信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット   作:雑草弁士

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第001話:ルナ2基地にて

 時は宇宙世紀0079、1月9日。俺は地球連邦軍宇宙基地ルナ2の営倉で、軟禁状態になっていた。まあ、これについては少々腹立たしいものの、逆に言えばそこまで怒る事では無い。

 

 いちおうペンキで地球連邦軍マークを機首に描いてはいたものの、俺は敵であるジオン公国のムサイ級軽巡洋艦に搭載されていた、大気圏突入カプセル兼脱出艇であるコムサイでルナ2へたどり着いたんだからな。

 

 だから変な疑いをかけられても、ある意味仕方ないと言えば仕方ない。けれど、きちんと事情聴取なり尋問なりされれば、きっちり説明するつもりはあるんだ。そう思って呼び出しを待ってはいるんだが、一向に呼び出しが来ない。

 

 ……まあ、仕方ないんだろうな。ニュータイプ能力でこの周辺、ルナ2基地内の雰囲気を探ってみたところ、すげぇ殺気立ってやがる。おそらくはジオン連中が、何かしら大きな作戦を実行中なんだろう。俺たちに構っているヒマは無いってわけだ。

 

 そう、『俺たち』だ。俺と一緒にサイド1ザーンからルナ2基地へ駈け込んで、結局軟禁状態になった奴が、俺以外にも居るんだよな。それもあと3人も。

 

 1人目は、民間の作業用のスペースポッドSP-W03で、奇跡的に無傷だった8バンチコロニーに隠れ潜んでいた男、宇宙機エンジニアのクラーク・キャラハンと言う白人だ。年齢は俺と同じ20歳。そしてこいつは、8バンチコロニーの唯一の生き残りでもある。

 

 なんで無傷のコロニーなのに、こいつが唯一の生き残りなのかと言うとだ。ジオンの連中は、生き残ったコロニーに毒ガス、GGガスを注入しやがったんだ。やつらははなっから、サイド1の住人を皆殺しにするつもりだったんだよ。

 

 クラークは、幸いにも修理したばかりのスペースポッドのテストのため、ポッドに乗り込んだ所だった。だもんで、気密が保たれていたために毒ガスからは逃れられたってわけだ。

 

 俺は中破したムサイ艦のコムサイが使えるかどうか調べていたときに、ニュータイプ感覚に伝わって来るクラークの思念を察知した。そこで俺はムサイ艦に搭載されていたMS-06CザクⅡというロボット……MS(モビルスーツ)に連邦軍マークをペンキで描いて、クラークを救出に向かう。結果、クラークを保護していっしょにルナ2へと脱出してきたわけだ。

 

 2人目は、エミリア・エッジワースと言う18歳の白人少女で、ペーペーの連邦軍少尉だ。士官学校を飛び級で卒業した彼女は、サラミス級軽巡洋艦リッチモンドのサブブリッジ・オペレーターとしてサイド1駐留艦隊に所属していた。

 

 だがサラミス艦リッチモンドは敵のMS(モビルスーツ)ザクⅡの攻撃により大破。彼女は衝撃で頭を打って気絶。彼女が死んだと勘違いした仲間達は、艦を放棄して大気圏突入カプセル兼脱出艇を使って艦を捨てた。彼女を放置したままで。

 

 そこから先は、クラークの時と同じだ。その思念を俺が辿って、大破したサラミス艦から彼女を救出したんだ。連邦軍マークを描いてあるとは言え、ザクⅡに彼女が怯えて逃げ惑ったのは、ご愛敬だ。

 

 3人目は、グレース・ギャレットと言う14歳の少女だ。欧米風の名前だが、東洋系の血が濃い。彼女はコロニー間を移動する全自動の短距離シャトルに乗って、9バンチコロニーから10バンチコロニーに移動中だった。その時に、ジオン軍の奇襲攻撃が起きたんだ。

 

 幸いにも彼女には、宇宙機の知識が若干だけあった。そう、自動操縦を解除して、動力を落としてジオン軍に発見されない様にするだけの知識が。そして俺が思念を辿って彼女を救出するまでの間、彼女の乗ったシャトルは宇宙を漂っていたんだ。

 

 ちなみに救出した3人は、全員が全員個人差はあれど、ニュータイプ能力に覚醒していたりする。近場で10億人にも上る宇宙市民(スペースノイド)が虐殺されたんだ。その断末魔は、生き残った者を何かしらに目覚めさせてしまってもおかしくは無い。

