やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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やはりマフティーって難しい…
作者だって急に分からなくなる。


第28話

 

 

水戸市にある千波湖。

 

湖のそばでキャンピングカーを停めて日曜日をやり過ごすことにした。 帰りは祝日の月曜日を予定している。

 

現在の時刻は夕方の6時。 キャンピングカーの中でヘリオスが干し芋を齧りながら宿題を片付けてる間に俺は購入した乾麺を湯がいて、刺身として売られていた鯉の身をタレにつける。

 

水戸は納豆のイメージが強いが鯉も美味しいと聞いた。

 

あと干し芋も名物の一つみたいなのでヘリオスと同じ物を齧りながら夜ご飯を支度する。

 

本当はそのまま館内で夜ご飯を済ませてもよかったがダイタクヘリオスは何気に有名なので俺がマフTである事がバレてしまう。

 

一応、メイク無し彼女なら一目見ても分かりづらいかも知れないが、それではダイタクヘリオスでは無い。

 

なにより俺が彼女に「そのパリピらしさでダイタクヘリオスをしろ」と強言してチームに迎えたから、彼女は寝ている時以外はタトゥーシールやアクセサリーを外すことはない。

 

なので、のぼせ気味に温泉を上ってからも彼女はタトゥーシールを貼り直してダイタクヘリオスを再開した。 あ、もちろんメイクは落として温泉に浸かっている。 彼女はそこら辺のモラルはしっかりと守るウマ娘だ。 とても良い子である。

 

あとキャンピングカーがあるからこそキャンピングしないと意味が無いとヘリオスが言ったので夜ご飯は乾麺を湯がいて食べることにした。

 

そんな訳でキャンピング最終日。

 

宿題で頭がパンクしそうなヘリオスを呼べば割り箸を割って乾麺を啜る。 んー!と美味しそうに食べる彼女を眺めながら俺も一杯だけ啜って腹を満たすとカボチャ頭をかぶる。 軽食な生活ばかり進めていたからあまりご飯は食べなくなった。 食べようと思えば沢山食べれるけど、憑依前の前任者がゼリーばかり啜って生きてるような生活をしてた故にこの体の胃袋がそこまで大きく無い。

 

毎日少しずつ食べる量を増やせば一般男性以上には食べれるようになるだろうけど、俺の場合あまりカボチャ頭も脱いで居られないので軽く食べてすぐ被れる方がいい。 もしこの後お腹空いたらキャンピングカーの中で干し芋を齧れば良いと考えて、おかわりをねだるヘリオスの為に乾麺を湯がいてタレにつけていた鯉の刺身をトッピングして渡すと尻尾ぶんぶんバイブスがテンアゲの天元突()リピしていた。 お気に召したようで何よりだ。

 

 

「マフT、偶然って怖くね?」

 

「どうした?」

 

「いや、温泉でタコっ(のぼせ)てたんけどね、別のお風呂にあの子とエンカしたんよ。 声は掛けなかったけどバイブス無さげな物憂げは確かにそうやったんよ」

 

「…それって、釜臥山展望台の子か?」

 

「そう!」

 

「そうか。 だとしたら俺はその親にあったことになるな」

 

「マ? それってダディー? でもマミマミはエンカせんかったよ?」

 

「母は都内に入院してるらしい。 それで東京に引っ越すとさ。 で、俺たちはその親娘と同じ温泉で出会ったらしい」

 

「うわー! それガチャの運に回したくね? なんか沢山のプレ達の万円ゆきっちー*1が確率のアゲサゲのカツアゲされてんよ。 ガチャで星3がノーエンカバリってるから"親の顔よりも見た天井"で悲鳴アゲてるアンケとか見たことあるし」

 

「ヘリオス、それ以上はいけない」

 

 

おい、その先は地獄だぞ。

 

さもないと神経が苛立つからな…(白目)*2

 

 

「てか、マフTはその親はわかるん? 人は少なかったけど」

 

「なんとなく分かったよ。 てかその人と二人だけだったからな。 ま、色々あって話することなってな、それで結構色々あるらしい。 特に娘さんの方がな…」

 

「なんかマフTにお熱やったんね。 ウチがマフTのウマ娘なのに嫉妬するんけどー?」

 

「悪かったよ。 でもマフTである以上は仕方ないから許してくれ。 ほら、まだお変わりも鯉の刺身もある。 食べてくれないと残っちまう」

 

「ウェーイ! あざまる水産!!てかマジ水産じゃん!ウェーイ!!」

 

 

食べ物で気を逸らしつつ火加減を気にしながら乾麺を湯がいて俺はあの後を考える。

 

ヘリオスの言う通りあのウマ娘が同じ温泉内に居たらしい。

 

それでその親があの疲れ気味に湯船の中で危うかった男だった話。

 

本当に偶然………??

 

いや、それとも…

 

 

「…」

 

 

八月は終わって九月。

 

まだ夏の暑さはある程度引き継いでいるが宇宙を見上げれば星は見え出している。

 

青森から何百キロと離れた茨城へ移動しても星座や星の数が同じ宇宙がここでも見える。

 

俺はロマンチストは嫌いじゃない。

 

そもそもマフティーが独裁者は理想主義なところから始まっている。

 

もしかしたら星に導かれて俺たちはこの場に集われた。

 

ロマンチックにそう考えなくも無い。

 

そもそもここは元々がゲームの世界だ。 俺と言うストーリーにフラグが立ってるのかもわからない。 もしかしたらコレが何かの巡り合わせなんだろうか? もしマフティーと言う主人公がこの世界で働いてるとしたら今この瞬間が分岐点なのかもしれない。

 

ロマンチストな人間ならそう思うだろう。

 

