やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ! 作:つヴぁるnet
トレーナーとして指導はできてるのか?
そう聞かれたとしたらそれは永遠のテーマだろう。
もし誰かと比べられた場合ならおおよそ答えやすいのかも知れない。
なら俺は、マフTは、中央を代表とする東条トレーナーと同じレベルの指導を行えてるかと比較されたら、それは『否』と答えてしまう。
マフTとしてできることは見守るくらいだろうか。
この世で生を受け、この世で一から学び、この世に足を付けている者達に対して、俺がやってきたことはオカルトの一言で済ませるような反則技から。元はなんでもありなゲームの世界と言え、俺が成してきたモノは全て三女神のギフトによって奮った産物。
そりゃスタート地点は最悪だった俺のトレーナー人生だけど、説明のつかない事ばかりしてきた俺の行為はトレーナーの部類からしたら周りに対する侮辱行為だとそう考えなくも無い。それでも周りの者達は俺のやる事、成すことを神格化する様に、マフティーにとってそれが普通なんだと受け止めてしまう。何故ならここはウマ娘の世界。ウマ娘のために働く者は歓迎されるようにシステム化された居所なのだから。
だから、俺だけが
考えすぎなんだ、この世界で。
俺は散々苦しんだ。
苦しんだ先で報われたんだ。
それは三女神からの報酬だ。
マフティーたらしめた果てだ。
狂人として飲み込み続けた姿だ。
この世界のカボチャ頭のトレーナーとして。
その名はマフTとして。
いまはウマ娘に狂うだけの存在。
…
…
…
ああ、たしかに、そうだな。
俺はここまでのハンデを背負って生きてきた。
この世界の人生はまだ3年程度。
それでも耐え難く、そして呪いと息苦しさはカボチャ頭を被ることで誤魔化した。
それは乗り越えた。
でも、割りに合わない。
自害すら考え得る、死は隣り合わせに。
身構え続けて、死神は来させない毎日。
乗り越えれた。
ああ、でも、割りに合わない。
ウマ娘が存在する喜びなんて感じずに。
ここまで苦しんだ。
割りに合わない。
前任者のカルマはミスターシービーがいなければ払われなかった。
それ以外に考えられない俺がいる。
割りに合わない。
ここまで苦労を重ねさせておいて。
割りに合わない。
…
…
マフ…T……
???
___マフT、聞こえてるの?
「!」
顔を上げれば、こちらを覗き込むアドマイヤベガの姿。少し心配そうにしている。
「悪い、少し考え事をしていた」
「そう………疲れてるの?」
「んー? そう見えるか?」
「最近はいつも疲れてそうに見えるね」
「そうか。だとしたら指導者失格だな」
誤魔化しながらタブレットの画面を開いてアドマイヤベガの練習メニューを確認する。
「ねぇ、坂路…やったらダメなの?」
「別にダメではないかな。やりたいの??」
「やりたいと言うよりは…」
「まぁ君にはあまりやらない練習だからな。…少しやってみるか?」
「!」
「カフェがさっきやってたもんな」
「か、関係な…ぁ、ぁ!ちょ…!きゅ、急に撫でないで!」
「悪い、良いところに頭があるからな」
アドマイヤベガに振り払われながら奥のターフを眺めると、ミスターシービーとダイタクヘリオスがバチバチにやり合っている。どちらもファンサービス盛んで楽しいこと大好きな二人だけど、実績を残したG1ウマ娘なのは間違いない。
ターフの外では視察に来ている記者や、入学生として一足早く寮入してこの学園にやって来た生徒のウマ娘達が遠くから眺めていた。見ている者達は中央の走りに夢中である。