 

 そして俺は、救出した3人の手も借りて、小破ムサイ艦のコムサイを使える様に整備した。更に途中で発見した別の大破ムサイ艦から回収した物も含め、6機のMS-06CザクⅡを手に入れた。その鹵獲ザクⅡのうち2機はコムサイの格納庫に入れ、残り4機はコムサイの上に露天係止して積み込んだ。

 

 そうして俺と3人は、必死の思いでサイド1宙域ザーンからルナ2基地へとたどり着いた……んだが。まあ、色々と疑われて今現在は軟禁中なわけだが。

 

 まあ事情聴取やら尋問やらが無いなら仕方ない。俺はとりあえず、自分が信長から貰った『能力』を使うべく、精神を集中させた。

 

 

 

 俺が自分の『内面』に『視線』を向けると、俺自身の様々な能力パラメーターを模式図的に『視る』事ができた。随分と、ニュータイプ能力とMS(モビルスーツ)操縦能力が、異様なほど、いびつなほどに高くなっている。これは既に先頃、この『能力』を使って可能な限りにこの2つを高めていたからだ。

 

 まあ、クラーク、エミリア、グレースの3人を救出するために、ニュータイプ能力やザクⅡを操縦する能力は必須だったからなのだが。だがその他の、たとえば反射神経とか耐G能力とかは、ちょっとした宇宙戦闘機パイロット程度でしか無い。

 

「……これもいじっておくか」

 

 俺は今後、パイロットとして必要になりそうな技術や能力に関しては、今のうちに桁外れなまでに向上させておこう、と決めた。反射神経然り、耐G能力然り。その他にも、戦術能力とか戦略能力とかも、今のうちに高めておこうとした。

 

 そして俺はビビった。

 

「……っふう! な、なんだ今のは」

 

 戦術能力や戦略能力を向上させたとたん、俺の頭の中に突然知識が湧いて出たのだ。これが士官学校でいったん勉強して、忘却の彼方に消えていた知識が蘇った、というならばまだ解る。だがこの瞬間、俺が知り様が無いはずの高度な戦術や、政治経済まで含めた高度な戦略の知識が頭の中に湧いて出たのである。

 

「これが信長、上総介殿が言っていた『世の理』とやらに接続するって事か……。使いようによっては『打ち出の小槌』になる代わり、下手すると『パンドラの箱』にもなりかねないな……。

 だけど知識だけあっても、どう扱っていいのやら。頭自体を、もう少し良くしないとな」

 

 物は試しと、俺はちょっとだけ機械工学や電子工学などなどの能力パラメーターを、若干強化してみた。無論、そのベースになる知力そのものも、強化してみる。これらはパイロットとして機体をいじる場合、できればあった方が良い技術だ。……やはり頭の中に、知らない技術が湧いて出た。

 

 ちなみにちょっとばかり、パラメーターを強化し過ぎた様だ。MS(モビルスーツ)で携行可能なビーム兵器の設計が、唐突に『思い付い』てしまった。それを運用可能なMS(モビルスーツ)側の高出力な新型核融合炉の設計とか。

 

 いや、ザクⅡの核融合炉の理屈は、ムサイ艦で回収した操縦マニュアル、整備マニュアル他の文献から、ある程度理解してるよ? だけどそんなレベルじゃない。今の俺なら、ザクⅡを超えるMS(モビルスーツ)を設計開発できそうだ。

 

「あー……。いや、やっぱりザクⅡを超えるのは無理かな? もうちょっと頭脳とか強化しないとなあ……」

 

 まあ、そうだな。性能面だけでザクⅡを超えるのは、たぶん可能だと思う。だけど整備性とか量産性とか、今現在の連邦軍での生産技術とか、操縦性や運用難易度、そう言った物事を勘案して、『兵器としての』ザクⅡを超えるのは難しいだろう。

 

 だが、頭脳とか知識量とか、これ以上強化するのはちょっと怖い。自分が自分で無くなりそうな気がするのだ。だもんで、運動能力とか身体能力とか格闘能力とか射撃能力とか、そう言った肉体的なパラメーターをざっくりと強化してお茶を濁した。

 

 そうして俺は、自分の『内面』から『視線』を逸らし、自身の能力改造を一段落させた。1人用の営倉の中は、相変わらず殺風景で趣に欠ける。俺は溜息を吐いた。

 

 と、そこへ『声』が響く。肉声によるものではない、思念での語り掛けだった。

 

(……聞こえる? サブロー少尉、あたしの『声』が聞こえる?)

