信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット 作:雑草弁士
01小隊1機対04小隊4機の4連戦、今は最後のグレース機との対戦が行われていた。ビームスプレーガンの上部に訓練用のレーザー発振器を取り付けた物で撃ち合いをするのだが、訓練用レーザーが着弾した場所はコンピューター制御で破壊された事になる。本当に壊れるわけじゃないんだが。
ちょっと前まではペイント弾装備のマシンガン使ってたんだがな。あれは整備班にウケが悪いんだ。洗浄の手間が大変だって事で。
それはともかく、戦場はルナ2表面の演習場だ。宇宙での機動戦でも良かったんだが、04小隊の連中は地球から上がってきたばかりで、空間戦闘はシミュレーターでしか経験無いからな。せっかく1対4にして手加減してやってるのに、その意味が無くなるだろう。
と言っても、どちらにせよそんな手加減は、意味が無いんだがな。
『ば、馬鹿な……』
『俺たちが、こんな簡単に……』
『よ、4対1よ?』
『化け物ども……』
うん、4連戦で俺たちの側は1撃も貰わずに、相手を叩き潰した。俺は勿論のこと、クラークもエミリア中尉も、そして今グレースがあっと言う間に04小隊機を、全機撃破して見せる。相手機のコクピットだけを撃ち抜き、機体の他部位にはかけらも損傷判定は無い。
「……お話にならない練度だな。02、03小隊の連中にもまったく及んでおらん。そんな調子では……死ぬぞ」
『!?』
『な!?』
「戦場では、貴様らがお偉いさんの子弟だからと言って、
最前線であるルナ2のレベルには、まったく及んでいない。戦場では、間違いなく貴官らが狙われるぞ。それを助けてくれるのは、同じ隊の仲間しかおらん。だがそれを大事にせずに、侮り、蔑み、ケンカを吹っ掛ける様な真似をしていては……。見捨てられても仕方がないぞ」
それだけ言って、俺は01小隊に帰還の命令を出す。01は粛々と、無言で格納庫へと帰る。エミリア中尉が、思念で語り掛けてきた。
(ふう……。これで心を入れ替えてくれるかしら?)
(無理だろ)
俺はさっくりと答える。クラークも、溜息交じりの思念を寄越して来た。
(だろうなあ。奴らからは、
(そのうち爆発するかも知れないよね……)
グレースの思念にも、憂鬱そうな感情が乗っていた。俺はクラークとグレースに対して、注意を促す。
(クラークとグレースは曹長だからな。奴らより階級が低い。しばらくの間、できるだけ単独では動き回るな。クラークは俺と、グレースはエミリア中尉と可能な限りいっしょに居るんだ)
((了解……))
(本当に、やれやれよね……)
まったく、うんざりするな。本当に、あいつらどうにかなるんだろうか。
そして奴ら、というかその内の女2人、オリビア・オークウッド少尉とリンジー・リンドグレーン少尉がやりやがった。エミリア中尉が用事でいない隙をついて、グレースに難癖をつけてきたんだ。
まあ俺とクラークがグレースの念話で呼ばれて、急ぎ現場に向かったんだけどな。そしたらちょうど、オークウッド少尉がグレースを殴ろうと拳を振り上げたところだった。俺は急ぎそちらに
「あ!?」
「ち……」
「何をしていた、貴官ら?」
オークウッド少尉は、苛立たし気な顔をして答える。
「これは……。ギャレット曹長が反抗的だったので、修正を行っていたのです」
「ほう……。まあ修正は慣例として、問題視される事は無いがな。だが理不尽な理由で下位の者を殴る事は、軍法で禁止されている。グレースが本当に反抗的な態度を取っていたならば、問題にはならんだろう。だがな……」
そして俺は、右手の親指で壁の監視カメラとマイクを指差してみせる。オークウッド少尉とリンドグレーン少尉は、まずい! という表情になった。
「ルナ2基地ではな? 敵の陸戦隊などの潜入に備えて、あちこちにカメラとマイクがあるんだ。なんだったら、それの記録の閲覧申請をしてもいいんだぞ?」
「「く……」」
「……このままでは、貴官らもグレースも収まらんだろう。1時間後だ」
「「……は?」」
「1時間後に04小隊全員で、遠心重力ブロックの第3倉庫に来い。01小隊相手で、生身での格闘訓練だ。俺の権限で許可を出してやるから、遠慮なしに殴り合え」
そして俺はクラークとグレースを引き連れて、その場を去る。オークウッド少尉とリンドグレーン少尉の睨みつける様な視線が、背中に感じられた。俺は思念でグレースに言ってやる。
(殺したり再起不能にしなけりゃ、何やってもいいぞ)
(了解!)
