信長の野望・宇宙世紀乱世伝withパワーアップキット 作:雑草弁士
再びのルナ2基地攻撃があったのは、3月11日の事だった。当然と言っていいのか何なのか、これは第二次地球降下作戦のための牽制、陽動攻撃だったのだ。そのためルナ2の戦力は、ルナ2基地に貼り付けておかなければならなかった。地球降下作戦の妨害をするどころでは無かったのだ。
だがこの時の襲撃は、規模は前回ほどではなかった。おそらくルナ2の戦力が未だ侮れない、と思ったのかも知れない。そしてこの時はもはやザニーを隠す事も諦められていたため、俺たち第3小隊が積極的に出撃し、敵の旗艦になっていたチベ級重巡洋艦を撃沈。それにより比較的早期にジオン軍は撤退した。
そして4日後の3月15日、俺は第3小隊の面々と共に、中身がザニーじゃないザニー、俺たちの機体であるザニー改のところへやって来る。そこにはグェン整備班長率いる整備班に、レイ技術大尉、そしてはじめて顔を見る学者然とした男性が待っていた。
いや、顔は初めて見るけれど、写真では見た事あるんで知っている。モスク・ハン博士だ。
「お初にお目にかかります。自分はサブロー・オダ中尉、この者達は右からエミリア・エッジワース少尉、クラーク・キャラハン伍長、グレース・ギャレット伍長です」
「うむ、わたしはモスク・ハンと言う。一応は工学博士などをやってはいるがね。今日はよろしく頼むよ」
うん、そうなんだ。ハン博士は自分のマグネット・コーティング理論を実際に俺たちのザニー改で試すために、わざわざ来てくれたんだ。そして今回用意した機材は、こちらに置いて行ってくれるそうなので、今後機種変更があった場合にも対応可能だ。
そして俺とレイ技術大尉、クラーク、グェン整備班長は色々と意見交換をしながら、ザニー改にマグネット・コーティング処置を施して行く。理論上は、それこそ本当に理論上の話ではあるが、各部の稼働抵抗をゼロにして反応速度を天井知らずに上げる事も可能だ。
まあだが、現実問題として様々なトラブルも出る。稼働抵抗を減らし過ぎれば止まらなくなったりもするわけだコレが。それにあくまで抵抗ゼロは理論上の理想値だし、実際にはどうしたってそこまで行くわけじゃ無い。
だもんで、マグネット・コーティング処置の絶妙な強さを探って、安全域をどの程度取れるかも試しながら、時々機体を動かして確かめながら、まずは俺の機体から順に処置を施して行く。そして作業は翌日まで続いた。第3小隊のうち俺とクラークは現場で仮眠を取りながらその場に居たが、エミリア少尉とグレースはいったん自室へ返して睡眠を取らせたりもしたっけ。
そう言えば、グレースを部屋へ返した時、レイ技術大尉が物凄く切ない視線でその後姿を追っていたな。いや、彼から感じた思念は、色欲とかそう言う代物ではまったく無かった。彼の思念の背後に浮かんだイメージは、1人の少年の姿だ。グレースと同じ年頃の。
「レイ技術大尉……。グレースを見て、お子さんでも思い出しましたか?」
「む? う、ああ。うん。……あの様な子供が、軍に志願してパイロットとはな」
「……俺たちの小隊は、皆が皆、目の前でサイド1が滅ぼされるのを目の当たりにしたスペースノイドです。エミリア少尉だけは、出身は別サイド……サイド2でしたが、結局そこも滅ぼされてますし。……故郷が滅ぼされるのを目の前で見せつけられて、ジオンに対する恨みは皆、それこそ深いんです。戦わなければ、自分が保てないんですよ」
「そう、か……。わたしが連邦軍の
レイ技術大尉は、物凄く寂しげに語る。俺は返す言葉が無かった。レイ技術大尉が本当に戦場に出したくないのは、おそらく今しがた『視え』た、あの少年だろう。たぶんレイ技術大尉の息子さんなのだ。
