やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

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誤字脱字の報告と促し、本当に助かります。
適正な文法が有りましたら全然変えてください。
作者のマフティー性(想像力)はそれなりなのに、マフティー性(国語力)がまったく足りないんですね。



第13話

日本ダービーが始まる前の事だ。

 

トレセン学園では選抜レースが開始される時期であり、各ウマ娘達はアピールのために走りを魅せる大事な時期。

 

中等部も高等部も学歴に関係なく、トレセン学園に在学するウマ娘達は己の足でスカウトを受けようと奮闘している。 そしてトレーナー達もそれぞれ磨き上げたい原石を探しに出向いているところだ。

 

取り合いな状態なので少しピリピリしているが、今の俺には関係ない時期である。

 

何せ、俺自身も1人スカウトを終えているからだ。

 

いや、これは逆スカウトと言うべきか?

 

奥多摩でトレセン学園のウマ娘とたまたま出会い、そしてなんか目をつけられて、それで「私のトレーナー」と捕まえられた。

 

ちょっぴり怖かった…

 

とりあえずシービーとそのウマ娘をキャンピングカーに乗せて奥多摩からトレセン学園に戻り、たづなさんにスカウトの件を話した。

 

選抜レースに出ていないウマ娘のスカウトに大変驚かれたが、トレーナー不足の中で1人でも多くのウマ娘のスカウトされる事は大変喜ばしい話だったのでスカウトは認可された。

 

心配はされたがマフティーなら大丈夫と言うことで問題は無くスカウトが決まった。

 

たづなさんから信頼されてるなマフティー。

あ、俺のことか。

 

当然周りからのトレーナーに驚かれた。

 

でも「マフティーだからな」とある程度は納得もされた。 それで良いのか君たちは?

 

ちなみに俺のことを未だ好ましく思わない先輩トレーナーとかから目の敵にされる。 スカウトしただけなのに本当めんどくさいな。

 

そしてスカウトも間も無くシービーの皐月賞が始まる。

 

スカウトしたウマ娘 __マンハッタンカフェを連れて皐月賞までやってきた。

 

俺は悪目立ちしてしまうため、いつも通り控室で彼女の結果を待とうかと思った。

 

だがクラシック級に入っての一冠目、これは大事なレースであり俺だけが控室に待つべきだろうか? いや、良くないと思う。

 

控室で待つことをやめて一番後方の席からでもいいから皐月賞を走るシービーの活躍を見守ろうと思ったが、マフTが現れた事で観客席はどよめきが走る。

 

そして滝が割れるように道が開いた。

 

一番前が空いてしまったのでそこまで歩き、最前列で皐月賞を見守る事にした。

 

その時にマンハッタンカフェも一緒だったので

「あれは誰だ?」「誰だ?」

「誰だ??」「あれは?」

「もしかして新しい担当か?」

マンハッタンカフェの登場にもどよめきが走る。

 

いずれ明かされる事とは言えやや面倒になることを予測しているとレース開始のファンファーレが鳴り響き、観客の視線はゲートで準備するウマ娘に。 そして皐月賞が始まった。

 

 

シービーの結果は一着だ。

 

途中かかり気味に前に出てしまい、バ群に飲まれて彼女の走りが出来なくなると思っていた。

 

遅めのスパートで差せるのだろうか?

 

心配をしていたがシービーの表情が一転。

その笑みは知っている。

トウショウボーイと同じようなギラギラを描いてシービーは走り切った。

 

それから観客に向けてシービーは指を一本立てる。 大盛り上がり。

 

ただ手の甲を観客席に向けた指の立て方だったので、まるで周りに挑発してるかのように見えたから少しヒヤッとした。 まぁシービー自身そんなつもりは無いだろうけど。

 

それから盛大にライブが行われて盛り上がりは終わった後も保たれたまま終了。

 

そして記者会見だよ。

 

もちろんカボチャ頭でご登場。

 

 

「ミスターシービーの三冠を目指している。 ならそこへ尽力するまでだ」

 

 

至って普通の会見。

 

今回はしっかりミスターシービーの話題で広がってくれたので俺はホッとした。

 

まあシービー自身は自分の噂とか記事とかグッズ販売に興味は無く、ただレースの中で楽しみを見出したいだけのウマ娘なので気にはしてないらしい。 むしろマフTが悪目立ちして良い風除けになるとケラケラしていた。 はははこやつめ。

