やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ! 作:つヴぁるnet
(二次創作の時点で既にご都合主義そのものなのですがそれは…)
ウマ娘の入学式が終わった。
ウマ娘を育てるだけのトレーナーと言えども学園に所属してる以上はこういった式典は手伝う。
もちろん先月もファン感謝祭のイベントを手伝ったのだが、感謝祭にやってきたお客さんの中でカボチャ頭のマフTを目当てにやってくる人やウマ娘もいた。 記念撮影のために足を止めてあげて、シャッターの中に収まってあげたりと、お手伝いが捗らなかったのは記憶に強い。
あと学園内では限定品のマフTと同じ手編みで作られたカボチャ頭が売られていたりと結構自由だ。 予告なしでの販売だったが1時間もしないで30個全て売れたらしい。
※後にプレミアムで数万する模様(転売のパリピ談)
そうしてファン感謝祭が終えればその数週間後は入学式が始まり、中央の門を叩いてやってきた新芽達を向かえ入れる。
ここでもマフTを見て「本物だ!」と騒がれる。
_おい、みろよみろよ!
_ふぁ!?
_本物だよ!
_マフTだ! うわー!
_テレビで見たよね?
_前回の弥生賞で見た!
_シービーの人だよね!?
_実物なの! すごいと思うの!
_なんやあの兄ちゃん? おもろいな!
_ここが日本の凄い所なんだね!
_随分とロジカルとは程遠い頭だな…
ホープフルステークスからマジで有名になっちまったよな。
前の弥生賞で1着取ってから皐月賞の出場宣言した事でもまた一段と有名になったし。
そんでもって勇気持って話しかけてきたウマ娘達と軽く会話してあげるとめちゃくちゃに尻尾ブンブンしてた。
ただ普通に「ようこそトレセン学園に」と言ってあげただけなのにね。
俺はアイドルかな?
いや、あながち間違ってないんだろう。
てか既に俺はそんな感じだ。
でも客寄せパンダになるつもりはない。
中等部3年になったミスターシービーとクラシック級で三冠を取りに行くと決めている。 あの残念美人記者を通して世間でもその挑戦は広まったので、余計に有名になる始末だ。
しかし一年前と違って随分と変わったな。
今となっては俺に噛み付いてくるトレーナーもいない。 牽制してた頃が懐かしく、ウマ娘から距離を取られていた頃が嘘みたいだ。
いや、今も近寄り難いトレーナーとして認識されていて、やはりこの呪いから放たれる威圧感の所為で遠ざけてしまう。
しかしそんな威圧感を物ともしない…と、言うよりあまり気にしないウマ娘は普通に近づいてくる。
おう、お前の事だよ、パリピギャルウマ娘。
そんなにカボチャ頭がお気に入りか?
あとそうだ、入学生の中にいたかなりヤベーヤツもそうだったな。
ええと、たしか…ゴールドシップだったか?
あのウマ娘も初対面で距離感バグってたよな。
両手にマヨネーズとバルサミコ酢で「亜種系の引き戸式専門の配管工として食えないカボチャは無いぜ!」とか言って闇討ちしてきた。
受け流してやるとバルサミコ酢が目に刺さって悶えてたが、4秒くらいで起き上がって「おっ!ゴルゴル星から通信妨害かぁ!?」と昇竜拳で飛び交う電波を対空しながら走り去ってたな。
なぜか一瞬だけ圏外になったな…
お前は一体何と闘っているんだ?