第3小隊全員の機体の、マグネット・コーティング処理が完了した。きっちりデータも取ったので、今後機体の更新があったとしても、今回よりもお手軽に短い時間でマグネット・コーティング処置が可能だろう。
小隊の皆は、はしゃいでいる。今までは、操縦系や機体をイカレさせない様にソフトすぎる操縦を心がけていたのだ。けれどマグネット・コーティング処置を施した機体は、さほど遠慮なしに動かす事ができたのである。まあ、ザニー改は結局間に合わせの機体でしか無いので、構造的な限界値はやはり低いが。
今、俺たちはルナ2近傍の宇宙空間で空間機動訓練という名目で、機体の挙動を確認している。今までが嘘の様に、機体が軽い。これでこの機体が、V作戦RX計画から出た規格外パーツの寄せ集めによる間に合わせではなく、正規の試作機やあるいは制式量産機であったなら、どれだけだっただろうか。
と言うか、せっかくマグネット・コーティング処置を施したザニー改だが、実のところ近いうちに新型機に更新されそうな気配がある。いや気配じゃなく、ほぼ本決まりなんだが。まあ近い内とは言っても、月単位で時間は必要だ。RGM-79(E)のナンバーが割り振られる事になってる。
番号の末尾についている(E)は、『EARLY Type』つまり初期型を意味してるらしい。本格量産タイプであるRGM-79ジムから、重力下戦闘用の能力を省き、宇宙用として先行量産するとの事だ。ルナ2基地の工廠で、建造が始まっている。
ちなみにこのRGM-79(E)には、俺がヒマを見つけて書いてレイ技術大尉に流した技術情報や、彼とディスカッションして出した意見が、多数盛り込まれている。レイ技術大尉に言わせれば、俺のおかげで設計の完成が驚くほど早まり、実機も本来より1ヶ月は早く仕上がるらしい。
まあそれはともかくとして、だ。今の所、俺たちのザニー改はかなり手荒く扱っても、操縦系がオーバーヒートする気配も無い。マグネットコーティング万々歳だ。
そして3回目のジオン宇宙攻撃軍によるルナ2基地攻撃が行われた。と言っても、敵の戦意は少ない。それは俺たちのニュータイプ能力でもよく分かる。おそらくは第三次の地球降下作戦を支援するための、またも牽制の攻撃なのだろう。
だがジオンは、ことにドズル・ザビ旗下の宇宙攻撃軍は、前回と前々回のルナ2基地攻撃で大きな損害を出している。たかだか牽制の陽動攻撃で、
だから今回は、ルナ2戦力の本当に抑えだけで、可能な限り損失を抑える様にしているんだろうな。まあそんな戦意が低い敵であっても、ルナ2近傍に陣取られて散発的な攻撃を加えて来るだけであっても、それを無視して地球近傍へ戦力を出すわけにはいかない。地球降下作戦の妨害は、できないってわけだ。
個人的には、地球降下作戦を妨害しない方がいいとは思ってるんだがな。
いや、ジオン軍の兵力は実際の所、広大な地球を支配下に置けるほど多くは無い。3度もの地球降下作戦をやれば、奴らの戦力は攻勢の限界点にかなり近づいたことだろう。更に言えば、宇宙での戦力も減少して、ルナ2基地としてはやり易くなるんだ。
そして俺たちは今、サラミス級マダガスカルの甲板に機体を露天係止して、敵艦隊へ向けて前進している。まあ、いつも使っているコロンブス級クラレンス・マーカムは非武装艦だ。こう言う仕事に使うわけにはいかないだろう。
ちなみにマダガスカルが単艦で突出しているわけではない。ちゃんとワッケイン司令のマゼラン級マゼランを旗艦とした艦隊の1艦として編成に加わっているんだ。なお他の艦には、第4小隊のザニーやボール部隊が露天係止されている。
