やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ! 作:てっちゃーんッ
ウマソウルの減少。
それは本格化を終えて、体が全盛期から衰退することだろう。そして
では、トレーナーとしてそのウマ娘とはどのように向き合うべきだろうか?
ウマ娘は無理してアスリートを続ける必要はなく、トレーナーの大半はアスリートから身を引いてもらうように提案する。
衰え始める肉体で時速70キロを駆ける足がその速さに耐えれず、後遺症を残すような怪我を起こしてしまう危険性が高いため、
だがウマ娘は走りたくて仕方ない生き物だ。
大人として心が成熟するまでは激しく揺れ動く未熟な心身が存在意義をターフに追い立てる。
しかし誰もがマルゼンスキーの様に長く現役で居られるわけでもなく。
誰もがナリタタイシンのように大きなウマソウルを持っている訳でもなく。
誰もがナカヤマフェスタのようにタイミングを理解してるわけでもない。
始まりは急で、終わりも急である。
そしてそれは抗えない。
どんなにウマソウルが揺れ動いても、それがすり減ってしまえば、体と魂は噛み合わせの悪いクラッチの様にエンストを起こし、走りに支障を出してしまう。
エンジンと言うのは消耗品、劣化してしまう。
変えようが無い。
「マフTは、知ってたんだね」
「知ってたよ」
二人でマンハッタンカフェの走りを眺める。
その走りは少しずつだがミスターシービーが駆ける姿と重なっていく。
坂路に強く、早い段階での加速、最後列から目に見えて追い縋る影、スタミナも多く、ロングスパートも滑らかで、レースに対する読解力の高さ、常に落ち着いた観察眼は賢いレース運びを行えるだろう。
それだけの実力を秘めながらやっと今年デビューするマンハッタンカフェは、誰よりもレベルの高いスタートを切れる。既に学園内でこの話は持ちきりであり期待されているウマ娘だ。もしかしたらシンボリルドルフと同じくらいの期待があるのかもしれない。
それもその筈。
彼女は約二年の長い時間を使ってミスターシービーの走りを観察して、並走して、マフティー性に対する高い感受率を活かして、何度も自己投影してきた。
その眼で、その脚で、その頭で。
そして寝ている時すらも夢の中でも高い自己投影力は毎日のようにイマジナリーフレンドと競い合う。
脆かった爪はマフティーを求めてチームに入った頃よりも強固になり、彼女には弱点が無くなった。
俺と言う存在が、マンハッタンカフェをそこまで強くしてしまった。
ミスターシービーの存在が、マンハッタンカフェをそこまで完成させてくれた。
これが偶然なのかわからない。
だが当時はミスターシービーとマンハッタンカフェしか居なかった。マンハッタンカフェはミスターシービーの近くにいたことで、誰よりも彼女の走りを参考にしていた。無敗の三冠と言う頂きに届くのは漆黒の摩天楼なのかもしれない。
それが……今の彼女だと言うことだ。
「アタシがどんどん衰えて、それで全盛期が終わって、マフTはこの脚が落ちていくことがわかってたから、その走りをカフェに引き継がせた。そう言う事だよね?」
「そうだ」
「それは、いつから気付いてた?」
「シンボリルドルフに勝てなくなった頃だ。ジャパンカップ辺りから確信に繋がった」
「そっか。やはりマフTには隠せないか」
「……シービー。 君は、いつから__」
「小学生の頃かな。本格化は早かったよ」
「そう、か…」
「本当はもう少し抑えれたかもしれない。脳に信号を送ってさ、肉体の成長期を少しでも遅らせて、それでタイミングは合わせれたかもしれない。医学もそれだけ進歩してるから薬でも使えば少しくらいは躊躇わせることもできたと思う。けどね、ターフで楽しく描きたい
「…」
「自分では長いと思ってたよ。なんなら成長期は2回に分けて起きて、それで長いと思ってた。でも波は落ち着きを知らず、いつまでも高く高く聳え立つ様な波だった。そのお陰で夢見てたトウショウボーイだった母の皐月賞も、その時夢見れた三冠の栄光も、そして夢見たようだった有マ記念ではマルゼンスキーを相手に得た勝利も、このウマソウルが激しかったおかげ。でもこのウマソウルの大波は一回だけ起こせば満足したかのように引潮のごとく、この脚はどんどん全盛期から引いていった」
