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「はぁぁぁぁ」
あぁ、また口から幸せが逃げていってしまった。一体今日何回目だろうか。
こんな訳の分からない状況になってから、私の頭は未だ混乱したままだ。
「どうしたの、ため息なんかついちゃって。気分悪い?」
私に話しかけてきたのは、星之宮先生と言うらしい。そして私の担任となる予定で、私は1年のBクラスに所属する...らしい。
さっきから『らしい』ばっかりなのは、私がそれくらい混乱している証拠。
「あ、すいません。ちょっと...思いだし憂鬱です」
「そう?まあ大丈夫ならいいの。もうすぐ着くよ」
「はい」
あいつも未だ見つけられてないし、これからどうしよう.....
取り敢えず落ち込んでばかりもいられないし、しゃきっとしないと。
「さっき説明したこの学校のシステムのことだけど、分からないことがあったらクラスの皆に遠慮なく聞いてね。私のクラスの子達、皆いい子だから~」
「はい。でも大丈夫です。大体理解してます」
理解はした。したけど...何で私Bクラスなんだろう。私はいつも1番だったのに。駆け魂狩りを始めてから上手く行かないことばかりだ。これもため息の原因だったりする。
「着いたよ~」
気が付いたら目の前に扉があった。上には1-Bと書かれたプレートがある。
『どんな子かな!?』
『そもそも男か女かも分かんないんだよね』
あー話してる話してる。まずいな~緊張してきた。
「ここで待っててね」
そう言って星之宮先生は教室に入っていった。
『はいはい、ちゅうも~く。今日から転入生がこのクラスに入るよ~』
『先生、どんな子ですか!?』
『ん~まあそれは、見てからのお楽しみかな』
扉の向こうでお気楽な会話が繰り広げられている。何で私こんなに緊張してるんだろう?やっぱり状況を飲み込めてないからかな...
『じゃ、もう入ってきていいよ~』
お呼ばれみたいね。ふーっと深呼吸して...
さて、行きますか。
.....ガラガラガラ
扉を開けると自分を見つめる顔顔顔。
ざっと教室中を見渡すが、やはりあいつはいなかった。どこにいんのよ全く...
「それじゃ自己紹介よろしくね」
「はい」
取り敢えず探すのは、この転入生イベントが終わってからね。って、イベントって...私もあいつに毒されてるわね。
「今日からこのBクラスでお世話になります。ハクア·ド·ロット·ヘルミニウムです。よろしくお願いします」
お辞儀、完璧。
「じゃあヘルミニウムさんは、あそこの空いてる席ね」
先生が指差したのは窓側の1番後ろの席だった。席に着いて一息。そしてさりげなく隣の人を見てみると...何この子スッゴい可愛いんだけど。それに胸もおっきい...何か腹立ってきた。
「.....?」
私がじっと見つめていると、視線に気付いたのかこちらを向いてきたので、あわてて体を前に向き直した。
「じゃあこれでHRを終わりま~す。あ、あんまり転入生質問責めにしちゃダメだぞ~」
そう言って星之宮先生は教室を出ていった。
さてこれからどうしようかな...
「ねえねえ。ハクア·ド·ロット·ヘルミニウムさんだったっけ?私、一之瀬帆波。よろしくね」
話しかけてきたのは隣の席のめっちゃ可愛い子。一之瀬さんと言うらしい。
「こちらこそよろしく。長いからハクアでいいよ」
「おー、りょーかい。それにしても1年生のこの時期に転校なんて珍しいね」
「ま、まあそうね。色々と事情があって.....」
「そっかあ。もうこの学校のことについての説明はされてるの?」
「うん。まあある程度は。クラスポイントでクラスが変動することとか、プライベートポイントがそのまま所持金になることぐらいかな」
地獄では、一人一人に優劣をつけることはあっても、クラスとか集団で優劣をつけることはなかったな。
「ちなみに今のBクラスのクラスポイントは660ポイントなんだけど、何か他のクラスでトラブルがあったみたいでまだ支給されてないんだよね」
トラブル?何か事件でもあったのかな。
「上がってそう?」
「どうかなー?皆中間テスト頑張ったし、上がっててほしいけどね。にゃははは」
元気だなーこの子。
「そういえばもう日用品とか買ってるの?」
「いやまだだけど...」
「じゃあ今日の放課後一緒に買い出ししようよ。けやきモールってところなんだけど、大体何でも買えるよ」
「え、あ、それは凄く助かる。ありがと」
正直右も左も分からない状態なので、ありがたい申し出だった。
「帆波ちゃん、放課後けやきモール行くの?」
「あ、千尋ちゃん」
突然後ろから覗いてきたのは、千尋と呼ばれた女の子だった。ショートヘアでこちらも可愛い。
「ハクアちゃんの買い出しに付き合おうと思って」
「それじゃ私も一緒に行っていいかな?ハクアさんとも仲良くなりたいし」
「あ、うんいいよ。千尋さん?だっけ?」
「あ、ごめん自己紹介してなかったね。私は白波千尋だよ。よろしくね」
「こちらこそよろしく」
何だろうこの人たち。コミュニケーション能力が半端なく高い気がする。私が低いわけじゃないよね...
