信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット 作:雑草弁士
テム・レイ技術大尉と意見交換をした次の日、2月21日の事だ。突然ムカツク奴が俺の執務室に顔を見せた。階級は同じ中尉なのだが、奴の方が先任士官だから上官扱いになるんだ。それをかさに着て、『今からそちらに行くから、隊の全員を集めておけ!』と上から目線でいけたかだかに命じて来やがったんだ。
なので、仕方なしに俺は隊の全員を執務室に集めた。俺とクラークは、せっかく時間を作って自分たちの鹵獲ザクを整備班と一緒になっていじり倒そうと思っていたんだが。俺の小隊の全員が、俺を含めて苛立っている。そして奴がやって来た。
誰が来たかって?ルナ2基地
「貴様らに命令を与える! これは地球ジャブロー本部の意向であると心得よ!」
はっきり言って、ムカつく。しかもニュータイプ感覚で分かるんだが、こいつ禄でもない事を考えている感じがヒシヒシとしやがる。
「貴様らルナ2基地
「……了解です、ダニンガン中尉。しかし第4小隊は加わらないのですか?」
「そんな事はどうでもよい! 貴様は黙って命令に従えばいいのだ!」
「……了解です」
あー、ムカツク。こいつの発散してる思念が感じられた。こっちがスペースノイドだからって言って、徹底的に
……だからか。なるほど。となると次にこのクソ野郎が言いそうな事は……。
「ここからはオフレコである。貴様ら、今回の模擬戦で勝ってはならんぞ」
「ダニンガン中尉、理由をお聞かせ願えますか?」
「ふん! 教える必要はない!」
ああ、やばいな。エミリア少尉も、クラークも、グレースも、爆発寸前だ。なるほど、アースノイドのエリートさんたちに花を持たせ、箔を付けてやろうって事か。だからアースノイドが隊長を務める第4小隊は今回除外した、と。隊にスペースノイドとアースノイド両方がいる第4には、勝たれても負けられても困るって事だな。
俺は思念で、3人の部下に『ここは耐えろ』と言い聞かせる。そしてジャマイカンの阿呆は偉そうに言葉を続けた。
「なんだ、その顔は? 貴様らは黙って、無様に敗北してみせれば良いの……」
「すまんね、邪魔するよ」
その時、突然に扉が開いて、
「馬鹿者! 今は……。て……テム・レイ技術大尉!?」
「いや、少し急ぎの通達があったのでね。お邪魔するよ?」
そしてレイ技術大尉はジャマイカンを無視して俺たちに話し掛ける。
「諸君、急な話だが今回模擬戦をやる事になったのは聞いているかね? その模擬戦に関してなのだが、ルナ2基地
「!! ……れ、レイ技術大尉!! そ、それは!!」
「何か問題でも? ダニンガン中尉。……当たり前の事を言わないでくれたまえ。
貴官が第1と第2のエリート達に花を持たせて、彼らの後ろにいる上のお偉いさんとのパイプを太くしたいのは知っているよ。それと、貴官がルナ2基地への政治的圧力をかけて自陣営に取り込むべく密命を受けているのはね。
だがね、ここで手加減してRRF-05ザニーに勝たれては、連邦軍のMS開発計画が歪むのだよ。ザニー程度の性能でザクに勝てるなどと思ってしまって、弱いMSを並べて大損害を被れと言うのかな? 戦争そのものに負けてしまったら、どうするつもりかね?」
「あ、あう、うあ……」
「……君はそれを理解していない様だ」
レイ技術大尉の冷たい視線が、ジャマイカンのクソ野郎を射抜く。ジャマイカンは引き攣った顔で、踵を返した。
「し、しっ、失礼するっ!」
「……やれやれ。退出の許可を出していないのだがね、わたしは」
部屋からあたふた出て行くジャマイカンを見送ると、レイ技術大尉は俺たちに向かってにやりと笑う。まあ、ジャマイカンの奴はレイ技術大尉の技術大尉という階級に圧されたのもあっただろうが、奴が本当にビビっていたのはレイ技術大尉の後ろにいる、レビル将軍派閥の影に対してだろう。
俺はレイ技術大尉に頭を下げる。
「来ていただいて、助かりましたよ」
「いや、彼が何かしら妙な動きをしていた様だからね。まあしかし、もしわたしが間に合わなかったらどうしていたのかね?」
「俺は、いえ自分は軍人ですからね。理屈に合わないと言っても上の命令には従いますよ。そう……。
