信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット 作:雑草弁士
今、俺たち4人の前にはルナ2基地司令、ヴォルフガング・ワッケイン少佐がいる。というか、ルナ2基地ほどの重要拠点の司令官が少佐というのは、不思議に思うかもしれない。だが仕方ないのだ。
1月3日の開戦から1月10日のコロニー落としまでの一週間戦争、そして1月15日からのルウム戦役。これにより、地球連邦宇宙軍の将官以下の高級士官は多数が死亡。ルナ2基地の留守居役として残されたワッケイン少佐が、現状最上位であったために急遽司令官職を受け継いだのだ。
まあ無論、南米ジャブロー基地や他の地上基地には将官や大佐中佐は腐るほどいるんだが……。ジャブローのモグラ連中は、最前線とも言える上に僻地扱いであり左遷先とも思われている、宇宙基地であるルナ2には転属したがらない。いや、そんな奴に来てもらっても困るんだが。
ちなみにクラークとグレースの2名は、もう既に地球連邦軍に志願して階級を貰っている。なんと2人とも伍長だ。これは2人とも、鹵獲ザクⅡの操縦経験があった事が影響している。うん、俺たちが鹵獲コムサイでサイド1ザーン宙域から脱出してくるときに、コムサイの整備作業とか手伝いたいって言うから、鹵獲したザクⅡで手伝わせたんだ。うん。
そんなわけで、クラークとグレースはとりあえずパイロット候補生と言う事で、伍長の肩書を貰う事になったんだよな。なおエミリア少尉も、同様に作業を手伝わせたので、彼女にも鹵獲ザクⅡの操縦経験はある。3人とも、まあ素人の域を抜けてはいないが、そこそこ筋は良いと思う。
そんな事を考えつつ、顔には出さずに真面目な表情を作っていると、ワッケイン少佐が口を開く。彼は傍らの副官の少尉から書類を受け取ると、俺に向かい言葉を発した。
「サブロー・オダ少尉。貴官は敵新兵器やその関連書類、敵の新戦術に関する重要書類を敵艦の残骸より回収し、我々にもたらした。また民間人2名を救出、保護し、ルナ2基地へと連れ帰った。サイド1の防衛に失敗したのは残念極まりない。なれど貴官の手に入れた情報は極めて重要である。その功績は、はかりしれない。
よって、貴官はただいまをもって、中尉に昇進。ルナ2基地
「……はっ!」
俺は敬礼で、その言葉に応える。ワッケイン司令の副官の少尉が、俺に新しい階級章と辞令を手渡して来た。……だけど、なんで第3小隊なんだ? 俺以外にも、敵
その疑問の答えは、ワッケイン司令からもたらされた。
「……不審そうな顔をしているな? おおかた、何故貴官らが第3小隊なのか、という事だろうが……」
「はっ!」
「ふん、正直だな。ジャブローのモグラどものちょっかいだ。第1小隊、第2小隊は地球出身のエリートで固めたいらしい。機体も無いと言うのに……。
何にせよ、実働する部隊は貴官らの第3のみだ。今の所、な。ルナ2基地
……やれやれ、だ。今の段階では、ジオン側の圧倒的有利。今にも無条件降伏を強いられそうな雰囲気だ。それなのに、今なおジャブローのモグラどもは……。
「まあ、それでも数少ない『味方』だ。あまり邪険にするわけにもいかん。少なくとも、今の段階で抗戦姿勢を崩しておらん
「……了解しました」
「それでいい、中尉。さて、エミリア・エッジワース少尉。オダ中尉を補佐し、民間人2名を救出した事は賞賛に値する。貴官をただいまより、ルナ2基地
「はっ!」
エミリア少尉も、ワッケイン司令に敬礼で応えた。彼女が俺の小隊の副隊長か……。ワッケイン司令の言葉は、まだ続く。
「クラーク・キャラハン伍長、グレース・ギャレット伍長。貴様ら両名は、ただいまよりサブロー・オダ中尉の下、ルナ2基地
「はっ!」
「は、はいっ!」
2人はちょっと形が崩れた敬礼を、必死になって返す。まあ、即席軍人だし、仕方ないだろう。
「貴官らがもたらした6機の