 

(グレースか。どうしたんだ?)

 

 ニュータイプ能力による共感で、思念での会話ができるほど能力が高いのは、3人の中ではグレースだけだ。グレースの思念には、不安げな様子が満ち満ちている。

 

(……ううん。特にどうという事もないんだけれど、でも流石にこれだけ放置されると少し不安で……)

 

(大丈夫だ。心配は無いさ。ここ(ルナ2)の連中も、俺たちが本気でスパイだなんて考えちゃいない。スパイだったら、秘密兵器やその資料を手土産にするはずが無いからな)

 

(……うん)

 

 グレースの思念に、安堵の色が混じる。その時の事だった。今の俺から見て右手の方向から、ゴオっという颶風(ぐふう)にも似た『圧力』が押し寄せてきたのである。グレースの悲鳴が脳裏に響く。同時に、クラークとエミリアの声もまた。

 

(きゃあああぁぁぁ!?)

 

(う、わっ!? な、なんだコレは……)

 

(酷い……。天が落ちて、大地が!!)

 

 クラークとエミリアのニュータイプ能力は、思念での会話ができるほど強力な物では無かったはずだ。だが今の颶風(ぐふう)が、2人のニュータイプ能力を刺激し、無理矢理に向上させたのだろう。

 

 この颶風(ぐふう)、この『圧力』の正体……。なんてこった……。これは10億人ほどの人間の、その断末魔の叫びだ。そしてその源は、地球だった。今の『圧力』には、共通のイメージが載っている……。地表へと落下する、スペースコロニー……。そしてそれが落着すると、凄まじいまでの衝撃波が全てを、人も、建物も、大地も全てを吹っ飛ばし、吹き消して行く。

 

(……やつらめ! ジオンめ! スペースコロニーを地球に落としやがった……!! なんてこと、しやがるんだ!!)

 

 だがしかし、ここで思念で吼えても何にもならない。俺は怒りを押し殺し、一人悩む。先ほどは、俺が俺で無くなりそうな恐れを抱いて、自身の知的能力の強化は程々に抑えた。抑えてしまった。

 

 だが、この様な愚行を押し通す外道が相手なのだ。そのような事を恐れて、自分に(かせ)をはめて戦えるのか? 手加減して戦っていいと言うのか!?

 

 俺は営倉の天井を見上げて、ただ考えに沈んだ。

 

 

 

 結局のところ、俺と3人に対する事情聴取がまともに行われたのは1月12日、俺たちに対する嫌疑が晴れて軟禁状態から解放されたのは1月17日だった。宇宙基地ルナ2では、サイド5宙域ルウムで連邦軍宇宙艦隊が大敗を喫し、壊滅状態に陥った事で、雰囲気はお通夜状態だった。

 

 うん、そうなんだ。サイド5ルウムのコロニーも、再度のコロニー落としに使うために狙われたんだ。そしてレビル将軍が指揮した連邦軍宇宙艦隊が必死になってコロニー落とし自体は防いだものの、サイド5もまた壊滅。ジオンの罪科に、また10億の命が加わった。

 

 更に連邦軍宇宙艦隊も壊滅状態に陥り、レビル将軍がMIA、噂では敵の捕虜になった可能性が高いと言う。ルナ2に帰還できた連邦軍宇宙艦艇は、ルウムでの戦いに参加した2割程度。これでは皆が敗戦を予期し、意気消沈するのも無理は無いだろう。

 

 だが、それははっきり言って腹立たしい。面白くないどころか、苛立たしい。

 

「……むかつくな」

 

「さ、サブロー少尉?」

 

「どこへ行くんだ!」

 

「……」

 

 俺とエミリア少尉は、とりあえずクラークとグレースの面倒を見る様にと命令を受けていたので、4人は一緒に行動していた。だから俺が、軍人が集まって意気消沈した顔を突き合わせている食堂へとツカツカ入って行くと、残り3人も慌ててそれを追って来る。

 