シャアが案外そんなところあったな。 あの人は大人になれきれない子供だからこそ、そこらへんに惹かれる部分は多かった。 でも世界は優しく無いから裏切られてばかりだった。 カミーユが切っ掛けになり、そして最後だったと思う。 それからアムロにも負ける。 元々酷い奴だったがそれでも散々な男だ。

 

沢山の可哀想に包まれたが、救えない男だ。

 

けどシャアのロマンスはニュータイプに対して希望を抱いていた。

 

狂気的なニュータイプの可能性を秘めたカミーユに対してそう抱いたように、ララァと同じようにニュータイプが改革を世界に確変を齎してくれると信じていた。 原作*3でもニュータイプってそうだったから。

 

戦争の道具に染まりすぎたけど、人は信じてた筈だ。 ニュータイプに。

 

それはかなり先のUCで証明した。

 

シャアにとっては遅すぎる証明だったが。

 

だからフル・フロンタルがその器(シャア)として見送ったんだろう。 相対するニュータイプの敵として。 皮肉だな。

 

 

語りすぎたな。 ゾルタン・アッカネンが言った通りガンダム好きがガンダムを語らせると止まらないと言った3分間のアレは本当だな。

 

面倒なモノだな。

ガンダム好きで生きると言うのは。

 

 

話を戻す。

 

まあそれでも結局ニュータイプの話になるが、三女神から授かった力にせよ俺が原作と同じようなニュータイプの人間だとしたら、このウマ娘の世界でも原作のようにニュータイプに惹かれて、そしてソコに集われるのだろうか?

 

そこにロマンスも有るとしたら、地球の引力によって宇宙見上げるしかできない生き物が、そういった星に導かれるのはごく自然なんだろうか?

 

もしこれがそうならあの親娘と温泉で巡り合わせてのは『偶然』ではなく『必然』になるかもしれない。

 

 

これがもし二次創作小説ならとんだご都合主義だな。

一気に駄作へ丸代わりする展開だろう。

 

 

でも、俺がこの世界に居て。

 

俺がマフティーとしてたらしめて。

 

このウマ娘プリティーダービーのストーリーがマフティーに「そうして欲しい」と求めるとしたら、三女神が願う通りに俺はマフティーするだけだろう。 スマホゲームの如くそこに用意された選択技をタップして選び取り、俺自身を進めるしかないのかもしれない。

 

 

「…」

 

 

キャンピングカーの中に戻ったヘリオスは勉強を再開する。

 

俺はカボチャ頭をかぶりながら彼女を置いて散歩に出ることにした。

 

まだ夏空を引きずる九月の夜空だが星はしっかり見えている。

 

その中で輝く一等星はその名に恥じない輝きを放ちながら千波湖を見下ろす。

 

湖を歩き、先程の温泉旅館が見えた。 隠れた名館だった。 次はカフェかシチーを遠征に連れてこの場にまた来ようかと考えれば、もうマフティーはウマ娘のことに夢中だ。

 

カボチャ頭を被れば考えるのは担当ウマ娘の事だ。 やはりウマ娘の為にいるらしい、マフティーと言うカボチャ頭は。

 

これは二度と覆せない存在意義だろう。

 

ならこれからも理解した上で狂う。

 

 

「夏の大三角か…」

 

 

顔をあげる。

 

この世は現実だ。

 

呼吸もする。 食事もする。 痛覚もある。

 

でも元がゲームの世界だ。

 

なら、そこにロマンチスト(ご都合主義)があったとしたら誰も文句は居ないだろう。

 

画面をタップしたらその人(プレイヤー)はトレーナーだ。

 

この物語はウマ娘プリティーダービーとして展開する。 例え、俺がマフティーなトレーナーだとしても。

 

だから…

 

 

 

「また…会ったな」

 

「!!」

 

 

偶然と必然の境で出会い、物憂げな表情をしたウマ娘と出会うことだって、それはごく自然な事かもしれない。

 

ガンダムの作品で訴えていた。 有象無象の価値は同じ人間が烏滸がましく決めても、運命力というのは必ずそれぞれに備わり、人はその時の役目がある。

 

バナージ・リンクスが獣の可能性としてユニコーンガンダムのために用意された登場人物のように、ヒイロ・ユイが子犬と少女を何度も殺さなければならない残酷な役割を用意された登場人物だとしたら…

 

 

 

マフティーたらしめる俺はこの運命は…

 

多分…

 

 

 

 

 

__それは、求めている…のですか?

 

 

__そうかも…しれない。

 

 

 

 

 

 

用意された、俺だけの瞬間(イベント)なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都合が良いって?

 

残念だけど、それは仕方ない事だよ。

 

だって。

 

哀れで、憐れで、可哀な生き物ってのが…

ニュータイプ(マフティー)なんだからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の夜空まだ続く。

 

明るいから星は見えづらい。

 

でも"私"は見えやすい星だから、そこまで気にならない。 でも夏が終わる事で星が見えやすくなる代わりに夏の大三角は何処かへと消えてしまう。 それがなによりも嫌だ。

 

回り続けるだけで、どの季節でも存在するこぐま座が羨ましい。 冬の季節くらい星座ごと冬眠すれば良いのにアレをこぐま座と名付けた人は性格が悪い。

 

夏しか見ることができない一等星よりも存在し続けるなんて否定されたように感じる。

 

ランニングの足が止まった。

 

気づいたら息が上がって、足が疲れを訴える。

 

うるさい。

 

私は二人分あるんだ。

 

なら私が代わりに走るから、もっと動け。

 

そうじゃ無いと、意味がない。

 

 

 

「また会ったな」

 

「!」

 

 

 

けど、その足は強制的に止められた。

 

カボチャ頭の訪問者によって。

 

