やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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お ま た せ

今回は短いです(スマーン!)



第31話

 

 

「はっ…!はっ…!はっ……もう、一本!」

 

 

走る。

 

学園のターフを走る。

 

秋空の下で芝を蹴る。

 

何故なら来週はマイルCS。

 

楽しみだけど、大事な、大事なレース。

 

マフTと約束した、三冠を得るためのレース。

 

しっかり温めて、仕上げないとならない。

 

 

「はっ…!はっ…!…まだ、行けるっしョ!!」

 

 

 

だからこうして自主練も怠らない。

 

でも前まで怠っていた方だ。

 

週2だったのが、週6ペースくらい。

 

だから自主練は最近になって多くなった。

 

勉強は怠け癖あるのに、走りは真面目だ。

 

皆は私を見て「変わったね」と揶揄ってくる。

 

かもしれない。

 

ウチはそこまで勤勉じゃない。

 

でもマイルCSに()ける想いはマジだから。

 

そのために温める。

 

 

「?」

 

 

視線を感じたので、周りを見渡す。

 

すると誰かが見ている。

 

誰だろうか?

 

マフTでもシービー姉貴でもない。

 

カフェちんでも、シチーんでも、アベちんでもない、知らないウマ娘。

 

いや、違う、逆だ。

 

知らない人はいない。

 

むしろ誰もが知る、有名なウマ娘とエンカした。

 

 

 

「あら、もしかしてお邪魔虫かしら?」

 

「!」

 

 

 

ウチの憧れ(シービー)と何度も戦ってきた日本最強を誇るウマ娘。

 

 

「マ、マルゼンスキー?」

 

「ええ、そうよ。 後輩ちゃんがすごく元気だったから勝手に見てたわ。 もしかして気が散ったかしら? ふふ、ゆるしてちょんまげ」

 

 

最強で最恐の走りを見せるスーパーカー。

 

海外に行くことが決まった日本のウマ娘。

 

 

「えっと、こんにちは……ですね?」

 

「いいのよ、そんな畏まらないで? あなたらしくて良いのよ、次世代のマイラーさん」

 

 

マルゼンスキーは楽しそうに笑う。

 

 

「じ、次世代のマイラー…?」

 

「あら、知らないの?シービーちゃんが言ってたわよ。ダイタクヘリオスは次世代のマイラーとして名を馳せるウマ娘だって」

 

「!」

 

「高く評価してたわ、あなたのこと。だから海外へ行く前にこうして一度あなたを見てたかったの」

 

「えっと! その…こ、光栄…です、ます!」

 

「ふふふ、畏まる必要なんて無いわ。ええとパリピ語だっけ?あざまる水産って、イケイケじゃないの!うぇぇぇぇい!」

 

 

高等部の2年生が子供らしく盛り上がる。

 

けど手が『∞』を描くように動いている。

 

あと声のトーンもなんか違う。

 

パリピって言うより雰囲気が激マブだ。

 

なるほど、これがマルゼンスキー…

 

 

「あの、ウチのこと、本当にシービー姉貴が?」

 

「うん、本当よ。あなたのことすごく褒めてたし、すごく期待してたわ。自分に負けないくらい面倒で、でもその分誰よりも一途で、とても心優しいウマ娘だって」

 

「ぁ、えっと、そ、そうなんだ……えへへ」

 

「ふふふっ」

 

 

そうか、シービー姉貴がそんなことを。

 

そんな風に褒めてくれたのは初めてだ。

 

素直に嬉しくなる。

 

 

「それでヘリオスちゃん、私も走って良いかしら? 実は走ることが目的で来たのよ。海外へ飛ぶ前に最後くらいはね?そしたらあなたがいたからつい眺めてちゃった」

 

「え? あ、はい! どうぞどうぞ!」

 

「ふふふ、ありがとう。 あ、せっかくだから並走しましょ?」

 

「うぇ!?」

 

「お姉さん、後輩ちゃん見ると嬉しくなっちゃうの。 一緒にかっ飛ばさない?」

 

 

普通ならパリピとして家紋(カモン)ベイビーだけど、初対面かつ最強を目の前にして戸惑う。

 

あと急なお誘いは激マブの特権。

 

だがここで断っても、怒らないと思う。

 

すごく優しい先輩なのは知ってるから、あまり気にしなさそうだ。

 

でも…

 

 

「ヨロ、たん、うぇぇーい!」

 

「いぇぇぇい!」

 

 

せっかくのチャンスだと思う。

 

この人の…

G1ウマ娘の走りを近くで見れるのは。

 

