信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット   作:雑草弁士

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第016話:敵将

 俺たちの母艦、トロイホース、ネルソン、カラカスの3隻は暗色系の塗装による迷彩と凄まじく濃度の濃いミノフスキー粒子により姿を隠し、ルナ2近傍のデブリの中に身を潜めていた。俺たちに与えられた任務は、戦端が開かれてからしばし経過した後の横合い、と言うかZ軸方向下方からの奇襲攻撃である。

 

 ワッケイン司令が何を目論んでいるかと言うと、S.T.S.C.第3中隊による敵将の打倒である。それが成らなくても、敵将が危機に陥れば敵が混乱する。ルナ2最精鋭と目されている俺たちに、その役割が割り振られたのだ。

 

 うん、可能不可能で言えば、たぶん可能だ。だが……。俺はトロイホースのブリッジから、自機へと送られて来る映像に目を遣った。そこにはネルソン級MS(モビルスーツ)軽空母5番艦カラカスの姿が映っている。迷彩で見えづらいが。

 

 俺が頭を痛めているのは、それに載っているS.T.S.C.第3中隊04小隊の面々についてだ。最近ようやく隊長のノーマン・ニューウェル中尉は心なしか柔らかくなって来たんだが。だが副隊長のオークウッド少尉以下、ヘルマン少尉、リンドグレーン少尉は俺たち01小隊どころか、02、03、整備の各小隊や、自分たちの母艦であるカラカス乗員とも関係が微妙なんだ。

 

 ニューウェル中尉はようやく『それではいけない』と危機感を抱いたので、なんとかしようと必死で駆け回っていた模様なのだが。あの高慢だった彼が、内心悔しがりながら俺に頭を下げて、整備小隊の自分たち担当の班やカラカス乗組員たちとの間を仲裁してくれ、と頼んで来たんだよな。

 

 まあ、整備の奴らもカラカスの乗員も、ニューウェル中尉の事は若干だが見直したと言っている。だが残り3名については、眉を顰めてしまうんだ。まあ『中隊長と中尉に免じて、仕事はしますよ仕事は』と言っていたから、最悪までは行っていない。そのちょっと手前かも知れないが。

 

 ちなみに第3中隊の各小隊は、01小隊と02小隊がトロイホース、03小隊がネルソン、04小隊がさっき言った様にカラカスを母艦としている。ペガサス級は元々標準のMS運用数は6機だが、トロイホースは設計に若干の変更が加わり8機まで余裕で運用できる様になっているのだ。無理すれば10機までいける。その代わり火力が若干犠牲になっているが。

 

 そしてジオン公国軍が姿を見せる。もし早期に存在がバレたら、尻尾まいて逃げ出す以外に方法は無い。俺たちは息を詰めて状況を見守る。艦隊が静々(しずしず)と進軍して来る。

 

(なるほど。艦隊は(オトリ)か。敵はルナ2のZ軸上方からMS(モビルスーツ)隊を突っ込ませるつもりだ。『(プレッシャー)』が上方向から感じられるな)

 

(ワッケイン司令の予測通りですか。S.T.S.C.第4中隊、ようやく結成された第1、第2中隊をそちらへ()てておいて、艦隊はS.T.S.C.以外のルナ2MS(モビルスーツ)隊を率いて(オトリ)の敵艦隊へと当たる、と)

 

(そうだエミリア中尉。だが俺たちのやる事は、変わらん。戦術的には(オトリ)だとは言え、敵の指揮官は艦隊に居るのは間違いないからな。……見えるだろ? 敵の『中核』の雰囲気、敵の存在そのものが)

 

(ええ。見えるわ。わたしにも敵が見える)

 

 そして俺はトロイホース艦橋(ブリッジ)、ウェイド艦長に命じる。階級で最上位者なだけじゃなく、俺はこの小艦隊において、作戦司令の役職も貰ってるからな。

 

「ウェイド艦長、各艦にレーザー通信を繋いでくれ。俺の合図で出撃して、突入をかけるから。それまで繋ぎっぱなしに」

 

『了解です。……繋がりました』

 

