やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

15 / 66
GUNDAMの流れで多くの感想が来てましたね。
多すぎて全部返せる気がしない。本当にすまない。




第15話

夏休みが終わり、秋が到来する。

 

強化合宿に向かった面々はそれぞれ満足のいく仕上がりを残しながら日焼け跡を作って帰ってきた。 ウマ娘達の成長も伺える辺りちゃんと強化合宿してきたようだ。

 

 

ちなみに俺達は特に何もしなかった。

 

個人で合宿にも遠征にも出ず、なんなら8月の後半で約10日分は練習もせずにそれぞれのんびり暑さを凌いでいた。

 

例えば俺はオンラインゲームに没頭していた。 フレンドの『taishin』や『Festa』とランキング上位を目指すために毎日5時間くらいぶっ続けでゲームしたりとクーラーの効いた部屋で贅沢にだらしなくしていた。 しかしあまりにもぐうたらし過ぎてたせいでカボチャ頭で2頭身になる夢を見た。 UMAのトレーナーからUMRのトレーナーになるところだった…

 

 

あとミスターシービーは相変わらず散歩と散歩で、たまにランニングをしたりプールで涼んだりと勝手にリフレッシュしていた。 同室で後輩のシンボリルドルフと買い物に出かけたり、外出のその先で二冠ウマ娘としてファンサービスを行ったりと彼女なりの夏休みを楽しんでいた。

 

 

逆にマンハッタンカフェはあまり外出は行わず、自分で淹れたコーヒーを片手に読書を嗜みながら彼女だけのイマジナリーフレンドと会話したり、時には俺と通話だけ繋いでインドアを楽しんでいた。 あとコーヒーの事になると話が長くなることはわかった。

 

それでダイタクヘリオスは夏休みの宿題に一つも手を付けてなかったため追われる、自業自得なパリピの罪は重バとして発表された。 出走遅れ気味なダイタクヘリオスのために後半は暇をしていたマンハッタンカフェが読解力で手伝ってあげたりと、たまにヘリオスから写メで問題集全体が送られてくるので仕方なく答えを書いてあげたりもする。

ちなみにヘリオスはカフェの1年先輩です。

チィ!情け無い奴め!!

 

そしたらシービーも残りの宿題を片付けようとカフェとヘリオスの勉強会にエントリー、勉強場所として使っていたトレセン学園のカフェテリアで中等部の1年と2年と3年の3人が揃って勉強会が始まり、家の中で干し南瓜系2頭身になりそうな俺と通話を繋いだりと平和である。

 

そして最終日はトレセン学園のカフェテリアに在宅ヘリオスしていたヘリオスに顔を出して夏休みの勉強を一気に終わらせる。 夏休みの勉強を乗り越えた達成感に涙目のヘリオスから「まふてぃぃぃありがとぉぉぉ」と思いっきり抱きしめられた。 力加減下手で絞められた両腕が痛かったし、それを見て揶揄ってくるシービー、どこかジト目のカフェ、最後は慌てだすヘタレは少しやかましかったがトレセン学園は今日も平和ですと言う事にした。

まあどうであれパリピギャルの罪は重バとする。

 

 

そんな夏休みは昨日でおしまい。

 

俺はカボチャ頭を被り、トレーナースーツを着こなして出勤する。

 

すると…

 

 

「?」

 

 

トレセン学園へ出勤したのだが大きな帽子を被った子供が正門の前でうろついていた。

 

生徒でも無ければトレセン学園の関係者とは思えない格好。

 

いや俺もカボチャ頭で人のことは言えないが、とりあえず不審者のライン手前まで来ているのでその子供に声をかける…前にこちらへ反応して驚かれた。

 

 

「驚愕ッ!? まさか本当にカボチャ頭のトレーナーがいるとは! ぐぬぬっ! なんと言うことだ! それほどに中央は廃れて無法地帯になったと言うのか!!」

 

 

 

あ、うん、なんか、ごめん。

 

でもカボチャ頭に関しては許してくれない?

