やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

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エイプリルフールだから仕方ないね(予防線)




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___華麗であれ。

 

___至上であれ。

 

 

幼い頃からそう教えられ、そう教わり、その教わりを秘め、一族の至高として健在であろうと研鑽を積み続けて、今も尚、その私でいる。

 

 

 

___挫けることなかれ。

 

 

もしそこに甘んじるなら、それは容易く終わりを告げる。そうなれば一族の繁栄を、これまでの軌跡をたった一つの頓挫でその名を否定することになる。行先に迷い、その場で足踏みなど言語道断であろう。華麗であることは踊り続けること。足を止めてはならないのだから。

 

 

 

 

___絢爛たる勝利に、不変の喝采を。

 

 

それを願い続け、一族と共にそうであろうとするため、自身を先陣へと理想と共に置き続ける。そこに息苦しいなど考えたこともない。私は誇る。その一族の一人として駆けることがこの名を持って許されているのだから。

 

 

 

___常に最たる輝きを。

___それが我が一族の玉条。

 

 

 

だから……普通ではダメなんだ。

 

普通以上を欲する。

 

私をそうしてくれるためのパートナーが必要。

 

だが都合よく現れるだろうか?

 

この【名】を磨き上げてくれる研磨職人(トレーナー)が。

 

 

 

 

 

 

 

傲慢であろうか。

 

異質であろうか。

 

非情であろうか。

 

高望みであろうか。

 

ソレが現れることはなかった。

 

職人がそう易々と現れることは無かった。

 

私が提示する道に対して一つの狂いすら許されないそのワルツを踊りきれる者など現れず、一族の繁栄と誇りを夢見るストーリーテラーから一人ずつ離脱していった。

 

 

ええ……分かっている。

 

分かっています。

 

コレは容易くない。

 

そうしたのは私。

 

ソレを強要したのも私。

 

常人に与えられるモノではない。

 

走るための世界であまりにも場違いな内容を込めた選抜試験を参加者に求めたのだから。

 

テーブルマナー、社交ダンス、護身術など…

 

一般人には無縁たる姿勢を求める。

 

それがなければ私の隣に立つ資格はない、と。

 

 

だから、参加者全てがそこから絶った。

 

私に夢を諦めた。

 

私と歩く道から外れた。

 

ココには誰もいない。

 

30日の期間で研磨職人(トレーナー)は現れなかった。

 

 

 

「お嬢様」

 

「些か、厳しかったでしょうか。もしくは高望みが過ぎたのでしょうか。私を… 私たらしめる者が現れることを、ココが中央だからそれが存在すると、高望みに求めた私の………」

 

 

 

幼い頃から長年付き合ってくれた執事の言葉に私は思わず「間違いでしょうか」と、その弱音を見せることになりそうだった。

 

私は吐き出しそうになったその言葉を止めたが執事は既に吐き出しそうになったその先の言葉を汲み取るだろう。

 

しかし執事は何も語らない。私が至高を求め続ける限り何も言わない。否定することはない。

 

 

 

 

___華麗であれ。

 

___至上であれ。

 

___挫けることなかれ。

 

 

 

幼い頃から教えられた言葉がのしかかる。

 

苦しい筈なんかない。

 

むしろ誇らしくあった。

 

私がその一人として背負える名誉だから。

 

けれど現実を見る。

 

誰も現れなかった。

 

この30日間で誰も存在しない。

 

ではまたコレを繰り返すのか?

 

それとも質を下げ、妥協するべきか?

 

だがそれは華麗であることを疑い、至上であることを諦める意味になる。

 

定めたものから狂いを得てしまう。

 

それは良いことだろうか?

 

 

でもこのままでは…

 

 

何も成せない。

何も得ることない。

 

しかしその傲慢に()()()くれる者でなければ私は…私を()()()()()ことすら叶わない。

 

 

 

「トレーナー選抜試験、見直しを行います」

 

「畏まりました」

 

 

 

執事は多くを語らない。

 

ただ役割を全うする。

 

そして私は悟る。

 

一つの美しい枝を折ることになること。

 

その美しい枝があるから躊躇われる。

 

誰でも剪定できるような木々に成り代わる。

 

そう考える。

 

そう考えて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは………トレーナー選抜試験、表?」

 

 

 

届いた声に私は振り向く。

 

そこにはなんてことない、中央のトレーナー。

エリートであることは間違いないが。

 

でも今の私にとっては……

いや、なんでもない。

 