 

てか、そもそも悪目立ちを加速させたのは商店街でマフTのことを広めたシービーなんだけどね? もしこれが計算のうちだとしたら恐ろしい。

 

あとお前もやぞパリピギャルウマ娘。 そんでもって俺はギャルに優しくされるマフティーじゃないからな? これは否定しておく。

 

 

 

「マンハッタンカフェ、まず聞きたいことがある。 君は今年デビューを果たしたいか?」

 

「特には、考えてはいません…」

 

「ならこちらで決めた通り、デビューは長くて2年後を予定する。 早くても来年だな。 今年は体作りに勤しむ。 構わないか?」

 

「はい」

 

「なら来年までに仕上げよう…と、言ってもやることは地味な積み重ねだがな」

 

「あの…私も、アレをやるんですか?」

 

「え? あー、うん。 てか、アレはだなぁ…」

 

 

 

 

「ひゃほーい! いやー! 皐月賞の再現が体に響くね! しかし…なんだなんだ? ちゃんといつも通りのロングスパートを掛ければ皐月賞を余裕で勝てたって事じゃない! あっははは! もうアタシは困ったウマ娘だなー! ははは!」

 

 

 

遠くでシービーがターフを走っているが、皐月賞で得た経験を描き、それを究極のごっこ遊び(イメージトレーニング)として再確認していた。 すごいご満悦。

 

 

 

「あー、まぁ、アレは特別なウマ娘だから出来ることであり、真似は出来ないと思っても…」

 

「7バ身でゴールですか? たしかに、驚異的なスタミナがなければ難しそうです…」

 

「いや、7バ身はシービーが驚異的なスタミナがあるからで…………待て、なに?」

 

「外から滑らかに膨れ上がるロングスパート。 凄く理想的な追い込みです」

 

「…………まさか"見える"のか?」

 

「?? はい、なんと無く、ですが」

 

「!?」

 

 

これは驚いた。

 

たしかにミスターシービーが先程行った究極のごっこ遊びは外側から滑らかに膨れ上がる理想的なロングスパートで走り、皐月賞の再現を行った。

 

イメージトレーニングの結果としてはたしかに7バ身で勝利を得た形で終えたところは視認した。

 

そしてマンハッタンカフェと同じように遠目からシービーの走りを見ていた。 同じ光景が見えていると言う事になる。 まさか…

 

 

「なぁ、本当に見えているのか?」

 

「薄らとですが、わかる気がします…」

 

 

まだ確定じゃない?

 

でも……だったら。

 

 

「シービー、クールダウン終えたら弥生賞の時の走りをしよう」

 

「え!? もう一本走っていいの!?」

 

「ちょっとだけ予定変更だ。 本当は3本までだったけど、一つ確かめたいことがある。 だからもう一本くらいは良い」

 

「やった!」

 

 

マジで嬉しそうだな?

 

まあ今日は皐月賞明けであまり体を追い込むのは怪我に繋がるので本数は減らすように言ったのだが、シービーの体を見る限りまだ全然走れそうだから許可する事にした。

 

てか本当に丈夫だなこの子?

 

追い込みウマ娘()としての強さだろうか?

 

10分ほど休憩を取ったあと究極のごっこ遊び(弥生賞の再現)を始める事にした。

 

 

「ウズウズ、ウズウズ!」

 

 

どうやら掛かっているようですね。

 

 

 

「まさか出遅れたりしないよな?シービー」

 

「身構えてる時に出遅れは来ないものさ、マフ__」

 

 

 

___ガコン!!

 

 

 

「あ」

 

 

「見事に出遅れ、ましたね」

「ほーれ見ろ、コイツ」

 

 

「あああああああ!!」ダダダッ

 

 

 

周りからしたら何もないけど、俺やシービーからしたらそこにはちゃんとゲートがあって、それで出遅れた結果が広がっている。

 

あとマンハッタンカフェも『出遅れ』と認知した辺りやはり見えているのか?