 

俺だって好きで被ってんじゃ無いんだよ。

 

 

「粛清ッ!! やはりこの私が代わって全てを手直しするのだ!! それよりも…ぅぅ、たづなぁ! たづなぁ! お迎えはまだなのか!?」

 

「あ、もしかしてたづなさん? それならお送りしましょうか?」

 

「なんと!? いや、しかし…このような見知らぬ者に…いや、でも…ぐぬぬ」

 

 

なんか忙しい人だな?

 

とりあえず携帯を開いてたづなさんにメッセージを飛ばした。

 

すると『すぐに向かいます!』と返ってきたのでそれを伝えてあげた。

 

 

「有情ッ!! もしかしてお主は良いトレーナーなのか!?」

 

「良いかどうかは分かりませんがたづなさんのお知り合いだと言うなら放ってはおけませんね」

 

「感謝ッ!! お主からはなんとも言えないプレッシャーを感じるが良い人だったのだな! だから…すまない! 現トレセン学園の現状だけ聞いて色々と疑ってしまった…」

 

「現状…ですか?」

 

「う、うむ、その……あ、いや、何でもない。 これは極秘だった! ぐぬぬ、そうだ! ここで私と会ったことは忘れるのだ! お、お主は、ええと! うむ! トレーナーとして今日の勤めを果たすと良いぞ!」

 

 

いやいや、この子は一体何様なんだろうか?

 

しかしトレセン学園を気にしているようだ。

 

どこからかの派遣? もしくは監査か?

随分と可愛らしい役人だ。

 

まぁ、あとはたづなさんに任せて良いと思って俺はトレセン学園の正門を潜ってトレーナー室に向かいながら秋に向けてのスケジュールを考える。

 

 

「とりあえず…」

 

 

ミスターシービーの三冠。

 

目標レースは G1 菊花賞。

 

なのだが、その前に俺はやることがある。

 

それは…

 

 

 

ガラガラガラガラ

 

 

 

「まーふーてぃー!」

 

 

 

そう、突進してくるダイタクヘリオスの事で…

 

へ??

 

 

「ぐえっ!」

 

「おはおはチョリース!」

 

 

なんとか踏みとどまったが、脇がいてぇ…

 

 

「ヘタ、リオス、お前ぇぇ…」

 

「はぁ!? へ、ヘタレじゃねーし!」

 

 

ウマ娘パワーは強すぎるから気をつけてくれないとダメージがやばい。

 

 

「げっほ……てか、授業どうした?」

 

「うーん………サボり!!」

 

「夏休み明けから何やってんだ、行ってこい」

 

「はーい!」

 

 

そう言って去っていくダイタクヘリオス。

 

せっかく夏休みの宿題頑張って終わらせたのに初日から頑張りを不意にする気かな?

 

やれやれ。

来年は手伝ってやらないぞ?

 

 

「それと…」

 

 

チラリと何もない椅子を見る。

 

他の人からしたら見えないナニカ。

 

でも俺は薄らげながら見えている。

 

 

「カフェのイマジナリーフレンドもおはよう。 相変わらずそこが好きなんだな?」

 

『__』<おはよう、マフティー

 

「ああ、俺はいつも通りだよ。 スケジュール見直ししつつ、今日はダイタクヘリオスのメイクデビューを考える」

 

『__』<来年が好ましい

 

「そうだな。 たしかに来年でも遅く無い。 シニア級の時期は縮まるが栄光を取るなら遅くも無いさ。 けど…本人の強い希望だからな」

 

 

 

 

_ウチ、こんなウマ娘だからあまりトレーナー達から関心持たれなくてね、スカウトも無くずっと燻っていたヘタレでね……あはは…笑えるっしょ?