(俺の出番はありますかね?)
(無いと思うぞ)
(うふふふふ……。けちょんけちょんにしてやるわ)
難癖をつけられて、さっきまで不機嫌だったグレースだが、機嫌が直った様で何よりだ。
遠心重力ブロックの第3倉庫で、04のニューウェル中尉が苦虫を噛み潰した顔になっている。オークウッド少尉とリンドグレーン少尉が、ここまで短絡的で陰湿な行為に出るとは思わなかった様だ。
オークウッド少尉とリンドグレーン少尉は、ニューウェル中尉には済まなそうな視線を向けていたが、しかしながら好戦的な表情を崩してはいない。最後のヘルマン少尉は、やれやれと肩を
そして俺は言ってやった。
「じゃあ始めるぞ。そちらは4人全員で来い。こちらはグレース・ギャレット曹長1人でかまわんそうだ」
「「「「な!?」」」」
ニューウェル中尉が、目を吊り上げる。
「い、いくらなんでもそれは俺、自分たちを馬鹿にしてはいませんか!?」
「前にも言った様な気がするが、これでもまだ手加減、ハンデは足りておらんぞ?」
「……どうなっても、知りませんよ?」
俺はニューウェル中尉の台詞を無視し、右手を挙げる。グレースが身構え、04の4人も構えた。
「では用意……始め」
「!!」
俺が手を振り下ろした瞬間、オークウッド少尉がグレースに向かい突進し、そして足を払われて派手に転倒する。
「がっ!?」
「……」
グレースはオークウッド少尉をそのまま蹴飛ばして追い打ちを入れると、リンドグレーン少尉の懐に入ってジュードー技の背負い投げで派手に投げ飛ばし、オークウッド少尉の身体の上にリンドグレーン少尉を叩きつけた。
一瞬遅れて、慌ててヘルマン少尉がグレースに殴りかかる。一方のニューウェル中尉は背後からグレースを攻撃しようとしていた。だがな。グレースは01小隊の部下3人中で、一番ニュータイプ能力が優れているんだ。
うん、『
グレースが元から小柄な体を更に屈めたため、ニューウェル中尉の拳はヘルマン少尉の胸元へ、ヘルマン少尉の拳はニューウェル中尉の顔面に、互いに炸裂する。そこへグレースが屈めた身体を回転させ、伸ばした右脚で両者に足払いをかけた。
無様に転倒したニューウェル中尉とヘルマン少尉を放置し、グレースは必死で立ち上がったリンドグレーン少尉の胸元に肘打ちを入れて、相手を叩き伏せる。そしてこれも立ち上がりかけたオークウッド少尉の脇腹に蹴りを入れて、再度彼女を床に沈めた。
04小隊の全員が、床に這い
そして今回の元凶とも言えるオークウッド少尉は、床にへたり込んだまま、グレースから少しでも離れようとずるずると後ずさる。彼女は半泣きになりながら、力なく叫んだ。
「なんなのよ……なんなのよ! なんでこうなるのよ! あんたら
「……それが本音か」
俺は右手を上げてグレースを制止し、前に出た。
「グレース、代わろう。……ニューウェル中尉、今オークウッド少尉が言ったのが、貴官らの総意か?」
「……そうです。いえ、そうでした。ですが、間違っていました」
「ノーマン中尉!?」
裏切られたかの様な悲痛な声で、オークウッド少尉が叫ぶ。だがニューウェル中尉はゆっくりと身体を起こすと、よろよろと立ち上がり、言葉を
「現実を見ろ、オリビア少尉。
俺たちに有利な様に、
「「「……」」」
「これだけハンデをつけられて、惨敗したんだ。これで力の差が分らなきゃ、ただのバカだ。出自がどうであれ、その優秀さには敬意を払うべきだ。そして自身の未熟さを恥じなきゃならない。
