やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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《追記》
楽曲コード消えていてビビった。
とりあえず急いで追加しました。


第19話

空を見上げれば晴天の空で、真冬を感じさせない陽の光が祝福する。

 

中山レース場でアタシは勝負服を身に纏っていた。

 

昂り始める気持ちを抑えつつ、準備を終えた者からゲートインして行く。

 

アタシはもう少しだけ気持ちを落ち着かせようと足首を捻って準備運動。

 

深呼吸して中山のターフに染まろうとすると、一人のウマ娘が近づいて来た。

 

 

 

「シービーちゃん、今日はよろしくね」

 

「あはは、やっと一緒に走れるね」

 

 

 

みんなのお姉さんのような、マブいウマ娘。

 

それはこの日、出走が認められた…一人の 怪物

 

 

 

「ここに立っていられるのはあなたのトレーナーのお陰よ」

 

「そう思う必要は全く無いよ。 マフティーはただマフティーとして応えただけだから」

 

「マフティー本人にも言われたわね。 礼を言うなら東条トレーナーに…ってね」

 

 

 

マフTから聞いた話。

 

菊花賞の後に東条トレーナーから頭を下げられて、マルゼンスキーを助けて欲しいとお願いされた。

 

いまあるマフティーとしての影響力がどこまで行き届くか分からないが、マフTがアタシを無敗の三冠ウマ娘に導いた力は本物だからURAに話を持ち込めた。

 

その過程で秘書のたづなさんにパイプを作って貰い、マフティー性にお熱なヘッドバン残念美人(乙名史記者)に根回しを行い、URAに一つずつ駒を進めて、最後は促す。

 

有マ記念にマルゼンスキーの出走を認めさせた。

 

ただURAも最初は渋い反応だったらしい。

 

でもマフティーの手腕は認めざるを得ない。

 

更にマフティーはたたみかけた。

 

 

 

__ミスターシービーならマルゼンスキーを倒せる。

 

 

 

これはURAを動かすに充分な手札だった。

 

もしくは…

URAもやっと動けるとマフティーに希望を抱き…期待した。

 

 

でもマフTはそんなURAの有様にため息を吐いていた。

 

運営として考えれば、マルゼンスキーの処遇は当然の判断だ。

コンテンツを保つためにもその判断は恐らく間違いではない。

 

小を切り捨て、大を選び取る。

 

後から襲う批難よりも安定を選んで一人の生徒からターフを奪い取った。 しかしそれはURAとしての苦渋だったと思う。 でもURAはその手段を選び取った。

 

でも、中央のトレーナーとしてマフTは許せなかった。

 

生徒を……まだ子供からそんなことで未来を取り上げるなどあってはならないと。

 

それが例えそうせざるを得ない出来事だとしても、大人の事情を理由に起こってはならない惨状だと認めなかった。

 

でも誰もそれを変える力がないからそうなってしまったと、マフTは語る。

 

 

弱さは罪では無い。

けれど弱さの放棄は罪だと言った。

 

それを聞いた人は、マフティーに言った。

 

 

なら、お前はできるのか?

 

そこまで言うのなら…

そこまで言えるのなら…

 

やって見せろよ、マフティー。

 

 

 

___なんとでもなるはずだ。

 

 

 

マフTはマフティーとして動いた。

 

今ここにいる誰よりも強いから。

 

アタシを栄光ある頂きまで導いたから。

 

求められたマフティーは、応えた。

 

その結果として、スーパーカーのキーを手に入れたマフTは車庫から怪物を放つ。

 

あとは……アタシ次第だ。

 

 

「アタシね、マルゼンスキー先輩の気持ちわかるつもりだよ。 そのベクトルは違うけど、楽しいから走っているのは少なくとも同じつもり。 だからアタシもマルゼンスキー先輩の出走を願ったよ。 ここに来てくれてありがとう」

 

「シービーちゃん…」

 

「だから___あとはアタシの走りに負けるだけだね」

 

 

「「「「!?!?」」」」

 

 

耳を立てていた他のウマ娘達はこちらに振り向く。

 

会場で見ていたお客さん達もゲートイン前に注目していたから、アタシに集まる視線を見てざわざわと騒ぎ出す。

 

実況も少し盛り上がってきた。 どうやら宣戦布告でも行ったと思われてるらしい。

 

まぁ、間違いでは無いかな。

 

 

「マルゼンスキー先輩は凄いと思う。 アタシはいくら走っても追いつけない光景ばかり描かざるを得なかった。 でも、それは三冠に挑む前の話。 栄光を掴めたアタシは違う。 マフティーは怪物 ()()にミスターシービーは恐れないよ? だって本当に凄いのはマフティーだって信じてるから。 なら、アタシは怪物と並ぶくらい凄い筈だよね? ミス・モンスター」