此処で彼を登場させるなんて、そんなシナリオを書いた奴は恐らくこぐま座よりも…間違いなく性格が悪い筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は俺がたまたまだ。 別に君を追いかけた訳ではない」

 

「それにしては、わかったように向かって来たような気がしたけど…」

 

 

あまり驚かない彼に、私は疑いながら睨む。

 

しかしエリートトレーナーとしてウマ娘慣れしてるのか、そんなの気にならないように同じ宇宙を見る。

 

私の足も完全に止まって休もうとしていた。

 

仕方ないから近くのベンチに座る。

 

 

 

「分かったように来たのは、星が訴えたからな」

 

「!」

 

「…って、言えたらロマンチストだろうな」

 

「……はぁ」

 

 

ほんの少しだけ期待した。

 

この人は掴みどころが分からないけど、それでもあのマフティーだ。

 

だからもしかしたらと希望を抱いたけど、簡単に裏切った。

 

 

 

「残念だが、星は語りかけない。 俺がマフティーだろうと聞こえるわけでもない。 そこに名前があるだけだ。 ……そう存在がたらしめるようにな」

 

 

でも私の思考を読むように後付ける。

 

やはりそうなんだと『現実』を見せるように。

 

 

 

「それでも、私は一人で戦って勝つの…」

 

「それは立派な事だ。 一人で戦える力を備えた生き物は強さと弱さを知りやすい」

 

「…」

 

「でも、君に質問されたことで一つ教え忘れてた事がある。 どうやら君は賢いウマ娘と聞いたから、これは聞かなければならなかった…」

 

「?」

 

 

賢いとは言われたことある。

 

二人分の力があるから。

 

でもそんな情報を知るのは家族くらいだ。

 

やはり、この人は見えて…いる??

 

それは『本物』なの?

一体あなたはどこまでがマフティーなの??

 

 

 

「『独りよがり』の対義語って何だと思う?」

 

 

 

賢い、イコールが、学力とは限らない。

 

一応……学力は前まで通っていた学園一番だ。

 

かと言ってそれを自慢したいとは思わないが、その前に私はまだ小学生だ。

 

中等部までまだ2年分の時間を必要とする年齢だ。 けどマフTは構わず尋ねる。

 

わたしは考えて……

 

 

 

「…………わからない」

 

 

「そうか。 答えは『現実』だ」

 

 

「!!」

 

 

分からないと素直に伝えて、即答される。

 

そして、胸を……

 

抉られる感覚だ…っ。

 

 

「本当なら『協調性』って言葉が対義語として正しい。 だがマフティーの場合は『現実』になる。 何故ならこれは()()()()()()()()()質問だからな」

 

「………っ」

 

 

マフティーに対する??

 

それは自身の使()()()に訴える事だ。

 

訴えると言うのは、肯定とはまた違う。

 

否定する部分があるから訴えるになる。

 

 

「独りよがりは過程から生まれる表現だ。 始まりは誰しも『コレ』だと思った者に目を向けて愚直になる。 それはそれが正しいのか? または独りよがっているだけなのか? それをどうかを判断する。 その独りよがりに対して否定し、対義させるとしたらマフティーたらしめるそれは『現実』になるんだ。 何故なら…」

 

 

 

やめろ。

 

やめろ。

 

 

 

「俺のマフティーは現実に無いからな」

 

「ッッ!?」

 

 

 

何故そんなこと言うの?

 

やめてよ。

 

何故私が貴方に質問したと思うの?

 

わたしのソレは…

 

だって私の名前は…

 

 

 

「あ、貴方はマフティーだ…!! あなたは…!!」

 

「ああ、そうだな。 けどそれはこのように無い非現実から生まれた存在だ。 名前がマフティーじゃなくても、エリンとか、ナビーユとか、別の名前になったかもしれない。 または日本語ではない、スーダン語、アラブ語、古いアイルランド語だって突拍子も無いところから生まれたかもしれない。 それを全部繋げたひどいメドレーのような名前にも出来たかもしれない。 だからマフティーは非現実から生み出した俺のなまえだ」

 

「………そんなの…」

 

「使命感として決壊してるとでも? バカらしい。 そもそも覚悟は名前じゃないだろ」

 

「!!!」

 

「たらしめる本義と、たらしめたい独りよがりから生み出して、原動力に変える。 名前は結局意味を込める為に都合よく生まれた」

 

 

 

__飾りだ。

 

 

 

 

「嘘だ!!!」

 

 

 

 

その声と共に千波湖は波紋を作る。

 

ザァーと流れる夏風と水面が揺れた。

 

 

 

「それは! それは! そんなのって!」

 

「独りよがりの意味を思い出せ。 俺は呼吸するように、それを口遊み、何度も俺は独りよがりだと自負する。 そう自覚してるからな」

 

 

 

彼はマフティーを否定する。

 

何故? あなたはマフティーであることを誇る。

 

苦しいけど、辛いと思うけど、それを辞めてたまるかと、私が尋ねても無いのにそう強言してたのに、何故そんな悲しい事を言うの??

 

ダメ、だめだ。

 

わたしはあなたと同じな…筈。

 

狂い方は違う。

 

でも方向性も、その名前を体に備えた意志と覚悟は間違いなくマフティー(使命感)から来ている。 だから私だって、先駆者の貴方に言ったんだ。

 

 

_わたしは、あの星を背負って生きていく。

 

 

久しぶりに笑えた。

 

マフティーたらしめる貴方に、自分のマフティー(使命感)を聞いてもらえた気がしたから、貴方に質問して、照らし合わせて、質問して、確かめて。 独りよがれるから出来るんだと。

 

それは自分にとって間違いじゃ無いと受け止めたい。

 

なのに、何故そこで『現実』を対義語にして否定してしまうの??

