神にーさまはゲーム至上主義   作:村崎京

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遅くなりました。
1巻の内容終わらせたら、いつもより文字数増えちゃいました。


僕はゲーム至上主義

「おはようございます。にーさま!」

 

「おお、おはよ。今日はまた一段と元気だな」

 

「はい!昨日の夜、必死に暗記しました!もう満点取っちゃいますよ!」

 

「威勢がいいのは良いが、油断して変なミスするなよ」

 

「分かってます!今日の私には隙はありません!」

 

「...そうか。まあ赤点取らなければ何でも良いさ。取り敢えずな」

 

 

ついに中間テスト当日になりました。こんなに頑張ったんですから、やっぱり赤点の回避だけじゃなく、良い点数を取りたいところです。

昨日櫛田さんがクラスの皆さんに配った過去問とどれくらい同じなのか分かりませんが、そこはもうお祈りするしかありません。あとは頑張るだけです。

にーさまと話しながら登校していると、あっという間に学校につきました。既にほとんどの人が席に着いていて、皆さん勉強しています。いつもは話しかけてくる波瑠加さんも、今日ばかりは自分の席で最後の確認をしているみたいです。

私も自分の席でプリントを眺めていると、暫くして茶柱先生が教室に入ってきました。

 

「欠席者はなし。ちゃんと全員揃っているみたいだな」

 

茶柱先生は不敵な笑みを浮かべています。

 

「桂木ー、ゲームしまえ。もうテストだ」

 

にーさまは一瞬嫌そうな顔をしましたが、無言でゲームをしまいました。珍しく素直です。

 

「お前ら落ちこぼれにとって最初の関門がやってきたわけだが、何か質問は?」

 

「僕たちはこの数週間、真面目に勉強に取り組んで来ました。このクラスで赤点を取る人はいないと思いますよ」

 

「随分な自信だな平田」

 

そう言うと先生はプリントを配り始めました。1限目は社会です。ほとんどが暗記なので5教科の中では比較的楽な方の科目です。

 

「もし今回の中間テスト、そして7月に実施される期末テストの2つで誰1人赤点を取らなければ、お前ら全員夏のバカンスに連れてってやる」

 

「バカンス、ですか」

 

「そうだ。そうだなぁ...青い海にかこまれた島で夢のような生活を送らせてやろう」

 

それを聞いてクラスの皆さんが一斉に雄叫びをあげました。声をあげている人は全員が男子のようです。よっぽど嬉しかったんですね。あ、でもにーさまはあげてません。ゲームに水がつくから海とか嫌いですもんね、にーさま。

 

その後教室が落ち着きを取り戻し、プリントが全員に渡ると、中間テストが遂に始まりました。

 

プリントをめくって問題を眺めると、見覚えのある問題がずらっと並んでいます。どうやら過去問とほとんどが同じ問題みたいです。それに、にーさまが作った問題ともです。

私は危なげなく、空欄を埋めていくことができました。

今までで1番良い点数が期待できそうです。何せ答えが分かるのですから、獄語で書かれてなくても答えを書くことができるからです。

 

その後、2時間目国語、3時間目理科と滞りなく試験は進み、4時間目の数学も私は高得点を期待できそうな感触に胸を踊らせていました。隣のにーさまは試験が始まって15分程経過すると毎時間ペンを置き、つまらなそうに頬杖ついてぼーっとしています。にーさまからしたらこの中間テストもただのイベントなんでしょうか。

 

4時間目の数学が終わり、残すところ英語だけとなりました。

 

「楽勝だな、中間テストなんて!」

 

「俺120点取っちゃうかも」

 

近くでは、池さんや山内さんがはしゃいでいます。

ただ、よく見てみると須藤さんだけ、自分の席でプリントとにらめっこしています。どうしたんでしょう?

 

「須藤はどうだった?」

 

「...ん、ああわりぃ。ちょっと今忙しい」

 

遠くから見ていても分かるほど焦っているみたいです。まさか須藤さん、過去問やってないんでしょうか?

 

「英語以外はやった。寝落ちしたんだよ」

 

「「ええっ!」」

 

思わず私も声に出してしまいました。大丈夫でしょうか?私も動揺してしまったみたいで、過去問が頭に入ってきません。

 

「にーさま、須藤さん過去問見てないみたいです。大丈夫でしょうか?」

 

思わずにーさまに話しかけてしまいました。ちらりと再度須藤さん達の様子を伺うと、堀北さんが主導で暗記の手助けをしているみたいです。

 

「.....エルシィ、すぐに櫛田をここに連れてきてくれ。あと10分弱しか休み時間がない」

 

「え、どうしたんですか急に」

 

「須藤を助けたいんだろ?だったら早くしろ、もう時間がないぞ」

 

「え、え、わ、わかりました~」

 

 

 

 

 

 

「桂木君、私に用ってどうしたのかな?」

 

にーさまに言われて、私は急いで櫛田さんを連れてきました。

 

「櫛田、時間がないから単刀直入に言うが、もしお前が須藤を助けたいのならやってほしい事がある」

 

