その片隅に、ある軍団の拠点が存在していた。
これは、小規模軍団【Tower_of_God】の日々を記録にしたものである。
2020年12月にオープンした国産MMORPG【ETERNAL】で遊んでいる内に、眠っていた字書き魂が沸々と蘇り、まずは肩慣らしにと、わたしが所属している軍団の面々を書いてみました。
アクティブメンバーの自己紹介みたいなものです。わちゃわちゃしている雰囲気が大好きなので、そんな空気をおすそ分けできていれば嬉しいです。
それでは、宜しければ最後までお付き合いください!
ノルダニアの城下町、中心の喧騒からはやや離れた片隅に、その小さな軍団の拠点は存在していた。
「ま……待った!!」
「いやお前が待て」
メルーリスが挙げた手をピシャリと叩き落としたのは、軍団【Tower_of_God】の軍団長・テオカヴである。テーブルに置かれているのはトランプで、それは規則性を持って並べられていた。
「おいリス、お前、待ったは何回目だ?」
「え、」
「待ったは3回までって、最初に言ったよな?」
「え…えっと……3回目…デス…」
「8回目だばかやろぅぅぅぅ!!!!」
バガン!と凄い音を立て、メイジとは思えぬ力強さでテオカヴは拳をテーブルに叩きつけた。
「大体なァ、なんで七並べで8回も待ったかけるんだお前はァァァ!!」
「う…ッ」
「ていうか、なんでオレはお前と2人で七並べなんかやってんだァァ!?」
「えっ、そこなの!?」
ガリガリと両手で頭を掻きむしる軍団長に多少引き気味になりながら、メルーリスは助けを求めるべくキョロキョロと辺りを見回した。残念ながら団員のほとんどは出払っており、この場にいるのは作業場で黙々と手を動かしているプリーストのカラドュのみ。
「ドュ先生ぇぇぇ!!助けてぇぇぇぇ!!!」
「ニャ? 仲良きことは美しきかなニャ」
「おいドュ、お前の目はどこについてんだ!?」
テオカヴがカラドュに視線を向けた隙を突いて、メルーリスはテーブル上のカードをぐしゃぐしゃにかき混ぜる。
「あっ、リスてめぇ!!」
「ふはははは!!これで勝負は引き分けだテオの旦那!!さらば!!!」
椅子を蹴り上げるように立ち上がると、メルーリスは作業場に向かって一目散に駆けていく。
作業台の前でカラドュは難しい表情を浮かべ、秤に匙で掬った鉄粉をサラサラと乗せていた。それなりに真剣な作業のようだ。
「ドュ先生は今何作ってるの?」
「今は花火~…。今度、花火大会があるから、それに向けての準備ニャ♪」
機工学を学んでいるカラドュは、今日も技術を磨くのに余念がない。作業台に肘をついて、興味深そうにメルーリスは眺める。どうやら作業は火薬の調合のようだった。
「えっと~…コレと、こっちのを混ぜて~…」
秤から取り上げた鉄粉を、横に置いてあった別の粉と混ぜ合わせるために流し込んだ、その時。
バヂンッ
「ぎゃああああああ!!目が、目がァァァァァ!!!!!」
弾けて散った火花がメルーリスの目を直撃し、彼は両目を押さえて床にのたうち回った。ちなみに、その一部始終を見ていたテオカヴはメルーリスを指さして爆笑している。
「あわわ…そんなに近くで見てるから~……」
大慌てで駆け寄ってきたカラドュは、メルーリスに回復魔法を施す。ジワジワと痛みが消えて、メルーリスは涙目を擦りながら起き上がった。
「……酷い目にあった」
「自業自得ニャ~」
「自業自得だな」
「団長うっせぇぇぇ!!
