やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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第34話

「んー、楽しかったー!」

 

「マフT!また後でエンカするからヨロー!」

 

 

被っていたカボチャのお面を外し、真っ黒のジャージから制服に着替えて控室から出て行くミスターシービーとダイタクヘリオスの二人。

 

控室の入り口を見張っていた俺は手を振って二人を見送ると、先程使っていた舞台は次の催しが始まったことで再び歓声が広がる。

 

司会のサクラバクシンオーの澄んだ声が響き渡っていた。

 

 

「予想はついてたが、やはり今年もやり遂げてしまったか…」

 

 

そう、今日は学園祭だ。

 

そして20分前までマフティーダンスを披露していたところだ。

 

しかもたづなさんが許したのか今年はテレビ局のカメラまで回される始末。

 

そのうちどこかで放送されるんだろう。

 

マフティーの熱はまだ冷めぬ世間らしく、その証拠として観客の数も去年に比べて倍ほど多かった。

 

その上、見にきた人達はカボチャのお面やカボチャ頭を忘れずに装備して、黒いジャージを羽織って完備する者まで。

 

しかも黒いタイツ姿の猛者達も現れたり、更にその姿でキレ良く踊る変態が現れたりと今年のカオス具合が半端なかった。前世の倫理観からすると控えめに言って頭おかしいと思う。

 

お陰でミスターシービーは笑い堪えるのに必死であり、ステージから降りて控室に戻ったあと我慢が解かれたのと同時に笑い転げていたのは何も言うまい。

 

ダイタクヘリオスもノリノリな雰囲気に満足だったのか一番やり切ったような顔でマフティーダンスを終えた。その後もバイブスは上がったまま仲間の元に合流へと駆けて行った。なんとも切り株でお嬢様がルアっ(釣れ)たらしく、その新顔を連れて仲間と共に学園祭を回るらしい。

 

 

ちなみに踊った俺は……色々と疲れた。

 

ツッコミどころ多いけど考えるのをやめた。

 

NTなら考えるな、感じろ。

 

 

ちなみマンハッタンカフェは去年と違って音響の手伝いはせず、どこかでひっそりと喫茶店を開いてる。

 

アドマイヤベガもそのお店のお手伝いをしている。

 

カフェはともかくアヤベに関してはせっかくの学園祭だから回れば?と提案したが、あまり興味が無いみたいで、この騒がしさから逃げるように喫茶店のお手伝いをしている。

 

まあ、本音を言えばマンハッタンカフェの側から離れたくないのだろう。

 

静かな場所で一人が好きなアドマイヤベガのことだ。人混みが苦手で、ひっそりと構える喫茶店に居心地を感じてるらしい。あと純粋にマンハッタンカフェの側からあまり離れたくないのがポイントだろう。マンハッタンカフェもそこは理解して、敢えて口には出さず、飛び級生の彼女を優しく見守っている。

 

そんな二人にイマジナリーフレンドは微笑ましそうに見守っていたが、それでもカフェしか勝たんらしいが。年明けでもコイツは変わらないらしい。

 

あとゴールドシチーはちょっとしたウマ娘の美容室を開いたが、日本ダービーの出走を表明したことで人気店になったらしく、彼女のようなモデルさんに憧れる同じウマ娘達の後が絶たない。来店したウマ娘はマネジ力も高い彼女の手腕にて髪や尻尾を綺麗に手入れしてくれるだろう。

 

そんな感じにマフTの担当ウマ娘はそれぞれを楽しんでる事にして、俺はマフティーダンスで使った黒いジャージやカボチャのお面をカゴの中にぶち込み、トレーナールームまで運んでからスプレーなど吹きかけて洗浄したあと、一息つくためにポットからお湯を出して紙コップに注ぎ、ゆっくりお茶を飲む。

 

 

「いてて、足が…」

 

 

それはともかく疲れた。

 

正直に言う。

あの踊り、マジでキツい。

 

