信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット   作:雑草弁士

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プロローグ

 瞬かない星が、ゆっくりと流れて行く。それで、俺の身体が回転している事を理解する。視界の片隅に、崩壊したスペースコロニーが見えた。

 

「駄目……だったか。守れなかった……」

 

 ここはサイド1宙域ザーン……。地球と月で構成される重力均衡点(ラグランジュポイント)の1つ、L5ポイントに建設されたスペースコロニー群だ。ここは今、サイド3の奴ら……ジオン公国の軍により奇襲攻撃を受けて、壊滅状態になっていた。

 

 俺はサイド1の2バンチコロニーで育った。そして宇宙市民に地球連邦の参政権が無い事を憂い、軍人として栄達して発言権を得て、その現状を変えようと地球連邦軍に志願したんだ。

 

 その後俺はスペースノイド差別に苦しみながらも士官学校を優秀な成績で卒業、宇宙戦闘機FF-4トリアーエズのパイロットとしてサイド1駐留艦隊に配属されたんだ。軍人として故郷に帰って来た俺を、サイド1の連中は最初は裏切り者を見るような目で睨んだよ。

 

 だけど俺と一部軍人たち……一部しか居なかったってのが悲しいが、その少数派が必死でサイド1住民と融和すべく努力した事で、少しづつ住民側の空気も和らいで来てたんだ。

 

 

 

 だがそんなさ中、サイド3のジオン公国が地球連邦政府に対し独立を宣言、宣戦を布告し、サイド1、2、4に奇襲攻撃を仕掛けたんだ。

 

 

 

 駐留艦隊全てのレーダーはじめ各種センサー、レーザー通信以外の通信が謎の故障を起こし、俺たちは耳目を塞がれた状態で戦わなければならなくなった。いや、全軍の機器が一度に故障だなんて、あるわけがない。明らかに何らかの電子妨害が行われたんだろう。

 

 俺は必死で戦った。だけどレーダーも効かない、通信で指示も受けられない、そんな状態では勝ち目は無かった。しかも敵の巨大ロボット……。よくわからんが、15mから20mぐらいの大きさだと思うんだが。トリアーエズでは太刀打ちできなかった。俺のトリアーエズはロボットが持ったマシンガンで撃破されて、俺は宇宙に放り出されたんだ。

 

 そしてサイド1は蹂躙された。なんで民間人の宇宙市民が住むスペースコロニー群まで、攻撃するんだ!? 開戦当初のジオン公国総帥ギレン・ザビの演説は連邦軍にまで流された。奴は宇宙市民の地球連邦からの解放を謳っていたじゃないか! それとも何か!? サイド3の住人以外は、宇宙市民じゃないとでも言うのか!?

 

 悔しかった。悔しかった。俺の父や母も、弟も妹も、みんな地球連邦政府に味方なんかしてなかったぞ。なのに、なんでサイド1を、ザーンを、俺の故郷を、サイド3の……ジオンの連中は皆殺しにしやがったんだ。

 

 視界の端を、また損壊したスペースコロニーが過ぎる。あれは俺の育った、2バンチコロニーだ。あそこには俺の家族が住んでいたんだ。だがあの様子じゃ、生き残りはいないだろう。

 

「……残りの酸素は半分を切ったか」

 

 どんなに悔しくても、どうにかなるわけじゃない。それに残り時間も眼に見えて迫って来る。宇宙服(ノーマルスーツ)の酸素は半分以下。俺はこのまま宇宙を漂い続け、酸素が切れれば屍になってしまうんだろう。俺は早くも、諦めかけていた。

 

 

 

 その時、俺の耳に声が届いた。

 

『サブロー……。サブロー!』

 

「な!? だ、誰だ!? ……空耳か?」

 

『このうつけものめが! 空耳ではないわ!』

 

「!!」

 

 俺の意識がぶわっと拡大する。次の瞬間俺は、宇宙服(ノーマルスーツ)ではない生身で、宇宙空間に浮いていた。

 

「な、なんだこれは!? 俺はいったい……」

 