『こちらネルソン艦長、モンロイ少尉』

 

『こちらはカラカス艦長、ベルトリーノ少尉』

 

「こちらのタイミングで、全MS(モビルスーツ)隊を発進させて、母艦群はそのままXY平面を2時方向に離脱だ。その後、宙域を大回りして敵艦隊Z軸プラス方向に移動。離脱して来た俺たちを拾って、一目散だ。頼むぞ」

 

『『『了解です!』』』

 

 そして俺は、肉眼ではトロイホース艦橋(ブリッジ)から送られて来る情報、精神ではニュータイプ能力の感覚で、戦域を粛々(しゅくしゅく)と見守る。やがて時が至る。

 

 自ら(オトリ)になったジオンの艦隊とルナ2艦隊が砲火を交え始め、(オトリ)艦隊に残されたMS(モビルスーツ)の更に一部が、ルナ2MS(モビルスーツ)部隊と交戦し始める。そしてルナ2に残されたS.T.S.C.第1、第2、第4中隊が要塞砲の援護の下、奇襲をかけたつもりになっていた敵MS(モビルスーツ)の本隊と戦い始めた。

 

 タイミングは、今だ。

 

「……S.T.S.C.第3中隊、全機発進せよ! これより敵将に奇襲攻撃をかける!」

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 直接返事が聞こえるのは、01小隊と02小隊の連中だけだ。だが俺のニュータイプ能力による感覚には、ネルソンの03小隊とカラカスの04小隊からの返答も聞こえていた。特に03には既に、最低限ではあるがニュータイプ能力を与えているからな。よく聞こえる。

 

 まあ04の連中は、この作戦に異議を唱えたくて仕方なかったみたいなんだがな。いくらなんでも無茶だって。気持ちは分かる。だが、S.T.S.C.第3中隊の01、02、03の実力からすれば難しいが無茶では無いんだよな。まあ、不安要素は04のお前らだ。

 

 なんなら母艦の直掩に04を残すか、と言ったら悲痛な顔で作戦参加を表明したんだよな。

 

『中隊長、進路クリア! 発進願います!』

 

「S.T.S.C.03-01-00、オダ大尉! 出るぞ!」

 

 カタパルトによる強烈なGが背中を蹴飛ばし、俺のジムは宇宙空間のただ中に射出、その勢いのままに敵艦隊に向けて飛翔した。

 

 

 

 ジオンの連中も、残された直掩機をこちらに向けて来る。まあ流石に、ここまで近づけばバレるか。目標は、グワジン級戦艦、おそらくはグワラン。ドズル・ザビ中将の座乗艦だ。今回はドズル中将自身が陣頭指揮を執っているものと思われる。

 

「全機、()とすぞ!」

 

『了解ザザザッ!!』

 

『任せザザザザッ』

 

 切れ切れにノイズ混じりの返答が来る。俺は04小隊に向けて命令を下した。

 

「04小隊! ちょっと貴官らだと荷が重い連中が来る! 俺たちが相手をするから、貴官らはグワランを沈めろ!」

 

『……了解ッ!ザッザザザ』

 

 ニューウェル中尉の返答が聞こえる。よし、任せたからな? 俺は02小隊と03小隊を黒いR-1型ザクⅡが2機混じってる敵の方に向かわせ、自分と01小隊はS型と思しきザクⅡ2機が率いている隊に狙いを定める。

 

 なんとなくだが、そいつらの『(プレッシャー)』が凄かったのだ。黒いR-1型の『(プレッシャー)』も強烈ではあったが、微妙にこちらの方がヤバそうだと感じたんだ。そしてそのS型のうち1機の『(プレッシャー)』には覚えがある。サイド7で逃げた奴だ。もう1機は覚えが無いが、何のつもりか機体を赤とピンクに塗装してやがる。

 

(……ああ、こいつが赤い彗星、か? いや、紅い稲妻かも知れんが)

 

(紅い稲妻? 知らないですね)

 

 グレースの思念が響き、グレース機がビームスプレーガンを撃つ。赤いS型はぎりぎりで躱した。躱したが、その背後にいたF型ザクⅡが爆散する。うん、グレースはなんとなく避けられそうな予感がしたので、敵の機影が重なった瞬間を狙い撃ちしたんだ。だと思う。彼女だけに限らず、01小隊の面々の考えはニュータイプ能力の感応に頼らずとも、なんとなく分るんだ。

 

『ザザザ臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の念、今こそ晴らザッザザザッ!!』

 

(黙れよ、この宇宙市民(スペースノイド)の裏切り者!!)

