信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット   作:雑草弁士

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第017話:攻防戦の影響

 TV画面の中で、ギレン・ザビが叫んでいる。

 

『諸君らの友にして、子らの父でもあったわたしの弟、ドズル・ザビは死んだ! 何故だ!』

 

「思わず画面を叩き割ってやりたくなるな」

 

「中隊長、それ備品なんですから、やめてくださいね」

 

 ギレンの野郎は、ルナ2攻防戦で俺たちS.T.S.C.第3中隊が殺した敵将ドズル・ザビの国葬を、全地球圏に放映してやがるのだ。そしてそれを戦意高揚に繋げようとしている。

 

『……の戦争を、対岸の火と見過ごしているのではないのか!? ドズルは諸君らの甘い考えを目覚めさせるために死んだ! 諸君の父も、兄も、連邦の無思慮な抵抗の前に死んで行ったのだ! 見よ、ドズルの妻、身重のゼナ・ザビの姿を! これは諸君らの、諸君らの母の、諸君らの子の姿である!』

 

「反吐がでますなあ、中隊長……」

 

「自分らは、何人の無辜の宇宙市民(スペースノイド)殺したと思ってるのよ……」

 

「これが敵よ。この厚顔無恥な輩がね」

 

 クラーク、グレース、エミリア中尉が口々に言い募る。俺も胸糞悪かった。

 

 

 

 まあギレン・ザビの演説は置いておこう。ルナ2基地でも、前回攻防戦での戦死者の、合同葬が行われた。幸いにもS.T.S.C.第3中隊からは死者は出なかったが、せっかく再発足した第1、第2、そして俺たちに次ぐ実力を持っていた第4中隊からは犠牲者が出た。

 

 それをやったのは、白く塗装されたR-1A型とか言うR-1型ザクⅡの改修型と、赤と黒の新型ザクⅡであるR-2型らしい。各々白狼、紅い稲妻の異名を持つ奴らだ。たぶん。

 

 またルナ2艦隊に随伴していたルナ2MS(モビルスーツ)部隊からも、相応に犠牲者が出る。何やら肩を赤く塗ったS型ザクに乗っていた奴が、オープン回線で『わたしはジオンの騎士なのだ!!』とか脳のタガが外れた事を叫びながら、味方のジムを撃墜していったそうだが。

 

 こいつのせいで、ルナ2MS(モビルスーツ)部隊指揮官カーティス・アンカーソン大尉が命を落としている。いい人だったんだが。他にもボール部隊とかにも多く犠牲者が出た。やはりパイロットの練度が足りていない。RGM-79はザクⅡに対して、圧倒的とも言える性能的アドバンテージがあるはずなんだが。

 

 まあ、俺たちの第3中隊から死者は出なかったんだが、オークウッド少尉とリンドグレーン少尉の2名が撃墜されてかろうじて救出され、今は検査入院してる。身体の方は幾ばくかの軽傷こそあれ問題なさそうなんだが、心の方は大丈夫だろうか。万一ここでリタイアされるとなあ……。ちょっと奴らの父兄が何を言い出すか。

 

 閑話休題(それはともかく)、他にもサラミス級が数隻とマゼラン級が1隻撃沈されて、乗員はそこそこ救出できたんだが死者も少なくは無い。撃沈は免れても損傷艦は多い。ルナ2基地では、人員の補充にてんてこ舞いだ。

 

 かろうじて生き残った宇宙市民(スペースノイド)たちから志願兵を募り、地球から補充兵を送ってもらい、それらを訓練してボール部隊に割り振る。今までボール部隊だった連中にRGM-79ジムの新造機をあてがって、MS(モビルスーツ)部隊を補充、拡張する。ああ、ルナ2航空隊も必要最小限を残して規模縮小し、人員をMS(モビルスーツ)パイロットや整備員に異動する事になってるんだ。

 

 艦船に関しても、旧来の艦は改修して自動化を推し進め、浮いた人員を他の艦に割り振るなどしている。まあペガサス級やネルソン級は、既にかなりの部分が自動化されてるが。ちなみに従来のサラミス級は一部はネルソン級に作り変えられるが、多くはカーゴブロックを追加してMS(モビルスーツ)搭載能力を持たせた後期型サラミス級になる。