 

そんなの…

 

そんなの…

 

そんなの…

 

そんなの…

 

 

 

「ベ、ベガ、が、意味なくなるよぉ…!!」

 

 

「…」

 

 

「そんなの…そんなのって……! 自分が『そうしたい』が空っぽじゃないの! わ、私は、あなたに! マフティーとして戦う貴方に…! 同じかどうか確かめた! 偶然出会った展望台だけど、宇宙を見上げるスターゲイザーのように淡いご都合主義があるなら! それは星の下で導かれた筈だ! わたしはベガを信じてる! だから…!」

 

 

「…」

 

 

「だから……だから………悲しい事を言わないでよぉ……自分の名前を否定しないでよ……そんなの、本当に独りよがりなだけで救われないよぉっ…!!」

 

 

 

わたしは一人で戦う。

 

わたしは一人で走る。

 

あのベガと言う名前が私なら、それがマフティーのように背負わなければならないなら、そこに身を投じていける。

 

証明してくれた彼がいたから、わたしは確かになった筈だ。

 

 

分かってるよ、分かってるよ…

 

そんなの。

 

私は悲しい事をしてるって。

 

でも、じゃないと、私は生まれた事に意味が無いじゃないか。

 

私が産まれたのは、妹を取ったから。

 

だから、その分を走る必要があるんだ。

 

この名前に!

 

妹からもらった!

 

この名前に…!!!

 

 

 

 

「だから、証明し続けると言っている」

 

 

「……ぇ?」

 

 

「独りよがり? そんなの充分じゃないか。 結構で、上等じゃないか。 そもそも『独りよがり』ってのはな!

__マフティーにとって負の表現じゃない!」

 

 

「!!!」

 

 

 

初めて彼は声を荒げた。

 

まるで(たが)えるなとカボチャ頭の奥に潜む目が訴える。

 

 

 

「現実はあるさ。 否定されたさ。 笑われたさ。 蔑まれたさ。 苦しんださ! でもな? 俺は君に言ったよ」

 

 

 

 

 

 

『それは現時点での話だ。 まだ俺は終点に行きついていない。 報われたと思ったそれはもしかしたら、報われてなかった事になるかもしれない。 だからその意味が自分にとって裏切りで無いように、そうで有るように独りよがり続けるんだ。 俺はこの器でマフティーたらしめ続けられるまでこのカボチャ頭を被り続ける。何故なら…』

 

 

 

 

 

 

「マフティーはそうだから」

 

 

「ぁ」

 

 

 

 

答えはちゃんとあった。

 

マフTは、マフティーとして答えていた。

 

 

 

「名前は確かに大事さ。 生きてる間の大事なキーだ。 でも名に囚われる以上に必要なのは、それ相応に持ち合わせた志だ。 そうでなければ本当にただのお飾りになってしまう。 だから証明を続ける。 それが俺にとって本当であるように。 マフティーたらしめるというのは俺にとって独りよがるという言葉だ。 この世界に於けるマフティーって概念はそう飾られる。 マフティーはそこまで素敵な意味でも名前でもないさ。 意味さえ変えればなんとでもなる脆い象徴だから」

 

 

 

意味が分からなかった。 その名前は誇りじゃなかったのか? マフティーはそれだけ意味ある名前じゃなかったのか? なら、私は、マフティーたらしめようとしたこの意味は、なんだ? 飾りだったの??

 

 

 

「だから、マフティーと言えば良いだけじゃない。 そもそも、君はマフティーたらしめるための…ウマ娘か?」

 

「……」

 

 

 

答えられなかった。

 

なぜなら、彼マフティー本人に言われて、答え合わせが済んだから。

 

私の使命感は『マフティー』と表現するのに見合わな過ぎたから。

 

 

 

「君はまだマフティーじゃないな」

 

 

 

突きつけられる。

 

 

 

「入り口には至ってない。 理解したフリをして、理解はまだ足りていない。 君の現状はマフティーたらしめるソレに似ているだけ」

 

 

 

分からなくなる。

 

わたしは、分からなくなる。

 

もう、なにがなんだか、わからなくなる。

 

 

 

「たしかに重たいだろうよ…その命は。 幼少期から苦しんで来た。 よく頑張った。 そう思う。 俺は…君を理解するよ。 なぜなら俺だって同じように"そうだった"からな」

 

 

「!」

 

 

 

マフTは星を見る。

 

過去を嘆くように、小さくため息を吐いて。

 

 

 

「もう終わった事だけど、でも俺はマフティーたらしめるのはそうしてきた使命感を自分に裏切らせないため。 マフティーは続くよどこまでも。 何故なら今の俺はウマ娘のために狂いたいから」

 

 

 

彼はどこまでもマフティーだ。

 

マフTであり、マフティーでもある。

 

私から見て、完璧な有り様。

 

___背負っている。

 

 

 

「君はさ、俺が答えて『多分』って返したよな? ならまだ君はマフティーじゃない。 知ってるだけだ」

 

「っ、だったら…」

 

 

今から始めれば___!!

 

そう言おうとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

コ コ か ら が 地 獄 だ ぞ ? ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______ぅ、ぁ…」

 

 

また否定された。

 

でも、何も発せない。

 

 

何故なら重たい言葉だった。

 

重たい言葉が私達に絡み付いた。

 

引きちぎれない鎖が私を巻く。

 

幻聴も聞こえる。

 

そして身構え損ねた事で 死神 が見ていた。

 

その先で、こちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 

_マフティーなら、やります。

 

_こっからが地獄だぞ。

 

_やって見せろよ! シービー!

 

_マフティーが粛清する!

 

_俺は被り続けるよこのカボチャ頭を。

 

_それでも…! それでも……!

