神にーさまはゲーム至上主義   作:村崎京

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遅くなりました。



人には誰しも裏の顔が...

「桂木君。今の、聞いてた?」

 

失敗した。迂闊だった。今まで人がいたことなんて一度もなかったから、油断してあんまり確認していなかった。

しかも聞かれた人が人だ。よりによってあの桂木なんて。

私がどれだけ人脈を広げても、こいつに関してはホントにゲームをやっていることしか情報が入ってこない。それだけでも得体の知れない奴なのに、昨日、あのAクラスの坂柳とカフェでチェスをやっていたらしい。そこにまず繋がりがあったことに驚きだ。ますます意味が分からなかった。

 

「聞こえるも何も、あんなバカでかい声で喋ってたら嫌でも耳に入ってくるわ」

 

「う、うるさい!人がいるなんて思わなかったのよ!」

 

てかそんなことはどうでもいい!早くこいつの口止めしないと...

 

「で、お前誰だっけ。見たことはあるような気もするけど」

 

.....は?

 

ちょ、え?

 

お前同じクラスのこの私のことを知らない!?

根暗な綾小路とかあの堀北ならともかく、この私のことを知りもしない!?そんなことがあっていいの?あんなに4月話しかけたのに!?超嫌々だったけど、この私が話しかけてあげたのに認識すらされてないなんて!

許すまじ!!

 

私が怒りでプルプル震えていると、桂木が急に焦ったように持っていたゲーム機を弄り始めた。なんで?

 

「おい、お前まさかスタンガンとか持ってないよな?急に僕に当てるのはやめろよ。百歩譲っても僕がセーブしてからだ」

 

「そんな物騒なもの持ってるわけないでしょ!そんな奴いるか!」

 

思わずまた叫ぶと、桂木は微妙な顔になっていた。え、まさかホントにいるの?そんな人。

 

「まあ持ってないなら良いんだよ。今度からは静かにしろよ。じゃ」

 

「ちょちょちょ、私の名前知りたいんじゃなかったの!?」

 

そのまま再びゲームをしようとする桂木を慌てて引き留めた。どうせならこの際こいつの連絡先もゲットしてやる。私が未だにクラスの中で連絡先を持っていないのは、桂木と綾小路と堀北と高円寺だけだ。まだ4人もいることに腹が立つ。

 

「別に興味ないからやっぱいい。僕はゲームで忙しいからほっといてくれ」

 

こ、こいつ...ちょっと私が下手に出れば...

 

「あ!にーさまここにいたんですね!探しましたよ~」

 

「ゲッ」

 

仕方がないので自己紹介しようとした時、急に声が聞こえたので、よく見ると桂木の妹だった。

 

「あれ、櫛田さん?どうしてにーさまと一緒にいるんですか?」

 

「えっ?あ、えっと、たまたま会っただけだよ~」

 

「ふーん、お前櫛田っていうんだな。そういえばいたな、そんな名前のやつ」

 

「え、にーさま同じクラスなのに知らなかったんですか!?」

 

.....ホントだよ。どうして知らないのよこの私を!

 

「どうでも良いがエルシィ、櫛田はいつもこんな感じなのか?」

 

...あ、ヤバい。

 

「え?うーんといつもこんな感じで、優しくて明るい方ですよ?そうですよね?櫛田さん!」

 

「え、そ、そうかな。ありがとう~」

 

ぎこちない笑顔を浮かべながらチラッと桂木の様子を伺うと、こっちをじっと見ていた。ホントにまずいこれは。

 

「...とんでもない猫被りもいたもんだっっフガッ」

 

こ、こいつなんてこと言うのよ!

慌てて桂木の口を塞いだ。縫ってやろうかこの口!

