信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット 作:雑草弁士
月がかわった宇宙世紀0079、3月1日。ジオン軍の第一次地球降下作戦が開始された。本当であれば、俺たちルナ2基地の戦力を出して妨害するところなのだが、ルナ2の戦力はルウム戦役の損害から未だ回復途上だ。
例のオフレコのビンソン計画に従って、新造艦艇が着々と着工してはいるのだが、だからと言ってそれらは就役、就航したわけでは無い。まだ建造途中なのだ。それに艦が無いだけじゃなく、人員も足りないし。
それでも出撃すべし、という意見は根強かったのだが……。ジオンは第一次地球降下作戦の支援として、ルナ2基地に牽制の攻撃をかけて来たのだ。ドズル・ザビ中将旗下の宇宙攻撃軍公国宇宙艦隊の一部だった。
『くっそ、俺たちはなんで出撃できねえんだ』
自機の
『ふう……。まったく、ザニー程度を隠したところで、どうにかなる物でも無いと思うのだけれど』
『お役所仕事ですよね……』
グレースの言葉が、全てだった。ジャブロー基地からの通達では、可能な限り連邦軍
どうせ連邦軍
若干明るい材料としては、簡易
と、そこへワッケイン司令の座乗艦、マゼラン級戦艦マゼランからルナ2基地指令室を介して命令が来た。
『ザッこちらワッケイン! ルナ2基地
「了解です! 第1、2、4には!?」
『そちらにも出撃ザザ令を出す!』
まあ流石に基地内に入り込まれては、戦力の出し惜しみはしちゃいられんか。
「聞いたな、お前ら! 第3小隊、出るぞ!!」
『『『了解!』』』
俺たちのRRF-05Rザニー改……中身はザニーとは別物なのだが、そのザニー改は次々に格納庫を出撃して行った。
俺のザニー改が装備している120mm低反動キャノンが、1機のザクⅡを撃破する。僚機であるグレースの機体もまた、同様にザクⅠを破壊していた。
(よし、この辺の敵は排除できたな)
(隊長、副隊長とクラークさんが戻って来ます)
俺たちはミノフスキー粒子によるノイズが
(隊長、次は?)
(右手の方が気配が濃いが、それより左手の奴が基地内深くに入り込める大通路を押さえようと動いてる。あっちの方が緊急だ。急ぐぞ)
(((了解!)))
俺たちは急ぎ、左手の敵を掃討すべく移動した。
しかし、牽制の陽動攻撃にしては、やけに敵の数が多い。敵将ドズルは、もしかしたら本気でルナ2を
俺はそう考えつつ、また1機のザクⅡを撃墜する。にしても、この敵は若干今までよりも動きがいい。外見は変わらないが、もしかしたら新型か?
『ザッザザザうわ、うわぁっ! 助けてくれっ!』
ノイズ混じりの悲鳴が聞こえる。いや、
(あー、これは第1の連中?)
(そうだな。第2の連中も居る。本音を言えば、このまま消えて欲しいんだが)
グレースとクラークが、思念でボヤく。うん、第1と第2の連中は、正直ルナ2基地内では浮いた存在になりつつある。腕前が大した事ないのに、エリート気取りのいけ好かない連中だ、って事で。
そこへワッケイン司令からの命令が来る。
『第3ザザッ、第1と第2が護っているC-3Aブロックを救援に赴けザザザ、あそこを抜かれると造船区画まで一直線ザッ』
「了解、至急弾薬を補充し、向かいます!」
そして俺は思念で部下たちに語り掛ける。
(司令の命令だ。弾薬の補給が終わり次第、助けにいくぞ。仕方ないし)
(((了解……)))
俺もつい『仕方ない』などと付け加えてしまった。まあ、思念での会話で嘘を吐くのは、とても難しいんだ。本音が出てしまうのは、それこそ『仕方ない』だろ。本音じゃ第1第2の連中を、助けになんか行きたくないんだが。
そして俺たちは急ぎ弾薬カートリッジを補充すると、第1と第2の連中が必死で守っているエリアへと到着する。俺の120mmでの狙撃が、今しも第1のザニーにとどめを刺しかけたザクⅡの1機を破壊した。
『だ、ザザッ第3だ! 第3が来た、助かっ……』
『馬鹿もザザッ!! 第3の奴らのなど! か、帰れ! 貴様らの手など借りんザザッ!!』
『た、隊長! けれどもう俺たちは限界でザッよ!!』
『黙れ!』
第1の隊長、モーガン中尉が裏返った声で叫ぶ。だが俺は奴に言ってやった。
「おあいにくだが、お前の言い分などどうでもいい。俺たちはワッケイン司令の直接命令で動いている」
そしてまた1機のザクⅠと、1機の頭飾付き中隊長機と思しきザクⅡを撃破。俺はモーガン中尉に言い放つ。
「ワッケイン司令の直接命令を妨害すると言うなら、反逆罪でお前から始末するぞ。……反逆罪は言い過ぎだったな。だが司令からの命令を無視した、命令不服従は確実に付くぞ? 経歴に傷をつけていいのか? エリートさんやい」
『……!! き、きさ……ま……』
その時、俺の脳裏に情景が浮かんだ。モーガン中尉が無意識に周囲に放っている思念を捉えたんだ。その中で、モーガン中尉は叱責されていた。場所はルナ2基地の、通信室だ。
(貴様などに期待したのが間違いであったわ! スペースノイドの寄せ集めである第3小隊になど、惨敗しおってからに!)