 

 

「 _____ _ _ 」

 

 

 

そこにいるのはトレセン学園の先輩…ではない。

 

そこに現れたのは…

 

 

 

「___ふ、ふふっ」

 

 

 

そのターフに君臨したのは、赤色の怪物。

 

エンジンが暖まった最強と恐れられるウマ娘。

 

スーパーカーはアクセルを蒸かすように闘争心を鳴らす。

 

 

 

「そうなのね、あなたは……………なら……」

 

 

 

ターフがざわつく。

 

ウマ娘もその威圧感に身構える。

 

会場も威圧されたのか、ざわつきが一瞬引き…

 

 

 

 

お姉さん、本気で走るわね

 

 

 

スーパーカーのキーは完全に回された。

 

 

あは…

あはは…

あははは!

 

すごいなぁ、このエンジンの圧力。

これが先輩のフルスロットル??

 

すごい威圧感だ。

 

 

ああ……でも、そうしてくれないと困る。

 

そうじゃ無いとアタシも果たされない。

 

マフTの素顔を見るためにも、アタシは本気のウマ娘(マルゼンスキー)に勝たないと意味がない。

 

 

 

「あははは…!!」

 

「ふふふっ…!」

 

 

 

思わず、笑ってしまう。

 

他のウマ娘たちは何焚き付けてんだと恨めかしそうに睨んできた。

 

あはは、ごめんね。

 

 

しかし大変だなぁ。

 

このレース、もうただでは勝てなくなったよ。

 

 

 

「マフT…」

 

 

 

これは二つもあなたにお願いした代償なのかもね。

 

ただでさえ、マフTがいる事でこれ以上にないほど全てが満たされてるのに、アタシはそれ以上を求めてしまった。

 

その結果として本気の怪物に挑むレースだ。

 

 

でも、アタシとマルゼンスキーは同じ。

 

レースを楽しむ目的は同じ。

 

でも先輩は純粋に強いからそうなった。

ターフを描けなくなった。

それは不幸なのか分からない。

レースの中で楽しみを見出せなくなるとしたら、それはウマ娘としての不幸だ。

 

中央を去って地方で走る選択なら楽しみを継続できるかもしれないけど、でもそれは多分自己満足で終えてしまう悲しい脚になる。

 

でも将来そうなってしまう荒れたターフからマフティーが救い出してくれた。 それはアタシのことをミスターシービーってウマ娘として見てくれた時と同じ。 アタシの独りよがりを彼は受け止めて、許して、認めてくれた。

 

なら、アタシだって怪物程度受け止めてやる。

 

アタシがマフティーするだけの話だ。

 

 

 

 

__ここからが地獄だぞ??

 

 

 

 

 

マフティーが出来るならアタシだって出来る。

 

なんとでもなるはず、だから。

 

 

 

 

「勝負だよ、マルゼンスキー」

 

 

 

 

これ以上は語るまい。

 

あとは、走りで応えるだけだ。

 

 

 

 

『ウマ娘ゲートイン完了、出走の準備が完了しました』

 

 

 

 

緊張感はゲートの中に閉じ込められる。

 

ウマ娘にとってこの1秒がとてつもなく長い。

 

そう感じている。

 

でも、アタシは不安じゃないよ。

 

アタシを愛バとしてくれる 彼 が見てるから。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

マフティー、アタシは今から絶対に挑むよ。

 

本気になった躊躇いのない絶対のウマ娘に。

 

 

そして、マフティーの言った通りに描くよ。

 

彼女が 禁忌 だとして…

 

URA(人々)が作り上げた 恐れ(タブー) があるなら。

 

 

それを破るのが ミスターシービー なんだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガコン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開いたゲートから 怪物 が放たれる。

 

アクセル全開で 先頭 に躍り出た。

 

エンジン違いをわからせるように 彼女 は走る。

 

何バ身も先に行くその ウマ娘 は最初…

 

 

 

 

 

 

 

 

あどけない夢を掲げた

痛みの知らない赤子のようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それが許されなくなった頃。

 

楽しみすらもターフに描けなくなる。

 

大阪杯を最後に彼女は終わった。

 

その走りも、その心も、押し留めた。

 

そうせざるを得なかった。

 

なんとか無理して笑い、気にしないフリした。

 

でも、ウマ娘として、奮えて…

震えてしまう…

 

 

 

 

 

 

 

 

揺れる心を隠した

痛みを覚えた子供のように

 