それと貴官らの所属だが、中隊長は置かずに各小隊が直接にルナ2基地司令部の直下に置かれる事になる」
「了解です」
「うむ。最後にもう1つ。4日後の1月30日、貴官らの小隊とルナ2航空隊の選抜部隊とで模擬戦闘を行う。
貴官らの全力を振り絞れ。遠慮なしに叩き潰せ。これは絶対に、必要な事なのだからな」
「「「「はっ!」」」」
俺たちは、全員揃ってワッケイン司令に敬礼を送った。まあクラークとグレースは、やっぱり敬礼が上手く無かったが。
そして模擬戦当日である。俺たち4人は、連邦軍カラーに塗られて連邦軍マークを描かれたMS-06CザクⅡ……もとい、RMS-79鹵獲ザクの足元で、ブリーフィングを行っていた。と、そこへ基地航空隊の選抜メンバーが顔を見せる。
「よう、お前さんがオダ中尉か? 今回お前さんたちと模擬戦をやる事になってる、カーティス・アンカーソン大尉だ。今日はよろしく頼むぞ?」
「はい、大尉殿。こちらこそ、よろしくお願いします」
「おう。手加減はしてやれんから、しっかりやるんだな。ああいや、侮るつもりは無いんだが……。しかし、隊長のお前さんは実戦経験者の元トリアーエズ乗りだとは言え、部下3名は、申し訳無いが……」
「オペレーター上がりと、志願したばかりの元民間人、だと?」
気まずげな顔で頷くアンカーソン大尉だったが、俺は頭を横に振る。
「いえ、大尉殿。それを差し引いても……。このザクと言う
「……それほどか?」
「はい」
アンカーソン大尉の顔が引き締まる。まあ、正直言ってしまえばこの模擬戦、俺たちが負ける事は無いだろう。俺たちの小隊は、俺が事前に『能力』を使って戦闘力にゲタを履かせているのだ。
俺は第3小隊が結成された直後に、俺が自分や部下の能力を強化できると言う事を、部下3人に明かしてある。サイド1での戦いで撃墜され、絶望の中でニュータイプ能力と共に目覚めた『能力』だと説明はしてあるんだが。
それでクラークにもエミリア少尉にもグレースにも、全員に問うてみた。能力強化を受け入れるか、と。そして3人全員が、能力強化を受け入れたんだ。この『能力』を使うと、お前らの様々な技能や基礎能力とかが俺に丸見えになるぞ、と言ったんだが。3人は、命の恩人である俺を信頼しているから、構わない、と。
そんなわけで、今のクラーク、エミリア少尉、グレースの3人ははっきり言って、たぶんジオン軍のエースパイロットを超える
まあ元々の素質的な問題から、操縦能力や身体能力はクラークが、ニュータイプ能力はグレースが一番高くなっていて、エミリア少尉は3人の中でもっとも平均的だが。俺? 3人よりも数段上だよ? やはりこの『能力』は俺自身の能力をいじるのが、いちばん簡単でいちばん効率的な様だ。
何はともあれ、アンカーソン大尉と選抜メンバーは、気を引き締め直して立ち去って行った。さあ、模擬戦の準備と行くか。
ルナ2近傍の宇宙空間で、俺たちはコロンブス級輸送艦クラレンス・マーカムから発艦してフォーメーションを組む。エミリア少尉とグレースは落ち着かない模様だ。いや、落ち着いてやれば能力的にゲタを履かせている事もあって、まず負けは無いんだが。
しかしながら、グレースは先日までただの学生であったし、エミリア少尉はサラミス艦のサブブリッジのオペレーターだった。宇宙機、それも海の物とも山の物ともわからない
一方クラークは見事な物だ。もともと宇宙機エンジニアで、スペースポッドSP-W03の操縦経験が多かった事。そしてサイド1の戦いにおいて、そのSP-W03で必死で逃げ回っていた経験が、今回良い方向に働いているんだろう。
だが何にせよ、このままだとエミリア少尉とグレースが……。ちょっとハッパかけてやるか。俺は思念を凝らして、ニュータイプ能力での共感を使って全員に話し掛ける。
(……いよいよ第一歩だ。なんとしてもここで上手く立ち回って、俺たちの立場を確立せにゃならん。ジオンの連中を叩き潰すためにも)
((!!))