しかしゴールドシップとは初対面な気がしないんだよな。 どこかで接点ある気がしてる。 あんなにインパクトあるウマ娘ならすぐにわかるのにね。 気のせいか…
そんなこんなでファン感謝祭を終えてから次の月で開かれた入学式は終えて、忙しいひと時は一度鳴りを潜める。
そのまま夜になり、ウマ娘達は門限を過ぎる前に寮に帰ってしまう。
俺も帰る準備のためにトレーナールームに足を運ぼうとして、不意に足が止まる。
「三女神の像…」
この学園にある特別な像。
大昔にいた3人のウマ娘を女神化した像であり、ここにいる皆を見守っているらしい。
帰り際にお辞儀して帰宅するウマ娘もいるくらいなので特別なんだろう。
そして、俺にとっても特別だ。
カボチャ頭を被り、マフティーをする羽目になった元凶と言われる存在。
それをチョイスしたのは俺自身だがここまでの苦労はこの三女神から始まる。
この学園に来てまもなく一年が経過する。
その間も三女神の像を横切ったり、遠目から眺めてみたりと活動拠点の一部として割り込むが、特に何もない。
この1年間、三女神の像は何も反応しないのだ。
これでも何回かぐるりと周っては調べてみたり、なんなら靴を脱いで直接像を触って調べてみたりとしたが収穫は何も無い。 時には日記帳を見せつけてみたり、色々お声をかけてみたり、1時間くらい視線を外さずに眺め続けたりしたが、結局はそこに三女神の像って名前の石があるだけ。
でもまだ試してないことが一つだけある。
それを思い出した。
「…」
周りを一度警戒する。
誰もいない。
カボチャに手をかけて……
「よく見ろよ、三女神」
俺はカボチャ頭を外す。
まるでモビルスーツに乗り込んでいたパイロットがヘルメットを外すように、カボチャ頭を外して脇に収める。
鋭く息を吐いて素顔を三女神の前に晒した。
だが……何も反応は無い。
三女神の像からは何も感じられず、何もアクションは起きない。 それぞれの女神が抱えている壺から水が流れ落ちる音だけが響き渡り、虚無感と失望感だけが残る。
与えるだけ与えてその先は何もない。 それともトリガーとして少ないのだろうか? やはり日記帳に書かれていた『大きな栄光』が鍵なんだろう。 それを示されるまでは三女神の像から何も起きない。 随分と重たい罰を与えてくれたものだ。
俺は前任者ではない。 別の人格であり、過ちを犯したソイツでは無い。けれど三女神は何も言ってくれない。 中身がどうとかではなくこのトレーナー其の者に刻み込んだ、呪い。
呪い…
のろい…
__本当に呪いなのか?
「いや、でも、トレーナーとして欠陥だろうこの姿は。 昔ほどひどくないにしろ、今もウマ娘から遠ざけられているし、カボチャ頭は外せない。 トレーナーとして、欠陥で……」
__本当に欠陥なのか?
「…っ、それはマフティーだからどうにかなってる話だろう、こんな苦しみは。 カボチャ頭さえ無ければもっとまともに生きてたし、仮にトレーナーをやらずとも第二の人生は送れていた。 カボチャ頭でこんなにも苦労なんてする筈も無く、今も苦しんで……」
__本当に今も苦しいか?
「結果論…だろ! っ、なら! これは! 一体何だと言うのだ…」
__願ったことでは無いのか??
「それなら、一体何を求めてやがるんだ…」
__コレを求めたのは自分だろう?
「なら、コレで一体何が出来ると言うんだ…」
これは呪い……?
それとも……祝い??
この状況が?
ウマ娘に恐れられる状況が??
人生の不自由を得てまでのカボチャが?
ここまで来たのは運が良かっただけだ。
こんなのは結果論に過ぎない。
やり方を間違っていれば社会的に終わってた。
自分で喉を掻きむしり、自分で喉を締めて、自害することだってあった。
普通ならそうなる筈だったよ。
でもまだそこから救われる手段はあった。
俺は知ってたからソレを演じることにした。
__
「あの、マフT……さん?」
「!?」
急いでカボチャ頭を被って後ろに振り返る。
そこにいたのはトレセン学園の秘書であるたづなさんだ。
こんな時間にどうしたのだろうか?