引き続き確かめよう。

 

 

 

「今、シービーはどの辺りだ?」

 

「最後方…の筈ですが、シービーを除いた後続との間は既に1バ身を詰めています。 あと、速度の出し方が滑らかと言いますか…」

 

「その通りだな。 彼女はペース配分が器用だ。 いや、それだけじゃない。 レースに於いては何事も器用に調整する能力がある。 それが究極のごっこ遊びに繋がると考えてる。 他は不器用だがな」

 

 

 

実はミスターシービーは不器用なウマ娘。

 

缶ジュースとか開けるのが下手でよくかわりに開けてあげてる。

 

一年前に渡した折り畳み傘も開く時に苦戦したらしい。

 

しかしレースにその器用さを全振りしたのか、レース運びは凄く上手であり、追い込みを得意とするウマ娘であることがよくわかる走りをしている。

 

日常的な器用のステータスをレースに注ぎ込んだ結果がミスターシービーなのだろう。

 

 

「レース運びはどのウマ娘よりも上手いですね」

 

「ああ、ほんとに上手い。 追い込みウマ娘としての必要な能力は全て備わっている。 あとは究極のごっこ遊びの中でどれだけ磨けるかだ。 正直に言えば、次の日本ダービーは1着以外あり得ないと思ってる」

 

「……第4コーナー、中団を全員抜きました」

 

「ハイペースだな。 なら見えるならしっかり見てろよマンハッタンカフェ。 アレがミスターシービーの走りだ」

 

「…」

 

 

 

何もないターフの上。

 

本当のレースのように走るミスターシービー。

 

周りからしたら緊張感を込めた走りだけに見えてしまうだろうが、俺とミスターシービーは違う。 他の人には見えない光景が見えている。

 

シービーの他にもウマ娘がそこにたくさん居る。

 

しかし表情は暗がりで見えず会話もない。

 

ただウマ娘として走るだけの存在が視界の中に浮かび、再現率高くその時に得た記憶がイメージトレーニングとして形作る。

 

 

NPCのようなウマ娘だけじゃ無い。

 

ゲートもある。

 

観客の視線もある。

 

レースの緊張感もある。

 

その中に自己投影して楽しむミスターシービーの姿がそこにある。

 

 

彼女の妄想が憧れになる。

 

彼女の空想が描きになる。

 

彼女の理想が走りになる。

 

 

究極のごっこ遊び(イメージトレーニング)と名付けたそのターフでミスターシービーは今、弥生賞の光景を浮かべてその中で走る。

 

 

そして、こんな言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

固有結界

 

 

俺/私 たちにとって便利な世界

 

 

 

 

 

 

これは『ゾーン』とはまた違う話。

 

そうだな…なんというか。

ガンダムに良くある現象だろうか。

 

 

ニュータイプ同士が行うような感覚。

 

それは【誤解なく"伝わり"合う】ためのセカイ

 

 

 

分からない モノ が、分かるようになる。

 

捉えられない モノ が、捉えられるようになる。

 

理解し難い モノ が、理解できるようになる。

 

 

 

それを視覚的に共有した俺とミスターシービーの2人で作り上げることができた現象。

 

元々あった彼女のこの才能と、俺の体に刻まれた呪いが今だけ便利に働き、それが究極のごっこ遊び(イメージトレーニング)として収まった不思議な練習法。 またはオカルト。

 

しかしそれは俺がマフティーだから成立した話だ。

 

普通のトレーナーでは絶対になし得ない特技だろう。

 

俺にはマフティーと言う仮初があり、見えてるモノが違ってしまえるから出来てしまっただけだ。

 

これらが"後押し"するかの如く、始まる。

 

ミスターシービーの独りよがり(描き)にマッチしたからこそ、俺も彼女の独りよがり(描き)を見ることができた。

 

 

だから理解した。

ミスターシービーの望んでいることを。

 

だからスカウトされた。

ミスターシービーに望まれたことだから。

 

 

 

「勢いよくゴール! ふー、流石にG2、重賞レースの空気に慣れた先行策のウマ娘は強いね! でもこの緊張感はやっぱり楽しいよマフT」

 

 

「7バ身差…皐月賞と同じ、走り方ですね」

 

「やはりそう見えるか? シービー的にはどうなんだ?」

 

「うん、皐月賞と同じ感覚で走ってみた。 と、言うより弥生賞の時の走りより完成度が高くてしっくり来るんだ。 他のイメトレでも大体これなら勝てる。 前なんかメジロアルダンにも勝てたからね。 あ、マルゼンスキーは無理、アレは論外」

 

 

 