アドマイヤベガも平謝りされた俺に対して少しだけ膨れっ面になりながらも、釣られて先輩ウマ娘達の走りをその場から眺める。
そしてバチバチにやり合っているG1ウマ娘の400メートル後方で並走しているマンハッタンカフェとゴールドシチーにも視線が向いた。
漆黒と黄金。
相対するような色合いがターフを疾る。
「あの二人は綺麗に走る」
「ゴールドシチーさんが聞くと怒りそうね」
「そう言う綺麗じゃないな。姿勢や体幹を崩さず一律に脚を運べる能力ってのは、日常的にも意識して長く続けないと身につかない。そう考えるとフィギュアスケート選手や競輪の選手はどれだけ凄いことか。それでシチーの場合モデルとして気を使っていた産物だろう。センスがある」
「二人ってことは、カフェさんも?」
「カフェは脚の爪を意識して走ってたことで無意識に仕上がった走り姿だな。この日まで700日分はそうしてきた。あとお手本となったミスターシービーが並走したお陰。それでイマジナリーフレンド……は別に良いか。あと彼女はものすっっごい集中力がある。どんなに息を切らしても姿勢が崩れないし、シチーとは違う方面で根気良い。それでも相対するウマ娘の二人だな。ゴールドシチーが根性なら、マンハッタンカフェは
「それこそゴールドシチーさんは怒りそうだけど…」
「俺はあの泥臭さ素敵だと思うけどな。さてアドマイヤベガ、少し休憩挟んだらお望み通り坂路だ。ストップウォッチ渡すから、20秒は余裕で切れるように頑張れよ。もしできたらご褒美のウマスタソーダを贈呈しよう」
「何故ウマスタソーダ?? あと別に、ご褒美は……」
「カフェが気になってたから頼んでおいた。終わったらあとで飲むらしい」
「…………………そ、そう」
長い間を置きながらも耳をピクッ、ピクンと反応させながらポーカーフェイスで坂路の方まで去るアドマイヤベガから視線を外して、走っている担当ウマ娘達に視線を向ける。
「…」
やはり尾花栗毛のゴールドシチーに見惚れるのはわかる。夕日に反射するその髪は綺麗に輝いていて、後方ではその姿に声を漏らす人たちがいる。しかしその様子が不満だったのかゴールドシチーはチラリとこちら側に視線を向けたあとコーナーに入った瞬間マンハッタンカフェを切り離すように速度を上げた。
そこには飾られるモデルではない、アスリート選手に早変わり。見ていた者はその速さに驚いていた。ウマッターでも今より早い走りを投稿して驚かしたことがあるが、今日はギャラリーが多い。日本ダービーに向けての仕上がりを見せつけようと張り切っていた。ゴールドシチーは早いウマ娘になった事がよくわかる瞬間だろう。
「やはり、似てるな」
皆はゴールドシチーに目を奪われているが、俺はマンハッタンカフェに注目していた。
もちろん彼女も可憐さを魅せるすらっとしたモデル体型なので、しっかり着飾ればモデルさんのような美人の出来上がりだろう……って思うのは当然だとしても、やはり気になるのは、その走りだ。
「シチーが一気にカフェを切り離したように見えたけど、その前からカフェがちょっとずつ加速している。シチーはおそらく気付いてるな。距離があるほどジリジリと最後方のラインを上げてウマ娘を文字通り追い込む……なんだっけ?」
たしかスタミナグリードだったか?
ミスターシービーがそんな事を言ってカフェに教えていたな。
「そんでもって…」
横を見る。
ちょうどだった。
「ウェェェイ!!1着ゥゥ!!!」
「はぁ…はぁ…! 首差で負けたぁぁぁ!!」
ダイタクヘリオスの場合だと最前列のラインを強引に上げて、後続のウマ娘にプレッシャーを誘う技があったな。
こちらはスピードイーターだったか?