『貴様はいま、『にゅうたいぷ』能力を開花させつつあるのだ。その『にゅうたいぷ』能力の1つ、他の『にゅうたいぷ』能力者との意識の交感で、貴様はわしと会話しておる。周囲の宇宙空間とやらは、あくまで幻よ。貴様の身体は、今も現実の宇宙とやらに浮いておるわ』

 

「!? あ、あんたは……」

 

 俺の眼前には、時代がかった甲冑を身に着けた、しかし兜は被っていない壮年の男が居た。しかしその男の周囲は、何と言うかオーラの様な物が取り巻いており、異様な圧を発している。

 

「あんたは、何者だ?」

 

『わしは貴様の先祖よ。平朝臣(たいらのあそん)織田上総介(おだかずさのすけ)三郎信長(さぶろうのぶなが)だ』

 

「え……。おだ……のぶなが、って確か歴史の……」

 

『無礼者めが!!』

 

「おわっ!?」

 

 いきなり男……俺の先祖の信長だと名乗る男が激怒した。何が何だかわからないが、何かしら無礼を働いたらしい。

 

「ま、待ってくれ! なんか俺が無礼を働いたのか!?」

 

『ち……。そうであったな、今の時代は(いみな)という慣習は(すた)れておったのだな。知らぬのなら、一度は赦そう。なれど、二度は許さぬぞ?

 このわしの名で言うならば、『信長』という(いみな)は主上……天皇陛下や、あるいは上司、両親だけが呼ぶ事を許されておるのだ。他の者が(いみな)を呼び捨てにするのは、斬り捨てられても文句が言えんほどの無礼にあたるのだ』

 

「そ、そうだったのか。それは済まない……。申し訳無かった」

 

『まったく。貴様も日ノ本の民の血を引くならば、少しは故国の歴史を学べ。それと、わしの事は上総介(かずさのすけ)殿か、三郎殿と呼べ。ああ、いや、貴様もサブローであったな。であらば、上総介(かずさのすけ)と呼ぶがよかろう。

 本来であらば、最後に名乗っておった前右大臣(さきのうだいじん)の方が正しいのであろうがの。上総介(かずさのすけ)という呼び名には、思い入れもあるでな』

 

 信長はまだ怒っていたが、それでも俺を赦してくれた様だ。そして彼は(おもむろ)に口を開く。

 

『さて、貴様は今、諦めかけておったな?』

 

「……!!」

 

『まあ、わからぬでも無いわ。宇宙空間とやらに放り出され、呼吸するための酸素とやらも残りが少ない。まったくもって、絶望的な事象よの。』

 

「仕方……ないじゃないかよ。どうしろって言うんだ」

 

 力なく毒づく俺に、信長は笑みを浮かべて言った。

 

『そうか……。貴様は本当に諦めきれるのだな? 無慈悲にも故郷の人々を殺し尽くした、じおん……とやらへの復仇もせず、ここで朽ち果てて良いと言うのだな?

 ならば、わしに貴様の身体をよこせ。わしが貴様の身体を使い、なんとしてでも生き延びて、貴様の代わりに、じおん公国とやらへの報復をしてやろうではないか』

 

「な!?」

 

『貴様自身はわしと入れ替わりにあの世へ行き、そこでわしがじおん公国を滅ぼすのを見ておれば良い。どうだ?』

 

「……駄目だ。駄目だ!!」

 

 そして俺は、思わず叫んでいた。だってそうだろう。この復讐は、俺の物だ。故郷を奪われ、同じスペースノイドなのに無慈悲に虐殺されたサイド1の皆の仇討ちは、俺の復讐なのだ! それをいくらご先祖だからって、こんな幽霊野郎に横取りされてたまるものか!

 

「駄目だ! サイド3の奴ら、スペースノイドの裏切り者、ジオン公国の奴らは俺が叩く!身体を渡すだけならともかく、復讐の権利まで渡すのはぜったいに許せない! あんたがご先祖だからって、俺の復讐を奪わせはしないぞ!」

 

『……そうだ。それでよい。生きる気力が戻った様だな。それでこそ、我が生まれ変わりよ』

 

「……え?」

 

