神にーさまはゲーム至上主義   作:村崎京

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図書館エンカウント

「桂木君おはよう」

 

朝、ホームルーム前に僕がゲームをしていると、平田が話しかけてきた。中間試験で余計に動いてしまったせいでしつこく話しかけてくるようになってしまった。軽くあしらっているんだが、気にせずに話しかけてくるこいつもなかなかだ。

 

「ゲーム中にごめんね。昨日櫛田さんから聞いたかな?目撃者が見つかったそうだよ」

 

「へえ」

 

いるのか目撃者。あんな辺鄙なところにまた物好きがいたもんだ。まああんまり有効打にはならないだろうけど、いないよりましか...

 

「うちのクラスの佐倉さんだよ。今日はまだ来てないみたいだけど、ほらあそこの席の眼鏡かけてる...」

 

「僕がわかると思うか?」

 

「そ、そうだね。ごめん...」

 

しかしよりによってDクラスの目撃者とは、須藤も運が悪いというかなんというか。元をたどれば自業自得だが。

 

「その佐倉とやらとは話したりするのか?」

 

「僕?いや、挨拶をする程度だよ。彼女はいつもクラスで一人だからどうにかしたいと思ってるんだけど、異性だと強引に誘うってわけにもいかないからね。かといって軽井沢さんにお願いするのも、問題がおきそうだし」

 

それはそうだろう。しかしそういうタイプのやつが、素直に協力してくれるとは思えないけどな。

 

「協力頼めそうなのか?」

 

「それはまだわからないけど、今日櫛田さんが打診するって聞いたよ。須藤君のためにも協力してもらいたいところだけど...」

 

まあ難しいだろうな。

 

「ひとまず櫛田さんからの報告を待とうと思う」

 

「...平田、もし佐倉からの協力が得られたとして、その後どうするつもりだ?」

 

「え、それは...目撃した内容を証言してもらって、須藤君の無実を訴えるつもりだけど...」

 

「...そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平田が言っていたように、放課後になると櫛田は席をたち佐倉のもとへ向かった。隣のエルシィも気になるようで、帰る準備をしながら様子をうかがっている。

 

「佐倉さんっ」

 

「...な、なに.....?」

 

声をかけられると思ってもいなかったのか、慌てまくっている。大方予想通りの人物のようだ。

 

「ちょっと佐倉さんに聞きたいことがあるんだけどいいかな?須藤君の件で...」

 

「ご、ごめんなさい、私この後予定あるから...」

 

よくいる人見知りキャラだな。僕は何人も見てきたぞ、ああいうタイプのキャラを。

 

「そんなに時間はとらせないよ?大切なことだから、話をさせてほしいの。須藤君が事件に巻き込まれたとき、もしかしたら佐倉さん近くにいたんじゃないかって...」

 

「し、知らないです。堀北さんにも言われたけど、私全然知らなくて...」

 

ま、そうなるだろうな。ああいうタイプは一回の接触でどうにかなるようなものじゃない。しかしあの佐倉とやら、何か隠してる気がするな。

 

「もう...いいですか、帰っても...」

 

「うーん、ちょっと今から時間とれないかな?」

 

「どうしてですか?私何も知らないのに...」

 

というかあいつは何でこんな人目に付くような場所で話しかけてんだ。断られると思ってなかったのか?よく見ると櫛田もどこか困惑しているようにも見えるけど。

 

「私、人付き合いが苦手なので....ごめんなさい...」

 

櫛田がダメならおそらくDクラスの誰でも無理だろうな。...いやもしかしたらいけるかもなやつが隣にいた。まあ今回は櫛田がタイミングをミスったな。ほら、もう荷物まとめて帰ろうとしているぞ。

 

...あ、ぶつかった。

 

「あっ!」

 

歩きスマホしてるバカにぶつかり、佐倉の手から何故か持っていたカメラが落ちた。というか何でカメラ持ってんだ?写真を撮るのが好きなんだろうか。

 

「嘘...映らない...」

 

どうやら落ちたショックでカメラの電源が入らなくなったようだ。

 

...はて、これは使えるんじゃないか?

 

「ご、ごめんね、私が急に話しかけたから...って桂木君⁉」

 

「ちょっと貸せ」

 

「...え?な、なんですか...」

 

「いいから貸せ」

 

「は、はい...どうぞ...」

 

困惑しながらも渡してきたデジカメを半ば強引に受け取った。撮った写真を見られるのではと気が気でないのかあたふたしている佐倉を横目に様子を確認する。

 

...やっぱり。これなら大丈夫そうだな。

 

「佐倉とかいったか」

 

「は、はい...そうですけど...?」

 

「これくらいなら保証書があれば無料ですぐ直してもらえるから安心しろ」

 

「そ、そうですか...ありがとうございます...と、というか早く返してください」

 

「...」

 

「な、なんですか?」

 

「...いや、なんでもない。返すよ」

 

「あ、はい」

 

佐倉にデジカメを返し、その場を離れる。

なるほどこれは少し調べる必要がありそうだ。

 

「にーさま、急にどうしたんですか?」

 

「エルシィ、お前アイドルとか芸能人好きだったよな?」

 

「え?ま、まあそうですね。かのんちゃん大好きなので、そういう意味ではアイドルが好きなのかも...」

 

「よし。あと、昨日言ってた椎名とやらと連絡取れるか?」

 

「え、椎名さんですか?うーん、そういえば連絡先知りませんでした」

 

「おいおい」

 

「でもだいたい図書室にいらっしゃるので、今日も行けば会えると思いますよ」

 