(も、申し訳ありません! これは……)
(言い訳など聞きたくはない! 成果を出せ! さなくば貴様を送り込んだ、わしの顔が丸潰れになるのだぞ!)
こいつ……。追い詰められてやがるなあ。後ろ盾になってる偉いさんからの、直接の叱責を受けてたのか。その映像を脳裏で観つつ、現実の俺は的確にザクⅡを次々に撃破して行く。
そして最後のザクⅡをクラークのザニー改が叩き潰した瞬間の事だった。俺は機体を横っ飛びさせる。今まで俺のザニー改が居た場所を、120mm低反動キャノンの弾丸がぎりぎりで通り過ぎる。……まあ、避けるのは簡単だったが。やるんじゃないか、とは思っていたし。
うん、俺を後ろから撃ったのは、第1小隊の小隊長であるモーガン中尉だったんだ。やるんじゃないか、とは思っていたが……。できればやらんで欲しかったのも本当のところだ。
「味方撃ち、か。交信記録共々、記録には取ったからな。この戦いが終わった後の、軍法会議を楽しみにしているといい」
『え、ええい! 奴らを殺せ! 奴らは敵と通じていたんザザッ!』
『そう言う事にしたいわけね?でも残念ね。ザザッ』
うん、エミリア少尉のザニー改が壁に取りついて、有線の通信ケーブルを接続していた。
『もうデータは送ったわ。あなた達、その反逆者の命令に従わない方ザザッいいわよ。下手をすると、あなた達まで反逆者になるザザザッ』
『こ、殺せえ!! 奴らを殺せっ!』
しかしモーガン中尉に従う機体は無い。第2のザニーはおろか、第1の部下たちですらも、だ。そして第2小隊指揮官のニューマン中尉が、疲れ果てた声で口を開く。
『乱心したモーガン中尉と、その機体を取り押さえろ……。ここはザッザザザだけでも、汚名を返上しておいた方が後々のためだろザザッ。……はぁ』
「少しは話のわかるのも、いたんだな」
『この展開ではな……。わたしとて貴様らは好いてはいないザザッ、さりとてモーガン中尉の様に馬鹿をやるのはな。……ガァッ!?』
『ニューマン中尉!?』
第2の小隊長機は、爆発四散する。脱出はしていない。ニューマン中尉の断末魔の叫びが、俺たちの脳裏に響いた。撃ったのは……第1の小隊長、モーガン中尉のザニーだ。
『うはははあはああはははははは、ひゃははははは!!』
「……馬鹿が」
俺は自機に装備されているシールドの、その先端部に取り付けられている格闘用クローを用い、モーガン中尉のザニーが持つ120mm低反動キャノン、60mmバルカンを破壊。更に鋼材削り出しの棍棒をはじき飛ばして、丸腰にさせる。
そのままモーガン中尉機は、グレース機とクラーク機に取り押さえられた。だがモーガン中尉の狂った様な笑声は止まない。
「おい、こいつを……さっきまでのお前らの上官だった、この反逆者を頼んでもいいか?俺たちは、まだ他へも回らにゃならん」
『あ、ああ……。い、いえ、了解しました中尉殿ザザザッ』
ぎりぎりで俺が上官である事を思い出した第1小隊と第2小隊のザニーが、グレース機とクラーク機からモーガン中尉機を受け取る。そして機体を降りた者たちが、モーガン中尉をザニーから引きずり出す。モーガン中尉の笑声は、いまだ止まない。ひたすら狂った様に笑い続けている。
実際、狂った方が幸せなんだろうが、奴は狂っちゃいないのが俺たちには分かっていた。ただ、自暴自棄になって発作的にやっちまっただけだ。まあ、追い詰めたのは俺なんだが、そうなるべくしてなった、と言うのは間違いの無いところだろう。