なんともマルゼンスキーが教えてくれたらしいが、引き金はミスターシービー。
お陰でダイタクヘリオスは前よりも走りやすくなったと言っていた。
最前列を欲することでウマ娘にトップスピードを要求させ、マイラーとしての加速力で精神力を喰らい、その他のウマ娘の距離感を狂わせるプレッシャーラン。
がむしゃらに驀進するのとはまた違う。ドンドン前に出るのに、掛かってない余裕ある走り姿は大いにプレッシャーになる。
まあだから、あの有マ記念では駆け引きなんて気にならない己だけのターフを求めたミスターシービーにとって、マルゼンスキーの後ろ姿なんてのは最後は追い抜けたらそれでよかった対象に過ぎなかったのだろう。距離適正の関係もあるが、マルゼンスキーのプレッシャーに臆せず着いていけたのはミスターシービーくらいのウマ娘だろう。あとは卒業したメジロアルダンくらいか。さすがメジロ家の令嬢で精神力はある。あと見た目は凛々しく賢そうだし。
「クールダウンして来い。終わったらウマスタソーダで乾杯だ」
「マジぃ!?超うれC!!ビタミンCィィ!!」
ぴょんぴょん跳ねながら軽くランニングに向かったダイタクヘリオス。
いや、クールダウンなんだから速度落とせっての。
記者達にピースピースしながら去りゆく姿は写真映えするだろう。
「あー、しかし、もう、そうなのかなぁ…」
「…」
そして空を眺めるミスターシービーの姿。静かに笑んでいるが、諦めが混じり合ったような眼差しと、その声はどこか寂しそうだ。
「ま、いいか、アタシもクールダウンしてくるね」
そう言って去り行くシービー。ヘリオスと同じような記者や入学生にニコッと笑って軽めのファンサービスを行いながら姿を消す。
その後ろ姿を見送りながら俺は一瞬だけ、意識を切り替える。
カボチャ頭越しから見えているモノが変わる。
「受け入れるしかないか…」
彼女のウマソウルは…小さい。
まるで灯火のように、揺れるだけ。
出会った頃よりも、その魂はおとなしい。
ミスターシービーってウマ娘の濃さは、あの頃よりも薄まっていた。
「………短いな、ウマ娘って」
俺の呟きは誰も拾わない。
こればかりはトレーナーの手腕どうとか、実力で克服とか、そんな事では揺れ動かせない。
これはそれぞれに'定められた"モノ"だ。
だからこそ彼女は、俺と選ぶ必要がある。
自覚してるから、考えなくてはならない。
それに向き合って、決めるべきだろう。
今年も、大変になりそうだ。
____キーン!!
「!」
弾かれた音。
反応して片手を伸ばし、受け止める。
顔の前に持ってきて、手を開く。
そこには、18年と書かれた小銭だ。
「今日、この時間だと思ったぜ、マフT」
声の主を見る。
春になって暖かくなったのに、それでも被り続けるニット帽のウマ娘。
それはどう考えても一人だけ。
相変わらずギラギラとしていた。
いや、違う。
今日は、すこし違った。
「なにか用か?」
「ウマ娘にターフ。その意味は一つだろ?」
「なるほど、君にとってその時か」
「ああ___
ロリポップを咥えた、ウマ娘。
ナカヤマフェスタは鋭くこちらを見る。
もう一度、意識を切り替えて、目を凝らす。
「!」
眼を見開く。
彼女のウマソウルがここ1番に激っている。
なるほど、そう言うことか。
本人はどうやら理解してる"側"のようだ。
だから、ここに来たのか。
「俺じゃないと、気が済まないか?」
「求めたら応えてくれる。 それはウマ娘にとって毒だ。 だから応えてくれよマフティー。 正直に言うとな?お前に堪らないんだよ、私なぁ…」
「そうか。だが変化は起きるものだ、ナカヤマフェスタ。 今のマフティーは君に相応するマフティーである事を認知した上で、選び取った倍率なのか?」
「ああ、お前だ。 私にとっては今だ。 だからこの勝負で確かめる事にした」
「だとしたら悪い賭けをするな。ナカヤマフェスタ。智略も無い。ただの運試しに極まった。ああ、でも、いいだろう。 そんなにマフティーを求めるのなら、存分に応えてやるよ」
「くくっ、そう来ないとな」
指にコインを置く。
弾くのは俺であり。
結果を待つのは彼女だ。
準備はできた。
あとは…
「表だな」
迷いなく彼女は『表』と告げる。
その眼に揺らぎはない。