それより。

そのトレーナーは一枚の書類を持って呟く。

 

どうやら私は書類を一枚落としたみたいだ。

 

見直しのために持ち歩いていた書類。

 

どうやら思わず落としたらしい。

 

物の損失など、一族の怠惰。

 

忘却気味だった私自身の甘さと弱さを再度噛み締めながらその者に近づく。

 

するとそのトレーナーは私に気づいた。

 

 

「……もしや君の落とし物か?」

 

「はい、その通りでございます。拾って見つけていただきありがとうございます」

 

「そうか。少し見てしまった。すまない」

 

「いえ。大事な書類を落とした私の落ち度でございます。どうかお気になさらず」

 

 

 

少しだけくしゃくしゃになってしまった書類を受け取り、それをクリアファイルに収める。

 

私は……お辞儀をする。

……取り繕っている。

 

いま、動揺しているから。

 

それほどに弱っている私が少し怖いから。

 

だからせめて、お辞儀は忘れず。

 

その形だけでも魅せようとして…

 

 

 

「身構えてる時に、死神は来ないものさ」

 

「……え?」

 

「皆必死だ。凝視しない限りそれは分からないものだ。だから怯えず堂々としていれば良い」

 

「!」

 

 

何を…言い出すの?

 

何を言っているの?

 

私はなぜ?

今ほんの少しの言葉に、揺れている?

 

見透かされたの?

 

今の弱々しさを??

 

するとそのトレーナーは去る。

 

 

 

「待って!」

 

「?」

 

 

あまりにも単調な言葉。

 

私は、私であることを忘れて叫んでしまう。

 

そんな幼さはとうの昔に置いた筈なのに。

 

 

 

「なぜ?なぜ…?」

 

 

主語が抜けたまま問いかける。

 

あまりも伝わりづらい言葉だろうか。

 

それほどに私は動揺しているから。

 

一族としての至高は脆く崩れ落ち始める。

 

 

 

「似てたからな」

 

「似ていた…?」

 

「かなり昔の……俺にな」

 

「…」

 

 

 

見た目は若い人だ。

 

むしろそのトレーナーバッジを見れば汚れ一つない事がわかる。

 

つまりこの人は新人。

 

今年入学したばかりの私と同じ。

 

 

けれど…

 

なぜこの人はこんなにも長い時間を見てきたような眼をしているのか?

 

まるで私の執事と同じような眼差し。

 

その眼の奥はとても疲れたような…

 

いや、少し違う。

何かやり遂げたような眼差し。

 

例えるなら大役を演じ終えた役者の疲労感のように見える。視察先でそんな人を何度も見てきた。今は演じきったその大役を糧にその片鱗だけ指をなぞり、ゆっくりと歩みを進めるような落ち着いた佇まい。理想的だ。

 

だから理解する。その眼を。

若枝の中に込められた年季を。

 

 

彼は一体『何者』なんだろうか?

 

 

 

「あなたに、この書類を」

 

「?」

 

 

荷物の中のクリアファイルからトレーナー選抜試験表を一枚渡す。先ほど地面に落ちた紙とは違ってしっかりと綺麗な資料を一枚。それを特に説明もなく差し出す。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

それ以上の言葉を重ねない。

 

何も語らない。

 

なんとも不出来な交わし合い。

 

華麗なる一族として失格だ。

 

語れる口があるのに、説明も無く私は()()()

 

私はどうやらその道から狂ったみたいだ。

 

 

 

でも…

けれど…

 

 

褒められない憶測の先で…

 

それがこの人に対して『正解』な気がしたから…

 

 

 

 

「これ、まだ試験やっているのか?」

 

「はい」

 

 

「わかった」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

いや待って。

 

『はい』では無いが?

 

いえ…それは言ったのは私でございますが…

けれど、あまりにも………ええ、疑いのない。

 

狂っているのに、でも狂ってない。

それはこの人にとって当たり前みたいに…

 

 

 

「……この紙は返そう」

 

 

「…」

 

 

 

しかし返ってきた言葉は、否定。

 

形にして返される。

 

ええ……そうです。

 

それは間違いございません。

 

何度も言いました。

コレは常人にはハードルの高い試験。

 

一般人には無縁な項目ばかり。

この先の私のためだけに用意された舞台。

 

それをトレーナーに求める。

そこに研磨職人を欲している。

 

だから普通の反応でございましょう。

大丈夫です。責めることはありません。

 