第1小隊と第2小隊を圧倒的に、徹底的に叩いておいて、とどめを刺す直前に試合放棄で敗北してみせる、とかね?」
その場の全員が、声を出して笑った。
俺の目の前では、ペイント弾で真っピンクに染まった8機のザニーが突っ立っている。一方の俺たちの鹵獲ザクは、まったくひと欠片もピンク色のペンキは付着していない。第1、第2小隊ははっきり言って、俺たちの敵では無かった。
『馬鹿な……』
『俺たちが、こんなあっさりと……』
うん、呆然自失して、隊内回線じゃなくオープン回戦で喋ってる事にも気付いてないんだね、エリート君たち。でもな、機体性能の悪さはともかく、自分らの訓練のヌルさを気付いてない様じゃ俺たち第3小隊に、傷一つつけられんよ。
演習場の指揮所から、ワッケイン司令の声が響く。
『うむ、見事だザザザッ第3小隊の諸君。それに比べザザッ第1と第2の練度の低さは目に余る物があるな』
『わ、ワッケイン少佐、どうか、どうかそのくらいでザッザザッ……』
ジャマイカンの声も聞こえる。だがその声には苛立ちと焦燥が混じっているのを、隠せはしない。ちなみに通信に、妙にノイズが混じる。その理由は、実は俺たち第3小隊は全員が察している。
だがノイズの原因を察した理由がニュータイプ能力では、説明する方法に悩む。とりあえず俺は指揮所に秘匿回線を繋いで、ワッケイン司令に報告する。
「ワッケイン司令……。通信に、妙にノイズが混じります。まるでミノフスキー粒子を散布しているかの様に」
『!? ザザッ確かなのか!? ザザザ』
「今までの戦闘での、ミノフスキー粒子による通信障害と、そっくりです。……ルナ2防衛艦隊の、緊急出撃を進言します。これがミノフスキー粒子によるものならば、最低でも艦艇がルナ2近傍に……」
『ふむ、わかったザザッますぐに艦隊の準備をさせる』
「了か……!?」
その瞬間、俺はオープン回線に切り替えて叫ぶ。
「全員、回避行動を!!」
『『『了解!!』』』
そして演習場に、サク・マシンガンの120mm弾が降り注ぐ。『敵』の存在を察知し、注意を払っていた俺たち第3小隊は、全員が余裕でその攻撃を躱した。
だがしかし、真っピンクに染まった第1小隊と第2小隊のザニーは、次々にザク・マシンガンを喰らう。慌てて回避しようとしているが、その動きは性能の低さと技量の拙さが相まって、あまりに鈍い。次々に奴らのザニーは、擱座して動きを止める。
(やはり暴発したか……。敵4機のうち、1機がどうも新兵っぽくて、しかも気持ちが逸っているみたいだったしな。命令無視して、手柄を立てようと暴走するんじゃないかと思ってたよ)
(あ、残り3機の敵機も、慌てて動き出したわ。とりあえずこっちを殲滅して離脱するつもりなのね)
(やる気満々……ってほどじゃねえが、仕方なしとは思ってるみてえだな。この伝わって来る感じからは)
(でも、攻撃して来てくれて返って助かったかも。このままこっそり逃げ帰られてたら、こっちが
俺の思念に、エミリア少尉、クラーク、グレースがそれぞれ思念で応えを返す。そこへオープン回線でジャマイカンの阿呆の声が響いた。
『てっ、敵襲ザザッ! 連邦軍でMS開発が進んでいる事を知られてはいかん! ザザザ第1、第2小隊! 貴様ら、第3より先に奴らを撃墜せ……』
『ジャマイカン中尉! 越権行為だ! ザザッ隊に命令を下すのは、わたしの職分だ! ザザッ』
『わっワッケイン司ザザザザ失礼を致しました!!』
ジャマイカンを制し、ワッケイン司令は命令を下す。
『こちらワッケインだザザッ。第3小隊はジオンの偵察部隊を足止めしろ。貴官らの機体は模擬戦装備だから、それ以上の事は望まん。第4小隊に実弾装備をさせて出すザザザザ。
……まあ、墜としてしまっても構わんが。第1、第2は生き残りが擱座した機体を運んザザッ、撤退しろ。』
『ザザザッしっ、司令っ! ワッケイン司令、それでザザッわたしの面子が……』
『今の第1、第2に、それ以上の事ができるとでも? ザザッ』
ジャマイカンめ、黙りやがった。けれど相当天辺に来てやがるな。その憤りが、はっきりと感じられるぞ。
(よし、命令が出た! お前ら、やつらをブッチめるぞ!)
(((応!!)))