 

_でも、パリピってもウチはうまうまのウマ娘だから走りたいし、ノリとか抜きに運良くギリギリ中央のターフ踏めるくらいはヤレたし、何より大舞台でパリったいからやって来た。

 

_けどこんな(なり)だから、勉強の成績も悪くて、いざ始まる選抜レースもパッとしなくて、これ以上はノリだけで誤魔化せないからへらへらと笑うくらいで、その…気にしないふりをしてた…

 

_で、でも! ウチは本当は中央でも輝けると思ってる! あ、あのね! すごく身勝手なのは承知! けどウチの全てを見てくれたらヘリオスとして応えれる筈! ウチは少なからずそう思ってる!

 

_不真面目をやめれないウチはとんでもない傲慢だけど! でもマフTに走りを見て欲しい! ヘリオスを見て欲しい!

 

_お願いマフT! ウチは本当は凄いって証明するから! だからこんなウマ娘でも! マフTが走らせて! マフTなら見てくれるって思った!

 

_だ、だから!!

 

_お願い…ッ……します!!!!

 

 

 

 

 

ぎこちない標準語。

 

矛盾だらけの独白。

 

隠しきれないほど身勝手すぎる願い。

 

中央を無礼(なめ)たような不真面目さ。

 

震えながら頭を下げてダメな姿を売り込む。

 

子供にしては子供すぎる甘い考えだろうか。

 

 

_それなら最初から真面目に頑張れば良いだけの話。

 

 

恐らくみんなにそう言われてきて、みんなからそう思われてきたのだろう。

 

それでもパリピとしての個性は辞められない。

 

性格上勉強は苦手だったが、走りだけはなんとかギリギリトレセン学園に通用したウマ娘。

 

けれど彼女は………"まもなく"だった。

 

 

ダイタクヘリオスの成績データを見た。

 

 

彼女は "底辺" も良いところだった。

 

勉強は赤点ギリギリで、たまに授業は抜け出すような問題児。

 

ノリと勢いが強すぎる故か浅はかな考えをしている生徒と思われて、やや危険視されていた。

 

走りだけは唯一ダイタクヘリオスを繋ぎ止めれる力があり、中央で活躍する可能性だけは雀の涙ほどながら存在していたため、まだ咎められることはなかった。

 

けれど彼女は警告を受けた。

 

走りで結果を"出さない"上に、生徒として成績不良を続けるならダイタクヘリオスの籍は置けないと。

 

問題児として当然の処遇だ。

 

それは(前任者)も似た話。

 

学園側としてはむしろ正しい判断だ。

 

ならそれを撤回させるにはどうするべきか?

 

ここは実力主義だ。

 

結果さえ出せば大体何とかなる。

 

俺もそれは実感している。

 

それはダイタクヘリオスも理解していた。

 

 

 

「本当に、笑っちゃうほど身勝手だ」

 

『__』<実際舐めてるよ

 

「まあ…そうだろうな。 でも仕方ないよ。 誰しも『そうしてしまう』ってのは少なからず抱えている。 俺だってマフティーを抱えた。 なんならシービーだって同じだ」

 

 

まず自分が楽しむ事を考える。

 

そんな『描き』を作り上げる。

 

こんなミスターシービーを見てくれるトレーナーを求めていた。

 

けれどスカウトされる側、またはスカウトしてもらいたい側としてトレーナーに妥協すればその脚で重賞だって走れる上に、 自分の理想を描ける筈だった。 そうすれば簡単だった。

 

けれどミスターシービーは捨てなかった。

己のその身勝手さを。

 

そうでなければミスターシービーじゃないと拘っていた。

 

 

_ミスターシービーのアタシを見てね、マフT。

 

 

ただ速い脚を持つミスターシービーでは無い。

 

楽しみを見出したいミスターシービーを見た。

 

 

 

 

「ならダイタクヘリオスも同じだろ? パリピってるウマ娘はダイタクヘリオスって名前で、そんな自分を走らせてくれるトレーナーを探す身勝手さ。 俺からしたらミスターシービーと何ら変わりないな」