 

「フガガガ...ぷはっ。何すんだお前!死ぬかと思ったぞ!」

 

「あんたが失礼なこと言おうとするからでしょ!」

 

「どこが失礼だよ事実だろ。お前みたいなキャラの奴なんて、数えきれないぐらい見てきたわ。今さら見たところで何の驚きもないね」

 

「それ、まさかゲームのキャラとか言わないわよね?」

 

「お前こそ何言ってんだ。ゲームのキャラに決まってるだろ。リアルを同列に語るんじゃないゲームに失礼だ」

 

こいつホントに何なのよ!?

 

「あの~2人とも何してるんですか?」

 

あ、まずい!テンパりすぎて桂木妹がいることを完全に忘れていた。

 

「何でもないよ~。ねえ!桂木君!」

 

桂木は何も言わず、うわーみたいな目で見てくるが見てないフリをする。

 

「はぁ。エルシィ帰るぞ」

 

「え、あ、ちょっと待ってくださいにーさま~」

 

あ、ちょっと!まだ連絡先聞いてない!

 

「桂木君!」

 

「何だ」

 

「連絡先教えてよ。ほらこれ私の連絡先」

 

「...まあ良いが。メッセージとか大量に送るなよ。ゲームの邪魔になる」

 

「ははは。分かってるよ。あ、あと桂木君...」

 

ずいっと体を乗り出し、耳元に近付いた。

 

「もしこの事言ったら私...絶対許さないから。どんな手を使っても報復するよ」

 

「言わないよ。そもそも僕が言っても誰も信じない」

 

それもそうか。

桂木はそのまま、去っていった。

 

 

 

 

 

*

 

*

 

 

 

 

5月に入って約1週間がたった。あの後櫛田は何度か念を押してきたが、それも3日ほどで収まった。それに後日同じ時間帯に同じ場所でゲームをしていたが来なかったので、おそらく場所を変えてるのだろう。

 

さて。

そろそろ考えを整理する頃かもしれない。

まず僕はこの世界にやって来た時、ここは学園もののゲームの世界だと仮説を立てた。そして4月の1ヶ月間様子を見て、5月1日に学校のシステムの説明、つまりチュートリアルのようなものを受けた。このチュートリアルから、このゲームのクリアは『Aクラスで卒業すること』だと考えられた。一見単純そうでしかし難易度の高い条件だ。僕が所属させられたクラスはDクラス。いわゆる不良品が集まるクラスらしいが、それは小テストの点数やクラスポイントを見たら納得のいくことだ。だが、だからと言ってこのクラスがAクラスに上がることが不可能だとは僕は思っていない。まあその話は置いといて、僕には1つ疑問がある。

 

 

このゲームに主人公(プレイヤー)はいるのか?

 

 

僕やエルシィはこのゲームの世界の乱入者でしかないのでは?

主人公は別にいて、物語はそいつを中心に既に進んでいるのでは?

それなら僕たちを送り込んだのは一体何故だ?ただの気まぐれか?

もしこのゲームの主人公というものが存在するならば、そいつを見つけることがこれからの最優先事項になる。その場合は主人公だと判断するのは僕の勘しか基準がない。そこはギャルゲーマーの名において、当てれると信じるしかないが.....

しかし主人公云々の話は置いておくにしても、これから僕がすべきことは...

 

 

「.....ぎ!桂木ってば!」

 

「...ん、ああどうした?」

 

「さっきから目の焦点あってなかったけど、何、ついに頭ごとゲームにトリップでもした?」

 

「してないわ。お前ははよ勉強しろ」

 

現在俺の目の前で勉強しているのは長谷部波瑠加、エルシィの友達だ。1日1時間、エルシィに30分、こいつに30分の配分で勉強を図書館で教えることになった。といっても今日の僕がやる分は終わり。いちいち分からないところの質問を受けるのもめんどくさかったので、全教科分の中間テストの予想問題を作って解かせているだけ。まあでも1ヶ月で教師の特徴は掴んだし、ほとんど出る問題はあっているだろ。試験範囲が急に変わったりしない限り大丈夫だ。