心配そうな顔が目に写る。
「たづなさんですか。 どうかしましたか?」
「い、いえ。 カボチャが見えたのですが、いつもよりも位置が低くて、それで…」
「ああ。 少しだけ外してました。 マフティーにも一息つく必要があります」
「そ、そうですか」
「…」
女神像の泉が静かな夜の中で響く。
時間になれば壺から流れる水も勝手に止まるだろう。
まだ電源が落ちるまで30分ほどは時間がかかるだろうが。
電源が落ちるのと共に今日の業務を終えて明日に備える。
ここから「お疲れ様でした」とたづなさんよりも一足早く帰る。
それだけだ。
それだけ…なのに…
俺は口を開いてしまう。
「たづなさん。 俺、記憶ないんですよね」
「え?」
このタイミングで言ってしまった。
誰にも明かせなかった、この苦痛はこの日に耐えれなかった。
互いに今は何もなく、後は帰るだけの状態なのに、俺はトリガーをひいてしまう。
「俺、過去に何かとんでもなく酷い事を起こした。 でもそれはハッキリとせず記憶が抜け落ちたようにしか覚えていない。 でも三女神に縋り、色々と焦り過ぎた結果、ウマ娘に殴られてしまい、三女神の像を囲う泉に身を投げ込まれた。 それは知っている」
「そ、それは…」
「でもそれ以外は記憶に無い。 その時の性格も、人格も、この体には何も残ってはいない。 あったのは……そう、マフティーだけだ」
「!」
「三女神の像は願いを託し、思いを託される、そう聞いたことがある。 この学園の七不思議だとミスターシービーから聞いた。 彼女は良く散歩をするからそのかわり色んなことを聞くらしく、そんな話を聞かせてもらったことがある」
「ええと…」
「違うのですか?」
「!? …い、いえ、この三女神の由来は詳しくわかりません。 大昔にいた3人のウマ娘が今の始まりであり、それは月蝕のように神秘的で女神のような存在だった、としか聞いたことありません」
「…」
「しかし、三女神に、祈りを、想いを、願いを、救いを、託し、そして託される。 噂程度ながらもそう神格化されてます。 中には大事なレースに出るため、三女神に無事を祈って願うウマ娘もいます。
時には…救いを求める事もありまして……
っ…
いえ、そんな…
だ、だとしたら…
もし、そうなら、あ…あなたは?」
「ああ…そうか、なるほど。 願ったのか……」
「!!!」
この三女神はやはりナニカを揺れ動かす。
でも、それはそうだろう。
この世界は元々アプリゲームであり、何か不思議な事が起きてもおかしくない。
俺にとってはウマ娘が不思議そのものであるが、前世の知識を思い出す。
友達が言っていた。
三女神が、継承が、因子が、どうちゃらこうちゃらと言っていた。 ならこの三女神はウマ娘ってゲームの世界では大きく関わる存在なんだろう。
どこまで関わってくるのかはハッキリ言って知らない。
だが育成ゲーと言う事ならどこかしらのシナリオで三女神は活かされてるのだろう。
でも今俺がこうなっていることを判断材料にするなら、三女神と言うのは大きく影響をもたらす要素だ。
それだけ大きな力を秘めている存在だ。
この体の前任者はそれほどの存在に縋り、願いを込めたんだ。
_願った。 願ったのだ。
_これで小娘達は逆らえない。
_やっと立場を理解するだろう。
_はっきりとした上下関係のためだ。
_指導者には頭を垂れさせる。
指導者としてそれは間違いである事も忘れて。
_指導者の全てに屈服して、熟させるだけ。
_管理も全てこちらが行い、走らせるだけ。
_それが一番正しいと思っていた。
指導者としてそれが最適なんだと思い込んで。
_自分の力では無い。
_指導者でありながら間違いを犯した。
_願ってどうにかしようとした自分の過ちだ。
_どうやら私は愚か者だったようだ。
_あの像から怒りに触れたんだと今理解した。
指導者としてそれを理解するのに遅過ぎた。
そう__支配 するかの様に考えるのは間違い。
トレーナーとしても、人としても、それは間違い。
そうしてウマ娘からも、人間からも、三女神からも、前任者は淘汰されてしまい、謹慎と言う名の檻の中に押し込まれてしまった。
それだけの話。
それだけの、話なのに…
三女神がこの体に宿したのは周りから恐れられるような力だ。
しかし考える。
これは、本当に間違いから始まったのだろうかとも思っている。
たしかに前任者の有様は指導者にそぐわないモノだった。
考えも偏り、自分を天才だと思い、ウマ娘を支配して管理する。 そう正しく思っていた。 でもウマ娘も人間と等しく生きている尊い存在。 それではダメなんだ。 理解して寄り添う。 ミスターシービーがそうだった様に。
けれどそうするにも力は必要だ。
弱くては出来ることも少ないだろう。
そうなると、たづなさんの言った話が真実なら、想われ、願われ、祈られた三女神は三女神として与えたに過ぎないのかもしれない。
__欲しけりゃくれてやる。
ウマ娘に対する考えを間違い、だがそれを正しいと思ってそう願った前任者に対する怒り。
でも呪いだと思えるくらいの力を与えられた。
これは歪みだろう。
ウマ娘に対する考えを間違い、だがそれを正しいと思ってそう願った前任者に対する怒り。
それでも、願われた三女神として、果たした。
しかし、対価はコレなんだ。
ミスターシービーとたづなさんから三女神のことを聞いたお陰で、そんな気がしてきた。
あまりにも理不尽過ぎるけど、そうしてしまうほどの結果故なんだろう。
前任者はあまりにも…自分を救えないくらいに弱過ぎた。
そして、俺がいる。
日記帳にも願われていた。
_私と言う存在が失敗へと進んだ。
_なら私じゃ無ければいいのか?
