信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット 作:雑草弁士
ばきっ!
拳が頬肉にめり込む音が響いた。エミリア少尉とグレースが、思わず目を瞑る。クラークは、ヒュウ、と口笛を漏らす。殴られたのは、アムロ君。殴ったのは、レイ技術大尉だ。
「な……!?」
アムロ君の発した思念から、彼が『何をするんだ、父さん!』と言おうとしたのは理解していた。だが実際には、その言葉はアムロ君の喉から出る事はない。彼はレイ技術大尉の顔を見て、硬直していたからだ。
レイ技術大尉は……泣いていた。
そしてレイ技術大尉は、アムロ君を抱きしめる。彼は泣きながら、アムロ君に何度も、何度も謝った。
「すまない、アムロ……。殴ってしまって、すまない……。わたしが、わたしがガンダムなんか造らなければ……。すまない、アムロ……。うう、ううう……」
「と、とうさ、ん?」
「生きていて、よかった……。生きていて、くれた……。うう……。うぐっ……」
頬を赤く腫らしたまま、唖然としているアムロ君に、仕方ないから俺はお節介を焼く事にする。流石になあ……。このまま誤解でもされたら、レイ技術大尉があまりに……。まあ、たぶん大丈夫な気はするんだが、一応な。
「アムロ君、レイ技術大尉は……君のお父さんは、常々言っていたよ。息子の様な子供が、この戦争で死なないために、早期にジオンとの決着をつけるために、そのためにガンダムを造ったんだ、と。そして、お父さんが本当に戦争に出したくなかったのは、本当に殺し合いをさせたく無かったのは、本当に死なせたく無かったのは……。
君だ。アムロ君」
「!!」
「お父さんは、いつも君の事を想っていた。彼は懐に、いつも君の写真を持ち歩いて心の支えにしていたんだ」
アムロ君は、呆然としていた。だがその両腕が、そっと彼の父親の背に回される。レイ技術大尉とアムロ君は、しっかりと抱き合った。
「父さん……。ありがとう……」
「アム、ロ?」
「父さんが、父さんがガンダムを造ってくれていたおかげで、俺はジオンのザクに殺されないで済んだよ」
「だ、だが……。これでお前は軍人に……」
「確かにジオンのザクが襲って来たのは、ここで連邦軍が新兵器の試験をしてたからかも知れない。だけど、そうでなくても何時かジオン軍は攻めて来たかも知れないんだ。
そして、サイド1、2、4、5みたいに皆殺しになっていたかも知れない。父さん、俺たちを護ってくれてありがとう。ガンダムを造る事で、護ってくれてありがとう父さん」
レイ技術大尉は、その言葉に雷が落ちたかの様に衝撃を受けた。そして再びボロボロと涙を零し、うんうん、と頷いたのだ。
さて、俺はネルソンの
「こちらネルソン級
『こちらペガサスJr.艦長代理、ルナ2司令ワッケインだ。オダ中尉、貴官らの事だから敵は排除できたと思うが、戦果と被害は?』
「残念ながら敵ムサイ級軽巡洋艦と、S型ザクⅡ1機を取り逃がしました。戦果はF型ザクⅡを1機撃墜。被害は、こちらはありませんが……。RX計画テストパイロットが、RX-77-2専属のオオモリ少尉を除き全滅。
またサイド7の実験施設が大破、施設にいた人員は一部兵員や下士官が生き残っているだけで、士官クラスは全滅です。それとコロンブス級輸送艦チャールストンが撃沈され、乗員は全員絶望です。
更にサイド7の民間人にも多大な被害と、サイド7の1バンチコロニー自体にも大きなダメージがあります。民間人の代表からは、コロニーからの脱出を懇願されておりますが……」
ワッケイン司令は少し考え込むと、再度口を開く。
『やむを得まいな。連邦軍が宇宙市民を見捨てた、などと言う噂が立っては困る。それに貴官らの評判を落とすわけにもいかんからな』