過去を振り替えながら自分のウマソウルと向き合いながら語る。
マンハッタンカフェを見る彼女の横顔は穏やかに見える。
しかし終わりを迎え始めている自分にどこか寂しさを見え隠れさせている。
耳が少しだけ不安に揺れていたから。
「もっと走りたい気持ちはある。でも満足の行くところまでアタシはターフを描けた。これは間違いないよ。アタシの独りよがりをマフTが受け止めてくれた。そうした事実が今この瞬間だと考えるなら、今だってぜんぜん悪く無いかな」
そう言って彼女は笑う。
ウマ娘として走りたい本音はありしも、彼女の浮かべる笑みはここまで走る事が出来たその誇らしさが詰まっていた。
だから、俺はそこに救われた気がした。
「シービー、シニア2年目になっても中央で走れるウマ娘はそう多くない。皆それぞれの進路を決めて歩き出す頃だ。君はまだ立派に脚が動いてる。それは非常にすごい事だと思う。だから俺はそんな君のことを勝手に誇らしく思うよ」
「あはは、アタシもアタシ自身が誇らしいよ。まだまだターフに笑えるつもりだけど、でも引き時だって考えてる。後ろから追いかけてきてくれる後輩達にターフを譲ってさ、それで腕組んで偉そうに教える事だって面白いかも、とかね?」
「なんだい?トレーナーにでもなるのか?だとしたら中央は喜ぶだろうな。地方からどんどんトレーナーは戻ってきてるが、それでも不足気味なのは変わらない現状。シービーは好かれる子だから良さそうだ」
「んー、でも、楽しそうを通り越して大変そうだからトレーナーにはならないよ。それにマフTが代わりにやってくれるからアタシ別に良いかな。だからアタシは、適当に、こう、支える程度の距離感でいいかな〜、なんてねぇ〜、とか、色々と…ね?」
「?」
ミスターシービーはニコニコと笑いながら夕日のオレンジ色を頬を染めて、頭の後ろに腕を組みながら口笛を吹く。しかしレース以外は不器用な彼女だから下手な口笛だ。
イタズラ心が芽生えた俺は指を伸ばしてミスターシービーの横耳をススッ!と跳ねると、驚くのと同時に綺麗な口笛が噴き出された。
上手いじゃないか、と揶揄えば少し頬を膨らませながら「もう!もう!」と肩をバシ!バシ!とセクハラに対してのパンチをお見舞いされる。
手加減はしてくれているがウマ娘パワーはやはり痛い。
悪かったと軽く謝り、その代わり後で耳掻きを要求された。それで許してくれるようだ。
「まだごっこ遊びは出来るか?」
「マフT無しではキツイかな。やはりマフTが見てくれないと鮮度が落ちるかも。一人だけだと一緒に走るウマ娘の幻影もなんとなくそこにいるくらいにしか感じ取れないし、やはり魂を揺れ動かしてくれるマシーンが無いと三冠目指してた頃のイメージトレーニングもキツいな」
「それでも充分にすごいと思うが…」
「アタシはカフェ程じゃ無いけど彼女と同じようなタイプだよ。見えないモノやナニカを感じ取れる不思議ちゃん系。あとヘリオスだってノリと勢いとパスタで見えてるつもりらしいね。不思議ちゃんとは程遠いヘタレパリピだけど」
「でも、どちらかと言えばシービーは両方じゃ無いのか?カフェとヘリオス合わせて割ったような感性」
カフェのような資質の高さ。
ヘリオスのような実行力の高さ。
もしくは大人しかったり、やかましかったりと清濁併せ持つような雰囲気。
「………」
「どうよ?」
それを指摘すると思考を巡らし、カタカタと震えて。
「…ちょっと待って、アタシってヘリオス成分もあったんだ!?」
「みたいだな? シービーもパリピ出来るぞ」
「うぇーい!?」
「ほら、出来た」
「っ!?……な、なんか負けたー!」
「俺の勝ち。なんで負けたか、有マ記念まで考えといてください。そしたら何かが見えるはずです」
「猶予ありすぎ記念!?」
やはりヘリオス成分もあるのかノリが良い。
だから畳みかけることにした。
「そりゃ、ラストランは有マ記念だからな」
「へ? あー、なるほど。それで有マ…………え?」
カフェのように冷静になり、言葉の意味に傾げる。
そして眼をパチクリさせて、耳がピーンとなる。