「そうか...よし今から行くぞ」

 

「え、今からですか?あっ、ちょっと置いてかないでくださいよーにーさま〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてこの学校の図書室を訪れたが、思ったより大きい。さすがに舞島高校と比べるとアレだが十分な大きさだろう。僕はもっぱらデジタル派だから利用することは無いだろうけど。

 

「にーさま、図書室では静かにしないとダメですよ?」

 

「それをお前が言うのか?」

 

「いえいえさすがに私もここでは騒いだりしませんよ」

 

「どうだか」

 

読書スペースを見渡すが、椎名らしき人は見当たらない。まだ来てないのかそれとも今日は来ないのか分からない。とりあえず待ってみるか。

 

「エルシィ、椎名は普段どんな本読んでるんだ」

 

「そーですね、外国の人の本が多かった気がします。もちろん私が知らない本ばかりでしたね」

 

「外国文学か...」

 

「ちょっと探し物してくる。エルシィは椎名を見かけたらすぐ教えろ」

 

「え、あっはい分かりました〜」

 

外国文学が並べられている棚に行くと、どうやら著者別に分けられているようだ。ドストエフスキー、カフカ、トルストイ、カミュ...

さすが政府管轄の学校と言ったところか、有名どころはだいたい揃っている。もちろん僕は読んだことないが、あらすじだけはあらかた知っている。何故かって?もちろんゲームで出てきたからだ。

 

「『日はまた昇る』、ヘミングウェイですか。いいとこつきますね」

 

「ん?ああ...」

 

とりあえず適当に本を取った瞬間、いきなり話しかけられた。振り返るとと何やら興味深げな表情でこちらを見てくる銀髪の女がいる。

 

「何か用?」

 

「いえいえ、良い本をお選びになっているところをお見かけしましたので。ヘミングウェイお好きなんですか?」

 

「いやとりあえず知っている人の本を取っただけ...詳しいのか?」

 

「そうですね...自慢じゃないですがそれなりに」

 

よく見ると、それなりにでは片付けられないほどの量の本を脇に抱えている。なるほどこれはエルシィが栞に似ていると言うわけだ。

 

「にーさま〜?何探してるんですか...あ、椎名さんいるじゃないですか」

 

「...にーさま?ああ桂木さんのお兄様でしたか」

 

「そうだけど、知ってたのか?」

 

「つい昨日妹さんに聞いたんですよ。私は1年Cクラスの椎名ひよりと言います」

 

「僕は桂木桂馬、そこのエルシィの...まあ一応兄だ」

 

「一応...?」

 

怪訝な顔をしているが無視。あとエルシィ、変にニヤニヤするな。

 

「ああ思い出しました。桂木桂馬さん、どうやら噂通りのお方のようですね」

 

「噂?」

 

「え、にーさま知らないんですか?けっこう噂になってましたよ」

 

「なんで?」

 

「分かんないんですか?」

 

そんな噂になるようなことはしてないはずなんだが...何かしたっけ?

 

「いつどんな時もゲームをしてる変なやつがDクラスにいるって、一時期話題になってましたよ」

 

...なるほど。前の環境に慣れすぎて気にも留めてなかったが、そういえば舞島高校も入学したてはそうだったのを忘れてた。

 

「それはそうと、Cクラスの奴がDクラスの僕に話しかけても大丈夫なのか?」

 

「大丈夫とは例の事件のことですか?平気です。余計なことを言うなくらいのことしか言われてませんし」

 

「それは龍園とやらに?」

 

「おや、ご存知でしたか。仰る通り龍園君ですよ。Cクラスの王を自称している方ですね」

 

ふーん、自称ねぇ。

 

「桂木君は暴力事件についてどうお考えなんですか?」

 

「どうって...須藤がアホぐらいにしかおもってないけど」

 

「クラスメイトですが、須藤君側が悪いと?」

 

「悪いというか、結局ケガさせているわけだしどっちが仕掛けたことだろうと同じこと。もしそっちが仕掛けたのならそちらの王様はいい性格してるよ」

 

「では裁判はCクラス側が勝つとお考えですか」

 

「さあね」

 

普通ならそうなるんだけど、そうとも言い切れないのがなあ。

 

「それにしても読書仲間がいて嬉しいです。よかったら連絡先交換しませんか?おすすめの本とか紹介しますよ」

 

「あー椎名さん、にーさまは読書は...」

 

「いいぞ、交換しよう」

 

「え?」

 

エルシィ、ちょっと静かにしててくれ。

 

「ありがとうございます。それじゃあまた」

 

「ああちょっと待て」

 

「ん、どうしました?」

 

「椎名に伝言を頼みたいんだが」

 

「伝言ですか?誰にでしょう」

 

「須藤と喧嘩した3人に、僕の名前は出さずに直接伝えてもらいたい」

 

「石崎君と小宮君と近藤君ですね。それで内容は?」

 

「ああ、伝える内容は...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椎名さんが帰って、にーさまはまたいつも通りゲームの世界に帰ってしまいました。それにしてもさっきの伝言はいったいどういうことなのか、私にはさっぱり分かりません。

 

「にーさま、もしかして須藤さん助ける気になったんですか?」

 

「...いや別にそういう訳じゃない。それよりエルシィ、お前はこれから仕事だぞ」

 

にーさま、それはツンデレってやつですか?

 

「分かってますよー。これで須藤さんは助かるんですよね?」

 

「どうだろうな。椎名次第でまあ、五分五分ってところだ」

 

にーさまでも五分五分ですかぁ。大丈夫ですかね?

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