_こんな愚か者に代われる指導者は居ないか?
_仮面でもいい。 虚栄でもいい。
_道化でもいい。 偽物でもいい。
それすらも願われ…
いや救いを求めて__俺がここにいる。
仮面_それは自分で無くなる代。
虚栄_それは自分で無くなる形。
道化_それは自分で無くなる道。
偽物_それは自分で無くなる証。
まるで___
「ぅ、ぅぅ、ご、ごめんなさい……わ、わたしは…ぅぅ…」
「!!?」
え?
ええ?
…
…
えええ!!?
た、たづなさん!?
いや、なんで泣いてるの!?
「わたしは、酷い事を…したん、ですね」
「え!? いや、ええ!?」
「あなたを変えたのは、私なんですね…ぁぁ、そんな。 そんな、事って…」
「ッ!?!?」
何故泣いてるのか!?
ダメだ、わからない。
知識はあっても、記憶は無い。
だからたづなさんが何に対して涙を流してるのか全くわからない。
とりあえず、俺は彼女を慰めることにしよう。
そして…
俺は……マフティーは聞いた。
たづなさんから、悲痛を。
♢
彼に慰められて、なんとか落ち着いた。
でもまた苦しくなる。
わたしの責任だ。
彼を助けきれず、恐れてしまって、それで謹慎を言い渡して、彼を追いやった。
それでホッとしてしまった。
だが時が来て彼は戻ってきた。 不安だった。 また身構えていた。
けれど何もかもが変わっていて、自分を改めてトレーナーとして務めを果たし、今ここまで登り詰めた。
謹慎中に何が起きたのかはわからない。
でも彼はあの頃よりも頼もしく、可笑しな格好をしながらもそれを武器にして厳しい世界に立ち向かう。 今となってはURAを盛り上げる一端のトレーナーとしてウマ娘のレースに刺激を与える。 マフTは今となっては人気者である。
なんとか事が済んだのだと、私は忘れるようにして行く。
けれど、この日になって彼から聞いた。
記憶も無ければ、過ちも覚えてない。
日記帳に書いていたそれを見て彼は知る。
前の人格も分からず、今の人格がある。
今は無き彼が望んだ、彼がいる。
それが今のマフティーなんだと。
「目覚めたら自分は自分じゃ無い。 いや、自分なんだけど、その時まであった自分じゃ無い。 それを理解した」
「なら、あなたは誰なんですか?」
「仮面、虚栄、道化、偽物、そう願われて生まれてしまった別の人格、自分は…いや、俺はマフティーだと知った。 この姿を持ってマフティーとして前任者を救うんだと」
ああ、やはり違った。
彼はもう居ない。
ここにいるのはマフティーだ。
変わったんじゃなく、代わったんだ。
マフティーに。
「たづなさん、あなたが悔やむことじゃ無い」
「…」
「ソイツは間違ってたよ。 必死だったし、模索してたけど、ウマ娘のトレーナーに相応しく無い有様だった。 それはたづなさんも良く知ってる筈。 コイツは全てが間違いだった」
「でも、だからと言って……そんな、ことになるなんて、わたしは…」
「…たづなさんは優しい人ですね。 だから彼はそこまでたどり着けたんだな」
「ぇ…?」
「日記帳に書いてました。 自分は許されない事をしたと気付いて、自分はトレーナーとして相応しくなかったと理解して、自分は指導者として間違いだったと認めた。 彼はそれに気づくことが出来たよ。 こうなったのはたづなさんが根気よく助けてくれたからだ」
「!」
「記憶はほとんど抜け落ちているけど、でも形はありました。 彼は日記帳のほかに一枚の紙を日記帳の隣に折り畳んでいました。 そこには…たづなさんに対する感謝が書かれていた」
「ッ!!」
駿川たづなさんへ。
沢山のご迷惑をおかけして
大変申し訳ありませんでした。
本当は直接言いたいのですが
自分にはその資格はありません。
これまでご支援があった事で
自分は少しでも長く努められました。
最後は情けない姿を晒しました。
担当ウマ娘にも失礼な事をしました。
過ちに気づきましたが手遅れでした。
けれど、本当にごめんなさい。