 

_そう聞きたいってマフティーは言うよ。

 

_俺は……俺は……おれは……オレは…

 

__マフT、またはマフティー

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄を見た。

 

 

地獄を__見た。

 

 

いずれ辿る…地獄を__見た。

 

 

 

 

 

「……マフティーは、なんなの…」

 

 

崩れた膝を小鹿のように立たせる。

 

マフTの元まで足を引きずり、服を掴む。

 

目に溜めた涙と共に、彼を睨む。

 

 

「答えた通り、意味や概念、または覚悟。 それはそこに狂うための勝手な使命感から」

 

「……嘘つき」

 

 

 

服を握りしめる。

 

ウマ娘のパワーで、この痛みを押し付ける。

 

 

 

「マフティーって、それだけ重たいから」

 

「………嘘つき…」

 

 

服を握りしめる。

 

初めて駄々を捏ねるように、振り絞る。

 

 

 

「ごめんな。 でもこの世界に於けるマフティーってそうだから。 それが許されるのは、ウマ娘に狂える者だけだよ。 君はただのウマ娘だ。 もしウマ娘でマフティーを名乗るならミスターシービーくらいにならないと、それは無理だな」

 

「…………うそ…つき…」

 

 

もう、握りしめる力は無い。

 

そのまま膝から雪崩れ落ちそうになって…

 

支えられた。

 

 

「でも、君はそれでも、ベガを背負って走る事を辞めてはならないよ」

 

「!」

 

「君はマフティーには成れない。 それは絶対だ。 でも君はマフティーじゃ無くても走れるだろ? あの一等星の下で幾らでも走れる。 そう続けて来たのはマフティーでもない、()()()だろ?」

 

「!、!!」

 

 

 

そうだ。

 

その通りだ。

 

私たちは、そうしてきた。

 

マフティーはわからなくても、わかったふりをしていても、始まりはマフティーでもなんでもない私からだ。

 

 

 

「デネブもアルタイルも翼を持った星だけど、翼のないベガだけは地を駆けるただ一つの織姫星だ。 なら君は常にそうである筈だ。 君はベガを背負っているんだろう? ならマフティーじゃ無くても、対義語の現実に怯えなくても、独りよがりじゃ無くても、君はベガのウマ娘なら…」

 

 

 

__なんとでもなる筈だ。

 

 

 

 

 

 

聞いたことない言葉なのに。

 

言われたことない言葉なのに。

 

それは来ることが分かったように受け止める。

 

マフティー(使命感)に染まろうとした私は本物のマフティー(独りよがり)に否定されたから、そうやって現実を突きつけられたことでやっと身構えることが出来たから、マフティーに応えられたソレを理解できるようになった、そんな気がした。 こころは、落ち着く。

 

 

 

「……マフT」

 

「なんだ?」

 

「私は、ベガのマフティー(使命感)じゃ無くても、あの一等星の為に走れる?」

 

「出来る。 マフティーにならなくても君はできる。 何故なら君は一人で強くなって来れたウマ娘だから。 そこに余計なモノ(マフティー)なんて必要無いだろう??」

 

「……そっ…か」

 

 

 

 

わたしは一人で強くなる。

 

存在意義を問われるから。

 

だから走って、強くなる。

 

独りよがるようにそこに身を投じる。

 

あの一等星(ベガ)を背負って、そして捧げる。

 

でも理解はしていた。

それはとても大変だと言う事を。

 

嫌にも賢いから、幼い頃から理解していた。

 

だから確かにしてくれるナニカが必要だった。

一人でも強く慣れる確かなナニカ。

 

 

その先駆者が___マフティーだった。

 

 

後ろ指刺されても、独りよがるカボチャ頭。

 

ガラスのロープを目隠しで歩く。

 

一人寂しい子供のような心で揺れてる。

 

でも、たらしめ続けて、本物にした。

 

愛バを 皐月賞 で叶えさせる。

愛バを 日本ダービー で1番にする。

愛バを 菊花賞 で栄光を飾らせる。

愛バを 有マ記念 で伝説に仕上げた。

 

一等星よりも、大きな宇宙で輝くソレは…

 

 

 

「でもマフティーに憧れてくれて、ありがとう。 そんなに目標にされるとは思わなかったよ。 汚れて狂い切った名前だけど、誇らしくもなるさ。 俺はマフティーだから」

 

「………否定された、けどね」

 

「こればかりは違うからな。 君には知って欲しかったから。 先駆者として…な?」

 

「…どうせ私は、子供ですよ…」

 

「それはいい事だ。 子供だからこそ夢中になれる気持ちはその時の特権だよ。 だから君らしさは辞めるな。 ベガは、背負って。 ただし…」

 

「マフティーたらしめるのはダメ…でしょ?…もう言わないで。 本人に直接言われたら諦めるしかないから。 安心して。 そこまで聞き分けないつもりは……無いから」

 

「少し言葉に詰まったように思えたがまあそれは良かったよ。 なら俺も君を信じれるように、信頼できる形を見せないとな」

 

「え?………ぁ!!!!」

 

 

 

そう言ってカボチャ頭を外した。

 

そこにはなんて事ない男性の顔だ。

 

 

 

「俺は、人間で沢山だ。 でもマフティーに狂う異端児だ。 ウマ娘よりも弱くて脆い生き物。 けれど俺はマフティーたらしめる為に、この器はそうする。 マフティーに独りよがり続ける素顔があるから『被る』が出来るんだよ」

 

 

 

そう言ってマフTはカボチャ頭を被る。

 

 

 

「今のは人として。 ウマ娘に狂おうとする一人の人間として君に歪な全面(フル・フロンタル)を…まぁ、素顔を見せたって事だ。 でも此処から先はマフティーに狂ってる存在だ。 これは使命感に駆けるカボチャ頭のマフT、またはマフティーだ。 故に君に…促す

 

 

「!、!!」

 

 

 

数歩だけ退きそうになった。

 

プレッシャーがマフTから感じ取られる。

 

再度理解して、認知する。

 

この人は、この人は…マフティーだ……

 

 

 

「君はあの一等星を背負い、あの一等星のために捧げる。 それは間違いないな?」

 

「あ、う、うん…」

 

「君は生まれた意味を示す為に、あの一等星と共に駆ける。 それは間違いないな?」

 

「も、もちろん……わたしはそうだから…」

 

「君は織姫星として地を駆けて、あの一等星のように戦う。 それは間違いないな??」

 

「ま、間違いない…!」

 

 

 

なに?