「それじゃ放課後はけやきモールにレッツゴーだね!」
「あ、一之瀬さん1つ聞きたいというか、質問があって...」
「お、なになに?何でも聞いて」
「この学校に桂木って奴いる?」
*
*
昨日は7月1日だった。
つまり月の初めということで、ポイントがプラスに転じていればゲームを買うポイントも、少なからず入っていた筈だった。そして実際、昨日の発表でDクラスのポイントは85ポイント。つまり8500ポイント入る...ことはなかった。
「にーさま、どうして須藤さんを助けてあげないんですか~?」
「知るか。これ以上僕に面倒事を持ってくるなゲームをさせろ!」
「えぇ~」
そう。須藤のアホがCクラスとトラブルを起こし、そのせいでポイントの支給が見送られているのだ。
それに聞いた感じの現場の状況を考えると、まともに闘っても勝てないレベルでひどいのだ。
「でもこのままだと須藤さん停学になってしまいますし、クラスのポイントも減ってしまうかもしれませんよ?」
「あのなぁ。もしここで僕が須藤を助けたとするぞ。そしたらあいつはどうなる?」
「え、それは...喜びますよね?」
「それはそうだが、そういうことじゃない。あいつの様子を見るに、あいつは自分が無罪なのは当たり前で、ただの被害者だと本気で思ってる。もしここで無罪を勝ち取ったとしても、またトラブルを必ず起こす。その度に火消しに動くなんて僕は御免だぞ」
櫛田とか平田とかは庇うつもりみたいだったがな。平田は知らんが、櫛田はいつまであの気持ち悪い仮面つけとく気だ?
「じゃあにーさまは何もしないんですか~?」
「僕はしない。ただ櫛田とかが無罪のために動くならそれはそれでいいさ。ポイントが減らないに越したことはない」
それに...あいつが動くならまあ停学はないだろ。
コツコツコツ...
杖の音が聞こえる。
「こんにちは桂木君。久しぶりですね」
「.....坂柳か」
案の定目の前に現れたのは坂柳と...知らない取り巻き2人。
「つれないですね。そんな邪険にしなくてもいいじゃないですか。おやそちらは彼女さんですか?」
「妹だ」
知ってて言ってるだろお前。あとエルシィ、それくらいで慌てふためくな。
「ふふふ。冗談です」
「はあ。それで、従者2人も連れて何の用だ?水戸○門ごっこか?」
「違いますよ。この2人は助さん格さんではないです。橋本君と鬼頭君です」
橋本と呼ばれた奴はチャラそうな見た目をした男、鬼頭と呼ばれた奴はいかつい男だった。
「これからお暇ですか?パレットでまた一戦どうかと思いまして」
またチェスかよ。どんだけ好きなんだ。
「また何か賭けるのか」
「いえそのようなつもりではありませんでしたが...今1勝1敗ですから。決着つけておきたくありませんか?」
決着ねえ。
「にーさまいつの間にチェスなんてしてたんですか?」
「ん、あぁそういえば、2回ともお前いなかったな」
「1勝1敗ってことはにーさま1回負けたんですか。強いんですねあの方」
感心したようにエルシィがしきりに頷く。
...何か癪だな。
「いいぞ付き合ってやる」
「それはよかったです。それでは早速向かいましょう。橋本君、鬼頭君、今日はここまでで大丈夫です。ではまた明日」
あいつら一言もしゃべらなかったな。
エルシィを帰らせてもよかったが、見たいと言って聞かないので仕方がなく連れていくことにした。
パレットに着くといつもより生徒の数が多い。月初めだからかポイントに余裕のある奴が増えたのか。
目の前の坂柳は嬉しそうに駒を並べている。そして僕の隣で物珍しそうにチェス盤を眺めているエルシィ。
「楽しそうだな」
「ええ。桂木君とチェスするのはとても楽しいです。本気を出しても負けるかもしれない相手と闘うのはとっても刺激的ですから」
さいで。
「では早速始めましょう」
ということで坂柳との第3Rが始まった。
「そういえば」
始まって10分程経って、急に坂柳が口を開いた。ちなみに現在戦局は五分五分だ。エルシィは未だ僕の隣で盤を眺めている。
「今日Bクラスに転入生が来たのをご存知ですか?」
「いや初耳だ」
この時期に転入生?珍しいな。
「その転入生が今日の昼休みに、急にAクラスにやってきたんです」
「それで?」
「扉を開けると同時に『カツラギいる!?』と言って入ってきたんですよ」
「はあ?」
「実はAクラスにはあなたと違う漢字のカツラギ君がいるのです。葛城康平君と言います。突然の来訪でしたので皆さんびっくりしていましたし、葛城君も虚をつかれた顔をしていたくらいです。ですが、どうやら人違いだったみたいで、転入生は謝りながらすぐに去っていきました」
そもそも何で来たばかりの転入生が人を探してるんだ?
「この学年には私の知る限り、カツラギという名の生徒は葛城康平君とあなた。そしてそちらの妹さんしかいません。もしかしたらあなた方2人のどちらかだったのでは?」
「そんなわけないだろ。転入生がどうして僕に用が...」
まさか.....いやでもさすがにそんなわけ...
「おや、何か心当たりが?」
「いや。さすがにあり得ない.....エルシィ心当たりあるか?」
「え!?わ、私ですか?いえ、全然ないです...」
まあそりゃそうだ。あったら逆に怖い。
「一之瀬さん、白波さん、今日はありがと」
「いやいやこちらこそー。楽しかったよハクアちゃん」
..........
「おや桂木君。その手は悪手では?」
待て、それどころじゃない。
「.....エルシィ、今の聞こえたか?」
「は、はい。いやでもそんなまさか.....」
おそるおそる後ろを振り返るとそこには.....
「ハクアぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
実は作者はハクアが1番好きです。ハクア結婚してくれ。
確かにポンコツのイメージがあるが、基本スペックは結構高いハクアさんはBクラス入り。