元が倍速なので、無理なく踊れるようにアレンジはしているがそれでもアレは大変だ。

 

しかも踊りに関しては断片的ではなく、曲の始まりから終わりまでしっかり振り付けを新しく入れて完成させた。

 

曲名が『閃光』だけあってカッコいいため、名前負けしないよう恥ずかしくない程度にかっこよさも追求している。

 

もちろんあの奇妙さもリスペクトする精神でウマ娘の世界のマフティーダンスを作ったが、かっこよさと奇妙さの緩急に振り回されるため何気に難易度が高い踊りになってしまった。

 

踊りに関してもベテラン級な東条トレーナーでさえも悩ます難しさに仕上がる。

 

しかしこの奇妙な難しさとカッコ良さが上手く調和しているマフティーダンス(閃光)は学園内で人気になってしまい、ウマ娘もトレーナーも問わず、マフティーダンスは習得困難な踊りとしてむしろ熱が入って皆が必死だ。

 

もちろんあの踊りは世間でも人気であり、特にハロウィンは全国のマフティーファンが活性化して踊り出すのは慣れた光景であり、今となっては有名人もマフティーダンスの動画に出してマフティー性を供給してる始末。

 

しかも非公式なのにURAにマフティーダンスの採用を促す運動があったりと、改めて「彼は危険人物だ」としてURAから認識された。

 

ここで原作やらなくて良いから。

 

それを聞いたミスターシービーは他人事のように笑って顎が外れ、パリピも勝手に盛り上がり、マフティーガチ勢の秋川やよいと駿川たづなも同じような感じに盛り上がる。

 

なんならトレセン学園もマフティーがまたURAに影響を与えたと勝手に誇らしくなる始末。人柱にされた結果がコレだよ。俺の立ち位置は今年もそのままらしい。

 

しかもゲームセンターにあるダンスゲームとかでも高難易度として採用される噂も出たりしている。世間はどれだけマフティーの事好きなんだよォ!?

 

そのためURAでもトレセン学園でもなく俺の許可を得る必要があるらしい。

 

実際に今年に入って話が来たから困った。

 

それでパイプとして動く秘書のたづなさんも悪ノリしているのか…

「(許可を)やっちゃいなよ!そんな踊りなんか!」と目で訴える。後ろ盾が無くなった。

 

(そのため俺に味方がい)ないです。

 

 

 

「そういやこの後、クイズ大会を手伝う予定だったな。 まだ早いけど向かっておくか」

 

 

飲み干して空っぽになった紙コップを捨て、トレーナールームを出て廊下を歩く。

 

ここら一帯は広場から離れて静かだ。

 

先程の俺と同じくトレーナールームで休んでいるウマ娘が数人ほど潜んでるようだ。

 

 

「あ、俺、そういや…」

 

 

先程の飲み物を思い出して、カボチャだけ少し頭を抱える。

 

壁越しに伝わる高い質量…まあ"ウマソウル"と言うべきだろう、カボチャ頭を被っていると勝手に伝わってしまうウマ娘の強い魂。

 

ウマ娘に狂うマフティーの象徴(カボチャ)を被っていることが原因だ。

 

あと 緑茶 を飲んだことも原因の一つ。

 

マンハッタンカフェが淹れるコーヒーには劣るが、緑茶はどうやら前に飲んだジンジャーエールよりマフティー性の高い飲み物判定のようでNTの能力も昂まってしまう。理由は分からないけど心が落ち着くからだろう。

 

__宇宙の心は和だったんですね!

 

そう言うところやぞ、カトル。

 

 

そのため強い魂__まあ先程、言ったウマソウルに意識が惹かれまう訳だ。

 

ニュータイプ同士が惹かれあうように、ウマ娘に狂うマフティー(カボチャ頭)を被ってる事で、強いウマソウルに惹かれてしまうマフティーが完成してしまうだけの話。

 

これは究極のごっこ遊びに活かせるから練習前に皆でコーヒーやお茶を呑んだりして、マフティー性の感受率を高める。

 

ちなみにこれはドーピングじゃない。某携帯獣玉でカテキンはドーピングアイテムになるけど、俺は正当なる王(マフティー)として、真っ当な指導者(トレーナー)として否定する。

 

いやマフティーは真っ当とは程遠いけど、でもドーピングは絶対にしないぞ??