『そうだ、貴様は我が生まれ変わりなのだ、サブロー・オダよ。貴様の魂は、わしの魂なのだ。無論、精神や人格は貴様とわしでは別個の物なのだがな。

 良いか、サブロー。あと少しで貴様に生き延びる機会が訪れる。北極星の見分け方はわかるな?わしが合図をしたら、そちらの方角へ貴様の腰に付いておる『工具きっと』とやらを投げつけるのだ。反動で、貴様の身体は方向転換する。そちらに、貴様が生き延びるために必要な物が転がっておる』

 

 信長は楽しそうに笑っていた。どうやら俺は、正解を掴んだらしい。そして俺の意識は、肉体へと戻る。俺は肉体の感触を確かめると、急いで腰のベルトに付いていた工具キットを外し、手に持った。

 

『よし、サブロー。あと(とお)数えたら、それを北極星めがけて投げるのだ』

 

「ああ、わかったよ上総介(かずさのすけ)殿」

 

『九、八、七、六、五、四、三、二、一、いまだ!!』

 

「!!」

 

 そして俺は工具キットを北極星めがけて渾身の力で投げた。俺の身体は反動で、一方向に流れ始める。進行方向には、わずかな輝きがあった。

 

「……あれは!」

 

『むさい級、とか言うたかの。貴様らの宇宙船、さらみす級とかいうのと衝突して中破した船じゃな。まずあそこまで行けば、生き延びられるじゃろう。乗員も、衝突の衝撃で全員死んでおる様じゃしな。

 それとな……』

 

「……?」

 

 信長はちょっとだけ間を入れると、語り始める。

 

『貴様の復讐は、じおん公国を叩けばそれで終わりか? そうではあるまい。地球連邦の腐敗も、この様な事態を招いた大きな原因ぞ。じおん公国を叩いても、貴様の戦いは終わらぬわ』

 

「そうだな。俺は力を蓄えるぞ。そして連邦を改革、それができない時には俺が連邦を叩き潰してやる」

 

『その意気ぞ。よし、わしが貴様に贈り物をくれてやろうではないか。わしが何時か生まれ変わる日に備え、あの世で修行し蓄えていた力ぞ。まあ、結局は生まれ変わったら、わしではなく新たな人格がその魂と肉体に備わっておったのだがな。一時は無駄になるかと思うたぞ』

 

 その時、俺の内部から何かが湧き上がって来た。信長は、結局のところ俺の魂に宿っている前世の人格なのだ。信長が俺に何がしか与えようと言うならば、俺の中の奥底から湧き上がって来るのは理の当然だ。

 

「これは……!!」

 

『これは、わしがあの世で修行して得た、『世の理』に接続して制御する『能力』よ。この『能力』を使う事により、貴様は貴様自身と貴様の部下の能力を、自由に調整し強化する事が叶うのだ。またこの力を使い慣れれば、命なき物体に対してもその力を行使することも叶う様になるであろうよ。

 ……ふむ、そろそろ終わりか。あまりに接触が過ぎたわ。わしの人格は、貴様に溶け混じり、貴様の一部となる様だの。貴様に能力を贈ったのも、それを早めてしもうた様だ』

 

「なんだって!?」

 

『是非に及ばず、よ。サブロー、貴様が何をこの世で為すか、貴様の内より楽しみにしておるぞ。我が子孫にして、我が生まれ変わりよ……』

 

 それを最後に、信長の声は聞こえなくなった。いや、俺には分かる。彼は俺の内に宿り、溶け混じり、今もそこに居るのだ。俺は瞑目し、そして目を見開く。

 

「……感謝するよ、ご先祖さま。上総介(かずさのすけ)殿。俺はかならずサイド3、ジオン公国を叩き、腐敗した連邦もなんとかしてやる。必ず、必ずだ!絶対に……。絶対になんとかしてやるぞ!」

 

 そして俺の身体は、中破したムサイ艦へと流れて行った。




ちょっとばかり、他の作品が行き詰って心折れてしまいました。いや、それらの作品も続けるつもりはちゃんとあるんですが、しばらくお休みをいただきたいと。
そんなわけで、とりあえず箸休めと言いますか、筆休めの頭が悪い作品をお送りしたいと思います。あまり考えなくてもいい作品と言う事で。
そして、本作品で大事なのは、『パワーアップキット』の一言です。繰り返します。大事なのは『パワーアップキット』です。大事な事なので(ry
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