
リンディさんがものすごく頑張ったのでしょう。
スカリエッティの件は管理局内部において信頼できる人をピックアップして少しずつ協力者を増やしていく形を取っているみたいです。
グレアムさんの持っていたコネも最大限利用して
……………正直それでどうにかなるとは私は思っていません。
今にもスカリエッティの手の者が現れるのではないかと内心ビクついています。
しかしもう逃げようとは考えてはいません。
なのは姉さんに負けた以上、大人しく守られて、それで負けてしまった時にはスカリエッティの研究材料になってしまおうと、じたばたせずにもう全て受け入れることにしました。
…改めて考えても半ば諦めに近い開き直りですが、少なくとも以前の様に心がモヤモヤしていない以上、これが私の今の本心であることに違いはありません。
まああの時負けた以上、私に選択権はありませんし。
そんなわけで退院した私は基本的になのは姉さんにくっついて任務を行っています。
時々フェイトさんやはやてさん、シグナムさん達と一緒になることもあります。
狙われている以上、誰かしらと組んで任務を行うようにリンディさんが調整してくれているみたいです。
「おっ。来たみたいやな」
「なのは、あかり」
「お待たせ。フェイトちゃん、はやてちゃん」
「お待たせしました」
振り返っている間に目的地である学校の屋上にたどり着きます。
屋上にはフェイトさんとはやてさんが私達を待っていました。
「それじゃあ行こうか」
「うん」
「せやな」
「はい」
なのは姉さんに負けてしまい、正直これからどうなるかまるでわかりません。
最悪の未来が待っているのかもしれません。
しかしその時が来たとしても、私は後悔しない様に選択をしたい。
どんなに状況が最悪になっても、振り返った時あの選択が、自身の生き方が間違いだったなんて思いたくない。
自身の生き方に胸を張りたい。
その想いだけを込めて私はルシフェリオンを取り出す。
周りを見るとなのは姉さん達もデバイスを取り出している。
そして
「バルディッシュ」
「リインフォース」
「ルシフェリオン」
「レイジングハート」
「「「「セットアップ」」」」
そして今日も私はなのは姉さん達と一緒に任務へと赴くのでした。
終わり方がかなり無理矢理な感じになってしまった気がしますが、一応これで完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。