 

 後期型サラミス級は、搭載MS(モビルスーツ)数もネルソン級の最大6機から3機に減り、カタパルトも無いのだが、火力面などで有利だ。また同様にカーゴブロックを追加した、後期型マゼラン級も存在する。これは4機のMS(モビルスーツ)搭載能力を持つ。

 

 まあこんな感じで、ルナ2基地では人員の確保と再配置に訓練や、艦やMS(モビルスーツ)、ボールなどの装備補充に大忙しだ。おかげで通商破壊戦などは、しばらく休まざるを得ない。ジオンの連中は、戦術的には敗北したが、作戦目標はある程度達成したと言う事だ。やつらのせいで、ルナ2はしばし開店休業だ。

 

 だが奴らからすれば、作戦それ自体はある程度成功したが、犠牲は大きすぎたと言うところだろ。戦略的には、今回奴らが喪失した艦船やMS(モビルスーツ)、そしてその乗員の犠牲が、奴らに重く()し掛かって来るはずだ。

 

 

 

 ジオン公国地球方面軍、もしくは地球攻撃軍の北米地域トップ、ガルマ・ザビが宇宙に呼び戻されたらしい。ガルマは大佐だったんだが、少将に昇進してドズルの後釜として、宇宙攻撃軍の指揮権をギレン・ザビより預けられた。なんで知ってるかと言うと、当のジオン公国が大っぴらに放送したからだ。

 

 ガルマは思ったより人望が厚いらしく、ドズルが居なくなった宇宙攻撃軍の混乱は、弟君(おとうとぎみ)を盛り上げようと言う意思のもとに一致団結してしまい、急速に収拾されつつある模様だ。くそ。このまま内輪もめでもしてりゃいい物を。

 

 いや、既に内輪もめしてるのかも知れないな。ギレンとキシリア……。本来なら親衛隊だの宇宙攻撃軍だの突撃機動軍だの指揮系統を分断せずに、統一された指揮系統の元にまとまるべきだ。特に宇宙攻撃軍と突撃機動軍はどちらもただの宇宙軍だろ?連邦軍は宇宙軍と地球軍、そして地球軍が陸軍、海軍、空軍に分かれているが、これはその領域ごとに分かれてるだけで、綺麗な分かれ方だろう。

 

 しかしジオン軍は、キシリアと故ドズル、ギレンでその戦力を分割していた。ここで故ドズルの戦力が直接的にキシリア配下に入る事は、ギレンは望まない、か。まあガルマが姉の言うがままに動くと言う危険はあるんだろうが、それを言うならギレンの言う事だって聞くだろうしな。

 

 

 

 04小隊のヘルマン少尉が、ニューウェル中尉に連れられて謝りに来た。

 

「大尉殿、これまで本当に申し訳ありませんでした……。今後、どうかお見捨てなき様にお願いいたします……」

 

「反省した、と思って良いのだな?」

 

「はっ……」

 

 いや、ニュータイプ能力の感覚で、この反省が本物である事は理解できてるんだけどな。

 

「自分は……。思い上がっておりました。アースノイドの名家出身というだけで、根拠なき自信に溺れておりました。そしてその様な物が、戦場では何の意味も持たない事を、先日の戦いで、思い知らされたんです……」

 

「ハルトムート少尉は、自分より腕が良いはずのオリビア少尉機があっさり真っ二つにされ、彼と同等の技量を持っていたはずのリンジー少尉の機体が一瞬でダルマにされたのを目の当たりにし、自信を喪失したんだそうです」

 

「はい……。次は自分か、と思ったら、死を意識しました。大尉たちにやられたときは、打ちのめされはしましたが、まさか殺されるとまでは思いませんでしたから……。操縦桿を握った手が震えて……。それ以来思い悩んで、除隊して地球に帰ろうかとさえ……。

 そこで、小隊長に怒られました。今ここで逃げたら、二度と立ち上がれなくなるぞ、と。逃げるのが全て悪いとは言わないが、ここは逃げてはいけないところだ、と」

 