俺は120mm低反動キャノンで、襲い来る4機のザクⅡを狙い撃つ。まあ、装填されてるのはペイント弾なんだが。だがそれでも、やり様はある。
俺のニュータイプ能力による超感覚に、敵兵の悲鳴が響いた。まあ、それはそうだろう。俺の撃ったペイント弾は寸毫のズレも無く、敵機頭部のモノアイをピンク色に染めたのだ。メインカメラを潰されても、俺や俺の小隊員はまあまあ動けるが、一般パイロットレベルでは無理と言う物だろう。
そしてクラーク機が敵機の1機に組み付くと、一本背負いで投げ飛ばす。ルナ2の大地に大の字になってめり込んだ敵機から、エミリア少尉機がザク・マシンガンを、グレース機がヒートホークを奪った。
エミリア少尉機がザク・マシンガンを連射する。その弾丸は1発の外れも無く、2機のザクⅡを撃ち抜いた。爆散する敵機。そしてグレース機がヒートホークを振るい、最後の1機……あの我慢できずにこちらを撃ってしまった新兵のザクを袈裟懸けに斬り捨てた。核融合炉にはあたらなかった模様で、爆発はせずに倒れ伏す最後の1機。
演習場の指揮所から、ワッケイン司令の賞賛の言葉が届く。
『よくやってくれた。ザザッ今しがた、緊急発進したマゼラン級戦艦2隻が、1隻のムサイ級を発見ザザザ撃沈したそうだ。ミノフスキー粒子もしばらくすれば拡散するだろう』
「ありがとうございます」
『それとレイ技術大尉が、彼は今模擬戦と戦闘のデータの取り纏めに忙しくしているが、勝利をおめでとうと伝えて欲しいそうだ』
「はっ! 了解です!」
俺と第3小隊の面々は、笑顔になる。レイ技術大尉とは、良い関係を築けそうで何よりだ。そして俺たちがルナ2内部へと帰還しようとしたときに、第4小隊がフル装備で地上へ上がって来るのが見えた。
……いや、全部終わったけどさ。
ジャマイカンのクソ阿呆が、苦虫を256匹まとめて噛み潰した顔で地球へ帰った、その数日後の話だ。俺たち第3小隊はルナ2の司令官執務室へ呼び出された。そこでいきなりワッケイン司令から、謝罪されたのだ。
「諸君らには申し訳無い仕儀になってしまった。すまん」
「はっ! ……い、いえ。何があったんでしょうか司令」
「ジャブローのモグラどもの嫌がらせだ。ルナ2基地
「「「「……」」」」
こう言う嫌がらせをするか。味方の脚を引っ張るだけ引っ張って、ジオンに負けたらどうするつもりだ。そこまで考えて無いのか?
「V作戦への協力を盾に取られてはな……」
「V作戦、ですか? それは我々が聞いても良い事なので?」
「無論、オフレコだ。V作戦とは、連邦軍の
「「「「……うわ」」」」
ワッケイン司令は、失笑して語る。
「ふっ、だがその条件を飲んだ代わりに、V作戦への最大限の協力を確約させたぞ。予算の規模も、資材の備蓄量も、V作戦の規模は予定の倍から3倍になった。モグラどもが埋めて溜め込んでいた埋蔵金を掘り返して、な」
「そして諸君らに配備されるザニーだが……」
「レイ技術大尉!?」
突然そこへ大量の書類を抱えて入室して来たのは、レイ技術大尉だった。彼はその書類の1つを机上に広げる。
「……これを見てくれ」
「「!!」こいつは……。ザニーじゃねえ!」
うん、俺もその事で驚いたんだが、クラークの叫んだ通りだ。それがザニーなのは、装甲板やら外装やら、それだけだ。中身は全然違う。本来のザニーはジオンのザクⅡもしくはそのコピーをベースにして、あちらこちらに連邦製のパーツを組み付けた物。はっきり言って、良くて性能はザクⅡと同じか、若干劣るんだ。
だけど、この図面のザニーは中身が全部連邦製だ。駆動系はザニーでは流体パルス駆動装置だったものが、フィールドモーターになっている。メインのジェネレーターは、俺が概略設計した新型の核融合炉に変更されてる。スラスターもザク系列の化学ロケットから置き換わってる。
「これは……」
「うむ、RX計画で試作機を建造しているのは知っているね? その試作機を造る際に、部品精度などは尋常ではない高品質が要求されるのだよ。当然、使用には耐えるレベルではあるものの、RX計画の要求レベルからは不合格とされるパーツが、数多く出る事になる」
「……そのパーツを寄せ集めた、ってわけですか。」
「まあ、ガンキャノンを造る際に出た規格外パーツの寄せ集めではあるがね? 調整しだいでは、ザクⅡを超える性能を引き出す事も可能だとも。それにだね? 例のモスク・ハン博士とも連絡がついた。マグネット・コーティング技術の実証に意欲的だよ。そしてフィールドモーターは、マグネット・コーティング技術と相性が良い……。
モスク・ハン博士は、マグネット・コーティング技術の完成のためにオダ中尉とわたしの協力が、是非とも欲しいと言っているよ。この機体で、それを試すのもいいだろう」
レイ技術大尉が言葉を切ると、再度ワッケイン司令が口を開く。
「無論、このザニーにしてザニーにあらざる機体を貴官らに渡すだけで、話を済ませはしない。この様な小手先の詐欺めいた手法で時間を稼いでいる間に、レビル将軍は色々と準備を整えておられる。……モグラどもが、二度と下手な手出しをできん様に、な」
うん、そう願う。正直後ろから撃たれるのをどうにかするのは、面倒で仕方がないんだ。……だけど結局俺たちは、レビル将軍の派閥に入ってるも同然だな。俺はワッケイン司令に敬礼を送りつつ、そう考えていた。
みんな大好き、小悪党としてとても使い勝手の良い、ジャマイカンの登場です。