凡ゆる事が阻害して歩めないのです。
もう自分では何も出来ません。
引き継ぎもなく去ってしまう事を
どうか最後に許してください。
そして__
これまでありがとうございました。
彼から受け取ったタブレット…の、写真に映された一枚の手紙を見て、私は胸を痛めて涙が止まらなくなる。
彼は酷かった。
スカウトも出来ず、サブトレーナーとして上手く行かず、なのに彼なりの拘りを捨てられず、遠くからウマ娘を眺めるだけで、トレーナーとしての責務も果たせないまま、事務作業ばかりに着手した。
でも歯も拳も食いしばりながらも一線は越えずに抗って、それでも最後は女神像頼みに堕ちてしまい、彼はウマ娘を怖がらせてしまい最後は謹慎と言う形で追い払われた。 のちに問題児だったとトレーナーから嘲笑された。
彼はトレーナーとして失敗した。
ウマ娘が中央で活躍できないように、彼は中央で活躍できずにフェードアウトした、それだけだった。
でも彼は代わってしまった。
謹慎と言う中に押し込まれて…
誰からも助けが無くなり…
自分では無い者として願った。
マフティーに。
「全体的に悪いのは彼だ。 やり方も、拘りも、考え方も、一つくらい変えればトレーナーとして立派に振る舞えた筈だ。 社会の中に生きる大人としてそうしなかった彼の失敗なんだ。 見捨てられても仕方ない。 でもそんな彼をたづなさんは支援して助けた。 あなたはすごく立派だよ」
「そんな、こと、ありません。 けっきょく、ひきがね、は、わたし、だった、の、ですから」
「それは結果論だ。 彼が変わらない可能性だってあった。 それで再び中央のトレーナーにそぐわない振る舞いをしていたかもしれない。 たづなさんは当然の判断を下したと思う。 生徒を守るために、トレセン学園を守るために、組織から危険分子を取り除く。 それは管理者の一端を請け負う者として真っ当な判断だ。 未熟者だろうと、大人として踏み込んだのだから甘んじさせない。 それが普通だよ。 それが世間で生きると言う事」
「……」
「色んなことが引き金になって、こうなったのはもう仕方ない話なんだ。 なってしまったのはもうどうしようもない」
私からタブレットを取って、仕舞い込む。
「本当はこの話をたづなさんにするべきじゃなかったかもしれない。 でも、マフティーとして、在るなら…俺はほんの少しでも彼を報いるべきだと思った」
だから彼は手紙を見せてくれた。
もう彼の中に居ない彼だが、それでも最後は形にして感謝と謝罪を手紙にした。
それを伝える資格はないと思って。
「俺は最初の俺が分からなかった。 でもやる事は直ぐにマフティーだとわかった。 だから理解もした。 求められた時にマフティーは現れる。 彼が求めた想いと願いにマフティーは応えた。 それだけに過ぎない。 でもマフティーは彼のことでも在る。 マフティーとして刻み、または染まり、罰の中に救いを求める意味をマフティーに込める」
「っ…」
「1年前の言葉はその意味でもある。
_己の罪の中に救いを求める。
彼がマフティーを望み、彼はマフティーとなり、マフティーである俺は彼の代わりにマフティーを果たす。 そうしてマフティーは今を動くんだ。だからもう泣かないで良い。 責めなくていいさ。 あとは…彼の事は俺に任せろ。 そのためにマフティーがいるのだ、たづな」
「マフティーさん…」
彼は、私の涙を、その手で優しく拭う。
見上げれば、カボチャの顔が私を見る。
暗闇でよく見えないカボチャの中の眼。
明るい外でも良く見えない彼の眼差し。
そこに恐ろしさはある。
奇妙な威圧感を秘めている。
でも今は何故か怖くない。
マフティーを見ることが出来る。
「彼を忘れろとは言わない。 だが彼のやってきた事は忘れてはならない。 あなただけは彼のために覚えてあげて欲しい。 俺と共にな」
「っっ、は、はい…」
__彼の過ちは、マフティーが粛清する。
マフティーはそう強く言い放った。
私の代わりに、マフティーはいてくれる。