 ふむ……。俺は少し考え込む。

 

「よし……。01小隊(ウチ)のグレースと、お前ら2人で、1対2でちょっと実機訓練やってみるか。宇宙服(パイロットスーツ)に着替えて、格納庫に来い」

 

「「え゛」」

 

「前までのお前らなら全く無理だが、今のお前らならいけるかも知れんぞ。ニューウェル中尉の機体も、既に修理完了してるんだろ?」

 

 そして俺は、01小隊に招集をかけた。

 

 

 

 俺たちはトロイホースに機体を積んで、ルナ2近傍の宇宙空間に出た。すぐ近くでは、新人ボール乗りたちがボールでの初歩の機動訓練をやっている。俺はグレースに言葉をかけた。

 

「手加減は無用だぞ」

 

『了解です。わかってます』

 

 そして俺たちはトロイホース右舷カタパルトで、宇宙空間に射出される。クラークがのんきに言葉を発する。思念での会話ではなく、あえて通信を使っていた。

 

『さて、今回はどのぐらい食い下がってくれますかね』

 

『ある程度は大丈夫じゃないの? だって……』

 

「おっと、エミリア中尉。そこまでだ」

 

『あ、ごめんなさい中隊長』

 

 うっかりネタバラシをやりかけたエミリア中尉を、俺は制止した。ちなみにミノフスキー粒子が無いので、ノイズが通信に乗らない。明瞭な通話は安心するな。すぐに反対側の左舷MS(モビルスーツ)デッキから、ヘルマン少尉機とニューウェル中尉機の2機のRGM-79が発進して来る。

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

『……了解です』

 

『4対1でも相手にならなかったのに……』

 

『弱気になるな、ハルトムート少尉! 挑戦なくして勝利なしだ!』

 

『りょ、了解!』

 

 そしてグレース機と、ニューウェル中尉機、ヘルマン少尉機がスラスターを()かす。彼らはこの宙域を、縦横に()び回り始めた。

 

『……!? 見える!? グレース曹長機の動きが!?』

 

『機体が軽いぞ! なんでだ!?』

 

 そして模擬戦が始まった。

 

 

 

 最終的には、模擬戦はやはりグレースの勝利に終わった。ニューウェル中尉とヘルマン少尉は、いつもより調子が良かっただけに、かなり落ち込んでいる。

 

『く……。駄目、だったか……』

 

『やはり……』

 

「いや、充分に合格だぞ」

 

 俺は2人に、通信画面からサムズアップを送ってやる。

 

『『えっ……』』

 

「グレース、見せてやれ」

 

『了解です』

 

 グレース機が2人のジムに接触し、接触回線でデータを送ってやる。それはグレース機の被弾状況のデータだ。

 

『こ、これは!?』

 

『まさか!』

 

「よくやったな。数段上の腕前のはずのグレースに、シールドを使わせたんだ。グレース機シールドへの被弾が、3発。それにな? 以前だったら操縦席(コクピット)を一撃で終わらせていたのが、今回は手足をもぎ取って動きを鈍らせないと撃破できなかった」

 

 2人の表情は、信じられない物を見ているかの様だった。だが、少しずつそれが喜びへ変わって行く。

 

「一皮剥けたな。お前たち」

 

『う……。や、やった、のか!?』

 

『や……。や、やった! やった!!』

 

 まあ実は、この2人の性根は何とかなったと見た俺が、こいつらの能力を他のS.T.S.C.02小隊03小隊の連中と同程度にまで上昇させたんだが。無論、ニュータイプ能力も最低レベルだが与えている。

 

 だがその際にこいつらの能力を『()た』んだが。こいつら中々の素質を持ってやがるな。限界まで能力を伸ばしてやれば、かなり強くなるぞ。その『伸びしろ』が、今まで見たやつらの中でも有数、指折りだ。

 

 けれど、まだそこまでこいつらの能力を伸ばしてやるわけには行かない。地球連邦政府とは、ジオンとの戦いが終わった後で、事を構える可能性もあるんだ。そのときに敵になられたら……。そうなって欲しくは無いものだが。

 