 そして俺はニュータイプ能力を全開にして、怒れる意識を叩きつけつつ叫んだ。これだけやれば、ニュータイプ能力の無い一般人とて、俺から凄まじい『(プレッシャー)』を感じるはずだ。

 

「おい! なにをしょんぼり落ち込んでいるんだ! 奴らに、ジオンの腐れ外道どもに、負けてしまっても良いのか!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 食堂に集まっていた軍人たちは、愕然とする。だがそのうちの1人、俺と同じく少尉の階級章を身に着けた男が唇を噛み締めて、席から立ち上がった。

 

「だが……。どうしろって言うんだ! 奴らには、レビル将軍でも勝てなかった!」

 

「それがなんだ!? ああ、確かにやつらは強いさ。奴らの使う、レーダーやセンサー、通信を遮断する新戦術。そしてその状況下に適した、強力な巨大ロボット、MS(モビルスーツ)!! そして奴らはその力を、連邦軍だけじゃない、無辜の人々に対して真っ先に叩きつけやがったんだ!」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

 俺は叫び続ける。ニュータイプ能力を全開にして、観衆に『(プレッシャー)』を強く与えながら、叫び続ける。

 

「奴らは開戦当初、サイド1、2、4の宇宙市民を皆殺しにした! 1つのサイドにつき、約10億人のスペースノイドが惨殺されたんだ! 俺はそれを、サイド1虐殺の現場をこの目で見た生き証人だ!

 奴らジオン公国は、宇宙市民(スペースノイド)の解放とやらをお題目として謳い上げてやがるがな! サイド3の連中以外は、スペースノイドじゃないとでも言うのか!? 奴ら、何様のつもりだ! しかも地球へコロニー落として何億殺した!? その上今度はサイド5ルウムで、また10億人だ!」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「俺は赦さないぞ! 奴らを赦さない! まだ終わりじゃない! まだ諦めないぞ! 諦めたら、そこで終わりだ! 仮にここで負けたとしても、命ある限り最後まで、最期まで、ジオンへの抵抗を続けてやる!」

 

 そして、エミリア少尉が、クラークが、グレースが、俺に唱和する。

 

「そうよ! わたしも諦めないわ! そして必ずジオンの奴らに報いをくれてやる!」

 

「俺も戦うぞ! サブロー少尉に救われてルナ2へ逃げ込んで来た俺だが、連邦軍に志願するぜ! サイド1に居た家族の、仲間の、みんなの仇討ちだ!」

 

「あたしも連邦軍に志願するわ!そしてあの、全スペースノイドの裏切り者たちを、血祭りにあげてやるわ!」

 

 俺と3人のニュータイプ能力が共鳴し合い、周囲に異様なまでの『(プレッシャー)』が放たれる。ニュータイプ能力を持たない者も、何がしか感じ取れるほどの『熱意』が巻き起こった。そして周辺の軍人たちが、立ち上がる。

 

「……ああ、そうだな。まだ終わっちゃいない」

 

「俺はスペースノイドじゃないが、だからってスペースノイドを虐殺しようなんて思わねえ。なのに奴らは、スペースノイドのくせして、スペースノイドもアースノイドも虐殺しやがった!」

 

「そうだ、許しちゃならん! 赦しちゃならんのだ!」

 

「おおー!」

 

「うぉー!!」

 

「「「「「「うわあああぁぁぁ!! うわあああぁぁぁ!!」」」」」」

 

 そして熱狂は、この食堂を中心に周辺へと伝播して行く。狂乱じみた騒ぎに、MPたちが泡を食って飛んで来るが、終いにはそのMPたちも巻き込んで騒ぎになってしまった。

 

 うん、俺、自分の抑制をやめたんだよな。自分の内面が書き変わってしまう恐れは確かにあるが、だからと言って『力』を手に入れる手段を放棄するのは、そんな贅沢は許される状況じゃない。

 

 だもんで、とりあえず今回は自分のカリスマ性やら扇動(アジテーション)能力とか向上させてみた。確かに、自分が変わってしまう恐怖はある。だが俺は躊躇も我慢もしないで、この『能力』をいくらでも使うぞ。ズルいと言わば言え。『力』があるのに、必要な場面で振るわない事の方が駄目駄目だからな。




主人公、『能力』を使う覚悟を決めました。もうこうなったら、チートだろうがなんだろうが使える物は全部使います。
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