結果としてマンハッタンカフェにも見えていた。

 

いや、これは違うな。

 

言い方を変えよう。

 

彼女も"見えてしまえる"が正しいのだろう。

 

それを"後押し"するのは…

 

 

え? ふふっ そうだね 君と似たようなことだよ

 

 

「…」

 

 

 

マンハッタンカフェには"イマジナリーフレンド"が存在している。

 

他の人には見えないモノが彼女の目には見えているのだ。

 

マンハッタンカフェだけのナニカ。

 

普通の人には見えない存在、または空想。

 

しかし普通じゃない俺には見えた。

 

マンハッタンカフェの周りに浮かぶ小さなウマ娘、まるで幽霊か守護霊のように現れる。

 

しかしマンハッタンカフェはそのウマ娘と対話を取り、会話を生み出し、本当にそこにあるかのように振る舞う。

 

見えない周りからしたら不気味な事この上ないだろう。 幻覚と喋っている異端者として見られてしまう。 彼女はトレセン学園でも入学早々にその扱いを受けていた。

 

だからマンハッタンカフェは…

__寂しがっていた。

 

 

理解者がいないことを。

 

でもそれは仕方ないとしていた。

自分が普通じゃないから。

 

けれどマフティーは違う。

 

彼は普通じゃないカボチャ頭のトレーナー。

 

だから彼女は希望を抱いた。

 

たまたま出会った奥多摩で運命を感じる。

 

 

__私のトレーナー。

 

 

または…

私の(ことを理解してくれる)トレーナー。

 

それが逆スカウトの様に衝撃を与えてしまう言葉だとして、でもそれこそマンハッタンカフェの願いだった。

 

だから俺はスカウトを考えた。

 

カボチャ越しから見えるマンハッタンカフェの事が気になったから、選抜レースにすら出ていない彼女のことをスカウトしてみることを決めたのだ。

 

ミスターシービーにした事と同じように、俺はマンハッタンカフェと言う名のウマ娘を見る事にした。

 

 

 

「シービー、練習は終わりだ。 あとは好きにして良いぞ」

 

「んー、じゃあ今日は展望台まで散歩でもしようかな。 あ、カフェもくる? 今日は晴れてるよ」

 

「え、ああ、そう…ですね。

え? 今日はいつもより綺麗な筈?

そうですね、そうしましょう…ではシービーさん、私も行きます」

 

 

 

今日は解散した。

 

シービーもマンハッタンカフェを受け入れてくれてるから二人の関係に困らない。

 

いや、この場合シービーのコミュ力が高すぎてむしろマンハッタンカフェがオドオドするくらいだろう。

 

関係は悪くないと思う。

 

 

 

さて、俺も今日のデータまとめたらさっさと帰ってゲームしますか。

 

今日こそ音ゲーでハイスコア更新して『taishin』泣かして『festa』にも煽ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩の言う通り、良く見える夜空。

 

門限がギリギリになりそうだけど、この空は今日だけだから出来るだけゆっくりと眺める。

 

 

 

「マフT、凄いでしょ?」

 

「え? あ、そうですね。 マフTはその、なんというか、期待を出来ると言いますか…」

 

「うん、分かるよその感じ。 だってアタシもそう思ってる。 マフTならアタシの独りよがりを預けれる。 そしてマフティーならアタシの走りを見てくれる。 だからアタシにとってマフTだけだった」

 

「凄く、信頼しているんですね」

 

「うん! 凄く信頼してるんだよ。 なんというか折り畳み傘を渡された時には信頼してたんだ。 これが選抜レース前、早いでしょ? あ、アタシってもしかしたらチョロインなのかな?」

 

「わ、わかりません…」

 

「だね。 アタシもわからない。 でも皐月賞を獲れてからはミスターシービーにとってマフT以外あり得ないと思う…って、表現以上の言葉が思いつかないくらいアタシって不器用だから…

こう……マフティーだな!って感じ」

 

 

マフティーは動詞なんだろうか?