愛らしさ満点な彼女に俺は…
「最後に飾ろう、シービー」
「!!」
有マ記念、いまから8ヶ月先のレース。
年を納める最後のレース。
誰もが望む誇り高きレース。
「勿体ない君が、俺は嫌だな」
トレーナーの視点はない、俺個人としての言葉。
指導者失格なお願い。
だが、ミスターシービーを走らせたい。
次は使命感も無く。
追われることも無く。
誰かのためでも無く。
自分のために。
彼女自身のために、もう一度。
俺は、ミスターシービーを見ていたい。
折り畳み傘を渡したあの日の彼女を俺はまだ覚えているから。
ミスターシービーが、走ってたから。
「うん、良いね……有マか…!」
その言葉に賛同する。
眼の中に、魂が灯された気がした。
「それ良いと思うよマフT! アタシ、有マ記念走りたいな!」
ぴこぴこと揺れる耳が本音を隠さない。
猫味のある表情も素直さしかない。
だからその言葉が本心であることがわかる。
「じゃあ、決まりだな?」
「決まり!」
簡潔に決められたレース。
多くは語らない。
なぜなら互いにわかってるから。
それが俺と彼女にとって正しいことが。
これが間違いじゃない事が分かるから。
「じゃあ……調整よろしくね、マフT!」
「ああ」
理由を交わさず、ラストランは唐突に…
「姉貴、まさか、有マっちゃう感じ……?」
ウマ娘は耳が良い生き物だ。
だから。
よく聞こえるらしい。
♢
三女神の像に対してカボチャ頭を脱いだのはいつ以来か?まだ俺にとって三女神が理不尽の塊でしか無い認識の時に、この顔を晒して訴えたのは覚えている。
それからマンハッタンカフェのイマジナリーフレンドが開けない口の代わりにその意味を教えてくれた。
俺は『因子継承』として前任者の体に魂が宿った。
前任者の愚行に怒りを交えながらも願われた三女神はただ役割を果たしたに過ぎず、それはマフティーと同じように『たらしめる』だけの話だった。俺からしたら理不尽極まりない不可抗力からこの世界で苦しんだ。強くてニューゲームどころか弱くてコンテニューゲームの物語としてまともでは打開できないスタートを切ったから、俺はバグ技の如くマフティーを引き出して物語を進めた。
前任者が望んだ『代わり』として俺がコントローラを握った。それがカボチャ頭を被ったマフティーだった話である。
まあ、今となっては呪いも乗り越えた先でミスターシービーは三冠ウマ娘になり、見事に前任者の苦しみは解かれて、俺自身もカルマを拭うことはできた。それでも三女神が俺にウマ娘に狂えるマフティーを求め続けるから、俺は今もカボチャ頭を被って応え続けているだけ。
マフティーを辞めようと思えばいつでも辞めることは出来る。秋川やよいがマフティーの意味を理解して、彼女もまた
今となってはこのカボチャ頭も軽くなった。
アドマイヤベガをスカウトするときもコレを簡単に外せるくらいにはなった。
だから俺はもう訴える意味も持たない、俺個人としてウマ娘に狂ってる本当の独りよがりを今も続けているに過ぎない。されどおれは器だから。マフティーを知っているだけの異端な人間だから。
「……」
夜の22時。
業務を終えて三女神の像を見上げる。
抱えてる水瓶から溢れ出る水流はシステムでストップされ、次の朝まで流れることはない。
夜の春風と満月が静かに三女神を彩る。
こうやって眺める回数も随分と減った。
役割を課せようとしないゼロシステムが何も言わないように、役割を課せようとしない三女神だって何も言わない。今の俺は前任者から脱しただけの空っぽな器だ。穴あきカボチャのように薄っぺらい道化として被っているだけのトレーナーだから。それがマフティーの果てで完結してしまった【オレ】と言う存在。
どうであれ、やはり『知ってるだけ』なんだ。
マフティーというのは、あやふやながらも危険と狂気に染まれる便利な自己投影か、または偽名から生まれるご都合主義だ。何も知らない人がマフティーを聞いたら強制的に首を傾げてしまうだろう。まあそれも仕方ない。ガンダムの作品から生まれただけあって厄介なモノなんだよ、マフティーと言うのは。
俺にとってはカボチャ頭に意味を込めただけだから。
わかりやすく、便利に、そうしただけ。
