やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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第4話

 

 

 

いつも通りカボチャを被ってトレセン学園に出勤する。

 

ちなみに通勤は徒歩です。

 

住んでる場所からそう遠くないけど、それでも10分程の通勤中の視線がかなり痛いです。

 

車買うべきかな。

 

幸い運転免許は取得しているみたいだが、カボチャ被っての運転は危険すぎるし最悪警察に捕まる。 これは一旦保留だな。

 

 

 

「…」

 

 

 

通勤中じゃなかろうとも、勤務中でも集められる視線にまだ慣れない。 けれど自分がマフティーである事を思い出せば気持ちは楽になる。

 

謹慎から復帰して3日目であり、人は慣れる生き物なのかカボチャ頭の俺に対してある程度の関心は無くなってきたようだが、それでも過去に問題を起こしたトレーナーと言う事で未だ警戒している人はいる。 もちろんカボチャを被る異色なトレーナーと言うことでも警戒されており、視線が刺さるし、刺さる。 いま4人くらいに見られてるのか? 暇な奴らだな。

 

しかしそんな俺もウマ娘のスカウトはまだ誰一人と成立していない。 このまま引きずるようにこの学園の金食い虫と化してしまう。 ある程度給料の保証はされるだろうが結果一つ残せないトレーナーはこの学園に必要とされないだろう。 追い出されたら呪いを解く方法がなくなるため、俺もあまりボーッとしてられない。

 

だが周りのトレーナーも他人事では無い。

 

口述巧みなベテラントレーナーはウマ娘をしっかりとスカウトして、更にメンバーを増やしてチームの設立も計画しているだろう。

 

だがウマ娘との距離の取り方、狭め方がまだうまく測れない経験の浅いトレーナーは俺と同じように燻っている。

 

まだ3日目だが選抜レースは早くも来週辺りで一区切りついてしまう。 もし今月の選抜レースが終わったら次は今年の秋に小規模で行うようだが、数ヶ月後のメイクデビューを済ませるならこの春にスカウトした方がトレーナー的にもウマ娘的にも良いだろ。

 

一応メイクデビュー戦の時期が終わっても未勝利戦に出ることも可能だが、出走経験のあるウマ娘が走るため、未出走のウマ娘はバ群に慣れず、レース中に怪我する恐れが高いため実のところあまり好まれない。

 

やはり理想的なのはメイクデビュー前にスカウトを受けて、トレーナーと地固めを行い、メイクデビューを超えてからジュニア期に気持ちよく挑む事だろう。 その方が成長もする。

 

もしその年がダメなら翌年に備えるだろうが、スカウトされない=中央で戦う才能が無いと言うことになる。

 

そのため自身の走りに絶望してほとんどが学園を去るらしい。 またこの学園で進学と卒業を決めて、ターフで走るのは趣味の範疇に抑えるなど様々。 でも昨日この学園を早々に去るウマ娘を一人見た。 中央は厳しいな。

 

なのでウマ娘も必死、そしてトレーナーも必死、既に取り合いの状態が始まっている。

 

対談の場などを設けてパートナー選びを行うなど、トレセン学園側も可能な限りウマ娘にはトレーナーと、トレーナーにはウマ娘とパートナーが作れる様にサポートを受けていた。

 

それでもまだ誰一人スカウトできてないトレーナー達は少しずつ焦り始め、もう既に余裕が無さそうなトレーナーはソワソワと掛かり気味。 一息つけると良いですが。

 

でもその焦りを緩衝させようとするために、スカウトの過程で俺と比較するトレーナーが多い。

 

 

 

_カボチャのアイツはスカウト出来てない。

_まだ負けていない。

 

_カボチャのアイツより先にスカウトした。

_こちらは問題ない。

 

 

 

俺を勝手に対抗心を燃やしてトレーナー達は動きだしているこの頃、俺がまだスカウト出来てないと聞いて胸を撫で下ろすトレーナーがいる。

 

そんなにカボチャ頭に負けたくないのか…

 

まあ、でも万が一だ。 マフTの俺が早い段階でウマ娘をスカウトしてしまい、未だスカウト出来てない出遅れたトレーナーからすると屈辱を味わうだろう。 あんな異端児に先を越されたら悔しくて仕方ない。 あんな意味わからんヤベーヤツに遅れを取れないと大半のトレーナーは必死になるだろう。 俺もなる。

 

そのためこの職員室ではじっとりとした嫌な緊張感と、プレッシャーが漂っている。

 