 

でもそんな感覚なんだろう。

 

キャンピングカーで「マフティーはカタチだ」と運転席にいた本人からそう聞いて、ミスターシービーからも「マフTは形だね」ってマフTに肯定していた。

 

初めて聞く人からしたら意味のわからないそれっぽい空言を吐いてるのだと思われてしまう。

 

でも私はこの意味は理解できた。

 

 

 

__勝手に解釈しろ

 

 

 

いつだったか世間にそう言った。

 

だから私は勝手に解釈して納めた。

 

マフティーは何にでもなれる。

 

でもマフティーにとっては__なんとでもなる筈だ。

 

 

私はそう捉えられた。

 

 

だって私もマフティーになってみたから。

 

いつだったかカボチャのお面を付けて鏡の前に立ってみた。 見える世界が違うとするならマフティーにとってマンハッタンカフェはどのように見えるのか? それをマフティーをカボチャの形にして求めた。

 

答えは出なかった。

 

あるのはカボチャのお面をつけたマフティーごっこをするマンハッタンカフェの姿だけ。

 

 

でも、スッと胸の中に落ちたものがあった。

 

ほんの少しだけ。 ほんの少し…笑えたんだ。

 

マフティーになったところで何もかもが変わるわけではない。 でも理解しようとするためにカボチャのお面をつけたマンハッタンカフェは、マフティーに求めようとしたんだ。

 

そこに答えがあるとは限らなくて、解決に至るわけでもない。 でも「マフティーなら」と抱いたソレは間違いなく求めて、また求めて欲しいから始まった事なんだと理解した。

 

だからトレセン学園に来た。

 

1人で寂しい私と、私にしか見えないこの"お友達"はトレセン学園にいるマフTにどう捉えられるのか。

 

見えるのだろうか?

 

それとも周りと同じで見えないのだろうか?

 

カボチャ越しからマンハッタンカフェの何を見てくれるのだろうか?

 

そう思いながらも中々マフTに近づけなかった。

 

 

だって、マフTは怖かった。

 

遠目から眺めるだけで肌がざわつく。

 

視線が合うだけで背筋が冷たくなる感覚。

 

でも皆、マフTに興味津々だ。

 

怖くても、その場から離れることはなかった。

 

慣れてからは「怖い人がソコにいる」程度の感覚で収まり、中にはマフTのカボチャ頭を取り外そうとしているウマ娘もいた。

 

ウマ娘の身体能力を相手に人間は勝てない生き物だ。 ある程度の訓練を受けたトレーナーでもウマ娘に敵うわけでも無い。

ウマ娘はそれほどに強い生き物だから、例えマフティーだろうと人間に変わりないからカボチャ頭は外せる、そう思ってるウマ娘は多い。

 

でもマフTは後ろにも目が付いてるように回避して手を掴んで静止した。

 

 

普通じゃない動き。

 

マフTは普通じゃなかった。

 

Wi-Fiに対空攻撃を行いトレセン学園全体の通信環境を一瞬だけ圏外にしてしまうゴールドシップでさえマフTを捉えることはできなかった。

できれば希望にはしたくない最後の希望であるゴルシも悉く打ち破られたことでマフTの恐ろしさはトレセン学園に再度広まる。

 

やはり近寄り難く、マフTは遠いのか?

 

ミスターシービーのように選ばれたウマ娘でなければマフTに触れることも、マフティーに求めることもできないのか?

 

 

 

 

 

そんなことはなかった。

 

 

 

_バリっチョ、アゲアゲの、ウェーイ!!

_マー、フー、ティー!! 捕まえたー!!

 

_ぐへぇェ!?! な、な、何事だ!?

_え? ……なんだ、お前か。

 

_身構えてる時に来るパリピうぇーい!

_てかホールドまで凄早っしょ!足早くね?

 

_そうだな、やや反応に遅れた。

_あと背中は危ないからやめろ罪重バギャル。

 

_ボッチプキンに言われたナイアガラしょ!

_大人しくギャルに優しくされてなよマフT〜

 

_やれやれ、コイツは……それで何か用か?

_紙を握って後ろに隠してるみたいだが…?

 

_へ?ゃ、ぁ、えと…やっぱ無し!またにする!

_あ、あと! ヘタレじゃないし! 違うから!!