それは、そうさせるために。

もしくはそれを乗り越えて欲しいがために。

 

一族の価値を磨ける手腕を選定(せんてい)するため。

一族の宝石を磨ける手腕で剪定(せんてい)するため。

 

華麗なる一族に相応しい者を選ぶため。

それを強く、厳しく、私は促している。

 

 

だから、敬遠されることくらいは……

 

 

 

 

 

「貰うなら、くしゃくしゃな紙の方でいい」

 

 

「______わかりました」

 

 

 

 

 

 

長い返事の先に、彼は応えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから彼はたった一人だけ選抜試験を受ける。

 

つい先月まで50人近くと選抜試験の参加者で賑わっていた筈なのに、今そこには一人だけ。

 

ただ一人だけ、この試験に挑む。

 

 

 

 

「樫本様、見事な護身術です。後ろにも目を付けたような動き。質量のある残像には大層驚かれました」

 

「中央のトレーナーだからな」

 

 

 

 

そうなの?

 

 

 

 

……そうですか。

 

なるほど。

 

世界は広いですね。

 

私もまだ未熟です。

 

もっと視野を広めなければなりません。

 

 

 

それからも次々と試験は進みます。

 

しかしあまりにもテンポが早い。

 

本来なら30日間の練習期間が設けられ、我が財閥が保有する試験内容にあったプロフェッショナル達が参加者にイロハを教え込む予定ですが、彼はこれまで参加してきた者達とは違って全てその日にやってのけました。

 

まず最初に護身術。まるで相手を先読みするような動き。しかもウマ娘を相手に見事な護身が出来ていました。質量を持った残像に関してはよく分からないのでノーコメント。申し訳ありません。でも手練れであることは間違いない。

 

次にテーブルマナー。よっぽどなことが無い限り庶民には必要とされない作法。しかし彼は名家樫本家の人間でした。しかしそのことに関して彼は枝分かれた分家と言ってましたが、その作法には確かな品性が込められてます。何より洗練された作法にはその年齢以上を思わせてくれる。彼は何者なのでしょう?

 

そして社交ダンス。ただ体を使って踊るということなら誰もが出来ることでしょう。しかし相手に敬意を持ち、その刻を共有する社交ダンスは違います。定められた要素でのみ許される踊りはとても細かいルールがございます。これには彼もそれなりの苦戦を強いられました。ですが踊りに関してはそれは見事でした。言うならば慣れているという表現が合う。おそらく難しい踊りの経験が彼の中にございましょう。

 

 

それからも試験は続き。

 

そして、とうとう終わりは告げます。

 

 

そして…

 

そして…

 

 

 

 

 

「お疲れ様です。ここまでよくついてこられました。お付き合い頂き感謝致します」

 

「なかなか新鮮な経験だった。疲れるが」

 

 

選抜試験中はそれはもうキリリとしておられましたが、終わってからの切り替えはとんでもなく早く、今はややだらしなく姿勢を作り首を回しております。慣れないことばかりで凝り固まってしまったのでしょう。

 

 

 

「で?どうなるんだ?」

 

「はい。合格でございます」

 

「そうか。しかしそれは今のところ、消去法で生まれた話だな」

 

「……」

 

 

 

痛い言葉をもらい、私は言葉が詰まります。

 

たしかに、その通りかもしれません。

なにせ、候補に誰もいないのですから。

 

ここに彼だけがいます。

彼しかいません。

 

しかしこれまでの参加者とは違い、脱落することなく最後まで残った彼が一人ココにいます。

 

ですが、たしかに、残ったというそれだけで価値を決めるのはあまりにも放棄的。それはこの人に対しても失礼。

 

何よりこの方に選抜試験表の資料を渡してしまった私があまりにも傲慢極まっています。

 

最終的に参加を希望したの彼ですが、この話に導いてしまったのは、選抜試験表の資料を落としてしまったわたしの落ち度です。

 

私が弱いのです。

 

私が……

 

母とは違って……

 

 

 

「だからそうならないようにしよう」

 

「え…?」

 

「次は俺が君を試す」

 

「試す…?」

 

 

 

それからターフに二人で集まりました。

 

周りは暗く、誰もいません。

 

このターフも残り30分程度で使用可能時間が終わりを迎えてしまいます。

 

 

 

「先に言っておく。俺は寝ぼけてる」

 

「寝ぼけ…て?」

 