それができなきゃ、俺たちは、もう……。エリートなんかじゃ、ない」
「うう……。うあああぁぁぁーーーっ!!」
号泣するオークウッド少尉。悄然とするリンドグレーン少尉。よろよろと壁にすがって立ち上がり、肩を落とすヘルマン少尉。そしてニューウェル中尉は、だがしっかりと俺の目を睨みつけて、叫ぶ様に言う。
「だけど! 俺は折れないぞ! 何時か、何時かあんたを追い抜いて、あんたを顎で使う立場になってやるぞ! 必ず、必ずだ!」
「やれるものなら、やってみろ。期待せずに待ってる」
「おい! いつまでへたばってる! 立て!」
そしてニューウェル中尉は部下3名を叱咤して立ち上がらせると、俺にきっちりした敬礼を送って来る。残り3人も、なんか仕方なさそうな雰囲気はあったが、今回は整った敬礼をして来た。俺もまた、答礼を返す。
「オダ大尉! 退出許可、願います!」
「うむ、退出を許可する。それとな、整備小隊のお前ら担当の班にも謝っておけ。貴官らが横柄な態度を取っていたせいで、あちらも気を悪くしている。俺たち
「お気遣いありがとうございます! では!」
そして04小隊の奴らは、臨時の格闘訓練場になっていた第3倉庫を出て行く。エミリア中尉が思念で言った。
(……ニューウェル中尉はなんとか大丈夫そうだけど。だけど残り3人がまだ不安ね)
(そうだな。さて、どうなる事か……。俺の『
(中隊長、俺も04小隊に能力強化施すのは、ちょっと待った方いいと思いますな)
(あたしもそう思います。ニューウェル中尉以外は、まだ全然信用できません。ニューウェル中尉も完全に信用できるってわけじゃないんですけれど……)
俺たちは思念で会話しつつ、第3倉庫を出て遠心重力ブロックを後にした。
その後しばらくの間、俺たちS.T.S.C.第3中隊は何事も無く訓練の日々を過ごしていた。いや、時折ジャブローからのシャトルなどを迎えに出たり、ジャブローへ向かうシャトルを護衛したりなどの小任務はあったのだが。
あいかわらす、04小隊は周囲から浮いていた。少しはマシになったニューウェル中尉が、なんとか他の小隊や整備小隊との繋ぎを取ろうと頑張ってはいたのだが、やはり他3名が交流に消極的なのだ。
だがその分、ニューウェル中尉とは多少若干わずかではあるが、微妙にそこはかとなくカケラほどは打ち解けて来た気もする。この間も、悩みとか聞いてやろうとPXに飲みに誘ったら、素直について来たしな。ちょっとではあるが、内心を吐露してくれたし。
だがそんなある日のこと。何を血迷ったのだろうか。ジオン公国軍はドズル・ザビ中将麾下の宇宙攻撃軍に、キシリア・ザビ少将麾下の突撃機動軍もしくは宇宙機動軍と呼ばれる軍の共同作戦で、ルナ2に対して強行偵察を兼ねたらしき強引な攻撃を仕掛けて来たのである。
幸いにも、こちらの哨戒艇が宇宙要塞ソロモン方面より侵攻中の敵艦隊を発見した事で、奇襲攻撃にはならずに済んだのだが……。まずいかも知れない。04小隊が。あいつら、S.T.S.C.のレベルでは動けなくともいいから、せめて他のルナ2
そうでないと、下手するとあいつら死ぬぞ。だがニューウェル中尉はともかく、他の3人の少尉はまだ『
恒例の、訓練という名の殴り合いです。まあ結局は、
まあノーマン・ニューウェル中尉はなんとか方向修正した模様ですが、他の3名は未だに微妙な感じですね。04小隊、どうなりますか。死なれてはやはり主人公も寝覚めが悪いですし。