 

 

 

 

 

 

 

『マルゼンスキーが先頭!! これは早い!! 早すぎる!!? 復活したこの怪物に衰えは無い!! 2番手のウマ娘とは既に6バ身差!! フルスロットルのスーパーカーが中山のターフを駆け抜ける!!』

 

 

 

 

 

 

絶望すら覚える……いや、思い出す。

 

その走りはウマ娘の見ている光景に刻んだ。

 

同じシニア級を走ったウマ娘達も息を飲む。

 

あのメジロアルダンでさえ、焦りを見せる。

 

マルゼンスキーはやはり早かった。

 

そして、マルゼンスキーも理解する。

 

やはり自分はとんでもなく早かったと。

 

その気持ちは複雑に染まり…

ターフに向けた…

 

 

 

 

 

 

 

当たり散らして乱れる

認めたくない過去を思い出して

 

 

 

 

 

 

 

 

先頭を走る彼女は気にしないようにする。

 

でも今あるこの結果が突きつける。

 

最強に収まらず、絶対にしてしまった。

 

その脚は己のターフを変えたと理解する。

ああ、そうなのか…

 

 

 

 

 

 

 

気づけばいつのまにか

新しい世界に染まり出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

変わることもない。

 

だって絶対にしてしまったから。

 

最強は超えられる筈。

 

でも絶対は覆さないレッテル。

 

嬉しさよりも、孤独感が心を締め付ける。

 

楽しいだけだったはずなのに、何故……?

 

心臓の音は、高揚感を表さない。

 

結局、怪物は怖がられるだけだ。

 

孤独にターフを描くだけ。

 

そう思い、覚悟を決めなければならない。

 

そう感じていた。

 

そう感じる他…

 

 

 

 

 

 

 

__やって見せろよ! シービー!!

 

__やって見せるよ! マフティー!!

 

 

 

 

 

 

聞こえないはずの声が 二つ 聞こえた。

 

怪物は、それがすぐに分かった。

 

 

 

 

『ミスターシービーだ!! ミスターシービーが第3コーナー前から追い上げる!! やはり常識破りなこのウマ娘に坂道など関係ない!! あるのは1着かそれ以外だけだ!!!』

 

 

 

 

 

後方から追い上げてくる無敗の三冠バ。

 

中山レース場の苦しさを感じさせない。

 

それは絶対に届こうとして…いや、違う。

 

そのウマ娘に禁忌(絶対)など関係なかった。

 

 

 

 

 

『第4コーナーを曲がり終えてそこにはマルゼンスキー!! 3番手のメジロアルダンを追い抜き2番手に迫ったのは無敗の三冠バ! ミスターシービー!! 追い上げ!! 追い越し!! 追い縋る!! 中山の短い直線に入ったこの二人の一騎打ちだァァァ!!!』

 

 

 

 

 

中山レース上に爆声が広がる。

 

マルゼンスキー、ミスターシービー。

 

それぞれの鼓動と足音しか聞こえない。

 

先頭と後方の二つだけだと思われた。

 

だが怪物の視界横に一人のウマ娘が割り込む。

 

 

 

 

__追いついたよ!! マルゼンスキーッッ!!

 

 

 

 

『並んだ!!! 並んだぁぁぁぁぁ!!!』

「「「「「___!!!!」」」」」

 

 

 

 

観客の声でレース場が弾けるターフで怪物は目を見開く。

 

受け入れるには少し喉がつっかえる。

 

 

 

___彼女は本当に追いついて来たんだ。

 

 

 

だから、ちゃんと信じれば良かった。

そう後悔する。

 

信じられない諦めが1番人気だった。

 

 

しかし、そのウマ娘は否定した。

 

レースに絶対なんてない。

 

1番人気が必ず勝つなんてあり得ない。

 

だってここは有マ記念。

 

人気の順番なんて関係ないレース。

 

絶対なんて無いから、彼女はミスターシービー。

 

 

 

 

 

鳴らない言葉なら、もう一度…

いや違う

彼女は何度も何度も"描いて"見せる。

 

 

 

 

 

 

__あんたが正しい(絶対)と思うなら!!

__アタシが勝って描いて見せる!!

 

 

__ッッ!! ッ、負け…ない!!

__負けないから! ミスターシービー!!

 

 

 

__勝つのはアタシだ!!

__そして!! マフティーだァァァァ!!

 

 

 

 

一人の怪物は、そうさせていた自分を忘れた。

 

 

勝ってしまう、1番人気じゃない。

 

 

勝ちたい気持ちの、2番人気が前に出た。

 

 

それは怪物にとって忘れていたターフだった。

 