(ちょっとやり切れんなあ……)
(((たしかに……)))
俺たちは思念でちょこっと愚痴ると、急いで他の敵機が侵入した箇所へと機体を走らせた。
結局のところ、ルナ2基地は防衛に成功した。外の宇宙空間では、RB-79やRB-79Kと言った初期型ボールが大活躍だったらしい。ただし損害も相応に出たが。ザクⅠやザクⅡ相手にも若干効果があったんだが、ボールが真価を発揮したのは対艦戦だった模様。
ボールが集団になって火力を集中した事で、多数のムサイ艦を沈め、敵の今回の旗艦であるチベ級重巡洋艦を撤退に追い込んだのだ。だが同様の戦術で
そうなれば、ボールでは太刀打ちできない。やはりモビルポッドでしかないボールは、前衛を支える
それでもテム・レイ技術大尉によれば、当初予想されていたよりもパイロットの損耗率はかなり低いらしい。当初は4割から戦況により多ければ7割の損耗を覚悟する、本当に棺桶兵器だったらしいんだ。あくまで間に合わせの簡易
だがここで、俺がレイ技術大尉を通して上げた進言が効いた。ボールの装甲を強化し、簡単なオマケ程度の物ではあったが脱出機構が装備されていたのだ。それでも出撃した4人に1人は帰らぬ人になったのだが……。予想よりも生き残りは多かったんだ。
ちなみにルナ2基地内に侵入した敵のザクは、ほとんど全てを撃破する事ができた。ほとんど、と言う事は逃がしてしまった奴もわずかながら居る、という事だ。俺たち第3小隊は1機たりとて逃がしていないんだが、それでも逃げた奴がいたと言う事は、ザニーの存在はバレたと見た方がいいだろう。
そして第1、第2小隊の下っ端の面々は今現在、事情聴取と言う名の尋問中だ。第1小隊隊長のモーガン中尉は、憑き物が落ちた様になって収監されている。おそらくは反逆罪で銃殺になるだろうと思われた。モーガン中尉には同情はしないが、ちょっと内心思う所はあるな。だからと言って、ニューマン中尉を殺したのは何の弁護もできんが。
今回の戦いがこれほど大規模になったのは、連邦軍が大量のザクⅡを捕獲、一部で鹵獲ザクを戦力として運用していた事が根底にあると思われる。その事がジオン軍、ドズル・ザビの焦りを誘ったのだろう。
それが故、本来は牽制の陽動攻撃でしかなかったはずの今回の戦闘に、必要以上の戦力を注ぎ込ませる事になったんだろうな。あわよくば、ルナ2基地を
それはともかくだ。ジオン軍は今回の戦いでルナ2基地を封じておいて、第一次地球降下作戦を成功させてしまった。中央アジアに降下したジオンは軍を2つに分けてヨーロッパ、アフリカと中東方面を順次制圧している。これで奴らは、地球の資源地帯を手に入れた。
色々と、バタフライ効果が出ています。
まず、主人公たちが早期にザクⅡを確保した事が遠因で、ジオンの地球降下作戦より前にV作戦とビンソン計画が発動してます。もっとも実機とか、新造艦とか、まだ完成してませんが。
他にも主人公とテム・レイが活発に意見交換した事で、ボールがこの時期に完成しました。更にはボールが本来の歴史より、多少マシになっています。若干本来より高価ですが、それでも元が馬鹿安だったので、まだまだ安いです。……でも結局は『丸い棺桶』扱いは変わりませんでしたが。