「つい先月まで長い長い夢でも見てたような感覚だ。どこまで行き着いたのかも。どこまで辿り着いたのかも。わからん。だがとても濃い軌跡を地球の引力に縛られたこの足で自ら刻んでいた。確かだ。しかし今は何か取りこぼしたような感覚のままこの中央に新人として入ってきた。足りないと言った方がわかりやすいか。しかし今わかることはこの魂に記されたキーワードからして、ウマ娘に狂えば答えが見つかるってことだ」

 

「狂えば分かる?」

 

「簡単に言えば夢中になるってことだ。そうすれば俺はそうだったって事がハッキリする。そうなればこの魂は間違いなくソレを綴ってきたと実感できる。そのためにはウマ娘が必要になる」

 

「それが、私ですか?」

 

「俺はロマンチストってのに魅力を感じるタイプで運命ってのはそれなりにあると思う。まあ大体はウマ娘にご都合主義を夢見るマッチングアプリ(三女神)がそうしてるらしいが、でも俺はその先だろうとヒトは心に確かな意志を持てば身構えてなくても死神の招きに関係なく、何もかもが意味を持って集えると思っている。宇宙(そら)の下にあるターフで巡り合わせとはそういうものだと考える」

 

「では……私と貴方は今ここに意味があって集われたと?」

 

「ハロウィンになれば誰もがカボチャ頭を被ることになる。だがそれはその日が決まっているからそうなっているだけ。しかし俺と君がここに立っているのは今日、ジャックオーランタン(彷徨える魂)を救うために用意されたハロウィンだからとかではない。あのくしゃくしゃな紙程度の事で巡り合ったからここにいる」

 

「巡り合い…」

 

「でも"まだ"それまでの話。今の俺たちは使用時間ギリギリでターフに集っただけ。答えと応え次第ではこのままなにもせず寮へ帰る事にもなるだろう。しかしそれは今から君がその意味を確かにさせろ。だから俺に促せ

 

「!」

 

 

 

枝分かれの分家であろうともその血筋は樫本家のトレーナーであることに間違いない。与えられた課題はそつなくこなす。しかし平凡な人のように演じる。本家からかけ離れた分家だと自負しながらその程度に歩む。

 

けれど、言葉を重ねれば、重ねるほどこの人は眼に見えるものだけが答えとしない。

 

その内側に……ナニカを抱えている。

 

それがいま、ほんの少しだけ見えた。

 

表現し難い、彼のホンモノが見えた。

 

 

 

「得意な距離は?」

 

「マイルでございます」

 

「そうか。なら魅せてくれ__ウマ娘」

 

「!」

 

 

 

それはもう愛おしそうに『ウマ娘』と紡ぐ。

 

そこに印象的に感じながら私は位置についた。

 

彼からいつでも構わないと告げられる。

 

私はウマ娘だから走り出した。

 

脚質に合わせた走りを彼に魅せる。

 

それからスパートの位置を確認する。

 

その時にチラリと彼を見て…

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 

それはもう、柔らかな笑みでした。

 

穏やかに表情をターフの先に見せる。

 

まるで子供に感情が芽生え…

いや、コレはもっと先かも知れない。

 

 

いうならば……

 

 

 

 

痛みを知った赤子のような。

 

 

その頃に芽生えたような、純粋さ。

 

 

 

 

ユラッ

 

 

 

「っ、少し、足が…」

 

 

 

気づいたら、足が重く感じる。

これは………?

 

いえ、単純な話でした。

 

体調管理を少し怠ったのかもしれない。

 

いや、怠った。

 

入学時から忙しく周っていたから。

 

でも、一番は心の乱れだ。

 

一族としての、心の揺れだ。

 

自分でも気づかない焦りから生まれたほんの少しの乱れ。

 

私はこんなに脆かったのか?

 

いや脆かった。幼い頃から脆かった。

 

脚も、体も、心も。

 

今こうして走れるのは願ったから。

母にそうでありたいと願った。

 

『ワガママ』があるから。

そして一族として背負いたいと言ったから。

 

けれど今の私は何を成せる?

 

考えるほどに乱れ切った足で何を示す?

 

品性?

至上?

栄光?

 

このような小さな体に何も満たない。

 

私はただ、ただ、そこに理想を残しただけ。

 

その理想を抱えたままこのターフで溺死しようとする。それが乱れを。

 

自分を疑いそうになる心の弱み。

走りを。

 

 

こんな弱い私は。

 

走る、私にとって、邪魔___

 

 

 

 

 

「やってみせろよ!!」

 

「!」

 

 

 

 

怒声に近い声。

 

でもそれは期待の声にも感じられる。

 

やってみせろ??