蓋を開けるようにカボチャ頭を開ければ大した種もない、スプーンでくり抜かれたその中身に哀れな人間が入ってるだけだから。
それは前任者でもあり、俺でもある。
「でも、俺は中央らしくないな」
心はウマ娘のために奮いたい。
それは間違い無い。
けど、ここに立っているのは引き継ぎから。
スタートは最悪でも、俺の力でこの中央に入れたわけでも無い。少なくとも前任者は勉強してこの中央に就職できて。それは控えめに見てもすごい事だろう。成績はそこそこだったがそれでも通ずる資格を得て中央のトレーナーバッジを授かった。日本全国のトレセン学園からしたら誇り高い称号だろう。
まあ……そこに人間性が含まれてるかは別だ。
幾ら勉強が出来ても、コミニケーション能力が無ければ組織で働くなんて無理に等しい。
そして前任者は失敗した。
ウマ娘に対する接し方と、指導者としての佇まいを間違えた。ウマ娘のために存在する三女神が怒るのも当然だろう。中央レベルの実力は備わっていただろうに前任者は間違えて破綻してしまった。俺からするともったいないことをしたバカ野郎の認識だ。
それからその知識や能力は俺が引き継いだ上でマフティーの味付けと共に始まった。
結果として俺はウマ娘を指導する能力に困ることなく、ミスターシービーの練習を見ることはできた。
まあ大体は『究極のごっこ遊び』で自己投影のお手伝いをするために、走るミスターシービーを眺めている時間の方が多かった気がする。
なんだかんだで彼女は一人で練習して走りを確かめれるタイプだから。それこそ本格化が早かったから、湧き上がる本能と生まれつきのセンスが噛み合って己を育てることに己が困らなかった。何せ彼女は天才だから。
だから俺は特別すごい指導なんてしていない。
俺はユニコーンガンダムのように心を注ぐマシーンなだけで、そのトリガーを引くのはミスターシービーだった話。
俺と言う存在は誰かがいなければ一人動けない冷たい鉄屑に過ぎない。
天才的な
何度も言う。俺はトレーナーとして大したことは出来ていない。
なのに…
「有マ記念か……」
ウマソウルも減少して、いつしかパタリと究極のごっこ遊びが出来なくなるだろうミスターシービー。
俺が側に居れば「まだ出来るよ」と言っていたが安定するとは限らない。お役目終えた俺もこのマフティー性を保ち続けられるか正直わからない。
いや、マフティーの象徴だったこのカボチャ頭を被り続けばそれは保たれるだろう。
マフティーは応えようといつものようにマフティーするから俺に関してはまだまだ心配ない話だが、だからと言って肉体の衰えを感じ始めたミスターシービーに
ぶっちゃけると2日に1回、調子が良い日は連日通してやってのけるミスターシービーの回復力と肉体が異常なだけ。あと前世に培った技術として俺の施術*1 がウマ娘の疲労を九割型回復させてしまう
他の人には出来ない俺たちだけの特別。
だが、今のミスターシービーにとって…
そうではない。
結論から言う。
ミスターシービーは
それはトレーナーとしての手腕が物語る。
「……」
俺の担当が彼女一人ならまだキャパシティーの関係でなんとかなるかもしれない。
それこそ「なんとでもなるはずだ!」と負けん気で彼女を支えれる。
これまでそうだったから彼女と変わらずそんな形で歩めたと思う。
けれど今の俺はマフティーを求めて集われたウマ娘のためにも働かなければならない。ミスターシービーひとりだけに時間を割くわけにもいかない。
ゴールドシチーは【日本ダービー】に。
ダイタクヘリオスは次の【マイルCS】に。
これだけ二つもG1レースが待ち構えている。
つまり 日本一 と チャンピオン の戦いを抱えている。重たい役割だ。
しかもそこにマンハッタンカフェのデビューも重なっている。世間的にも期待が大だ。
あと急遽加入してきたナカヤマフェスタも自身の本格化と照らし合わせつつ今年が出走なのかを見定めている。もしかしたら半年後、急に走り出すのかもしれない。アクションはすぐにとれるようにした方がいいだろう。
身構えてる時に、気性難は唐突に来るものさハサウェイ。
あと
クェス・パラヤ と キギ・アンダルシア??
あれもあれで 難 でしたね?