 

『__』<どうであれ身勝手

 

「それはそれで可愛いじゃないか? 意味を込めた自身を、それを大事に守りたい姿はとても健気だ。 だから彼女達は背負った名前で走れるんだと思う。 だってウマ()ってそうだろ?」

 

『__』<少しわからない

 

「なに、これはマフティーとしての感性だよ。 マフティーって名前にも意味があるからな。 だから彼女達がわかる。 あとは…そんなものだと納得するんだ。 そしたら何とでもなる筈だ」

 

『__』<未来を見据えているの?

 

「まさか、そこまでは。 だがマフティーは求めたら応える…ってな、思ってくれ」

 

『__』<あなたこそ身勝手だ

 

「そうでなきゃマフティーなんてやってられないさ…」

 

 

 

ノートパソコンの電源を入れる。

 

ダイタクヘリオスのメイクデビュー戦の申請を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月に入った事で若干涼しくなった気がする。

 

冷却スプレーの消費量が減ったことに安堵しながら約1週間ぶりに練習トレーニングを開始。

 

シービーはいつも通り究極のごっこ遊び(イメージトレーニング)でターフを走り、それをカフェが観察することでシービーの走りを吸収する。

 

先生からお叱りを受けて遅れてやってきたダイタクヘリオスも夏休みの勉強明けからはしゃぐようにバイブスが上がっていた。

 

 

「ウェーイ!いつ見ても究極のごっこ遊びとかマジイケてんじゃん! 放課後のダブルオーごっことかよりもウマ娘らしいじゃん!」

 

「え? なにその…ダブルオーごっこって?」

 

「0時0分になると隣の教室に武力介入して昼食のダチを増やすってな感じ?」

 

「はい?」

 

「それで共食い(共に食べる)フレンズを作ってどったんバッタン大騒ぎ! 獣はいても除け者はいない!ただし漬物テメーはダメだ!何故ならウチはヘリオス!推すはあってもお酢が苦手! そんなウチはパリピの若手!

メケメケメケメケメメケメケメケメケメ!

 

「テンション高すぎ案件」

 

「まぁ! そんな感じに放課後にダブルオーで武力加入はチョー楽しいウイッシュ!!」

 

「放課後つーか、放火後だな、そりゃ」

 

「ウェーイ!ウェーイ!燃えてけェ!!」

 

 

 

 

 

トランザムゥゥゥ!!ダダダッ

 

 

CB(ソレスタルビーイング)だけにあちらでも武力加入を始めつつ楽しそうに走るシービーを背景にタブレットの画面を起動してヘリオスを手招きする。

 

タブレットを見せるとガバッと腕の中に潜り込んで背中を預けながらタブレットを眺めるヘリオスにメイクデビュー戦の日をチョンチョンと指を差して促す。

 

すると一瞬だけ静かになった。

それから「あざまる水産!」と叫びながら腕の中から出てストレッチを始める。

 

 

「既にヘリオスの走りは見てる。 ここから出来るレベルに仕上げるぞ」

 

「こんなのバイブス上げるしかないっしょ!」

 

 

尻尾をブンブンと振り回しながら屈伸したり前屈したりとバイブスを上げていくダイタクヘリオス。 いつもの調子といつものやかましさ。 マンハッタンカフェが若干引き気味だけどヘリオスはケラケラと笑いながら練習に向けてのモチベーションを上げる。

 

 

けれど一瞬だけ俺は見えた。

 

スケジュール表を見せられた時、タブレットの画面に反射して映る彼女の表情はすごく真面目だった。

 

どんなにパリピっても彼女は中央までやって来たウマ娘。

 

ターフに()ける想いはウマ1倍強いのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜ご飯の1時間前に練習は終わった。

 