わーーーん!!お前らキライだーー!!」
喚き散らしながらメルーリスは外へ向かって駆け出した。なんとなくこのままここに居れば更に酷い目に合いそうな気がしたのだ。この軍団では、自分の命は自分で守らなければならない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
屋外に出て、さて繁華街で買い食いでもするかと歩き出した時、横手の広場にいる仲間に気が付いてメルーリスはそちらに進行方向を変える。
そこにいたのは、ウォーリアのTawashi、メイジのうさるり、同じくメイジであるカレルチアの3人だ。珍しい組み合わせに首を傾げて、メルーリスはカレルチアに近寄った。
「何してるんですか?」
「あ、メルさん。今ね、研究中なんですよ」
「けんきゅうちゅう」
鸚鵡返しに呟くと、カレルチアの隣に立っていたうさるりがこくこくと頷く。
「魔法剣できるかなって」
「魔法剣?」
「たわしさんの剣に魔法を纏わせて、効果付与できないかやってみようって」
「なるほど、それは面白そうだ」
カレルチアの捕捉に頷いてメルーリスは見学を希望した。断られる理由もなく、カレルチアとうさるりの少し後ろに立つ。
「たわしさん、いきますよー」
「うい」
Tawashiが持つ武器に向かって、カレルチアとうさるりは各々グリモアを開いて呪文を詠唱した。2人が翳した手のひらから魔法が迸る。カレルチアの手からは炎、うさるりの手からは氷が。
「え?」
「あれ?」
何故かビックリしたように2人はお互いを見やる。通常、プラスとマイナスの力はお互いを打ち消し合うというが、そんなご都合主義な事はなかった。ジュワっという音を上げて、Tawashiの周囲を濃い水蒸気が立ち込める。炎と氷がぶつかりあったためだ。
「うひゃあ!」
「た、たわしさんごめんなさい!!」
「ごめん、大丈夫?」
慌てて謝る2人に、Tawashiは大丈夫と手を振ってみせた。
「もっかいやってみてー」
「はい。今度は合わせますね」
「ん、合わせる」
頷いて、カレルチアとうさるりは再び呪文を詠唱する。今度は、カレルチアからは氷、うさるりからは炎が飛び出してきた。
「あれ?」
「あれ?」
「どうしてそうなった!?」
2人して首を傾げるのに、メルーリスは思わず後ろからツッコミを入れる。
「いや、うさるりさんに合わせようと思って…」
「カレさんに合わせようと思った」
「うんそうだね!?思いやり深いね!?
大丈夫!?たわっさーーーん!?」
もうもうと立ち込める水蒸気の中、グッと親指を立てるTawashiの姿。
「なんか、もうサウナの中みたいになってきてる」
「それ本当に大丈夫なの!?」
「正直蒸気がベタベタして気持ち悪い」
「そこから出てこようよ!?」
何がTawashiをそこまでさせるのか。よく分からないメルーリスであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「メルさーん!!」
そろそろ小腹が空いたので本当に何か食べに行こうかと考えていたところ、後ろから声をかけられメルーリスが振り返る。
「あ、ティナさんじゃん。どうしたの?」
軽く手を振りながら駆けてくるのはプリーストのティナ。彼女は彼の傍で足を止めると、大きく肩を上下させて呼吸しながら言った。
「メルさん、どこかで蒼猫さん見ませんでしたか?」
「蒼さん?いや、見てないけど…それがどうかしたかな?」
「いえ、さっき蒼猫さんに本を貸したんですけど…なんか、でゅふでゅふ笑いながら何処かに行っちゃって…」
「………ええー…?」
そういう笑い方をしている時の蒼猫には正直関わりたくない。嫌そうな顔を前面に出しながらメルーリスがちら、と視線を逸らした。
「放っといていいんじゃない?」
「いや、でも……」
「一応、無害だからさ」
「でもでも……」
何故か食いついてくるティナを不思議に思って見ると、ティナはキョロキョロと周囲を見回しながら。
「あんな怪しい状態の蒼猫さんを放逐したら、どんな噂が立つか…」
「うん、それは大変だね。由々しき事態だね。」
心の底から納得して、メルーリスはティナと共に蒼猫を捜すことに決めた。
「まぁ大体居場所は分かってる」
「そうなんですか?」
「そういう笑い方してる時は、おおよそここの裏で何かしてるよ」
連れ立って拠点の裏手へ回り込むと、果たしてそこに蒼猫の姿はあった。木陰に座り込み、本を開いてデュフフフ…と不気味な笑みを零している。ぶっちゃけ怪しい。いや、それ以上に気持ち悪い。
そっと後ろから近づいてみると、蒼猫は笑いの合間に呟いていた。
「ネコミミ三つ編み眼鏡っ子萌え……萌えるぅ……デュフフフ」
「お前はどんな本読んでんだァァァ!!!」
「ホギャッ」
思わず手が出た。いや、足が出た。踵落としだ。頭を擦りながら何事かと蒼猫は背後を見やる。
「……メルさまぁ。あたしが何をしたって言うのさ」
「いやもう、存在自体が犯罪じみてた。通報しようかと思った」
「想像は自由でしょうが」
「想像?妄想の間違いじゃねーの?」
「そうとも言いますな、デュフフフ」
「やめい」
肩を揺らしながらデュフデュフと笑い続ける蒼猫の頭をもう一度はたいて、メルーリスは面倒臭そうに腕組みをした。
「で、今日は何を読んで妄想に耽ってたわけ?」
「失敬な!いつもあたしが妄想に耽ってるなんて、言いがかりも甚だしい」
「言いがかりじゃなくて事実だろ。で、何読んでたの」
「何って、さっきティナさんから借りた本ですがそれが?」
首を傾げて不思議そうに問い返す蒼猫の顔と、自分の隣に立つティナの顔を順繰りに見る。
「ま、まさか、ティナさん…?」
「ちち、違います違います!!一緒にしちゃ嫌です!!」
「デュフフフ、いやいやティナさんもお人が悪い。こぉんな本をあたしに回しておいて…」
「えええ…?ま、まさか……」
一抹の不安を感じてメルーリスが蒼猫からもティナからも一歩距離をとるように後ずさる。それに慌てたティナが、蒼猫の持っていた本を引っ手繰ってメルーリスに突き付けた。
「誤解です!!私が貸したのは、魔法に関するテキストです!!」
「ん…『上級回復魔法概論』…………蒼さん?」
「いやぁ、妄想はいつでもどこででもできますからにゃー。デュフフフ」
「紛らわしいんじゃボケェェェェ!!」
メルーリスの回し蹴りが蒼猫に炸裂した。踵落としや回し蹴りなどかましているが、書き忘れていたがメルーリスはTawashiと同じくウォーリアである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ガンガンガン!!!