「……評判?」
『ワイアット中将が言っておられたろう。『スペースノイドの希望の星。裏切り者ジオンを討つ志士』と。もう既に貴官らの評判は、一人歩きしている。正直済まないとは思うが、貴官らは既に連邦軍の看板の1枚であるのだよ』
……まあ、ジオンを倒すためなら客寄せパンダでもなんでもするがね。仕方ないな。
『この後で、ルナ2に人員輸送用のコンテナを搭載したコロンブス級1隻と、護衛のサラミス級とネルソン級を1隻づつ。そして搭載する
「りょ、了解です」
『後はないか? いや、RX計画の機体の件があったな。何機無事で残っている?』
「……その事で、少し爆弾案件があります」
『む……』
俺はコロンブス級輸送艦チャールストン艦長、プレスコット大尉がアムロ君とカイ君を昨日付けで地球連邦軍に現地徴用し、その2人がガンダムの3号機とガンタンクの1機に搭乗して、コロニーに潜入してきたザクⅡを2機撃破した事を説明する。
ちなみにアムロ君が、ガンダムの性能に助けられたものの、はじめて乗った
そして思う。しまった。『
『なるほど、な。プレスコット大尉……階級は追い抜いてしまったが、わたしの先輩でな。その先輩の、遺言とも言えるな。
アムロ・レイ現地徴用兵とカイ・シデン現地徴用兵だな。よかろう、悪いようにはしない、と伝えておけ。ただし、軍人になる事を拒否した場合の事も、しっかり教えておくんだ』
「はっ! 了解です!」
『以上か?』
「はっ! 以上であります」
『了解だ、ではサイド7で会おう』
通信は切れた。俺は大きく溜息を吐く。エミリア少尉とグレースが、お茶のドリンクパックを用意してくれた。ありがたく頂く。やれやれ、化け物じみた能力を誇っていても、こんなところはまだまだ人並か。
さて、RX計画試作機というかデータ収集用実戦テスト機なのだが、本来はガンダム3機、ガンキャノン4機、ガンタンク4機存在していたはずであった。しかしワッケイン司令のペガサスJr.がやって来るまでに綿密な調査を行ったところ、満足の行く状態で残っていたのは、ガンダムは3号機のみ、ガンキャノンが完全状態で2機とパーツ状態で1機、ガンタンクが完全状態で1機とパーツ状態で1機だった。
不幸中の幸いと言ってはなんだが、ガンダム1号機と2号機はそれぞれ中破と小破で、ルナ2基地ならば修復可能らしい。修復に必要なパーツもちゃんと残っている。ガンキャノンの残り1機は完全に駄目だが、ガンタンクは壊されたのをニコイチすればなんとかもう1機でっち上げられそうだ。
とりあえずグレースが、完全状態の残り1機のガンキャノンに乗り込んで、宇宙港へ物資、資材を洗い浚い運び上げる手伝いをしている。アムロ君がガンダム3号機で、オオモリ少尉がもう1機の彼のガンキャノンで、同様に物資の引き揚げをしてるんだが……。アムロ君は元々初心者マーク付きだから気にしてないんだが、オオモリ少尉が凹んでるんだ。グレースより操縦が下手だって。
ちなみにエミリア少尉は作業全体のマネージメント、クラークはレイ技術大尉を手伝って、研究施設のデータ類バックアップとかバックアップ済みの元データ消去とか、その他技術的な仕事をやってる。本当はガンダムのスーパーナパームで、色々洗い浚い焼き尽くす事も考えたんだが、それは最後に全部引き揚げた後の実験施設そのものに行う事にした。
ワッケイン司令が到着するまでに、まだまだ時間あるからな。V作戦RX計画関係のパーツ類は、破損してようがどうしようが、全部が全部引き揚げる事にしたんだよな。うん。
え? 俺? 俺は民間人の代表者たちを宥めて賺して、地球連邦軍のコロンブス級が護衛付きで皆さんを迎えに来るから、って説明会を開いてたよ?