シービーはそのまま散歩がてらランニングも挟んでくるとトレセン学園の外まで去ってしまい、カフェもイマジナリーフレンドと話しながら自室に戻り、ダイタクヘリオスは水を飲みながら芝の上に寝転がる。

 

俺も近くまで座って声をかけた。

 

 

「おつかれ」

 

「あははは、チョー、つらたん!」

 

「勉強漬けで1週間近く走ってないからな」

 

「いやー、その件はマジで助かりもうした」

 

「カフェにお礼は言っておけよ。 あと怒られない程度に上手くサボれるように努力しろよ」

 

「りょ!」

 

「…本当か??…あやしいな!!」シュー

 

「ぎにゃぁぁぁあ!んんんん!!」

 

冷却スプレーをカボチャ頭の中に注入する前にダイタクヘリオスのジャージのポケットに吹きかけてやると楽しそうに悲鳴を上げながらどこかに転がり、俺は転がるヘリオスの写真を撮りながらカボチャ頭に冷却スプレーを注入してマフティー性をチャージする。

 

タブレットの電源を落として冷却スプレーを振ってみる。 そろそろ中身も無くなるか。

 

冷却スプレーの補給は今月最後にしておこう。

 

 

「ねぇマフT」

 

「?」

 

 

転がり帰ってきた彼女は体を起こして語りかける。

 

気分が落ち着いたのか尻尾の揺れも大人しい。

 

一度パリピ具合を引っ込めながらも、彼女は柔らかに笑みんでいた。

 

 

 

「何で『入ってくれないか?』って言ったの?」

 

「チームにか?」

 

「うん。 押しかけるように入ろうとしていた私に負い目持たせないように言ったのかなーって、思って。 だから実は無理させたんじゃないのか、なんて…」

 

「そんな事はない。 俺は…そうだな。 君で助かったからな」

 

「?」

 

「情けない話さ。 俺は皆から怖がられている。 カボチャ頭を被った奇妙なトレーナーと思われるのは充分承知の上だ。 だがマフティーとして振る舞う事を決めた途端、怖がらせるようになってしまった。 それでも俺にはマフティーが必要だから、例えウマ娘を拒絶させてしまうような雰囲気を持ち合わせたとしても俺はマフティーを辞められない。 そう覚悟していたが…君は違ったな」

 

「!! …あっははは、なるほどね。 まぁ正直に言えば怖かったよ? マフTの威圧感がウマ娘を遠ざけようとする。 ウチも最初は近寄り難くて耳を絞っていたけど…でもでも! カボチャ頭でトレーナーとかマジで斜め上ってるし最高じゃね? ってなったんよ!」

 

「そうなのか?」

 

「マジマジ! 普通じゃないトレーナーってのがバチバチっしょ!! まぁ、その…マフT的にカボチャ頭はその目的じゃないとしても、ウチからしたらこれまでにないジャンルで突き進むマフTの姿勢がすごく気になったんよ。 そしたらあのミスターシービーをスカウトしたじゃん? めちゃん盛り上がリングって感じにバイブス上がったんよ! それですごく…こう、マフTのことが気になった、ってゆーか? そんな感じ?」

 

「ヘリオスはいい奴だ」

 

「うぇ!? ぁ、いや、そ、そんなつもりは無い…無いし? いやだってほら? ウチは鬱陶しウマ娘で、度々やりすぎては煙たがれる問題児。 でも楽しい事のために辞めらんねぇ止まらねんねぇイッツ・パリピストなウマ娘だから自己満足が優先される訳よ。 だから…スカウトの件も、結局はウチが楽しそうなマフT達の輪に入りたくて、そんな自分勝手な理由でマフティーに求めたんよ」

 

「…」

 

「ウチでも分かってん。 ココは実力主義者の集いで半端な脚と覚悟じゃ長続きしない。 この場所に居座り続けるには結果が全てだから、ウチのようなノリで許されるにも限りある。 だからこんな生半可で、バカにしたような気持ちで、中央の世界で走ろうなんて許されんやろうって、諦めてたけど……けど、マフTとミスターシービーはウチの求めてるモノを抱えて走ってたの見て、揺らんじゃった…」