俺は指でコインを弾き、キーンと音が響く。
ターフの外では、俺とナカヤマフェスタを見ていた記者は何事かと騒ぎ出した。
世間的に有名なマフTの目の前に、デビューすら果たしてない無名のウマ娘が対立する。
その光景に誰もが驚いてしまうが、宙を舞うコインに皆が注目する。
「マフTまたはマフティー、だったな」
ナカヤマフェスタは不意に言葉を放つ。
「表裏あるように聞こえるセリフ。そりゃ数年前ならそれは正しかったのかもしれない。ハッキリと分かれていた。だが、
コインが重力に従って落ちる。
その過程で、夕日の中に収まり輝く。
まるでラストシューティングのように光る。
まっすぐと手元に目掛けて落ちて来た。
手を伸ばして、受け止める。
手の甲に、大勝負の果てが収まった。
「…」
「…」
静まりかえるターフ。
誰かが息をのむ。
被せていた片手を引き、手の甲を見せる。
そこには…
「表だな」
「表だ。どうやら君の勝ちだな」
叩き出された結果は間違いなく、表。
どうやら彼女は賭けに勝ったようだ。
マフティーを相手に。
彼女は勝負を勝ち終えた。
「なら_____
ニカっと笑うナカヤマフェスタ。
その笑みは純粋な喜びから。
「ふっ……わかった! 認めるよ、ナカヤマフェスタ」
「!」
勝者を認めなければならない。
勝ち得た者に、与えられる権利がある。
それが正しい姿であると頷く。
するとナカヤマフェスタは震え…
そして…
「よし、よし!! よっしゃぁぁっ!!!」
「!?」
唐突に喜び始めるナカヤマフェスタ。
両手の拳をグッと握りしめた。
尻尾も興奮気味に動いている。
彼女からこんな姿は見たことない。
勝ち負けに慣れてるよう感じられたが、今回の勝利はそんなに嬉しかったのか??
あとロリポップが口から飛び出したので、棒の部分に指を伸ばして掴み取る。
「そ、そんなにか??」
「あっははは!そりゃな!大勝負の果てで勝ち得たんだ!ッ、くぅぅぅう!!やはりヒリつく勝負は最高だ。思わず自分を忘れてしまいそうだ」
たかがコイントス。
表裏を決めるだけの勝負。
しかし、ここにいる彼女は周りと違う。
これだけの出来事でも、相当嬉しかったようだ。
「飴飛び出るほどだったようで、何よりだ」
「おっと、悪い悪い!また世話かけたな」
「構わないが…しかし、ギャップに見合わないリアクションに少し戸惑いを感じる。ほれ、口を開けろ」
「んぁ」
ロリポップを口に押し込んでコロコロと音が鳴る。
勝利の美酒では無いが、味を楽しんでいるの耳がピクピクと動いている。
尻尾はまだ落ち着きがない。
よっぽど嬉しかったらしい。
「やれやれ。 別の気性難がまた来るのか」
「おいおいマフT?本人の前でそう言うなって。私はヒリつく勝負が好きなだけだぜ? ま、これからはファストパス並みに利用はさせてもらうけどな」
「マフティーも安くなったもんだ」
「私にとっては、その倍率は高いさ」
「俺は
「そりゃ…
「?」
「私はウマ娘だ。だから
「!!」
ああ、俺はいつも通り。
ウマ娘に狂い始める。
例え勝負狂いのニット帽だろうが関係ない。
ウマ娘が駆けたいと、求めるのなら。
マフティーは容易く動くだろう。
「え?? は?? な、なにこの状況??」
「ああ、なるほど……ウマたらしですか…」
「!?」
「紙コップと豆、増やす必要がありますね」
「は、坂路で、足が、プルプル、する……」
担当の三人だけではない。
ターフの外にいた記者や関係者、凡ゆる観客がこの一連にどよめきを。
そして察しの良い者は驚きを隠せない。
それぞれの感情が混じり合う春を迎えた夕方だった。
G ゴールドシチー
U
N ナカヤマフェスタ new‼
D ダイタクヘリオス
A アドマイヤベガ
M マンハッタンカフェ
つづく
正直に言えば、ナリタタイシンで迷った。
2525でマフティー構文のMADあるくらいだし。
でもフェスタには実機で実装してほしいから。
あとは……ただの趣味だ!!!
ではまた
正月ガチャでお目当ては引けましたか?
-
ハルウララ(新衣装)
-
テイエムオペラオー(新衣装)
-
アドマイヤベガ
-
マチカネフクキタル
-
全部引いた(独占欲のコツ)
-
バクシン!!爆死ィィィィン!!
-
今回は見送り