だからパリピ語で誤魔化しながら、緊張を紛らわせて、並走することにした。

 

 

 

 

そして、走った。

 

マルゼンスキーは早かった。

 

ミスターシービーか、それ以上だ。

 

このスーパーカーは、本物だった。

 

 

「並走は楽しいわね! 心躍っちゃう!」

 

「はぁ…はぁ……げっほ…」

 

「あー、でも。 あまりヘリオスちゃん走るとマフTさんに怒られちゃうかしら? 正直彼には頭上がらないもの」

 

「え?あ、その…大丈夫です。 マフTがインしてるなら全快するので」

 

「そう? でも少し休憩しましょ」

 

 

そう言って芝の上に座る。

 

なんとか追いつこうと走って、でも追い付かなくて、ウチはこんなに息が上がってるのに、マルゼンスキーは息一つあげず額にほんの少しの汗が残っているだけ。

 

実力の差は歴然。

 

これが中央で最強のウマ娘…

 

 

 

「スタートダッシュ、とても滑らかで良いわね。代わりに直線上の加速力にムラがあるけどそれは多分疲れてるだけで、コンディションが最高なら先頭を維持してる限りシニアでも通用する。なにより最高速度を出してからの減速が全くない走り。ふふ、良く集中してる証拠よ」

 

「え?」

 

「だから、もっと早くなれるわ」

 

「!!!」

 

 

アドバイスを貰った。

 

唐突で驚いたけど、最強のG1ウマ娘が言うのならそれは間違いじゃない。

 

もっと早くなれる。

 

その言葉に、心臓は早まる。

 

彼女は続けた。

 

 

「力みを捨てて、でも前へ。そして前へ走る。恐れずに、荒ぶらずに、でもウマ娘としての走る楽しさを欲する。それが逃げとしての強み。目の前の景色を譲らない。それが逃げとしての強さの秘訣。後方でコレは己のレースだと周りに知らめたい独占欲とは違う。逃げは前へ、前へと進み、先頭を欲する。楽しむのはまず自分であり、周りについて来い、お前が付いてきやがれ。そう訴えるように掌握し、全体を無理やり率いて…1着を食い破る」

 

 

ウチはそこまで賢くない。

 

飛び級のアドマイヤベガにすら劣る。

 

地頭は良くない、ノリで生きている。

 

でも、最強の言葉は、わかる。

 

 

 

スピードイーター…それは共に走るウマ娘の速さを喰らうプレッシャーラン。それはマイラーとしての精神力と加速力で距離感覚を狂わせる」

 

「スピードイーター…??」

 

「ただ全力で走る技じゃないの。これは後方のウマ娘を無理やり追いつかせようとするプレッシャーラン。でもそのかわり自身の走りと、その強みを忘れずターフに乗せる必要があるわ。どれだけ己の持てる強さを『促せる』かに懸かっているの」

 

「……その、ウチにできるかな…」

 

「マフTのウマ娘なら、出来るわ」

 

「!」

 

 

 

 

断言する。

 

 

 

 

「ミスターシービーが出来たもの」

 

 

 

 

 

__追いついたよ!マルゼンスキー!!

 

__あんたが正しい(絶対)と言うのなら!

__アタシが勝って描いてみせる!!

 

__勝つのはアタシだ!!

__そしてマフティーだァァァァ!!!

 

 

 

 

「プレッシャーが襲いかかった。 感じたことがないほどの憤りが後ろから突き刺さった。 距離適正なんて関係なく、ただ一番前は許さないとばかりに促されてしまった。 その先を諦めたのなら、譲らせないって」

 

「…」

 

「ミスターシービーはそれだけの想いを乗せて私に勝ったわ。マフTの想いと、マフティーとしての思い。そのレースに乗せた」

 

 

近くで見ていた。あんな風に走るミスターシービーを初めて見た。

 

絶対に勝ちたい。

 

キミと(マフティーで)勝ちたい』を全身全霊に乗せた1着を忘れない。

 

憧れは頂きへと登り、もっと憧れになったから。

 

 

「あなたの近くにはマフTがいる。 なら彼の想いを何か一つでも良い。 あなたの『キミと勝ちたい』を全身全霊に乗せる。 そのターフに()ける想いを他のウマ娘の目に見せ付け…いや、ヘリオス(太陽)なら文字通り焼き付かせるのよ」

 

 

 

今の自分にそれができるのだろうか??

 

ノリとパリピでできる要素ならためらわない。

 

なんでもチャレンジャーに盛り上がる。

 

でも、G1としての駆け引きでそれができるのだろうか?