 

え? なに??

 

わたしは何を問われてるの??

 

 

 

「なら、マフティーは言うよ」

 

「…っ!」

 

 

 

 

息を呑む。

 

目の前の本物が言う。

 

 

 

「君を【スカウト】したい」

 

 

「!!」

 

 

「君はマフティーに成れない。 だが、君のマフティーたらしめたい使命感がソコにあるなら、飾られるだけではない名前が己をそうさせるなら、この中央のマフTに――――

―――― 背負わせろ

 

 

ッッッッ!!!!」

 

 

 

 

中央のトレーナーだ。

 

わたしはトレーナーにスカウトされている。

 

そしてマフティーに見定められている。

 

マフティーたらしめさせろと、促される。

 

あ、あ、あ、ああぁ!?

 

き、決めるの!?

 

わ、私は!?

 

何故こんな展開に!?!?

 

 

 

「マフティーは、求めれば、応える存在だ」

 

「!」

 

 

 

テレビで見た。

 

テレビで聞いた。

 

なんて事なく言った言葉。

 

冗談混じりなのか、本気なのか測れない。

 

でも、今、それは…

 

マフティーの言葉だから吐かれた!

 

ここにいる私に!

 

 

 

「……てか、面倒だな、コレ」

 

「…………へ?」

 

 

 

彼は口調を崩す。

 

プレッシャーも無い。

 

威圧感も消えていた。

 

すると首を回して、伸ばしていた背筋は力が抜ける。

 

え、なに…??

 

 

 

「まあ、俗に言うとマフティーに狂えそうなほど頑張れる逸材のウマ娘を見て、一人のトレーナーとしてスカウトしたくなった。 まあそういうことだ。 そこまで身構えるなよ。 別に死神が来るわけじゃ無いから」

 

 

 

やれやれのポーズをすると何故か左右に小躍りする。 どこかで見たことあるような振り付けだから、なんかバカにされてる??

 

 

「ッッー! あ、あのね…! いまわたし…!」

 

「迷ってくれたか? そりゃ良かった。 あまりトレーナーらしい事はしてやれない異端児だからさ…ちょっとそれらしく頑張った!」

 

「っっ〜!! ………はぁぁぁぁ……子供で遊んで楽しい? 楽しいの…?」

 

「楽しいとかじゃ無いけどな? まあ、マフティーはそんなもんだよ。 狂いに狂うけど、その前に俺と言う器があって成立する。 だからマフティーではなく、マフTとして君に話したいんだ」

 

「……それでスカウトを? もう少し、上手く流れを持ち込めないの…?」

 

「いや、まずはマフティーたらしめるその眼は心配だったから、警告もかねてちゃんと話したかった。 その後はなんとでもなる筈だと流れに任せたが…いま、 すごく俺はウマ娘に狂いそうになっている! そう! これは! 正しく愛だ…!」

 

「……」

 

 

携帯どこだったかな…

 

ちっ、置いて来たか。

 

 

「舌打ちするな、可愛くない」

 

「かっ!? ……と、とりあえず、スカウトに関しては…」

 

「それは本気だよ」

 

「!」

 

 

彼は再度カボチャ頭を外す。

 

重たいはずのマフティーは、軽く外す。

 

いや、でもそれは本当に重そうだ。

 

簡単に被れそうにない。

 

だからこのトレーナーはそれなんだと理解する。 だから私は本物の中央トレーナーにスカウトされていると再度身構える。 その眼はトレーナーであり、いつでもマフティーたらしめる事が出来る存在だ。 先程の言葉の通り求めたら、応えてくれる。 そう体現してこの世界にいる。

 

 

__マフTまたはマフティー。

 

この重みは計り知れないのかもしれない。

 

 

 

「さっきも言った。 一人で強くなる。 それは良いと思う。 立派だ。 素敵な強さだ。 でも中央ではそうは行かない。 嫌でも"現実"を見る」

 

「!」

 

「コレは独りよがるとかじゃない。 中央はトレーナー無しでは絶対ッッと言って良いほど夢は叶えられない場所だ。 コレは俺がミスターシービーやマンハッタンカフェ、ダイタクヘリオスやゴールドシチーと言ったウマ娘を育ててるから言える事だ。 絶対に甘くないことだと、中央を目指す君に言うよ……こっち側の先駆者としてな」

 

「っ!」

 

「別にトレーナーは俺じゃなくても良い。 俺以外にも優秀なトレーナーは中央に多い。 でも一等星を背負って戦い抜くなら、君はその想いを誰かに託せる人に預けるんだ。 ミスターシービーはそうだったから」

 

 

憧れを崩すような言葉。

自分の知る範疇の現実に、現実を被せて喉を詰まらせる。

ひどい大人のやり方だ。

 

けどっ…マフTが言うならそうなのかもしれない。

何より…

 

マフTであり、マフティーであるダービーウマ娘の名前を出されたら私は志すその脚が止まりそうだ。

 