正直、居心地が悪い。

 

ちなみにウマ娘とパートナーを組んだトレーナーは既に職員室から拠点を移して部屋を貰っている。 もちろん朝はここに集まって仕事を貰う必要がある。 貰ったその仕事を自分のトレーナー室に持ち込んで仕事を熟すなどやり方は様々だ。 責務を果たせるならお好きにどうぞとある程度自由。

 

でもまだスカウトも出来ておらず、この空間から脱していないトレーナーは俺を見て勝手に焦りだす。 鬱陶しいな。

 

 

さて、視線が一人分だけ減ったことを感じながら、俺はウマ娘のデータを見比べる。

 

トレーナー用の共有ファイルの中には前日の選抜レースが録画された映像がある。 その動画を再生して、振り分けられた業務と共に視聴する。 人よりも早く駆けるウマ娘、自分なりにどの子が優秀なのか分析を行うが…やはり近くで見たほうがわかりやすい。

 

まあそもそも、どの子を育てれば良いのかわからない。 足の速いウマ娘、末脚鋭いウマ娘、体力のあるウマ娘、冷静沈着なウマ娘、愛嬌あるウマ娘、全身全霊なウマ娘、おとなしいウマ娘、もうさまざまだ。

 

なんなら誰でも良い…と、言うのは最終手段であり、育てるならこの子だと感じるウマ娘を探すべきだろう。

 

モビルスーツも同じ。

 

コクピットに乗り込んでコレだ!と思うような出会いはあるはずだ。 そこから共に化けていく。

 

でもそうなるにはやはり実際に交わさなければならない。 だがこのカボチャ頭と話をしてくれるウマ娘はいるだろうか?

 

いや、実は話しかけてくれたウマ娘はいた。

 

まぁスカウトの話ではなく「何故カボチャ…?」や「日光嫌いなのですか?」と疑問を投げるウマ娘。

中には「やべー!ウケるー!バイブス高くて頭パンプキンじゃん!超カボってるゥー!」と、急にはしゃぎ始めるウマ娘だったりと、スカウトにはなんら関係ない感じに話しかけてくれた。

 

こんな頭でも話しかけてくるウマ娘はいるんだなと彼女の健気さを理解するも、逆スカウトじゃないのかと少しだけガッカリだが、マフティーは常に堂々とマフティーする。

 

そんな雰囲気は漂わせない。

 

ちなみに「コレはマフティーたらしめる姿だ」と説明すればパリピギャルですら「え?」とマジトーンにしてしまった。

わけわからなかったよな、本当にすまない。

あとで鏡の自分に反省を促してくる。

踊るだけだけど。

あ、黒いタイツどこかで買わないとな。

 

 

「選抜レース3日目か」

 

 

昼過ぎになるとトレーナー達は職員室を出てトレセン学園のレース場に向かい始める。

 

俺も遅れて向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収穫は無し。

 

今日の選抜レースが終わってからも俺は職員室でタブレットを開いてレースのおさらい中。

 

やはりミノフスキークラフトの風圧に推し退かれたごとく、このカボチャにはウマ娘は近寄ってこなかった。

 

やはりカボチャ頭はインパクト強くてむしろ興味だけでは近寄れない状態。 やはり前日は運が良かったのだろう。 外見で敬遠せず心底心配してくれるウマ娘か、テンションあげちくりのパリピギャルウマ娘くらいだろう、こんなトレーナーに話しかけてくれるのは。 ちなみに俺はオタクじゃない。 ガンダムは好きだけどギャルに優しくされたオタク枠じゃない。 そもそも都市伝説だぞ、あんなの。

 

 

それはともかく収穫に後悔しても遅い。

 

選抜レースの期間が2週間程度で短いのも、それだけに絞っているからだ。 中央はそれだけ厳しいと言うことだろう。 それでも皆に等しくチャンスは与えられている。 コレを勝ち取れるかは根性あるウマ娘。 出来ぬものは中央で走る資格無しと言うことだろう。 魔境だな。

 

 

そしてそれはトレーナーも同じ。

 

中央で結果を出せないのなら、トレーナーも中央で働く資格は無し。 それは俺も他人事ではなく、むしろ既にその刃が喉に食い込みそうなラインである。

 

サブトレーナーとして首の皮を繋げる道もあるし、なんならベテラントレーナーの元でトレーナーとして成長すれば将来的にも価値が生まれる。 そうして翌年にまた改めてスカウトを始めるなどトレーナーにも存続するためのチャンスは有る。