やってみせろ???

 

 

 

 

「ウマ娘なら!なんとでもなるはずだ!!」

 

 

 

 

理論もへったくれもない。

 

なんて、思考放棄な言葉だ。

 

流れだけに身を任せる愚かさだ。

 

そんなの私を、私たらしめるに不要な要素。

 

 

 

 

でも…

 

けれど…

 

いや、だけど……!!

 

 

 

「ッッ!!!」

 

 

 

 

こんなにも騒がしく、私は、私を忘れる。

 

それが間違いだというのに!

 

___脚が今、早くなる!!

 

踏み込むターフが教えてくれる。

 

思い出させてくれる。

 

この名を背負ったウマソウルが。

 

彼の声に狂っているんだ。

 

 

 

 

 

 

たぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!

 

 

 

 

喉の奥から、焼けるように叫んだ。

 

私らしくもない。

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

「それが君だな!ダイイチルビー!」

 

「!」

 

 

 

寝ぼけていた彼はとうとう目覚めたのか、興奮したような声と表情を初めて見せる。

 

 

 

「あのような…貴方様から声を頂けなければ未熟のまま走っていたわたしの走りが……良いんですか?」

 

「ダイイチルビーはダイイチルビーとしてウマ娘で走った。それで充分だ。お陰で俺は完全に目が覚めたよ」

 

「それは………ふふっ、良かったです」

 

「ああ。ありがとう」

 

 

 

私は思わず、ふわりと笑ってしまう。

 

だってこの人は、こんなにも走っていたウマ娘に喜んでいる。

 

 

ああ、なんて危ないのでしょうか。

それだけで私は狂わされようとする。

 

 

 

すると彼は跪いて、手を差し出した。

 

 

 

 

至高と至宝を夢見しお嬢様。その赤は真紅の稲妻、または赤い彗星となりソレを三倍に満たせましょう。枝分かれた小さな葉音ですがこの樫本が貴方の研磨職人として磨き上げます。どうかこの歪な魂をしたジャック・オー・ランタンと狂って頂けますか?

 

 

 

 

 

もし、私の前にトレーナーが現れなければ万が一のため、我が一族で保険として用意されているトレーナーを、その適正者この学園にお連れするか、もしくはこれから私はひとりで研鑽を積むだけでした。もちろんそのための知識は幾らかあります。

 

だがしかし、中央の世界に渡り合うにはこの門を正式に潜り抜けた者から選び取らなければなりません。一人で全てやれるなど容易く無い。

 

それほどにこの世界は厳しく、簡単ではないから。だからこの中央でトレーナーを選ばなければなりません。そうでなくては母と同じ道を辿ることすら出来ないから。

 

 

 

でも…

 

今は砕かれた宝石で新たな作品を作る。

 

それが私だけの始まりになりましょう。

 

 

 

 

 

 

「これから、よろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしく。ダイイチルビー」

 

 

 

 

 

 

 

 

___彼は危険人物だ。

 

___我々一族の秩序を乱す、者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダイイチルビー!後ろからダイイチルビーだ!後方から一気に食い破り!そしていま一着でゴールイン!!!なんと桜花賞に続いて安田記念を制したのはダイイチルビー!!!紅玉を飾るクラシック級の至宝が!シニア級を交えた大舞台で栄光を手に入れました!』

 

 

 

 

 

 

母の道を辿るために欲するものが多い。

 

でもそれは一族として必要だから。

 

それを強く強く、求めました。

 

けれど、共にする者が一人と現れませんでした。

 

高望みであることはもちろん、紅玉を仕立てる研磨職人が現れないかもしれない、その考えは当然ございました。

 

それはその通りになろうとしていました。

 

私は一度、心がほんの少しだけ乱れました。

 

焦燥感に気づかず、揺れました。

 

……ほんの少しだけは言い訳になりません。

 

 

___華麗であれ。

___至上であれ。

 

___挫けることなかれ。

___絢爛たる勝利に、不変の喝采を。

 

___常に最たる輝きを。

___それが我が一族の玉条。

 

 

掲げた言葉が嘘になるから。

 

故に、私は、私に未熟を見せました。

 

そして、くしゃくしゃな紙を落としました。

 

コレが私だと表すように。

 

 

 

だが、それを、とある男が拾い上げました。

 

わたしの落とした歪を掴み取り、選びました。

 

綺麗な資料に取り替えず。

 

拾い上げたそれを握りしめて。

 

 

彼は____応えた。

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラガラ!!