 

 

「ッッ、せこ…い!」

 

「ひどいやり方なのは分かってる。 子供相手に驕り高ぶっていることも。 俺もこんなの間違ってると思う。 でも君は理解力の高い賢い子供だから濁さないよ。 忖度なく今の君とは目線の高さを合わせてあげない。 俺は中央のマフTで独裁者を意味する王だから」

 

「っ……マフTのやり方、間違ってるよ…!」

 

「だな。 でも俺からしたらいずれスカウトするつもりだ。 遅かれ…早かれな。 それなら、今のうちにその一等星を背負うウマ娘の星は俺が刻む。 だが君のマフティー性はこのマフティーが背負う。 それは紛れもなく俺だけにしかできないことだからな」

 

 

 

オンリーワンって言葉にロマンスは感じる。

 

星を眺めるくらいだ。

 

ただ一つの星に、愛しみだって感じる。

 

だから、この言葉を言えるのはマフTだけ。

 

それを実行できるのはマフティーだけ。

 

私がやろうとしたマフティー(求める)を、彼がマフティー(応える)と言うのだ。

 

それは、此処にいる彼だけ。

 

何故ならこの世界でマフティーするのは。

 

彼だけだから。

 

この人だけだから……

 

 

 

「…良いよ……いいよ…! そこまで言うなら…! すごく腹立たしいけど…! マフティーに求めるから…!」

 

 

 

否定されすぎて、少し苛立ちがある。

 

褒めてくれたけど、でも一人じゃ無理だとハッキリ言われた。

 

でもあの一等星の為に走る私を、彼は尊重してくれた。

それは、間違いなく嬉しかった。

 

マフティーたらしめるのはダメだと言った。

 

これは悲しかった。

 

でも存在意義は否定しない。

 

私の頑張りを、立派だと言ってくれた。

 

もちろん、気持ちは変わらない。

 

恐らく一人で強くなると刻んだこの覚悟に歪みはない。 けどそれを一緒に背負うと勝手に自惚れるマフティーがいるなら、それは非現実から放たれた存在の言葉だから、私自身の意味はコレからもずっと変わらないだろう。 それは約束された気がしたから、この一等星を彼に言うべきだろ。

 

 

 

 

アドマイヤベガ

 

 

 

初めて、彼に名前を言った。

 

 

 

「わたしは、一等星の名を背負ったウマ娘」

 

 

 

背負い続けるこの私達の名を。

 

 

 

「あの子の為に私を証明し続ける。 私の為にあの子に勝利を捧げる。 だから私達を…!」

 

 

 

彼はカボチャ頭を被る。

 

マフティーがいる。

 

なら……求めろ。

 

この体に刻まれた一等星と共に。

 

 

 

「ダービーウマ娘にし…………いや、違うッッ…!!」

 

 

 

ここまで荒ぶった心は久しぶりだ。

 

でも、苦しくない。

 

こんなにスッと眼を見開けて、応えて欲しいと思えるのは!!

 

この人が本物のマフティー(独りよがり)だから。

 

だからマフティー!

 

本物になれる貴方がソコまで狂えるなら!!

 

そうたらしめれると言うのなら…!!!!

 

 

 

「私達をダービーウマ娘にしろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

___やって見せろよ!マフティー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は呪いだ。

 

マフティーを動かすキーだ。

 

だからカボチャ頭が私達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけなので、噂の飛び級です」

 

「「「 このウマたらし…!! 」」」

 

 

 

トレセン学園の奥に構えるトレーナールームで声が広がる。

 

 

 

「あと最近その単語を調べたけどそうじゃない!!断じてな!!」

 

『マフティーのやり方、正しくないよ』

 

「(お前本当それ好きだよな?)」

 

『(ファミチキください)』

 

「(コイツ!? 直接脳内に!?)」

 

 

 

無敗の三冠バ、パリピウマ娘、尾花栗毛の有名人、その3人と牽制しながらも少し視線をずらして見えない何かに訴えてるのはマフティーならではなのか? やはりこの人は色々と狂っている。

 

 

「ま、そんなマフTに惹き寄せられたアタシが言うもんじゃないけどね。 でもウマたらしなのは確定だから。 どうしようもないね」

 

「よく喋る」

 

「っ!!だー、かー、らーぁ!! それ言うなってんの! もぉぉぁぁぁお! マジでうざっ! うっざい! もう! うざすぎる! この品質改悪品バカボチャ頭!」

 

「起床難で気性難で希少難も負けてないぞ」

 

「だぁぁぁァァァァァァ!!!」

 

 

 

雑誌の印象が全く無くなる尾花栗毛のウマ娘、ゴールドシチーは頭を抱えて叫ぶ。 よく口喧嘩してそうな関係に見えるけど仲は悪くない。 むしろ許し合ってる関係だからこそ出来ることなんだと見えた。

 

 

 

「でもウチが宿題に悪党苦戦してる間にナンパってたのは事実よね?」

 

「人聞き悪いな。 スカウトだよ。 強引にしたのは認める。 あと悪党苦戦じゃなくて悪戦苦闘な?」

 

「悪党なうまうまウマたらしパンプキンにピッタリですしお寿司」

 

「でも寿司じゃないけど刺身の鯉は美味かったろ?」

 

「それはマジもんのあざまる水産物!」

 

 

パリピギャルウマ娘代表格のダイタクヘリオスはチョロそうに、もしくは調子良さそうに受け答えする。 ある意味頼もしそうだが多分だけど私が一番苦手とするタイプだと思う。

 

 

 

「とりあえず新人歓迎として取っておいたお土産頂こうか」

 

「賞味期限大丈夫かそれ?」

 

「焼けばいけると思う」

 