「勿論私に出来ることなら何でもするけど、何をしたらいいのかな?」

 

「次の英語のテスト、60点以上取るな。それに今から言う奴にもそうするように頼んでくれ。まず平田...」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って、60点以上取るな?どういうこと?」

 

「須藤を確実に助けるならこれしかもう方法はない。時間がないから有無をいわずに早よ行け」

 

「.....終わったらちゃんと説明してくれるよね?」

 

「ああ。テストの結果が出たら教える」

 

「分かった。それで、他は誰に?」

 

「まず平田、次に王、最後に幸村だ。この順番でいけ。幸村は断られる可能性が高い。無理強いする必要はないから、無理そうだったらすぐに諦めろ。そもそも理由を言わずに頼む時点で無理がある話だからな」

 

にーさまが言い終わるやいなや、櫛田さんはそのまま何も聞かずに平田さんのところへ行きました。

 

「にーさま、これで須藤さんは大丈夫なんですよね?」

 

「.....これで無理なら諦めるしかないな.....僕は」

 

 

僕は?何か意味深な呟きをした後、にーさまは自分の席に戻って行きました。色々と心配ですが、私にできることはもう、英語のテストでへまをしないことだけです。

 

 

 

さあラスト、頑張るぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に足を踏み入れた茶柱先生は、驚いた様にクラスを見回しました。クラスの全員が神妙な面持ちで待っていたからでしょう。あ、全員ではないですね。隣では例の如くゲームをしている人がいますので。

 

「先生、本日採点結果が発表されると伺っていますが、それはいつですか?」

 

「お前はそこまで気負う必要もないだろう平田。あれくらいのテストは余裕のはずだ」

 

「.....いつなんですか」

 

「喜べ、今からだ」

 

茶柱先生そう言うと、黒板に紙を張り付け始めました。

私の気のせいでしょうか?少し茶柱先生の表情が、不機嫌というか.....

 

「正直感心している。お前達がこんな高得点を取れると思わなかったぞ。満点が10人以上もいた」

 

張り付けられた紙を皆さんが食い入るように見つめます。そしてすぐに歓声が上がり始めました。

須藤さんは無事に赤点を回避した様で、一際大きな声を上げています。私も無事、赤点を回避しているようです。ほっとしました.....

英語の結果を見てみると、にーさまの言っていた通り、平田さん、櫛田さん、みーちゃん、そして幸村さんまでも軒並み60点を下回る点を取っています。櫛田さんの頼みが通ったんですね。あれ?よく見たら堀北さんも英語だけ51点と、低いですね。勿論他教科は皆さんほとんど高得点を取っています。ちなみににーさまも、英語以外は満点で、英語のみ50点です。

 

「今回の中間テスト、赤点の者はいなかった。全員よくやった。次の期末テストもこの調子で精進するように」

 

茶柱先生はあんまり感情の籠っていない声で私たちを激励しました。

 

「ちなみに、須藤」

 

「な、なんだよ」

 

「お前の英語はあと2点低ければ赤点だった。そのことを胸に刻んで次の期末テストに挑むんだな」

 

須藤さんの英語の点数は39点ですので、赤点は37点以下ということですね。あれ?でも小テストの時は32点だったような.....

 

「先生、あと2点とはどういうことでしょうか。赤点は32点では?」

 

平田さんが代表して質問しました。

 

「それは前回の小テストの赤点だ。誰が赤点は毎回32点だと言った」

 

「ど、どういうことですか」

 

「.....私はお前は気付いているものだと思ったんだがな。英語だけここまで点数が低いからな」

 

その瞬間、平田さんは何かに気付いたのか櫛田さんの方に顔を向けました。

そしてそれを見て櫛田さんがにーさまの方を見つめましたが、当の本人は素知らぬ顔でゲームをしています。

 

「赤点の基準が知りたい者はそこら辺の気付いてそうな者に聞くといい。これでHRを終わる」

 

茶柱先生はそう言って教室の出口に手を掛けました。

 

「.....それと、この後綾小路と桂木は職員室に来い」

 

そう言い残し、教室を出ていきました。

 

 

 

 

 

茶柱先生が出ていった後、すぐににーさまと綾小路さんは職員室に向かいました。

クラスは、先程の赤点の謎で騒がしいです。

 

「平田くんー、赤点が37点ってどういうことなの?それに英語だけ低くしたのは何で?よく見たら他にもおかしい人いるし」

 

軽井沢さんが、皆さんの疑問を代表して聞きました。

 

「軽井沢さん、それは多分櫛田さんに聞いたら分かると思う。僕に英語で低い点数を取るように言ったのは彼女だからね。櫛田さん、良かったら教えてくれないかな」

 

それを聞いて皆さん一斉に櫛田さんの方を向きました。

 

「...ごめんね。実は私も分からないんだ。私は桂木君に頼まれてお願いしただけだから」

 

「桂木君が?」

 

「うん。でも...多分堀北さんなら分かると思うな」

 

今度は堀北さんの方に視線が動きます。

 