 

 

そこに笑顔はない。

 

あるのは渇望の果てか。

 

そこに手を伸ばそうとする眼差しだ。

 

 

「どんなに重圧が襲いかかってもシービー姉貴は心の底から楽しそうに走って、マフTは尊重して見守っていた。 ウチはね、そのターフでウマ娘としての喜びを見た。 何度も遠くから見てたんよ。 それから重賞をとって、いつのまにか二冠になって、でもまだそれは三冠の過程で、絶対重くのしかかる栄光の筈なのにターフで笑いながら描くミスターシービーはすごく楽しそうで………すごく羨ましくて仕方なかった」

 

「…」

 

「ウチもそうしたかった。 けど段々とマフT達は高いところに行ってしまう。 だからウチなんてバカウマ娘が入る枠は無いんやって、思ってた。 でもウチはそこしか無い気がしたんよ。 ミスターシービーをミスターシービーとして走らせるマフTなら、パリピなダイタクヘリオスを走らせてくれる望みはあった。 中央でも一つの望みやった。 でも遠いと感じた…」

 

「…」

 

「そんでね、マフTが作り上げたマフティーってコンテンツがウチにとって面白くて楽しくて色々やって、それで頑張って満足しようとした。 例のダンスを踊ったり、マフティーの名前を叫んで盛り上げたりした。 そうしてマフティーに触れたら少しは近づけるかなってね。 そうして遠目から満足出来るかなって…思った」

 

「でも物理的に近づいてきたな、君は」

 

「あっははは! いやー、マジ無理ゲー! マフT見たらね! 止まらなかった! やっぱりウチはマフTなんだって尻尾グルグルエンジンアゲアゲのバイブスを抑えきれんかった! でもこの通り。 ウチは身勝手なくせに下手に身を弁えようとして、バカみたいに葛藤してはマフTにタックルして、それでも踏み出せないヘタレなパリピはどうしようもナイル川。 それで学園から在学の警告を受けてからはやはり中央では高望みかなって、やはり1番人気の諦めが1番前に出てしまった」

 

 

トレセン学園は極度の実力主義だ。

皆それを知っている。

 

強いやつには人権がある。

しかしそうじゃない奴は限られる。

 

ダイタクヘリオスは後者だ。

 

 

「でもシービー姉貴が後押ししてくれて、なんならマフTまでもが『入ってくれないか?』ってこんなパリピにも言ってくれて、それで誘ってくれてさ、もう…ウチ…は、あははは……うちは…あ、はは、は…ぅ、ぐすっ…ぅぅ」

 

「な!? なぜ泣く必要がある…?」

 

「え、えへへ、わ、わかんない、や。

あはは、だめ…なんかダサくね…?

とまらないなぁ……どうして?

ああ、でも、そっか…

思ったんよ…いいのかなぁて。

こんな底辺のウチが恵まれちゃっていいのかなぁ。

不安になる……ふぁんだよぉ、まふてぃ…」

 

 

これまで溜めてきたものが決壊したのだろうか、膝を抱えて涙を流し出す。

 

自分の愚かさを責めるように思い出して、いま後悔と不安が始まる。

 

 

でも!!

そうである必要はどこにもない…!!