 

_はぁ? なんだあのパリピギャルは…

_てか、いてて、背筋が…

 

 

 

担当でも無いウマ娘が背中にしがみつこうと突進する光景が見られた。 選ばれたウマ娘だけがマフTに触れることができる訳でも無い。

 

ただ近寄り難いくらい怖いだけ。

マフTはそれだけ。

 

彼と接触できる可能性はそこにあった。

 

流石に私がパリピのノリでやるには無理に等しいが、マフTはしっかりと受け答えをしてくれる。

 

もちろんパリピじゃなくても勇気を持って話しかけたウマ娘にはしっかりと対話を取り、色々と答えてくれる。

 

ある程度濁しながら答えて、ウマ娘に考えさせるのはマフTのやり方なんだろう。

 

でも満足げに去るウマ娘はマフTに求めて、マフティーを得たということだ。

 

コミュ力の高いウマ娘が羨ましい。

特にパリピギャル、彼女は恐れを知らないのか。

 

けれど同じウマ娘。

私にもチャンスはある、そう思った。

 

 

 

そして奥多摩で出会った。

 

出会ったのは本当に急だった。

 

カボチャ頭を付けてマフティーの真似をする登山家はいたが、私はマフTを見間違えなかった。

 

だが勇気を持って話せない。

 

わたしでは話しかけるまで足が踏み出せなかった。 元々初対面の相手とあまり上手く話せない私だから。

 

求めるだけ求めてここまでなのか。

 

眺めているだけの私。

 

けれどマフTは分かっていたかのようにキャンピングカーの影に隠れる私に振り返る。

 

できる限りポーカーフェイスを作り上げて尋ねた。

 

 

_み、見えますか?

 

_もしや浮かんでいるのはウマ娘か?

 

 

マフティーに求めた。

マフティーとしての"期待"が返ってきた。

 

私は嬉しかった。 本物はちゃんとマンハッタンカフェを見ていた。 お面を被ったマフティーごっこでは絶対に分からなかった。

 

でもここまで来れたのは私にもマフティーがあったからだ。 お面を被るような悪ふざけ染みたマフティーごっこを過程に、私はマフティーに求めるところまで来た。

 

理解してくれる人がここにいる。 それは私だけじゃ無い。 他の人には見えない私の"お友達"だって見てくれた。 マフティーの意味を込めたカボチャ越しからマンハッタンカフェを暴いてくれた。

 

 

心が騒がしい。

 

凄く久しぶりな感覚だ。

 

レースには無い高揚感はむしろ怖かった。

 

なんというか、丸裸にされたような感覚。

 

 

これは…

 

これは__支配なのか?

 

マンハッタンカフェと言う存在を掌握して、手のひらに収めて全てを暴かれてしまう。

 

ああ、怖いな。

そう言葉にすると怖い。

でも何故だろう。

凄く心地よく感じている。

むしろ理解されてるからこそだ。

そこに凡ゆる"期待"を乗せられる。

 

だからミスターシービーの気持ちがわかった気がする。 先輩の言う「マフティーなら」の意味はどのくらい解放的で、委ねられるのか。

 

ミスターシービーは自分を「独りよがりなウマ娘」と自負しながらも、マフTに寄り添うのは彼の器の大きさに甘えてるからじゃ無い。

 

例え甘えたい気持ちがあったとしても、そこに預けたい最大の意味は【ミスターシービー】ってウマ娘をちゃんと見ているからだ。

 

これが最大の理由であり、彼女の描き。

 

 

_恐ろしく身勝手なアタシ。

_マフティーで無ければ見逃していたね。

 

 

 

ウマ娘は 走り で魅せる。

 

そして周りは魅せられる。

 

 

でもマフTは走る ウマ娘 を()ていた。

 

周りとは違っていた、そう聞いた。

 

 

分かる。

それは私も同じだった。

 

【マンハッタンカフェ】と言うウマ娘をマフTは捉えてくれた。

 

それが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

 

だから内心落ち着かない気持ちを無理やり抑えつつ言ってしまった。

 

 

_私のトレーナー。

 

 

いま考えたら凄く恥ずかしくてたまらない。

 

でも止められない。

 

マフTだけは譲れない。

 

だってここにいるのはマフティーだから。

 

 

 

でも…

 

 

 

「私は良いのかなって、思ったりもします…」

 

「カフェ?」

 

「先輩が言う通り、マフTはすごい人です。 ですが…」

 

「それ以上は言わなくても分かるよ。 アタシだってそう思ってたから」

 

「え?」

 

「アタシはね、自分だけの楽しいを優先するウマ娘なんて中央で活躍する資格なんてあるのかなって、思ってた。 そんなウマ娘がマフTほど大きな影響力を齎せるトレーナーの担当として走って良いのか何度も考えた。 だから何かの情動でマフTに手放される事を考えると…凄く怖かった」