「どうしてそう思ったのかしら」

 

「私は堀北さんに低い点数を取るようにお願いしてないけど、堀北さんも英語の点数だけ低いから」

 

「そうね.....この学校の赤点の基準は平均点の半分で設定されているのよ。つまり前の小テストの平均点が約64点で赤点が32点、今回の英語の平均点が約74点で赤点が37点といったところかしら」

 

「そうか。つまり元々点数が高い人が低い点を取れば平均点が大幅に下がって、赤点ラインも下がるということか!」

 

「そうよ。つまり、須藤くん」

 

「な、なんだよ」

 

「あなたは本来赤点だった。あなたの点数を見るに、私1人が点数を下げても結果は変わらなかった。おそらく桂木君が動かなければ、退学になっていたということよ」

 

「.....俺は堀北と桂木に守られたってことかよ」

 

堀北さんの言葉に須藤さんは表情を固くしました。退学がすぐそこまで来ていたということを、身に染みて感じたのでしょう。

 

「なんで...お前俺のこと、嫌いだって言ってただろ。それに桂木は...何考えてんのか分かんねえ」

 

「私は私のために行動しただけよ。勘違いしないで。桂木君に関しては私もよく分からないけど」

 

にーさまの行動は基本的にゲームが中心なので.....

 

それにしてももうすぐ授業が始まりますけど、にーさまと綾小路さんは何の話をしているのでしょうか.....

 

 

 

 

 

 

*

 

*

 

 

 

 

 

「..........」

 

お互いに無言のまま、僕と綾小路は職員室に向かっている。話があるなら放課後でも良かっただろうに。何故今なんだ。

 

しばらく無言で歩いていると、職員室につく前に既に廊下で茶柱が待っているのが見えた。

 

「来たか」

 

「一体何の用ですか」

 

「すぐに終わるさ。桂木、英語のテストの点数を操作したのはお前だろ」

 

無言で頷く。その質問に何の意味がある?

 

「今回のテストでお前ら2人がやったこと、過去問の入手と平均点を下げるというのは、中間テストの攻略法として正解だ。ただ、最後に詰めを誤ったな。テストの平均点を下げたことで、入手できるクラスポイントも少しではあるが低下した。最後に暗記を徹底させておけば、防げただろう」

 

「過去問を入手したのは俺じゃないですよ。櫛田です」

 

綾小路がとぼけた。それは無理があるぞ多分。

 

「お前が表立って騒ぎたくない理由は察するが、上級生には上級生の課題がある。お前が3年生に接触していたことも、残念ながら把握済みだ」

 

どうやらこちらの行動は結構筒抜けのようだ。

 

「それで、この会話には一体何の意味が?もうすぐ授業が始まるんですが」

 

「そうだな...まあいい。私は今非常に楽しみだぞ。お前ら2人、それに堀北がいれば、あるいは。本当に上のクラスに上がれるかもしれないな」

 

そう言って、茶柱は職員室に去っていった。何がしたかったんだホントに。

 

「.....戻るか」

 

「ああ」

 

結局何故呼ばれたのか謎のまま、僕たちは教室に戻ることにした。しかし、こいつと2人だけなのは都合がいい。言っておきたいこともあるし。

 

「綾小路」

 

「なんだ?」

 

「お前が能力を隠す理由に興味はないけど、隠れ蓑に僕を使うのはやめてくれよ。僕だって目立ちたくない。僕はゲームが出来ればそれでいいんだ」

 

「.....ああ」

 

「ちなみに知ってると思うが、僕は堀北に点を下げるように頼んでない。あいつは自分の判断で点数を下げてる。隠れ蓑にするならあいつにしろよ。やりようによってはあいつも化けるかもしれないぞ」

 

「そうだな」

 

やはり読めない。こいつはやっぱり表情が全く変わらない。

その後会話らしい会話はなく、そのまま教室まで戻った。

 

 

 

 

 

*

 

*

 

 

 

 

 

「にーさま、茶柱先生と何話してたんですか?」

 

「他愛もない世間話」

 

「も~何でごまかすんですか~」

 

「ホントに語るほどの話はしてないんだよ」

 

あの後帰ってきたにーさまは、須藤さんにお礼を言われましたが、それを適当に流して、いつも通りゲームに没頭しています。

 

「桂木!」

 

「ん?」

 

「今日綾小路の部屋で打ち上げするんだけど、お前も来ないか?」

 

声をかけてきたのは池さんでした。隣に綾小路さんと櫛田さんもいます。

 

「悪いけど...」

 

にーさま、やっぱり断るんですか。

 

「桂木君」

 

「なんだ」

 

「試験終わったら全部説明してくれるって言ったよね?」

 

「いや、それはもう堀北が説明したって...」

 

珍しくにーさまが押されてます。それに何だか櫛田さんの顔が怖いです。

 

「桂木」

 

「何だ綾小路」

 

「ゲームソフト1本奢る」

 

「分かった行く」

 

....ということで、打ち上げに参加することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体どこなの.....ここ」




ということで1巻内容終わりました。
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