 

だから…

 

その一瞬が、怪物の終わりを描いた。

 

 

 

 

「___ぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

赤色に染まる時間を置き忘れ去れば

哀しい世界はもう二度となくて

荒 れ た 陸 地(ターフ)

こ ぼ れ 落 ち て い く

 

 

 

 

 

一筋の光へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスターシービー抜けた!! 抜け出したあ”あ”あ”あ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、見ることはないと思われた光景。

 

1番しか描けないターフだった。

 

しかし、その先に一人のウマ娘が割り込んだ。

 

まるで否定してくれるかのように描く。

 

マルゼンスキーは孤独じゃなかった。

 

周りとさほど変わらない。

 

負けることもある、ウマ娘になった。

 

 

 

 

 

 

 

『ミスターシービー!!1着でゴォォォォール!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、怪物は存在しなくなった。

 

存在したのは 1着 と 2着 のウマ娘だけ。

 

そして皆は理解する。

 

レースに絶対は無い。

 

禁忌破りのウマ娘がそれを証明してくれたから。

 

 

 

 

タブーは、人が作り上げるモノ。

 

固定概念は、人が編み出したモノ。

 

しかし…

 

それを破るのは ミスターシービー

 

彼女は 閃光 の如く 怪物 を追い抜いた。

 

 

 

 

これは有マ記念で行われた伝説のレース。

 

いつまでも、そう語り継がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐいぐい………

 

カポっ…!

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 

 

息を吐き、開放感を味わう。

 

首を回して肩のコリを軽くほぐす。

 

そして目の前の彼女は……

 

 

 

「………うん! 至って普通だね!」

 

 

「カボチャ頭外させて反応がそれかよ」

 

 

 

カボチャ頭を机の奥に置き、ストロー無しで飲み物を飲む。 首をコキコキと鳴らしてシービーの反応を考えた。

 

やはり顔つきは普通なのかな?

 

ほんのりとハサウェイ寄りな顔つきなのは鏡見て知ってたけど。

 

まあそもそもハサウェイの顔つきがイケメンなのかはわからないけどな。

 

 

 

「でもイケメン寄りな、フツメンかな?」

 

「それ褒めてるのか?」

 

「マフティーらしさある、顔つきかな」

 

「それカボチャ顔ってこと?」

 

「カボチャ被ってそうな顔かな!」

 

「猫被ってるの感覚で言われてもなぁ…」

 

 

てかカボチャ被ってそうな顔とか地味にパワーワードだよな。

 

聞くだけだとただの狂人じゃねーか。

 

てか、狂人だったわ。

 

てか、俺やん。

 

てか、マフティーやん。

 

 

「もっと、こう…なんか驚くようなリアクションあるかと思ったんだが? 俺としても外すのに心の準備とかしてたんだけど」

 

「パリピ呼んでくれば無条件でリアクションが倍増されるかもよ」

 

「シービーだけに見せないとご褒美にならないだろ? パリピ達は次の機会だな」

 

「あはは、アタシだけ特別か……ふふーん、特別ねぇ。 ……う、うへへへぇぇ」

 

 

特別が嬉しかったのか、有マ記念の時のようにキリリとした顔はそこに無く、ふにゃりとした顔つきになり…

 

 

 

「まー、ふー、てぃー」

 

「うおっと!?」

 

 

 

倒れ込むように接近してきた。

 

こぼしそうになる飲み物を急いで机に置く。

 

寄りかかれながらウマ娘パワーでソファーに押し倒されて、そのまま胸元に顔を擦り付けて満足そうな声を漏らす。

 

まるで甘える猫のようだ。

 

猫味ある顔だからむしろネコ娘かと間違えそうだ。

 

 

「んふふ〜」

 

 

尻尾を揺らしながら声をこぼす。

 

ウマ娘パワーに逆らえない俺はソファーの半分の面積を占めるように寝転がされて、背中でクッションを押しつぶす。

 

ミスターシービーはその上に乗るように倒れ込んでこちらをガッチリ抱きしめながら喉を鳴らし、特に意味もなく耳がテシテシと俺の頬や喉元を叩く、なんてことない物理的な愛情表現をしばらく行っていた。

 

 

 

「なんか、やっと君に会えたって感じ」

 

「シービーが三冠の頂まで登り詰めたから、その頂で出会えたって事だろうな」

 

「それだと毎日会いにいくには大変だね」

 

「じゃあ、どうする?」

 

「………一緒に住む、マフT抱えて下山して」

 

「拉致じゃねーか」

 

「がおー、ウマ娘はつよいんだぞー」

 