 

 

 

「ウェイウェーイ!おじょぉぉお!!マジ今日もプリプリプリティーでダビッてんねぇ!ふーふー!!」

 

 

 

 

それにしても厄介なのが来ました。

 

 

 

「まーた来たのか、このパリピ」

 

「あー!樫本のかっしー!よろよろー!てかタブにぶら下げてるそのカボチャ頭のアクセサリー良くねぇ?てか季節外れがトレンディでさらにバエなんだけど!エグいつーかその上を行くアグいでアグいんだけど!つまりバエルでアグニカ!あはははは!バリっちょめちゃんこアグニカポイントたっけぇー!ふーふー!!!!」

 

「何を言ってるか分かりませんがダイタクヘリオスさん、私達はこれならミーティングでございます。足を運ばせ申し訳ありませんが本日はお引き取りください」

 

「うえー!!?えええええ…今日もお嬢が塩ィィィィィィィぼおおぉぇぇぇぇぇえておろろろォォメケメケメケメケメ……でも、ま! お嬢はかっしーがしゅきしゅきのしゅきピだから仕方ないね!」

 

「!!」

 

「やれやれ、どの世界線でも太陽神は太陽神に変わりないってことか…」

 

「んー?なんか言ったー?」

 

「なんでもない。それより君のトレーナーが探してたぞ。通知来てないか?」

 

「それってマ?ウチのことトレーナーのマッキー探してたん??……ぎゃぁ!ほんとだ!通知来てんね!気づかんかった!あはははは!かなり草ぁ!めんご!めんご!」

 

「わかったら行ってこい」

 

「ウェーイ!よろでございマングース!って事で、またねお嬢!今度まっきーに教えてもらったアグニカごっこ教えてあげんね!」

 

「結構です」

 

「ぎゃぁぁ!?やっぱめちゃ塩ィィィ…」

 

 

 

そう言って走り去ります。

 

やれやれ。

 

コレでやかましい人がいなくなりました。

 

やっとこの方と二人だけになれます。

 

 

 

「ではミーティングを始めましょう」

 

「わかった。そんじゃ次の最速を決めれるレースと言えば秋のG1である…」

 

「その前に姿勢が悪いです。だらしないです」

 

「別にこの部屋くらい良いだろ」

 

「ダメです。私たちは桜花賞に続いて安田記念を制しました。コレまで以上に注目が集まります。そのため日常時でも…」

 

「じゃあ腕に乗ってレース入りするの禁止な」

 

「!!?」

 

「いや、何衝撃受けてんだよ。実際問題指導者と生徒は適切な距離だろ?そりゃ世間はアグネスデジタルを筆頭に受け入れてるけど一族の至宝として考えたらもう少し丁寧な扱いでよろしいかと思いますが?」

 

「いえ、それに関しては例外でございます。我が一族を磨きあげる職人の腕に紅玉(ルビー)を乗せるのは違和感ございません。それに貴方は私のトレーナーであることを世間に証明するため大変必要なこと。故に問題点として挙げられる必要性は皆無でございます」

 

「このワガママ娘」

 

「そうさせたのは貴方です。それがダイイチルビーだと」

 

「そうかい。それなら俺は、マフ……」

 

「?」

 

「………いや、なんでもない。終わった役割を引きずるのも良くないな。俺は俺だな」

 

「……まだ寝ぼけてますか?」

 

「二度寝は社会人の楽しみだからな」

 

 

 

彼との会話はややインテリが過ぎます。

 

何かに影響されたが如く綴る。

 

しかしそうやって彼は完成を目指した。

 

私にとって先駆者です。

 

だから私はこの人を必要として、私が望む高みへと進む。

 

そのための__最速を駆けるウマ娘。

 

母とは違う道を目指し、私がダイイチルビーたらしめる、そのための道を彼は提示した。

 

なら、私はそれを信じる。

 

 

 

「貴方は貴方。私のトレーナー、不純物たるこの傲慢すら至宝の一部として磨いてくれる私だけの研磨職人でございます」

 

「そうだな。今はそれで良い。促された以上俺は君のトレーナーだ」

 

 

 

わたしは変わりました。

 

いえ、もしかしたらあまり本質は変わってないかもしれません。

 

でもそれが私。

 

私たらしめようとする先で完成されるだろう紅玉のわたし。

 

隣にいるジャックオーランタンが紅玉にカボチャ頭を被せて、その中で磨かれる。

 

一族の夢に、ウマ娘と狂って頂けてますから。

 

だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとでもなるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり








Q_このトレーナーさりげなく周回してない?