メルーリスが蒼猫をタコ殴りにしようとしていた時、拠点の入り口から音が聞こえた。それから声。
「みんな~!集まるニャ~!!」
ブリキのバケツを棒で叩きながら、カラドュが声を上げている。何事かと周囲にいた面々が集まってくると、腰に手を当てて薄い胸を一生懸命反らしながら、どこか自慢げな顔でカラドュが笑った。
「最高傑作ができた~」
「さ、最高傑作…?」
「凄いからみんな見に来るニャ~」
作業場へ向かって意気揚々と歩くカラドュの後ろを、ぞろぞろと皆がついて行く。そこには既にテオカヴが立っていた。
「テオさん、ドュ先生が何か作ったって?」
「見りゃ分かる」
テオカヴが指さした作業台の上には、薄っぺらな円盤状の機械が乗っていた。いつの間にか花火の作業は終わっていたらしい。
「ドュ先生、これなに?」
「ふっふふふ、よくぞ聞いてくれました!!
これは、お掃除ロボットくん十五号ニャ!!」
「……じゅうごごう。」
はて、14号まではいつ生まれていつ消えたのか、それは誰も知らなかった。突いてはいけない気がして全員が口を噤んだ。
「これは自動で床を走り回って、埃とかを吸い取ってくれる優れものニャ!!
この子が仕事をしてくれたら、週に一回のお掃除当番免除になるニャ~♪」
拠点の清掃は当番制である。室内清掃、トイレ掃除、窓とテーブルの拭き掃除、外周りの掃き掃除。おおよそそういった区分けで軍団員が順繰りに掃除をする。もちろん遠方などへの遠征時は事前申請制で当番からは外してもらえるのであるが。
「なるほど…室内清掃だけでも機械が代わってくれるなら、だいぶ楽になりますね」
うんうんと頷くカレルチアに、カラドュは一層嬉しそうに表情を綻ばせた。
「これから初回起動ニャ!記念式典ニャ!みんな見ててね~」
カラドュはお掃除ロボを床に置き、その表面にあったスイッチに指を置く。いよいよお掃除ロボ十五号くんの生命活動が始まる瞬間だ。ゴクリと固唾を吞んで見守る面々の中、テオカヴは足元に何か転がっているのに気が付いて、手を伸ばした。
「……ネジ?」
「スイッチ・オン!!ニャ!!」
「え、あ、ドュ、ちょっと待……」
チュドォォォォォン!!
お掃除ロボ十五号くんの生命活動はそこで終わった。享年1秒。儚かった。
ちなみに、お掃除ロボが爆発した時、作業室にあった他の機械類まで誘爆したので、なかなか派手に凄惨な光景となっている。死人がいなかったのが幸いだ。
死屍累々と倒れ伏すメンバーの中、よれよれの声音でテオカヴが言う。
「ドュ……お前、向こう一か月…掃除当番な……」
「ニャ……」
こんな騒がしい日々ではあるが、彼らはそんな生活を今日もそれなりに楽しんでいる。
【おしまい】
楽しかったです…2日で書き上げましたよ……イキオイって怖いですねww
今回はわたしが使用しているキャラ「メルーリス」主眼で書いたのですが、他のメンバーを中心に据えた話も書いてみたいですね♪
おおよそ的外れな雰囲気ではないと思うので、こんな愉快な軍団でもよければ是非覗いてみてくださいね!
サーバー:シラヌイ
軍団名:Tower_of_God
軍団長:テオカヴ
作者使用キャラ:メルーリス
みんなでもっとETERNALを盛り上げましょう!!