直接回線でマダガスカル艦長のリード中尉が、裏返った声で叫んだ。
『お、オダ中尉! まもなく貴官らの機体を切り離す! きき貴官らの仕事はボール部隊の前衛に立っての斬り込み役だ! わわ分っているだろうが!』
「任せてください、リード中尉。
『そそ、そうか。うむ、そうだな。わかった、た、頼むぞ』
まだちょっとリード中尉は気弱だな。まあ、仕方がないか。
「了解。……時間だ、ルナ2基地
『『『了解!』』』
俺たちのザニー改が、一斉にマダガスカルの甲板を離れて飛び立つ。他の艦からもボール部隊や、あとは第4小隊のザニーが発艦する。第4小隊の任務は、艦隊の直掩だ。機体性能も俺たちのザニー改と比べればかなり劣るし、パイロットの技量も俺たちには及んでいない。斬り込み役をやらせるのは、ちょっと無茶だろう。
俺たちは編隊を組んで、敵艦隊へと突入して行く。ムサイ艦からメガ粒子砲が放たれるが、あたりはしない。俺たちの後ろにはボール部隊が頑張って付いて来ている。
……さて、来たな。
(敵MS隊が来たぞ! 後ろに通すなよ!)
(((応!)))
思念で皆にハッパをかける。皆も力強く思念で応えて来る。そして俺たちは敵の機先を制して、120mm低反動キャノンで狙撃を行った。2連射で、4つの火球が生まれて断末魔の叫びが心に届く。即座にまた俺たちは2連射を行い、再度4つの火球が花開く。
さすがに威力が低いせいで、1射では1機を
その時、敵陣から強力な
俺は思念で部下たちに指示を与える。
(アレの相手はクラーク、頼めるか? あれを後ろのボール部隊に通したら、まずい)
(了解! 任せてくれ隊長!)
(クラークはアレに専念、他は残りの数だけはいる有象無象を掃除だ。行くぞ!)
(((応!)))
背後からは味方のマゼラン級、サラミス級から支援砲撃が飛んで来る。そんな中、俺たちは敵の
一方の俺たちは散開してボール部隊のX軸、Y軸、Z軸3方向に展開。ボール部隊に襲いかかる普通のザクⅡ……おそらくF型とか言うタイプだが、それを叩き
そしてボール部隊は、その火力を集中して敵艦に叩き込んだ。1隻のムサイ級が火球に変じる。そしてもう1隻。更には味方のマゼラン級戦艦、サラミス級軽巡洋艦が放ったメガ粒子砲のビームが艦隊旗艦と思しきチベ級に突き刺さった。
中破したチベ級は、必死に後退して行く。それを護る様にムサイ級が前に出て来るが、ボール部隊の砲火がそのムサイ級を爆沈させる。
まあ、ルナ2艦隊の方が明らかに優勢だが、それでも被害が無いわけじゃない。数隻のサラミス艦が小破から中破クラスの損傷を受けて、後退している。さっき被弾して
そしてクラークがS型のザクⅡを撃墜した。それを最後に、敵艦隊は撤退して行く。まあ相手は戦略目標は達成しているんだろう。おそらくは。この状況下で、新たに艦隊を編成して地球上空の軌道まで出張って、地球降下作戦を妨害するのは無理がある。
まあせめて、戦果を拡大したいところだが、俺たちのザニー改はやはり間に合わせの機体だ。中身がガンキャノンの規格外パーツを寄せ集めて調整し、その上でマグネット・コーティング処置を施しているだけあって、性能面ではザクⅡを超えているんだが。だが武装の120mm低反動キャノンも弾切れだし、推進剤も心もとない。ボール部隊も弾薬を撃ち尽くしたと通信がさっき入った。
とりあえずワッケイン司令は、マゼラン級戦艦のみで追撃艦隊を急遽編制し、深追いしない程度に敵艦隊を叩くおつもりの様だ。だがとりあえず俺たちの出番は、これで終わり。俺たちは後方で待機していたコロンブス級クラレンス・マーカムが、俺たちを迎えに来るのを宇宙空間で待つ事になった。