「さて、ヘルマン少尉。これからお前らの整備班や、あとはネルソン級カラカスの艦長たちのところへ頭下げに行くぞ。今までは微妙だったが、今のお前なら受け入れてくれるさ。気のいい奴らだからな」

 

『は、はい! 了解です!』

 

「じゃ、トロイホースへ帰還する。行くぞ」

 

『『『『『了解!』』』』』

 

 俺たちは、後方で待機しているトロイホースに向かい、()んだ。

 

 

 

 RX-78-1とRX-78-2の2機のガンダムが、修復と改修を完了した。1号機も2号機も、2ndロットシリーズのガンダム4号機と5号機に準ずる改修工事を施された。機体番号も、RX-78-1BとRX-78-2Bと変更される。ただし4号機と5号機が宇宙専用機であるのに対し、1号機と2号機は地上/宇宙両用の機体のままだ。

 

 なお4号機と5号機は、今現在地球のジャブロー基地で最終調整を受けているらしい。宇宙専用機なので、そのうち宇宙へ上がって来るんだろうが。誰が乗るんだろうな、4号機と5号機。閑話休題(それはともかく)

 

 更に1号機と2号機には、俺がレイ技術大尉を通して上げた技術資料の技術がフィードバックされている。その一部を挙げれば、コアファイターの排除とその余剰スペースを用いた融合炉(ジェネレーター)の強化他の改良、機動力の強化、部隊指揮用の通信機能拡張、本体武装の追加装備による戦闘能力の充実等々。

 

 と、まあ、そんな事をきっちり整列した俺たちS.T.S.C.第3中隊01小隊の前で、ワッケイン司令の横に立ったレイ技術大尉が得意げに説明している。お久しぶりですね、レイ技術大尉。そしてワッケイン司令が口を開く。

 

「そんなわけでな。以前中破と小破してルナ2に残されていたガンダム2機が、修復完了したとの事だ。そこでこの機体を、貴官らに預けたい」

 

「はっ! ……よろしいのですか? 連邦軍のフラッグシップ機とも言える機体を」

 

「ふっ。他に誰に与えろと言うのだ。それとな……。レイ技術大尉?」

 

 ワッケイン司令の言葉で、再度レイ技術大尉が口を開いた。

 

「うむ、そしてだな。S.T.S.C.第3中隊の標準機を、RGM-79ジムからRG-78AV量産型ガンダムに変更する事になる。これはジムが大量生産用の簡易量産型であるのに対し、ガンダムの本格量産機に相当する。

 当初は数が足りないので、各小隊に2機ずつ配備になるが……。そのうちに全機を量産型ガンダムに更新する予定だぞ」

 

「ふぅ……む。これはな? レビル将軍のお考えによるものなのだ。貴官ら第3中隊を広告塔に使う事により、宇宙市民(スペースノイド)地球市民(アースノイド)の融和の象徴として民衆に知らしめたいらしい。

 そしてジオンについては、スペースノイドに対しても裏切り者だとの認識が広まって来ている。言い方は悪いが、ジオンにはこの際徹底的に悪役になってもらい、アースノイド、スペースノイド共通の敵になってもらう」

 

「了解しました。広告塔になる事は、こちらとしても文句はありません」

 

 しかし量産型ガンダムか……。これについても俺はレイ技術大尉を通じて口出しをしてるが、実機はまだ見た事が無い。どの程度の出来になっているか、見るのが楽しみだな。

 

 それと、ガンダム1号機と2号機は誰に割り当てるべきか、後で相談しないといかん。技量から言えば俺とクラークなんだが、指揮能力から言えば俺とエミリア中尉か?どうするべきかな。




04小隊の半分が、更生いたしました。残り半分は、今現在検査入院中です。どうなることやら。

ガルマ、ソロモン送りです。7月末から8月頭なので、イセリナ嬢とはどこまで進んでたのかなあ。なんとかして宇宙に彼女を呼ぶ方法でも考えてるかも。けれどドズルの後を受けて宇宙攻撃軍をなんとかする事で、いっぱいいっぱいかな?

そしてガンダム2機が、修復と改修完了です。主人公たちの隊に配備されます。そして順次ジムが、量産型ガンダムに置き換わります。
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