 

しかし気を抜くと余計な情報が入り込むあたり面倒なところもある。カテキン一つでゼロシステムできるのは流石に茶葉生えるなぁ。エピオンとかいらなかったんや。

 

てか飲み物で強化人間(ニュータイプ)して、それで質量の高い物を見定めるとか俺はギュネイか何かかな?

 

どうやら緑茶一つで大佐を超える男になれるらしい。

 

 

「ほんと、必要ない設定がこの体に次々と…」

 

 

これもこの学園でマフティーたらしめた結果だろう。

 

それで三女神の願いはかなり強力だった事が伺える。

 

ウマ娘のために働けば働くほどそれはどんどん強くなってしまう。

 

まるで人間から…ウマ娘のような異端がホンモノになりつつある。

 

 

「…」

 

 

もしトビア・アロナクスがこの場に居るなら聞きたい。

 

俺はまだ人間で沢山だよな?

腕にナイフを刻めばその血は赤く流せるか?

 

……大丈夫だろう。

 

失明したカーティスでも吐血は赤かった筈だ。

 

 

もしこの場にキンケドゥ・ナウがいるなら尋ねたい。

 

俺はまだ人のままか?

パン屋を営めるほどの人間性に戻れるか?

 

……大丈夫な筈だ。

 

フォントに命を飲み込んで戻れる事を伝えた。

 

 

 

「物語の存在と言え、それでもNTの先駆者がいる。それが何よりの救いだな…」

 

 

 

カボチャ頭を外せばこの鬱陶しさもある程度はマシになる。

 

そして、そのままマフティーを辞めれば良いだけの話。

 

しかしこの学園にいる限りマフTまたマフティーは俺なのだから仕方ないとしか言えない。

 

己を器として言った以上は受け止める他あるまいし、その覚悟はしてきたつもりだ。

 

 

 

「すぅぅ……ふぅぅぅ」

 

 

 

今日は学園祭、ウマ娘のための日だ。

 

マフティーだろうと、中央のトレーナーだろうと関係ない。

 

この場にいる限りはウマ娘のために作られたこの場所で、ウマ娘のために働くだけだ。

 

それがウマ娘プリティーダービーなんだろう。

 

片手に遊べてしまうこの画面越しに誰もが憧れてしまう世界だ。

 

ならこの世界にとって普通な事だ。

 

俺は…いつも通りにすれば良い。

 

 

 

「なにさっきから独り言呟いてるの?」

 

 

通りすがろうとしたトレーナールームからウマ娘が扉から顔を出していた。気だるげな表情だが調子が悪いわけではなさそうだ。

 

 

「やはり君かナリタタイシン……サボりか?」

 

「悪い? てか、私がトレーナールームにいること知ってたの?」

 

「さぁて、な。…サボりは構わないが、ほどほどにしろよ」

 

「……強制参加が言い渡された競技はちゃんと出るから放っておいて。それとあのお節介(トレーナー)あのやかましい奴(ウイニングチケット)にここにいる事は何も言わないで」

 

「聞かれない限りは言わないさ」

 

「あっそ」

 

 

 

 

__ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!!!

__タイシン!タイシン!タイシン!

__タイッッシィィィンッッ!!!

 

 

 

 

「うわっ………」

 

 

心底嫌そうにしながらトレーナールームに隠れるナリタタイシン。

 

ちなみに壁越しに感じたウマソウルはナリタタイシンである。

 

あの小柄に対してウマソウルが強い。

 

あと末脚が化け物だった。

 

 

ちなみに彼女とは初対面だったけど、どこかで出会ったことあるような気がしていた。

 

それはウマソウルが強かったから…だろうか?