 

それを甘んじる行為と思うかは、その人の勝手だ。

 

無理ならトレーナーであろうと去るだけだ。

 

結果が全ての中央トレセン学園。

 

歌にもあったな。

アニメじゃない。 本当のことさ。

 

 

 

「あ、もうすぐ夜か…てか、天候怪しいな」

 

 

雨が降りそうか? それは困る。

 

周りを見渡すと悪天候を嫌がったのか既に殆どの人が帰っていた。

 

まもなく俺が最後の一人になるだろう。

 

少ない荷物をまとめてカバンを持ち、職員室を出る。 学園内にウマ娘はいない。

 

外を出る。

 

雨が少しずつ降り始めてきた。 これはだんだんと勢いが増してくる天気。 一応折り畳み傘はあるけど、傘はそこまで大きく無いので大雨は困る。 雨水はカボチャ頭である程度防げるけど水を吸うと重くなるから急ぐか。

 

 

 

ザッ ザッ ザッ

 

 

 

「?」

 

 

誰かが学園のターフを走っている。

 

いや、走っているけど、この場を味わうように走っている気がする。

 

でもその脚は早い。 タブレットの動画の中で見たウマ娘よりも鋭い脚力を持っている。 思わず足を止めて眺めてしまう。

 

 

「…」

 

 

自分の走りさえ、良ければ今は他のことに目も暮れない。

 

ウマ娘が、ウマ娘をしているみたいだ。

 

そして何よりも…

 

あのウマ娘は、どこか…

 

 

「楽しそうだな」

 

 

 

「?」

 

 

あ、気づかれたか。

 

ウマ娘って耳が良いんだっけ?

 

この距離でも聞こえるもんだな。

 

とりあえず邪魔すると悪い。

 

折り畳み傘を広げて去ろうとした…が。

 

 

「おーい! そのミスター・パンプキン・トレーナー!」

 

 

……これ、俺だよな?

 

周りにトレーナーもいなければパンプキンは俺だけだもんな。

 

折り畳み傘を一旦閉じて、そのウマ娘に振り返る。

 

するとそのウマ娘はピョコピョコと近づいてきた。

 

 

「君もトレーナーさんかな? それで、楽しい走りに見えたかい? それとも…ただ、すごかった様に見えたかな?」

 

「すごかった? 速いとは思ったが、すごいのか?」

 

「!」

 

「…あ」

 

 

いや、待て。

 

トレーナーとして「すごいのか?」の感想は些か不味いだろう。

 

ダメだ。

 

あまりウマ娘の走りについて会話などした事ないから客観的な反応になってしまう。 てか中央にいて「すごいのか?」はトレーナーとして欠陥だろう。 いや、カボチャの時点で欠陥ですけども、もっと褒めるとかあっただろうに。

 

ああダメだ! このままで本当にギャルに優しくされたオタクトレーナーみたいじゃないか!

 

違う! 俺はニュータイプだ!

 

 

でも、何故かな…

 

このカボチャを被ってるとお世辞なんて対応は取れなかった。

 

言葉は冷めたように、その代わり濁りなくまっすぐとしたような…コレもマフティー性って奴なのか?

 

違う。 純粋に俺が無知なだけだ。

 

中央のトレーナーとして相応しく無いな。

 

 

「ぷっ…くくっ、あっははは! そうなんだ! 君はそう思うんだね! 初めてだよ、すごいのか?だって言われ…っ、ぷくくくっ、ちょっと待ってね。 ふふっ、だめだ、ふふふっ!」

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ、大丈夫。 とても愉快な回答を得られてね、新鮮だった。 でもそうか。 あなたはすごいのか?って答えるんだね」

 

「カボチャの頭を被らなければならない未熟者でな、ウマ娘の凄さなど素人の俺にはわからない。 ただ楽しく速く走っていたように見えたんだけど。 気を悪くしたのなら、すまない」

 

「いや、良いよ。 とても嬉しかったから。 トレーナーからそんな風に見てくれるなんて、この年代になると無いのかって思ってたから」

 

「楽しそうに走ることがか?」

 

「それ以上に割り込むんだよ。 楽しいより凄い。 楽しいよりヤバい。 楽しいよりも強い。 大衆から注目を集めるトゥインクルとして仕方ないけど、アタシの原動力はこの気持ちなんだ。 誇り高い実績は良いと思う。 でもそこに意味を求められないならアタシはただ走るだけのマシーンだ。 アタシはそれをいつまでも忘れたく無い」