「知ってる。 知ってるよ。 君は強い…ウマ娘だよ」

 

 

頭を撫でる。

 

手入れするのが大変で少しだけボサボサしてる髪の毛だけど、それがミスターシービーって感じだ。

 

少しだけ指を立てて髪を撫で下ろすようになぞる。

 

されるがままの彼女は息を漏らして、いつまでも身を預け続けた。

 

 

「君が最強だよ、ミスターシービー」

 

「……うん」

 

「来年は最強か分からないけどな」

 

「別にそれでも良いよ。 アタシがマフTの愛バなら、もう本当にそれ以上は求めない」

 

 

身を捩らせながらもぞもぞと這い上がり、背中に腕を回しながら胸元まで顔を寄せる頬擦りするように深く体を預ける。

 

 

「アタシはマフティーのミスターシービーだ、それ以上でもそれ以下でもない。 いつかは後輩にマフティーを譲らないとダメかもしれないけど、今だけはキミと勝ちたい

 

「…」

 

「アタシはワガママで困ったウマ娘だから」

 

「それなら俺だってカボチャ頭を被ろうとした困ったトレーナーだ。 素顔見せるためにマルゼンスキーに勝たないとダメだと言うほどだ。 付き合うに大変なトレーナーだよ」

 

「それでもあなたはマフティー。 そしてアタシだってマフティー。 求めたら応えるウマ娘だから」

 

 

意味さえ込めれば誰だってマフティーになれるから。

 

だからマフティーとして彼女に返す言葉無く、マフTとして甘えるその頭を撫でるだけだ。

 

力なく耳は垂れ落ちて、キリッとした目は猫のように細く虚ろに染まる。

 

尻尾はゆっくりと揺れている。

 

 

「もう少しこのままで良い?」

 

「門限までなら、な」

 

「ん」

 

「……シービー」

 

「…」

 

「お疲れ様」

 

「…ん………出会ってくれて……あり…がとう…」

 

 

 

まもなく今年が終わる。

 

 

恐れられた怪物を追い抜き、絶対的な固定概念を覆し、勝利を見せつけた事でURAに反省を促し、そして日本のウマ娘の中で最強となった彼女は、今だけ俺の懐で寝息を立てている。

 

 

俺の素顔を知ったように、俺しか知らないミスターシービーの素顔を俺が知る。

 

 

無敗の三冠ウマ娘…

 

マフティーとして誇らしく、マフTとして誇らしく、俺はそんな彼女と共に今年を走り切ったことを誇らしく思う。

 

 

底辺だったマフティーは、今やっと…

 

頂点に立てたのかもしれない。

 

それは間違いなく、彼女のお陰だ。

 

 

「お礼を言うのは俺の方だよ、ミスター・ウマ娘」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禁忌破りのウマ娘

 

その名は

 

 

 

 

 

ミスターシービー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 




マフティーはある意味、禁忌破りな存在。
つまりミスターシービーもマフティーってことですね。
だから作者はマフティー性高いこのウマ娘を選んだ。
(嘘です普通にかわいくて好みだったから。 あと実装を促すため)

とりあえずURAに 促し を完了。
シービーの勝利を受け止めて 反省 してね。


ちなみにマルゼンスキーに勝てたのは適正距離差。
あとマフティー補正の差ですね。
それでもマルゼンスキーが強いと考えてます。
てかマルゼンスキーはそうであって欲しい気持ちがある。


▽ 以下、やや適当なステータス表 ▽

ミスターシービー(クラシック級)
スピード C+
スタミナ B
パワー  C
根性   C
賢さ   B

マルゼンスキー(シニア級)
スピード A+
スタミナ B+
パワー  B+
根性   B
賢さ   B

アプリゲーム並みの強強ステータス。
強すぎんだろこのスーパーカー。
リトルココンと充分タメを張ますね、これは。


▽ おまけ ▽

メジロアルダン(シニア2年目)
スピード C
スタミナ C
パワー  C
根性   C
賢さ   A

ダイタクヘリオス(ジュニア級)
スピード D
スタミナ F
パワー  F
根性   F
賢さ   G


とりあえず今回の話で何が言いたいかと言うとですね。

Alexandrosの[ 閃光 ]は普通に名曲ですね。
ネタにされてるけどフリージアもです(鋼の意思)

※使用楽曲はコードに乗せて許可を得てます。

カワカミプリンセスは引けましたか…?(震え声)

  • 単発で引けた(直線加速のコツ)
  • 10連で引けた。
  • 20連以上で引けた。
  • 100連以上で引けた…
  • 当たるまで引けば確定だから(または天井)
  • 今回は見送り。

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