 

まあ、分からないと言うことは恐らく大したことではないのだろう。

 

疑問はそのままに、学園祭へ戻っ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z__________

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

NTの話をすればこれだ。

 

まるで引き寄せられた如く、都合よく俺に知らせる。

 

ここは誰もいない。

 

そのため余計なモノを捉えない。

 

故にわかりやすく、それは定めやすい。

 

俺は強い視線を感じ取る。

 

 

「…」

 

 

視線の方へ、静かに向き合う。

 

誰もいない外だ。

 

だが隠れ切れていない耳が少し見える。

 

ゆっくり近づき、窓に手を掛けて一気に開ける。

 

視線の主を見下ろした。

 

 

 

「うひゃぁぁ!!??」

 

 

 

屈んで隠れていたのだろう。

 

しかし驚いて尻餅をついて悲鳴を上げる。

 

やはりウマ娘だった。

 

 

「じぇじぇ!?」

 

「何か用か?」

 

 

 

学園祭へ遊びに来たウマ娘だろうか?

 

制服ではなく、私服だ。

 

つまりこの学園のウマ娘では無い。

 

 

 

「ど、どどど、どでんするっぺよ!? それよりどうしているのわかったんだ!?は…!も、もしやこれが都会の恐ろしさってヤツか…!!」

 

「都会は関係ないな。強いて言うならここが中央だからだろう」

 

「それはすごいっぺな!! んだんだ、あのマフティーが言うなら間違いないっぺ!」

 

 

感情豊かな女の子だ。

 

それと訛りが強い。

 

しかしこの純粋さは素敵だろうか。

 

 

 

「それで、何か用か?」

 

「そ、そうだ!マフTだから聞きたいことがあったんだ!」

 

 

そのウマ娘は立ち上がり、マフラーを揺らしながらこちらと向かい合う。

 

 

「えっとな?急で申し訳ないんだけど、うちは…そのぉ、シ、シチーガールに憧れてんだ。けどここ思ったよりも広くて、それで…」

 

「なるほど、事情はわかった」

 

「ぅえ?」

 

「時間はある。そこまで案内しよう」

 

「ほんどか!!?」

 

 

窓から身を乗り出して食い気味になるウマ娘。

 

ほしかった案内に尻尾を揺らし、目をキラキラさせて喜びを表す。

 

あとやはり田舎からやって来たような雰囲気は気のせいではないようだ。それを頑張って隠そうとしているが、からまわっては「あわあわ」と慌てふためいたりと微笑ましい。

 

 

 

「その前に____君の名前は?」

 

「は…!こ、これは失礼しました!」

 

 

乗り出した身を退いて、姿勢正しくピーンッと体を伸ばす。

 

耳と尻尾も元気よくピーンだ。

 

 

 

「う、うちの名前は__!!」

 

 

 

 

この世界は分からないことが多い。

 

別にこのウマ娘が喋る方言に対して、では無い。

 

分からないことは、あらゆることに対して。

 

 

特にそれは 運命 だったりもする。

 

だから…

 

 

 

 

ユキノビジンです!よろしくお願いします!」

 

 

 

どこでもいるような、なんてことない普通のウマ娘。

 

そんな彼女を案内する。

 

ただそれだけなのに、どうしてこうもマフティーは騒がしいのか?

 

それはおそらく、後に分かるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

間も無く、始動ス__!!!

 

 

 

 

 

 

つづく




 



作者(マフティー)のやり方、正しくないよ」









カボチャ頭の豊作を祈って、来年もよろしくお願いします。

なぁ、ウチの事は引けてんよなぁ?

  • 単発で引いたで(十万バリキのコツ)
  • 10連で引けたで(阪神レース場のコツ)
  • 20連以上で引けたで
  • 100連以上で引けたわ…
  • 爆死ッン!バクシーン!!
  • 親の顔よりも見た天井。
  • タマモ貯金?知らない子ですね…

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