 

 マシンガンを連射する普通のカラーリングのS型が、どうやってか俺たちがあのサイド7のときの部隊だと気付いたらしく、頓智気(とんちき)な事をオープン回線で騒ぎながら吶喊(とっかん)して来る。ムカついたクラークが、思念で怒声を張り上げてビームスプレーガンを撃ち放った。

 

 そのS型は高度な機動でその狙いを逸らそうとするのだが、あいにくクラークは01小隊でNo.2のMS(モビルスーツ)戦闘技能を持っている。クラーク機がビームスプレーガンを2射すると、それは2発とも吸い込まれる様にS型ザクへと突き刺さった。

 

 その機体は錐もみ状態になり、やがて火を噴いて爆炎に包まれる。だが直撃してから誘爆するまでに少々時間があった。断末魔の声が聞こえなかったところを見ると、もしかしたら脱出に成功している可能性もあるな。あれだけの『(プレッシャー)』を放つ奴だ。今のうちに殺しておいた方がいいかも知れないが……。

 

 探している余裕は無いな。俺とエミリア中尉は、F型のザクⅡを次々に無造作に撃ち落として行く。例の赤いS型ザクⅡは、グレース機と激しいドッグファイトを繰り広げているが、赤い機体がかろうじてグレース機の射撃を躱す都度に、赤いS型ザクⅡの僚機であるF型ザクⅡが1機ずつ()ちて行く。

 

 しかしグレースがあそこまで手こずるとはな。ちょっと手伝って来よう。

 

(グレース、どうだ?)

 

(こいつ、()とせそうで、ギリギリで()とせなくて……)

 

(じゃあ、代わろうか。他の雑魚を頼む)

 

(お願いします)

 

 そして俺はビームスプレーガンを撃つ。それは赤いザクⅡの左腕を吹き飛ばした。AMBACの効率が一気にガタ落ちになり、敵の回避精度は低下。赤い機体は身を(ひるがえ)して逃走をはかる。

 

 逃がさんよ。俺は再度ビームスプレーガンを撃った。敵機は爆散する。だが妙な気配がした。最後の瞬間、あの機体から人の気配が無くなっていたのだ。逃げおおせた、か?……まあいい。どうやらこちらに来た敵機の排除は終わった様だ。俺は01小隊に思念で指示を出そうとした。

 

(04の連中を手伝って、グワランを沈め……お?)

 

(あ)

 

(グワランが……)

 

(爆沈したわね)

 

(ああ、だが……)

 

 どうやら04の連中は、グワジン級戦艦グワランを沈める事に成功した様だ。俺たちは急ぎ、そちらへ向かう。と、04副隊長オークウッド少尉の声が、ノイズ混じりの通信で聞こえた。

 

『あははは!!ザザったわ! 敵将を沈めた!ザザッ』

 

『お、俺たちがザザッたのか!?』

 

 04の連中は、思い切り浮かれている。だがヤバいぞ。残心をしているのは、小隊長のニューウェル中尉だけだ。俺は思い切り思念を叩きつけてやる。通信だとノイズ混じりになるし。これだけバカ強い思念なら、たぶん聞こえるだろう。

 

(ちがう!! ドズルはMS(モビルスーツ)で脱出したぞ!!)

 

『えっ……ザザッ空耳、じゃないわよ、ね。……きゃあああっ!?ザッザザ』

 

『オリビア少尉ザザッ!?』

 

 そこには巨大なヒートホークを持った、S型と思しき深緑のザクⅡが居た。オークウッド少尉のジムは、その巨大なヒートホークで胴体を横に真っ二つにされていた。だが……思念を感じる。まだ生きている。

 

(オークウッド少尉は、まだ生きているぞ! 急いで救出しろ!)