ルナ2基地の司令執務室に呼び出された俺たち第3小隊は、執務机に座したワッケイン司令に敬礼を送る。答礼を返して来た司令は、副官の少尉に目配せをした。副官の少尉はそれに頷くと、机上に宙域図と世界地図を広げる。
ワッケイン司令はその地図や宙域図を示しつつ、俺たちに語る。
「諸君、これを見てくれ。3度に渡るジオンの地球降下作戦により、地上の約半分が制圧下に置かれた。第一次ではここ中東のオデッサと東ヨーロッパ、中東全域、アフリカ東半分を制圧。第二次では北米大陸の東西沿岸から内陸部にかけて進軍され、アメリカ自治州のほぼ全てとパナマを含めた中米が占領下におかれた。
そして先日の第三次地球降下作戦では、奴らはオーストラリア大陸に降下し、そのほぼ全てと東南アジア、オセアニア地域を支配下に置いた」
「「「「……」」」」
「そして奴らは、オデッサ地域他の資源帯より採掘した鉱物資源、石油資源などをHLVで宇宙空間に打ち上げている。地上においても北米キャリフォルニアベース等で、
それは……。なんとも非合理的な事で。だがそれは逆に有難いとも言える。こちらが奴らの補給線にちょっかいを出し易い。奴らの攻勢限界点も、より一層近くなる事だろう。
「そこでこちらの宙域図だ。サイド5暗礁宙域。かつてのサイド5の残骸が散乱する、
「もしや……。そこを基点に、サイド3~地球間の通商破壊戦を?」
「まあ、わかるだろうとは思っていたがな。その通りだ。そして貴官らには、その通商破壊が軌道に乗るまでの間、その面倒を見てもらいたい」
そう言ってワッケイン司令は、別の書類を副官から受け取って机上に広げる。それはサラミス級軽巡洋艦の改装仕様書だった。
「こちらがボール搭載型サラミス級巡洋艦だ。ボール6機を整備、運用可能となっている。これが今現在、ルウム戦役で小破から中破したものの生き残ったサラミス艦を改装し、6隻ばかり出来上がっている。これが2隻に通常のサラミスを1隻付けてやり、ボール12機1個中隊単位での通商破壊艦隊を編成する。
それで3交代制で四六時中の通商破壊を行わせるつもりなのだ。貴官らはそのローテーションが1巡するまで現場にはり付いて、それをサポートしてもらいたい」
「その任務には、母艦が必須ですが……。コロンブス級輸送艦、クラレンス・マーカムを使えばよろしいのでしょうか?」
「いや、こちらを用いてもらう。これを見たまえ。……オダ中尉、貴官からの連邦版
その書面には、サラミス艦の両舷側に格納庫をくくり付けた様な艦の写真が貼り付けられていた。そうか、俺の進言は届いていたのか……。
「ネルソンの艦長にはコロンブス級イオージマの副長だった、マクシミリアン・ウェイド少尉が中尉待遇として入る。……オダ中尉、ネルソンとその乗員たちは貴官の指示で動かしてもらって構わん。上手く使いこなせ」
「はっ!!」
俺はワッケイン司令に敬礼を送る。司令の目が不敵に笑っていたのが、印象的だった。
主人公たちのザニー改、マグネット・コーティングしました! まあ、あと1~2ヶ月で機体入れ替わっちゃうんですけどね。それでも操縦系オーバーヒートの危険が大幅に減ったってのは、朗報です。
RGM-79(E)、その最初期型配備開始まで、あと少しです。と言いますか、これも主人公の影響で数ヶ月前倒しになってますね。V作戦前倒しが2~3ヶ月程度、そして主人公がテム・レイ技術大尉通して提供した技術情報で1ヶ月程度前倒し。上手くいけば0079の4月~5月には!
そしてネルソン級