A_この程度、ハーメルンでは嗜みだから。



じゃあ仕方ないな!!!





【内容・目的】
公式のシナリオでは消去法でトレーナーを掴んだがもし選抜試験に最後までトレーナーが残らず現れなかった世界線だとそれなりにやばかったのでは?その時三女神はふと閃いた!この内容はIFで使えるかもしれない!ってことでマフティー(動詞かつ同士)しました。どゆこと?その結果としてどこぞの肩に三毛猫を乗せたループ系主人公のマフティー性を感受するとリバースカードをオープン!女神が後出しで三体?来るぞ!遊馬!(カン!コン!)してしまう。そうやって夜のテンションで一夜中書き殴った暴走召喚で生まれたのがこの話。たぶん後で起きて後悔する。ともかくエイプリルフールなら許されると考えた俗物作者が原因だね。でもコレ系はなんぼあっても良いですからね。ええ。


【ダイイチルビー】
自分をワガママだと思っているウマ娘。別にそんなことは無いけど品格を求め過ぎた結果として試験内容のハードルの高さに合格したトレーナーが現れず、実はこれやばくね?と気づいてしまった故に焦り、自分の作り上げた理想やビジョンが崩れ躓きそうになるところでくしゃくしゃな紙を拾い上げたマフティーによって無事に脳が焼かれた。ゴールドシチー曰くコレをパンプキンケーキと呼んでるらしい。その後は母と同じ三冠を目指そうとするがトレーナーとの話し合いによってDなら最速しようぜ!お前最強のマイラーな!って事でクラシック級で殺人的な加速にて安田記念を制覇、マイルCSではレコードを出したり、URAの脳を破壊したり、最速を駆け抜いた一族として謳われることになる。トレーナーの腕にちょこんと乗る腕乗りルビーはトゥインクルシリーズで名物と化した。


【トレーナー】
ご存じの通りカボチャ頭してたトレーナーくん。前世はどこまで人生を歩んだのかあやふやなままも、精神と意識はハッキリしてたのでどうせ三女神が原因だろと呆れと怒りで半分ずつ。しかも身体にあるこの魂は前世の物か、または映し出された別モノの魂か、ループを繰り返すどこぞのクソボケトレーナーみたく彼の二周目が始まる。ニャー。しかし人の魂を簡単に弄っちゃうから…ほーら!やっちゃった!とゾルタン・アッカネンもドカーン!と愉快に実況しちまう状況だが、コレはウマ娘の世界でマフティーしていた魂。またウマ娘に狂えることに喜びもあり、とりあえず状況把握に努めると前任者がトレセンへ就職する前日である事を知り、学園でくしゃくしゃな紙を拾い、名家のウマ娘にマフティー構文するとスカウトしてしまう。お前精神状態おかしいよ…。まぁ変になっちまったのは仕方ないかもしれないが、それでも彼の宇宙の心は救われてるのでカボチャ頭のマフティーは学園祭以外ですることは無かったのでこの世界では【GUNDAM】をしなかったため彼のもとに多くは集っていない。それでも経験多きトレーナーとして、スカウトしたウマ娘の脚をミラクルさせて卒業の最後まで走り切らせたり、ルビーが殺人的な加速をした結果脳を焼かれてトールギスと化した真面目すぎた天才少女が逆指名してきたり、飽きない個性豊かな担当と共に至って普通の名トレーナーとしてこの世界を生きた。さてはオメー主人公だな??



そんな感じに、急に書きたくなった。
それだけの話です。


はい!これにて異常で、以上である!!
お兄ちゃんもエイプリルフールもお終い!!


ではまた

ミスターシービーは引けましたか?

  • 単発で引いた(迫る影のコツ)
  • 10連で引けた(直線一気のコツ)
  • 20連以上で引けた(ウマ好みのコツ)
  • 100連以上で引けた…
  • 爆死ッン!バクシーン!!
  • 親の顔よりも見た天井(雨の日のコツ)
  • 今回は見送り(追い込みのコツ)
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