 

『この声! 中隊長ザッ!? ハルトムート少尉!! オリビアを救出ザザザ! 俺とリンジーザザ尉で奴を足止めすザザッ!!』

 

『りょ、了解!』

 

 そして強烈な思念が乗った声が、オープン回線で響き渡る。こいつはニュータイプ能力者ではない。だがその強烈な想いが、俺たちニュータイプ能力者の心に響き渡っているんだ。そしてお腹の大きな女性の姿が脳裏に浮かぶ。その女性は、愛おし気にお腹をさすり、笑顔を浮かべた。

 

『やらせはせん!! たかが連邦のMS(モビルスーツ)などに、この俺を、ジオンの栄光を!! やらせはせん!! やっと授かった我が子とゼナのためにも!!』

 

 強烈な想いの込められた巨大なヒートホークが、リンドグレーン少尉のジムの腕を落とし、脚を落とし、頭を落としてダルマにする。必死にニューウェル中尉機がシールドを差し伸べて、ヒートホークの軌道を逸らして止めを刺させない。だがそれでニューウェル中尉機には隙が出来てしまう。

 

 ニューウェル中尉機のビームスプレーガンを持った右腕に、ザク・マシンガンの銃撃が走った。ジムの右腕が千切れ飛んだ。やったのは、左腕を失ってあちこち被弾してはいるが、黒いR-1型ザクⅡ。02小隊と03小隊の猛攻から逃げて来たのか。

 

『黒い三連星だって!?ザザザザんな化け物が!』

 

 ああ、あれ黒い三連星だったのか。道理で強いわけだ。だが、させんよ。

 

(エミリア中尉! 黒いのの始末、頼んだ!)

 

(了解!)

 

 そして俺はコンデンサーの無くなったスプレーガンを腰のラッチに引っ掛けると、肩のビームサーベルを抜き放ち、ドズルの深緑のS型ザクⅡに斬りかかる。

 

『ぬうん! させぬわあああぁぁぁ!!』

 

手前(てめえ)、ゼナってのは妻か。お腹に、赤ん坊がいるのか。だが手前(てめえ)、その数十億倍の親子を、父を、母を、息子を、娘を殺しやがったな。連邦になんか味方してなかった宇宙市民(スペースノイド)の命を、未来を、全てを奪いやがったな。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ………………死ねよ、手前(てめえ)

 

 そしてフェイントを入れたビームサーベルの一閃が、深緑のS型ザクⅡのコクピットを焼き尽くした。

 

(……!! ……)

 

(その最後の思念も、宇宙に霧散して消えてしまえよ)

 

 見れば黒いR-1型ザクⅡも、今しがた爆散している。そして俺は命令を下す。

 

「ニューウェル中尉! 救出は!?」

 

『お、オリビア少尉もザッリンジー少尉も、な、なんとか!ザザッハルトムート少尉が抱えてまザザザッ』

 

「よし、02小隊と03小隊も今こちらに向かってる。合流して、一気に敵艦隊Z軸プラス方向へ脱出するぞ」

 

 ドズル・ザビが戦死した事で、敵陣は大きく形を崩している。ワッケイン司令の手腕なら、もはや負けは無いだろう。俺は大きく損傷したニューウェル中尉機、救出者を抱えたヘルマン少尉機を編隊の中央に入れ、母艦との合流予定宙域に向かい脱出した。




原作重要キャラ、さっくり退場です。と言いますか、ドズルは人間的なキャラですけれど、であるからこそ主人公の立場では、怒りますよねえ。

そして主人公たちが居ないところでは、ルナ2側がそこそこ圧倒してはいますが、それでもけっこうな被害は出ております。

更に04小隊。ドズルのグワランを沈めるという手柄をあげた事に浮かれて、ドズル本人の逆襲をくらいました。まあ小隊長はそれでも気を吐きましたが、そこまで。

でもって赤い人、出ました。ちょこっとだけ。別の戦線では、別の紅い稲妻とか白狼とか居たはずなんですがね。そちらは出ませんでした。
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