 

このダイタクヘリオスにできるだろうか?

 

 

「G1レースは気持ちで負けないで。 自分も皆も強いのは当たり前。 なら残ってるのは気持ちだけの勝負。 そこに負けなければヘリオスちゃんは必ず勝てるわ。 だって…」

 

 

 

__それで負けを知ったお姉さんが言うもの。

 

 

 

G1ウマ娘だからこそ、その言葉は重い。

 

敗北を知っている最強が笑って言うんだ。

 

笑って、その記憶を楽しそうに…嚙み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガコン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートが開く。

 

レースが始まれば、そこはウマ娘の世界。

 

日本ダービーで、誰がそう言っていた。

 

確か、それは憧れがそう語っていたはずだ。

 

ウマ娘と言う、想い詰まった走りがあるから。

 

それが、求めている冠なら尚更だろう。

 

 

 

 

『さぁウマ娘が走った!!先頭はダイタクヘリオス!だが、ペースが早い!!』

 

 

 

 

その場を走り去る、横暴な駆け足。

 

または"急ぎ足"と言った方が正しいだろう。

 

掛かったように駆け行く。

 

いや、実際には掛かっていた。

 

そのウマ娘は、とある約束を乗せているから。

 

過ちを反省して、誇るために駆ける。

 

必死ではなく、全力で走ることを決めた。

 

3つを得るために、そのトレーナーのために。

 

そのウマ娘は、前へ、前へと、進む。

 

 

 

 

『先頭はダイタクヘリオス!!だが、どんどん飛ばしていく!!』

 

 

 

 

 

走るための本能が、ターフに浸透する。

 

それだけ集中すれば、吐く息は染まるだろう。

 

渇望の中で、本能が周りを促す。

 

絶対に前を譲るまいと、心が荒ぶる。

 

その背中は遠く、内側は狂走に飢えている。

 

そう思わせるような、向かい風が襲った。

 

だが…

 

 

 

 

『第四コーナーを曲がった!!直線勝負に入った!!後続の子は…4バ身後ろだ! これは間に合うのか!?』

 

 

 

 

それが向かい風だけならどれだけ良かったか。

 

何故だか、目が眩むような熱さを感じた。

 

日差しは後だ、目の前に日射は差さない。

 

差すのは私達、追いすがるウマ娘。

 

なのに、何故こんなにも照りつくのだろうか?

 

答えはすぐに分かった。

 

コーナーを曲がり終えた先に待っていた。

 

太陽神 の 日の出 だったんだ。

 

 

 

 

『残りの200メートル!後続はなんとか追い縋る!!』

 

 

 

 

このレースに弱者はいない。

 

王者を求めて強者が集った。

 

賭ける夢も、駆ける脚も、描ける眼も。

 

全部込められた京都レース場を演じる。

 

でも、相手が悪かったのかも知れない。

 

 

何せそのウマ娘は……

 

___マフティーを背負う太陽神だから。

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 

カボチャ頭のトレーナーと太陽神のウマ娘はすれ違う。

 

 

ゴールの白線を切り、いまはここに示した。

 

マフティー() に並ぶ チャンピオン(王者) が誕生する。

 

 

 

それはまさしく…

 

 

 

 

 

__お前はヘリオス(太陽神)だろ!

__マフティー(王者)に並ぶ名を持つウマ娘だろ!

 

 

 

訴えかけられて、そう促されて。

 

誇れる自分を示された。

 

そして今日、やっと果たされたのだから。

 

 

 

 

「誇らしく思うさ…」

 

1着と載ったその名を見て、彼は呟いた。

 

 

 

 

 

 

マイルCSの王者。

 

その名はダイタクヘリオス。

 

後に、3つの冠を勝ち取る三冠の王者。

 

そう呼ばれるのは先の話の記録である。

 

 

 

 

 

 

__やって見せろよ、ヘリオス!

 

__やって見せたんよ! マフティー!!

 

 

 

 

マフティーとして。

 

またはマフTとして。

 

二人は誇れる約束を果たした。

 

 

 

つづく




※あくまでイメージです。

無敗の三冠の因子
↪︎マンハッタンカフェ

最強の激マブの因子
↪︎ダイタクヘリオス

次世代に走りを託すって素晴らしいね。
ではまた

ファインモーションは引けましたか?(震え声)

  • 単発で引いた。
  • 10連で引けた。 
  • 20連以上で引けた。 
  • 100連以上で引けた…
  • 爆死ッン!バクシーン!!
  • 親の顔よりも見た天井。
  • 今回は見送り(抜け出し準備のコツ)

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