ちなみにエルシィはもう今日の分が終わったので、自由にさせている。多分性懲りもなく消防車の本でも読んでる。

 

「ねえ桂木、あそこ騒がしいけどなんかあったのかな?」

 

「え?」

 

長谷部が指差したのは、近くの席で同じく勉強しているグループだった。確かに何か揉めているようだ。

 

「あそこにいるの櫛田さんだね。あと何か言ってるのが堀北さんかな?」

 

「堀北?」

 

「え、まさか桂木、同じクラスなのに覚えてないの」

 

「いいだろ別に」

 

同じクラスだったのか...

 

「あと須藤君とか綾小路君とかもいるね」

 

聞き覚えのない名前を取り敢えず覚えていたら、須藤とやらが大声を出したのでこちらまで聞こえてきた。あーなんか状況が読めた気がする。

 

「長谷部、堀北って奴は頭良いのか?」

 

「え、うん。良いと思う。小テストも幸村くんの次によかったし」

 

なるほどね。状況は分かったが...あ、須藤が堀北の胸ぐら掴んだ。

 

「あいつらって小テストで赤点ラインだった奴らだろ?」

 

「うん。須藤君はクラス最下位だったね」

 

つまり赤点組を助けるために勉強会を開いたのに、教える側がわざわざそれをぶち壊したってことか...意味が分からん。

堀北はやるつもりはなかったが、誰かが堀北を焚き付けて無理やり勉強会を開かせたって感じか?これなら一応納得がいくな。それともただ単に須藤を煽っただけか。

その後も様子を見ていると、赤点組が去っていき、櫛田も何か言ってその場から去った。その後遅れて綾小路も堀北と何かを会話し去っていき、残ったのは堀北のみ。無駄な時間を過ごしたと言わんばかりの顔ですぐにその場で教科書を開き、勉強を始めた。

 

...ちょっと探っといても良いかもしれないな。

 

「ちょっと行ってくる。勉強しとけよ」

 

「え?うん」

 

 

 

 

 

 

堀北の近くに行くと、向こうも近付いてくる僕に気が付いた。

 

「なあ」

 

「何か用かしら?勉強で忙しいから手短にしてもらいたいのだけれど」

 

「大した用じゃない。質問があってきた」

 

堀北は無言で続きを促す。

 

「さっきやっていた勉強会を開こうと計画したのはお前か?」

 

「それがどうかしたのかしら」

 

「自分で開いた勉強会を自分で壊したのか」

 

「心外ね、私が壊したんじゃないわ。あの人たちが勉強から逃げたのよ。私は正論しか言ってないもの」

 

なるほどなるほど。そういうキャラか。

 

「...よく分かった。じゃさよなら」

 

「待ちなさい」

 

用は終わったので帰ろうとしたら呼び止められた。面倒事じゃないよな?

 

「あなただけ一方的に質問するのかしら?私も1つ聞きたいことがあるのだけど」

 

「何だ?」

 

「...あなたがゲームをすることが、どうしてクラスポイントの減点対象にならなくなったのか答えなさい。どういうカラクリか知らないけど答えてもらうわ」

 

その事か...まあ別に言っても全然良いんだが、変なフラグが立つのは困るな...

...

.....まあいいか。

 

「買ったんだよ」

 

「は?」

 

「1学期分のゲームをしてもポイントを引かれない権利を買った。それだけだ」

 

おおすごい。お手本のような鳩が豆鉄砲食らった顔だ。

 

「...いくらで?」

 

「10万ポイント」

 

「...あなたアホなの?」

 

失礼な。必要経費だ。

 

「それだけか?もう行くぞ」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堀北は違うな...




櫛田さんなんかキャラ崩壊してね?
ちなみに警戒して場所変えたけど、違う場所で普通に綾小路に見られた。
桂馬の主人公センサーはコ○ンの哀ちゃんの黒の組織センサーの下位互換。
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