結局のところ、俺たちとワッケイン司令は民間人たちの避難船を護りつつ、ルナ2へと帰る事になった。いや、V作戦RX計画の成果物とか、損傷部品とかまで全部積み込むのに苦労したんだよ。でもって、結局出航は避難民乗せたコロンブス級と一緒になったんだ。
ちなみにレイ技術大尉がネルソンに乗ってるからな。アムロ君とガンダム3号機……G-3仕様ってコードネームがあるらしいから、今後はそれで呼ぶかね。そのG-3ガンダムはネルソンに載せる事になった。ただ、ガンダム1号機も2号機も、最初は違ったんだが今では既に一番進歩してる、G-3仕様に改装されてたそうなんだよね。
そんでもって、アムロ君が乗ってるからという理由だけで、カイ君がネルソンに押し込まれた。俺に面倒見ろって言う事か?ちなみにガンタンクは載ってない。ちょっとネルソンの格納庫に規格が合わんので。だからガンキャノンを1機載せてる。残りのRX計画の機体やパーツ類は、ペガサスJr.に搭載した。
「はぁ……。結局俺も軍人かよ……」
「どうした、カイ君。ぶっちゃけた話だが、早く諦めた方が楽になるぞ。第一そんなに嫌なら、ガンタンクに乗って逃げようなんてしなければ良かったんだ」
「そりゃそうですがね……」
「まあ、まだ階級も決まって無いと言うか、暫定的に三等兵扱いなんだがな。俺以外の士官や、クラークとグレース以外の下士官に、そんな態度取るなよ? 修正、つまり鉄拳制裁くらうぞ?」
「ぶるぶるぶる! そりゃ勘弁! って、どんな態度取ればいいんスかね?」
とりあえず、基本的な兵隊としての態度を、カイ君にレクチャーしてやった。アムロ君にも、後でレクチャーしてやろう。しまったな、まとめてレクチャーすりゃ良かった。二度手間だ。
ルナ2で、アムロ君とカイ君は共に
まあ、でも元々俺たち第3小隊も我流って言えば我流なんだよな。たぶん連邦軍で一番最初の
ともあれ、2人には
まあシミュレーターはともかくとして、後は実機を2、3回
そしてルナ2で1週間が過ぎて、アムロ君とカイ君はペガサスJr.に搭乗し、地球はジャブロー基地へと出立して行った。ペガサスJr.にはG-3ガンダム、ガンキャノン2機、ガンタンクとニコイチの再生ガンタンクを搭載し、そしてまだパーツ状のままだったガンキャノン1機とガンタンク1機を貨物として詰め込んだとの事、
なおペガサスJr.の艦長は、先日まで副司令だったアンベール大尉が任命された。アンベール大尉は、このままだと胃に穴が開く寸前だった模様だ。まだルナ2の副司令よりも、戦闘艦の艦長の方がマシだったらしい。新しい副司令は、クラスニコフ大尉と言う人だそうだ。
ペガサスJr.にはアムロ君カイ君の他、レイ技術大尉やガンキャノンのテスパイであるオオモリ少尉も乗り組んでいる。彼らの使命は、南米の連邦軍ジャブロー基地までRX計画の機体を、特にG-3ガンダムを無事届ける事だ。そしてもう1つ、サイド7難民の乗ったシャトル2隻も同時に護らねばならない。
この任務には、リード中尉のサラミス級マダガスカルと、もう1隻サラミス級トリチゲンが支援に就けられる。リード中尉で、大丈夫だろうか。まあトリチゲンの艦長と、ペガサスJr.のアンベール大尉に期待だな。それにリード中尉、ちょっとアレなところはあるが、悪い人じゃない。
一方の俺たちS.T.S.C.第3小隊なんだが。いきなりワッケイン司令に呼び出された。司令は俺たちの敬礼に答礼で返すと、口を開く。
「今日呼び出したのは他でもない。そろそろS.T.S.C.を拡張する時期に来ているのでな」
「はっ! ……拡張、ですか?」
「うむ。今の編制で1から4までの4個小隊で編制されている。まあ、諸般の事情により第1と第2は編成表にあるだけで、充足率0%なのだが。
この小隊の1つ1つを、それぞれ1個中隊に拡張する。それに伴い、オダ中尉。貴官は大尉に昇進となる。功績も溜まっていたしな」
「!!」
そして、ワッケイン司令は言葉を続ける。
「無論今すぐでは無い。無いが、その心づもりをしておけ。これは決定事項だ。またこれに合わせ、エミリア・エッジワース少尉も中尉昇進。クラーク・キャラハン伍長とグレース・ギャレット伍長は一度軍曹に昇進後、翌日に曹長へ再度昇進する。
エッジワース少尉が中尉になったなら、独自に隊再編後に加わった小隊を率いるか、あるいは今まで通り大尉になったオダ中尉の下で副隊長を務めるか、それはオダ中尉に任せる」
「「「「はっ!!」」」」
「補充人員はこちらから送るが……。引っ張りたい人材が居たら、人事と相談しておけ」
「はっ! 了解しました」
さて、部隊拡張か。ネルソン一隻じゃ搭載しきれないな。おそらくは新たに1~2隻の専属艦が陣容に加わるんだろう。他にも専属整備班も拡張されるんだろうな。グェン整備班長も昇進かな?
何にせよ、これまでとは部隊の規模が変わる。俺の『
『親父にも殴られた事あるのに!』(爆)
いや、本作でやりたかった事の1つ、なんとか消化できました。テム・レイに殴られるアムロ。いや、アムロがガンダムで戦ったら、本作のレイ技術大尉殿はぷちっと切れるでしょう。酸素欠乏症状態じゃないんだし。
ガンダム2機、中破と小破でルナ2に残されました。この2機も、最初からG-3仕様(マグネット・コーティング済みガンダム)になっております。これをどの様にいじるか、お楽しみに。
そして主人公、ようやっと昇進の目が(笑)。