 

「中央に来てそれを言うのはどうなんだ? ただ楽しい走りなら中央じゃなくても良いと思う」

 

「かもね。 でもそれは半分間違いとも言える。 舞台も大きければ楽しさも増す。 あのマルゼンスキーとかはそう思っているよ。 もちろんアタシも」

 

「そうなのか」

 

「うん。 だからアタシは楽しさを膨らませるために、中央に来て、その楽しいを得る。 その過程で重賞なり、皐月賞なり……そのまま三冠なり…何でもだよ。 楽しんだ上で獲るから」

 

「もうトゥインクルにはデビューしてるのか?」

 

「んーん、まだだよ。 ここに来て一年越した」

 

「そうなのか」

 

「そう。 アタシは何事にもまずは楽しさを求める。 でも求められる条件に一致するトレーナーが居ない。 アタシの描いた『コレ』を見てくれるトレーナーが現れないからね。 ……あはは、怠惰で独りよがりかな?」

 

「いや、理想が高いのは構わない。 しかしココでは結果を押しつけられる。 そこに堪えて挑むか、放任になるかは自由だ。 でも楽しさを前提に走るのは悪いとは思わない。 それが君の原動力なら、それは大事にしておけ。 このカボチャもそれに等しい」

 

「何で被ってるの?」

 

「求めているからだ。 罰の中の救いと、己の反省を。 それが拭い切れるまではトレーナーとして活動する限りこのカボチャは外せない」

 

「そうなんだ。 ねぇ…それ、楽しい?」

 

「楽しくないな。 そのために被ってる訳でもないからな」

 

「そっか…」

 

 

雨が少しずつ降り始める。

 

俺は再び折り畳み傘を広げた。

 

 

 

「ねえ、もう一度聞いて良い?」

 

「なんだ?」

 

「アタシの走りはどうだった?」

 

「楽しそうに見えた。 凄いかは分からん。 だが凄いのかもしれない」

 

「そう…ふーん。 ならさ、ミスター・トレーナー? 明日の選抜レース見に来てよ。 そこでもの凄い走りをするからさ。 そしたらまた明日、選抜レースが終わったら感想を聞かせてね」

 

「?」

 

「ね、良いでしょ? 絶対に来てよ」

 

「そうだな、そこまで言うなら見に行こう。 だが…口約束じゃ困るだろう。 コレを渡しておく」

 

 

開いた折り畳み傘をウマ娘の彼女に渡した。

 

ピーンと尻尾が立つ。

 

何そんなに驚いてんだ?

 

 

「明日それを返してもらう。 その代わり、走るのは終わりにして、残りは明日にしておけ」

 

「あ、うん」

 

 

 

そう言ってトレセン学園を去る。

 

俺は楽しくはないと答えた。

 

でも明日は少なからず楽しみになった。

 

 

 

そういや名前聞き忘れたな。

 

…まあ、いいか。

 

どこか猫味ある人懐っこい感じのあの顔は覚えた。

 

あと、あの小さなシルクハットと英語2文字がトレードマークだろうから、すぐにわかるだろう。

 

……カボチャ頭、雨で少し重たいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや…? 今日はずぶ濡れにならずに帰って来たの…か? 珍しいな」

 

 

「ただいまルドルフ。 傘借りちゃってね。 でもお散歩は楽しかったよ。 あと、拾い物もした。 いや、言うならば収穫かな? まだ秋じゃないけど」

 

 

「??」

 

 

「んん、なんでもないよ。 それじゃあね」

 

 

 

 

タオルを用意して待っていたウマ娘…

シンボリルドルフは何かを感じる。

 

 

まもなく、ソレは動き出す。

 

そう予感した。

 

 

 

 

 

つづく

 

 





性格云々は独自設定だから気にしないで。
ただ可愛いなって思えば無問題だから!
3Dあるんだから実装はよ!(運営に実装を促す踊り)

ちなみにシンボリルドルフやマルゼンスキーはまだマブイ中等部です。

あとオタクに優しいギャルは都市伝説だから本気にしたらダメだぞ!


ではまた



作業BGM【ルパン・ザ・ファイアー】

原作:閃光のハサウェイを読んだ事あるニュータイプの方はいますか?

  • 読んだ事ある。
  • 読んだ事ない。
  • ゲームや映画や動画並みの知識。

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