「干し芋を焼くのか。 なるほど」

 

「ね? 最高でしょ!」

 

 

この中で唯一の高等部かつ無敗の三冠バであるミスターシービーだが、皆と変わりない雰囲気で楽しみ、そしてさり気なくマフTと距離を狭めた状態での尻尾がペチペチと物理的な愛嬌を示す。 まるで猫のようだ。 猫味ある顔だから余計だ。

 

 

 

「飲みますか? リラックスできますよ」

 

「え? あ、ええと…」

 

「ここはとても賑やかです。 静かすぎる私はそぐわなさそうな雰囲気に感じましたが、でもそんな事は有りませんでした。 ここはとても心地の良い場所です。 だから安心してください。 それでも何か不安がありましたら遠慮無く言ってください。 わたしは良く此処にいますから」

 

「あ、はい、ありがとう…ございます」

 

 

日本ダービーの中継に映された観客席で見たことあるマフティーの二人目、マンハッタンカフェはもう疲れそうになる私に声をかける。 とりあえずこの先輩とすぐ仲良くなれそうな気がした。

 

 

 

「ま、とりあえず干し芋は賞味期限とか関係なく焼くとして、勧誘祝いを始める。 さあ、グラスを待て!」

 

「「ウェーイ!!」」

 

「あっはは…元気ありすぎ、先輩達」

 

「とりあえずニンジンジュースをどうぞ」

 

「あ、はい、ありがとうございます…」

 

 

 

注がれたグラスを持ち、同じ高さに合わせる。

 

 

 

「彼女の目標はダービーウマ娘だ。 マフティー性の高い志。 挑める覚悟。 彼女の強さをこの日にマフティーたらしめることを、このマフTがここで再度誓う」

 

「!」

 

 

1ヶ月前に、千波湖で言われた言葉が再臨する。

 

マフティーのその姿勢と、狂える言葉が、またあの日を思い出させる。

 

夏が終わって10月。

 

もう夏の大三角は見えない。

 

でも……

ああ、今、わたしは、この場所にいる。

 

私の代わりにマフティーたらしめようと、ウマ娘に狂えるトレーナーと共に今この場に立っている。

 

 

「…と、まぁ、カボチャ頭だけに息苦しいからここまでだ。 マフティー性の高い飛び級生としてトレセン学園に来た一等星の彼女に!」

 

「「「「かんぱーい!!!」」」」

 

 

 

 

騒がしいのは苦手だ。

 

静かなところが好きだ。

 

でも、それを併せ持つ、マフTとマフティーだからその居心地の良さはもうすでに感じていた。

 

なるほど、ウマたらしの意味がわかった。

 

たしかに彼は、狂えるトレーナーだと感じた。

 

ここなら、私らしさで背負える。

 

この名前と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前

ア ド マ イ ヤ ベ ガ

 

宇宙の一等星 に誓って決めた…!!

わたしは、あの星を背負って生きていく!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

G  ゴールドシチー

 

U

 

N

 

D  ダイタクヘリオス

 

A  アドマイヤベガ new‼

 

M  マンハッタンカフェ

 

 

 

 

つづく

*1
諭吉

*2
ガチャは悪い文化

*3
Zガンダム





なんかごちゃごちゃしてる……?
まあ、つまりですね。
《要約すると》

A「星の声が聞こえなくても!マフティーたらしめることで報われるなら…!」

T「おい、その先は地獄だぞ? 背負った使命感にせよソコに投影するな。君にとってマフティーのやり方は正しく無いよ」

A「否定しないで!マフティーたらしめた貴方が言っちゃイヤ! 私にそんな事を言わないでよ!悲しいよ!!」

T「君はマフティーとしての在り方で狂う必要なんか無いから。 強き一等星として普通に走って」

A「それで対義語(現実)に挑めるの!?私は先駆者の貴方で強くならないとダメなの!」

T「ならお前の使命感(マフティー)! 俺に預けさせろ!ぶっちゃけ君のその強さに惚れてんだよ!だから黙って俺に着いてこい!アドマイヤベガ!」

A「トゥンク……」

↑こう言う事。

NTばりの運命力(ロマンス)を勝手に感じた結果として、小学生相手にマフティー(ウマ)たらし(める)する事で、スカウトさせてしまうヤベーヤツの話しだったと言うことであり、小さな女の子を相手に惹かれてしまったマフティーってシャア・アズナブル(ロリコン)の亡w霊wじwゃwなwいwかwっwてwなw…の巻でした(暴論)

そんな訳で【A】は『アドマイヤベガ』で決定です。 あとA枠をアグネスタキオンで外した方はモルモット君になる権利を与えるわ。 なーに大丈夫さ。 すこし体が7色に光るだけさ。

あと『飛び級』に関してはニシノフラワーやスイープトウショウがそうじゃ無いかと考えてます。 実力主義の中央だから走りさえ認めさせれば気性難だろうが許される場所じゃ無いかと考えてる。 秋川やよいのことだしなんとでもなるはずだ!で、やっちまいなよそんな固定概念なんかで許しちまうからヘーキヘーキ。


ちなみ裏話。

当初(9/30)予定したA枠は"アイネスフウジン"でした。
彼女が前任者の頬を殴った展開だった…が。
学生の関係上無理なので出すのをやめました。
(てか暴力はガイドラインにスレスレやぞ…)

長くなったけど、異常で以上です。

ちょっとだけ今回の展開に自信ないのは内緒…

メジロドーベルは引けましたか?(震え声)

  • 単発で引いた。
  • 10連で引いた。
  • 20連以上で引いた。
  • 100連以上で引けた……
  • 爆死ッン!バクシーン!!
  • 親の顔よりも見た天井。
  • 今回は見送り(差しのコツ)

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