(そうだな、隊長の言う通りだ。ここでヘマするわけにゃ行かない。まあ、だからってあんまり気負いすぎも駄目だけどな)
クラークの、微笑みの気配が混ざった思念が伝わって来る。俺もまた、それに頷いてやった。
(ああ。エミリア少尉、グレース、深呼吸しろ。
……操縦系をオーバーヒートさせないように、気を付けてだけいれば、負けは無いからな)
(は、はい!)
(了解!)
うん、俺やクラークも今までの実機演習中に、一度だけやっちまった事がある。ザクの操縦系をオーバーヒートさせちまって、機体が
エミリア少尉とグレースの2人は、今もときどき操縦系をオーバーヒートさせる。最近はそれが少なくなって来たけどさ。だけど俺たちの操縦能力を制限せずに、きっちりとパイロットの操縦に追随できる機体をなんとか造らないとなあ……。
いや、アイディアは色々あるんだ。だけど前線パイロットの思い付き程度じゃあ、発言力も無いしまともに取り合ってもらえんだろ? なんとしても、発言力を稼がないとな。
そして俺は、ニュータイプ能力の思念による会話ではなく、通信機での通話で全員に声を掛ける。
「今回は、前半ではミノフスキー粒子無しの前提での模擬戦、後半ではミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布されたと仮定して
『『『了解!』』』
「来たぞ! 前方0時方向上方30度より敵第1隊セイバーフィッシュ5機編制、右方2時方向下方20度より敵第2隊セイバーフィッシュ5機編制! 全機迎撃態勢に移れ! 俺とグレースが第1隊を、エミリア少尉とクラークは第2隊を!」
そして俺たちは、対戦相手のFF-S3セイバーフィッシュ目掛けて襲いかかった。
いや、申し訳ない事をしたかもしれん。模擬戦の後、アンカーソン大尉はひどく落ち込んでいた。慰めの言葉をかけると、余計に傷つけそうだから言わなかったが。相手方の唯一の戦果は、1機のセイバーフィッシュが被撃墜判定と引き換えに、クラーク機の左腕にペイント弾を浴びせただけだった。
ちなみにどんな誰がクラーク機に被弾判定を与えたのかと調べたら、何やらユウ・カジマ少尉という男の様だ。なんでもルウム戦役にFF-4トリアーエズのパイロットとして参加し、なんとか生き残った凄腕である。
ちなみにアンカーソン大尉もそのカジマ少尉も、その他ルナ2航空隊のけっこう多数のパイロットが、
『……そして地球連邦の国民ひとりびとりへ、私は訴える! もはやジオンに兵はいない! そのジオンに跪くいわれはないの……』
俺は今、鹵獲ザクのコクピットで実機訓練をしながら、通信機から流れて来るレビル将軍の演説を聞いていた。ヨハン・イブラヒム・レビル将軍は、あのルウム戦役で連邦軍宇宙艦隊を率いて戦った指揮官だ。本来は地上軍の将軍でありながら、臨時に宇宙艦隊の指揮権を預けられたんだよな。
連邦軍の艦隊は、彼が指揮権を掌握してた間は粘り強く戦えた。だけど彼の乗艦、連邦軍旗艦マゼラン級戦艦アナンケが狙われて撃沈されると、あっという間に艦隊はボロけちまったんだよなあ……。そして将軍はMIAになったけど、実はジオンの捕虜になっていて、連邦軍特殊部隊の働きで救出されたってわけだ。
「この演説で、戦争継続派は勢いづくだろうな」
『そうあって欲しいですな、隊長』
クラークが俺の独白を聞き、同意の言葉を返す。エミリア少尉もグレースも、同じく同意しているのがニュータイプ感覚で理解できる。なんとしても、戦争継続してもらいたい物だ。ジオンに勝利は渡さない。絶対に、絶対にだ。
そして俺は、再度訓練に意識を戻す。俺の例の『能力』で、パイロットとしての単純なスペックは上げられるだけ上げてある。これ以上を目指すなら、あと今のところはその上がった能力を『使いこなす』しか無い。
俺と俺の小隊は、何時か訪れるジオンとの再戦に備え、ひたすらに訓練を積んだ。
いよいよ主人公、最初の部下を持ちました。さっくりと『パワーアップキット』使って、部下の能力も今の時点で可能な最大限に伸ばしてます。