だから、もう泣く事も、苦しむ事もない。
マフティーが救うなら…
私はマフティーを見ている。
「マ、マフティーさん…!」
「?」
去り際の彼を止める。
「マフティー、わたしはこれからも変わらずあなたを助けます。 できることならなんでも言ってください。 彼がマフティーを望んで、あなたがマフティーとして在るなら、私もマフティーになりますから」
これは覚悟。
恐らく狂ったような覚悟。
マフティーを求めてしまう私の狂い。
「ここから地獄だぞ?」
「ッ、構いません! 私もあなたと同じです。 トレセン学園の秘書をしている以上、苦痛も苦難もやり遂げると決めたから、私は『駿川たづな』として名乗る事を決めたのですから」
「……」
「ッ……!」
そう、私は 駿川たづな だ。
マフティーと同じように、この名前がある。
でも彼は…
「ふっ、マフティーはやめておけ。 あなたが地獄に付き合う必要は無い」
「なっ!」
しかし彼は否定した。
けれど、言葉は続く。
「マフティーは素晴らしく聞こえるかもしれないが、コレは独りよがりでもある。 そうした形に溺れなければ救われない。 偶像崇拝と何ら変わりないモノだ」
「でも! それが霊的にじゃなかろうとも、意味を求めて救われるなら、ソレは間違いじゃありません!」
意味は必要。
無いモノには縋れない。
それが歪んでいたとしても。
「そうだな、それがマフティーだ。 それでもたづなさんがマフティーをやる必要はない。 これは俺だけに任せてくれ」
でも彼は大きく意味があるソレを請け負わせない。
「…………むぅ」
「そんな顔するな。 たづな」
「私だって…」
「気持ちだけいただく。 でも許してくれ。 マフティーなんてモノはたづなさんみたいなできる美人さんがやるべき姿じゃない」
「!?」
「では……お先に失礼します。 新学期からもよろしくお願いします、たづなさん」
最後は仕事口調に戻り、彼は去る。
そうして残された私は一人、しばらく佇む。
「…」
彼から聞かされた真実は衝撃的だった。
思わず私は自分を責めそうになった。
でもマフティーがそれを止めた。
そのためにマフティーは居ると言ったから。
そして彼は駿川たづなとして求めた。
これからも変わらずトレセン学園の秘書として。
涙を完全に拭い、頬を叩いて気持ちを入れ替える。
「明日からも、ウマ娘のために頑張らないと」
三女神の像から流れ落ちる水は時間で止まる。
しかし新学期は今日から始まる。
帽子の中の騒がしさを押しとどめて帽子のずれを整えて、わたしも学園内の中に戻って行った。
つづく
新学期であろうとパリピギャルウマ娘の罪は重い。
正直に言うとですね。
たづなさんに関してはこの展開で良いのか…??
そこら辺は迷ったんよ(感想で意見をください)
一応説明。
少なからずたづなさんは前任者を気にしてました。 なんだかんだで対応を取ってたので。 それで謹慎を越えた変わった事でホッとしましたが、つい打ち明けてしまったマフTの真実を聞いて自分の過ちを責めました。 でもマフティーしてるから大丈夫だとやや洗脳気味ている、そんなやり方で納得させて「あとはマフティーに任せろ」と「もう背負わなくて良い」と涙を拭いながら救いを差し伸べたマフティームーブなかなかマフティー性が高い解釈。
余計に考えさせない方が吉なのかな、コレ…
それとも今回で関わらせすぎなのか…?
知らぬが仏が正しいのか……ちょっとなぁ。
まあ、そんな感じにですね。
たづなさんのサポカ(マフティー強化版)が
練習に加わってミスターシービーが捗ります。
あ、そうだ(唐突)
更新速度が一端落ち着くかもだゾ
リアルが促してくるから、ごめんね?
ではまた
フルアマーフクキタルは引けましたか?(震え声)
-
単発で引けた。
-
10連で引けた。
-
20連以上で引けた。
-
100連から数えてない…
-
当たるまで引けば確定だから(天井)
-
今回は狙っていない