 

 

 

「不安なモノか…ヘリオス!」

 

「!」

 

 

俺とヘリオス以外、誰もいないターフに声が広がる。

 

そして無意識に放ってしまう…プレッシャー

 

だが、俺は止まらない。

 

 

 

「マ、マフティー…? なんか…」

 

「あんなに握り締められてくしゃくしゃになった紙で申請したけど、ちゃんと通ったんだぞ? それだけ諦めきれなかった証じゃないのか? それだけマフティーに求めた上で願った結果だろ? ならそれで良いじゃないかヘリオス! お前の"勝ち"だろ!」

 

「!」

 

「それだけマフティーの事を求めてくれたから俺はダイタクヘリオスをスカウトしたくて『入ってくれないか?』と言ったんだ。 ならもうそれはバイブス上げまくったパリピとしての勝利だろ!」

 

 

1番人気に諦めがゴール……したつもりで、実は奥手な10番人気のヘタレパリピが1着でゴールした結末だ。 マフティー杯堂々の重賞ウマ娘だ。

 

他の奴らが文句を言ってもマフティーがそれを許さない。

 

 

 

「だが、それでも不安だと言うなら。 それでもまだそこに疑問を感じてしまうと言うのなら…」

 

「マ、マフティー? マフティー?」

 

「マフティーに選ばれたウマ娘って事を君が走って証明してみせればいい!」

 

「!?」

 

「求められたからにはマフティーとして応えてやる。 だからダイタクヘリオスも応えろ。 中央で走るパリピギャルウマ娘はマフティーに選ばれて走っているウマ娘なんだって世間に証明すれば良い!

_お前はヘリオス(太陽神)だろ!

_マフティー(王者)に並ぶ名を持つウマ娘だろ!」

 

「っ…!!?」

 

 

 

彼女は俺を選び、俺も彼女を選ぶ。

 

マフTとヘリオスはその関係だ。

 

今そう決めた。

 

 

 

「だから君は示さなければならない。 その証明として来週のメイクデビュー戦はマフティーのウマ娘として1着を勝ち取る…いや違う! マフティーのために勝ち取れ!」

 

 

「!」

 

 

「そしていつしか、今日泣いてたくらいに届かないと思ったマフティーに立ち並べたんだとバイブスを上げていくらでもパリピギャルらしく自慢しろ。 俺がそう言わせる。 マフTがそう届かせる。 マフティーがそう誇らせてやる!」

 

 

「ぁ、ぁぁあ…!」

 

 

「だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

___やって見せろよ、ヘリオス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ」

 

 

 

 

彼女は震える。

 

でも、それは情けなさからではない。

 

 

 

 

 

 

「ぁ…!」

 

 

 

彼女は慄える。

 

でも、それは苦しいからではない。

 

 

 

 

「ぁぁっ!!……ぁ………っっ」

 

 

 

彼女は飲み込む。

 

決壊したモノを拭い、アイシャドウは崩れる。

 

だが、それすらも彼女の形にして立ち上がる。

 

しわくちゃの紙のように、震える息遣い。

 

すぅぅぅと呼吸して、こちらに振り向いた。

 

 

「!」

 

 

彼女らしい笑みをぎこちなく作り、3本指を目元に添えて…

 

 

 

 

あざまるッ、すいさん…!!(ありがとうございます!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴天の空に明るい太陽は鬱陶しいくらいに熱い。

 

だがそれ以上にメイクデビュー戦で1着を取ったヘリオス(太陽)も鬱陶しいくらい底抜けに明るかった。

 

 

 

 

「マー、フー、ティー!」

 

 

 

パリピギャルウマ娘は手を振って笑う。

 

またほんの少しだけ流れる一滴。

けれど笑顔は絶やさず、彼女は走る。

 

 

 

そんなウマ娘を、マフティーは選んだ。

 

__誇らしく思うさ。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 




パリピなりにいろいろ考えていたと言うことでOK?

まぁ理解者がいるってホント大事だよね。
ヘタレ在宅太陽神はこれから元気に頑張ってほしい。


あといつも誤字脱字報告と促しありがとうございます!
いつも助かってます!本当に有難い限りです!!

変態は引いてしまいましたか…?(震え声)

  • 単発で引けた。
  • 10連で引けた。
  • 20連以上で引けた。
  • 100連以上で引けた…
  • 当たるまで引けば確定だから(または天井)
  • 今回は見送り(抜け出し準備のコツ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。