 

 

あまり見せない表情。

 

耳は垂れ落ちて、その気持ちはどれだけ苦しいかを表現させる。

 

 

「だから色々頑張っちゃった。 走るレースは全て1着を取ることを決めたり、マフTの前で三冠を目指すと宣言したり、ミスターシービーを見せつけた」

 

「…」

 

「でもアタシなりの妥協も出来なかった。 やはり走る上で楽しみは見出したい。 だから何度も思う……アタシは凄く身勝手だって。 けれどマフTはその上を飛び越えた。 身勝手なりのアタシを走らせる手段を。

正直に言って、ぶっ飛んでるでしょ?

"究極のごっこ遊び"って練習をさ」

 

「そうですね。 何事かと思いました…」

 

「でもミスターシービーってウマ娘を見たマフTならではの手腕。 アタシの特技を練習にして、何より楽しいを優先した。 正直に言えば中央では無い、地方か、それ以下で勝手に一人でやっていれば良いようなアタシの小汚い望み。 でも中央でそれを叶えられた。 そこに甘んじてしまうアタシはどれだけダメなウマ娘なんだと思った。

でも、マフTがさ……悪いよ。

マフTがミスターシービーを見たんだもん。

マフティーがアタシを"支配"したんだもん。

だから耐えられないよ、この幸せ…」

 

「先輩…」

 

「カフェ、だからアタシはとことんやることにした。 後悔しないようにする。 マフTと走れる間は全力でそこに甘んじる。 その過程で結果が邪魔するけど、それすらもミスターシービーとして楽しませてくれるマフTが側にいるなら、その権利はミスターシービーだけのものだ。 例えカフェが可愛い後輩だとしてもそのターフは譲れない。

だってアタシは三冠を描くと決めた。

それがマフTにとって望まれたモノで、マフティーが『やって見せろよ』とカボチャ越しで訴えるならアタシいくらでも走って答えてやるよ。

__何とでもなるはずだ

 

 

 

展望台に映る星々よりも強く滾るミスターシービーの眼は星に願うよりも、願っている。

 

それは自身にか。

 

またはマフTにか。

 

それともマフティーに対してか。

 

 

恐らく、欲張って全部だ。

 

それがミスターシービーってウマ娘なんだ。

 

 

 

「もしカフェがマフTに触れて、マフティーに期待するならそれ相応に頑張らないと…全部アタシが『描く』からね」

 

「構いません。 マンハッタンカフェである私もマフティーに求めたウマ娘ですから、先輩のようになりますから」

 

「そう。 なら、お先に__もう一つ描くよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 描く 』____そう言った翌月の事。

 

東京レース場に ダービーウマ娘 が誕生した。

 

圧倒的な速さと強さで証明し、ダービーウマ娘の称号を獲得したシルクハットを被るウマは、その中央で二本の指を空高く立てる。

 

 

冠を二つ獲得した姿を見ていた皆に。

 

そして、カボチャ頭のトレーナーに描いた自分の姿を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_次で二冠だな?

 

 

_うん、そうだね。

 

 

_緊張は?

 

 

_ほんの少しだけかな、でも大丈夫だよ。

 

 

_そっか、なら……

 

 

 

 

 

「やって見せろよ、ダービー!」

 

 

「なんとでもなるはずだ!」

 

 

 

 

 

 

レース前のワンシーン。

 

それはマンハッタンカフェの私しか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 




「なんとでもなるはずだ!!」
↑↑マフティーたるハサウェイのセリフ

つまりこのセリフを放ったミスターシービーもマフティーだったという事ですね。 後にマンハッタンカフェも言うとなると…エモいですね。

ちなみにスカウトしたウマ娘をチームに加入させる時は口頭を告げるだけではダメです。 正式に所属するのでしっかりと『紙』に名前を記載して提出する必要があります。 この説明に深い意味はないですよ。

ではまた

ヒシアケボノは引けましたか?(震え声)

  • 単発で引けた。
  • 10連で引けた。
  • 20連以上で引けた。
  • 100連以上で引けた…
  • 当たるまで引けば確定だから(または天井)
  • 今回は見送り(仕掛け準備のコツ)
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