ハサウェイ。
『マフティー』
「この季節になると待ち構えたように出てくるな?死神でも現れたか?」
そして声をかけたのはイマジナリーフレンド。
急に現れる存在だが、そう驚かない。
そしてこのタイミングで現れたと言うことは、意味がある。
『心機一転の季節、だから三女神は今だけ』
「俺が三女神に求める物なんて無いよ」
『物じゃなくても、者ならいるよ』
「…………」
『三女神の絶対とした役割。それはあなたも自身も証明。なら回帰だって有り得る。それがウマ娘のために繋がるなら三女神は
いつもならマンハッタンカフェとは正反対にはっちゃける事がある愉快なイマジナリーフレンドだけど、暗い夜はマンハッタンカフェと同じようにおとなしい。
だが放つ言葉はハッキリとしている。
躊躇いがこの者になく、でも冷淡だ。
なんと言うか…
「正しく狂える…か」
『何ができるか、わかっているんだ?』
「少なくとも、俺は三女神のソレに比較的似た存在だよ。この体を補うファクターとして備わった俗物だけど、人として脚をつける狂いモノと言うのなら俺も三女神と大差ない」
『なら貴方は"その半端"を受け止めるべき。いや、受け止める権利がある。貴方は貴方だが、その身は前任者のモノであり、どっちも間違いなんかじゃ無いんだから』
「君はわかるんだな。 でもそれはさ…中央のトレーナーとして正しい事なのか? この世界でカボチャ頭を被ってた俺が言うのもおかしい話だが、戸惑いがある」
『………私は、敢えて言ったよ』
『何故なら元からカボチャ頭に良し悪しなんて存在しない。貴方は歪んだ器だとして、そこに注ぎ込まれた正義なんて誰も測れない。
だってマフティーは正しくないから。やり方も。在り方も。示し方も。進み方も。言い方も。指し方も。眺め方も。導き方も。備え方も。被り方も。求め方も。応え方も。狂い方も。
そのように染まった貴方は正しいなんて言葉では言い表せない。
それでも歪んだ器に注がれた飲み物があるのなら、その舌を焼き殺してでもマフティーの意義と価値は『なんてとでもなるはずだ!』って飲み込み続けるのがカボチャ頭のトレーナーだって私はわかっているつもりだよ…!』
感情荒ぶるイマジナリーフレンドは、それはとてもじゃ無いがまるで生きている様に言葉があり、そして…
どこか重ねている様にも感じられた。
『「理不尽に噛みつけ」それがマフティーなら、それを正しくないと勝手に否定する奴がいるのなら、見てきたモノを否定させないことが、今のマフTだ』
愚かな人間に粛清を与えしパイロットが。
人類の光を信じた奇跡のパイロットが。
痛みを知った赤子のようなパイロットが。
それは子どものまま大人になって、それが己にとって正しいからテロリストに成り果て、救われない結末を疑いながらもマフティーを名乗ったホンモノの独りよがりが、短い物語にいたんだ。
__ガンダム。
宇宙を駆ける意志の証明。
そしてカボチャ頭。
なんてことないテロリストと紛い物。
だが、俺にとって、それは。
意志を持った紛い物____だとしても。
注がれるべき歪みきった器があるのなら。
それを飲み込んでいくのが
「俺はマシーンだ。……映すための」
『マフティー…』
「だが、俺だって乗れる筈だ、マフティーに」
『…』
三女神の像を見上げる。
外したカボチャ頭を脇に添えながら。
その立ち姿は、宇宙に想いを馳せる一人のパイロットのように立ち尽くす。
「随分と悩んだけど迷うことはやめた。赤いエゴに狂信するマフティーを演じたハサウェイだってそうだった。この世界でのマフティーの役割は終えたつもりだけど…」
つもりだけど。
まだ
それなら。
俺のエゴだって、独りよがりだって。
カボチャ頭を被る俺にとって、正しい筈だ。
だったら、躊躇う必要はない。
『マフティーのやり方、正しくないよ』
「でもマフTが、正しくするさ」
問いかけられた言葉は、俺が応える。
マフティーではない、マフTが。
『…………ん、そうだね、マフT…』
「!」
優しそうな声に横を振り向く。
イマジナリーフレンドはもういない。
「…」
でも……微笑みながら俺を見送った。
それは理解できた。
「なんとでもなる筈だ」
お決まりとなった強がり。
だが俺には必要な合言葉。
脇に抱えていたカボチャ頭を手放す。
重力に従い、大地に落ちた。
その象徴は今だけ地面の冷たさを知るだろう。
だが俺は気にせず、三女神を見て…
「前任者に会わせろ」
怪しく湧き出るプレッシャーを踏みつけ。
大地に落ちたカボチャ頭に絡みつく。
噴水に満たされた水面に映る、その瞳は。
カボチャ頭の中で染まる狂気の色。
誰もが恐れる。
マフティーのようなトレーナーだった。
つづく
マフT本人は別にトレーナーとしての勉強をしてなかった訳じゃないが、それ以上に色々有り過ぎてミスターシービーほどのウマ娘を支える技量は前任者が蓄えた能力で補ってる感じです。
まあ、つまり…前任者はそれなりには優秀だったんですよ。 中央のウマ娘を育てる能力だけは…ね?
人間性がね、向いてなかったんや。
ではまた。
サクラチヨノオーは引けましたか?(震え声)
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単発で引けた(春ウマ娘のコツ)
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10連で引けた(中距離コーナーのコツ)
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20連以上で引けた。
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100連以上で引けた…
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爆死ッン!バクシーン!!
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親の顔よりも見た天井。
-
今回は見送り。