やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

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ぶっちゃあまり深く考えんで読んでくれたらうれしい。
それらしく書いてるだけだから(思考放棄)

あと誤字脱字報告、本当にありがとうございます!!
そそっかしい作者でほんとうに申し訳ない…!!




if story _ ∀ 3

 

 

 

 

 

51%だけ、私を分かってくれる父がいる。

 

父は研究者だから、頭の良い人。

 

それでも私の全てを理解できない。

 

私はあまりにも___異質極まっている。

 

誰とも交信が叶わず、誰とも会話が出来ない。

 

理解するを妨げられ、拒絶が宇宙以外を招く。

 

それがこの世界にいる、(ぼく)という存在。

 

この世界線は私を助けてくれるのだろうか?

 

 

 

 

「…おーい……おーい……」

 

 

 

白色の袖をゆらりと振り回して呼びかける。

 

私にしか聞こえなかったあの導き。

 

 

 

宇宙(そら)の彼方に聞こえた『コネクト』は……『交信』………ぅんん……彷徨い果てた"指標"が見えない……困った……」

 

 

 

最近まで聴こえていた…ような気がする。

 

余計な光のない宇宙だから受け取りやすい。

 

けれどこの街はあまりにも眩し過ぎる。

 

夜になっても夜空は街の光で明るいから。

 

 

 

「誰…だったの?……宇宙の"未確認"は進行も無い"SECR"……ほんの一瞬だけのは"閃光"のような……うんん、わからない……なのに、とても……とても……"GEMN"…」

 

 

 

聞こえたこの魂が震えた。

 

奮えて、慄えて、震えていた。

 

まるで一つの歪みが双子座として新たに集い、宇宙に共振した。

 

それを感じ取ったあの日、虹のように広まった緑色の温かな光は気のせいじゃなかったかもしれない。触れたのも一瞬だけだった。でも温かで、新たな一歩で、たしかな導き。

 

忌々しい記憶と共に地球へ引き寄せられる隕石すら軌道を変えてしまう、そんな希望の証明。

 

 

 

でも…

でも…

 

ほんの少し触れただけ。

 

 

 

私は…

私は…

 

見ていただけ。

 

 

 

 

虹に乗りたかった………

 

 

 

あの時、感じれた光はもう見えない。

 

いまは無いものを探しに迷うだけ。

 

今日も拾うことなかったアンテナ代わりの白い袖をだらりと下ろす。

 

何も見えない。

 

何も聞こえない。

 

何も応えがない。

 

 

 

でも…

 

でも……嫌だ。

 

気のせいで終わらせたくない。

 

だって…

こんなにも……

 

あの響きは私にとって救いなってくれる。

 

こんな歪な魂に応えてくれる。

 

 

ねぇ?何処?

何処かな。

何処なら、それは聞こえるかな…??

あなたは今、何処にいるの??

 

 

ほんの一度だけ。

ほんの一瞬だけ。

 

応えてくれたあの答えは…

 

 

 

閃光のハサウェイ………

 

 

 

この世に……いや。

 

この世界に……いや。

 

この世界線に存在しない……概念。

 

それが(わたし)を救うはず。

 

いや……そうであって欲しい。

 

何故なら見えてしまう『先』に痛みを知っているから。

 

身構えていても死神は来る。

 

いずれ迫り来る『(ぼく)』の結末。

 

怖くなり、震える腕を押さえる。

 

今日も聞こえなかった。

 

早く…

 

ああ…はやくその虹を見つけたい。

 

そうすれば、未来も、今も、救われる。

 

 

 

「マフティーって………なにかな…」

 

 

 

息苦しさのまま私は歩みを進める。

 

この場所に居所がない気がしたから。

 

 

 

私はいつまでこうするのだろう…

 

そして…

 

いつまでコレを繰り返すんだろう……

 

答えと、応えが欲しい…

 

 

 

 

誰か……

 

誰か……

 

私を______聞いて。

 

 

 

助けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月の第二周目、今年1回目の選抜レース。

 

ウマ娘達がアピールのためこぞって参加する。

 

緊張したウマ娘から、緊張に慣れているウマ娘。

 

それはトレーナー側も同じ。良いウマ娘をスカウトできるか勝負に掛かっているが………いや、悲しいかな。そんなに甘く無いのが中央。

 

なぜならスカウトされるウマ娘も自分を確実に強くしてくれる手腕の良いトレーナーを求めてこのレースに参加しているから。それは当然の話。ウマ娘も信頼できる腕前の者にアスリート人生を委ねたいものだ。確実なのが良い。

 

そのため実績を何も持たぬトレーナー…… 特に新人のレッテルを持つトレーナーはウマ娘からスカウトの「良し」を受け辛い。

 

この時点で躓くことは良くある。

 

何せここは実力主義を掲げる中央の世界。

 

スタートラインから既に勝負が決することも珍しくない。そのため新人トレーナーにとってスカウトは最初の難問となる。

 

あとはコミニュケーション能力。

 

案外これが重要。

 

アスリート以前に相手は未成年である。

 

しっかり見聞きしてやらないと捕まえれるものも捕まえれない。

 

 

さて、そんな俺はこの中央にとってどんなトレーナーとして映るか?

 

前世のことを考えれば得てきた重賞は二桁を超えてはいる。あと何かの間違いかあの勝負師がフランスで世界一を獲りやがったり*1と、そこら辺を合わせればかなりの成果を持ち合わせてるトレーナーだと思うが、ココではそんなの俺の記憶だけにしか残されてない実績。

 

この魂に刻んできた記録は多く備わりしも、今世でその実績が目に見える形で残されてない。経験だけ語っても無理だろう。

 

ああ、やっはり、あの時、あの場所、あのターフであんなにも自由を愛するウマ娘と出会えたのは運命的だったってことだ。そのため今もたまに考えてしまう。

 

出会えたのが彼女じゃなかったら俺は今どうなってたか?

考えるだけ苦痛になる。

 

てか、やめろ、やめろ。

それを想像して贖罪中の前任者の前で苦しんだじゃないか。

もう終わったことだから想像するな。

 

 

そうとも。

ああ、そうさ。

 

今の俺は呪いに縛られていなければ。視線を合わせることで嫌悪感を与えてしまう鎖も無い。今はまともな新人トレーナーとしてこの場にいる。俺はとても正常だ。

 

なら、経験を活かせ。

 

コーナー(スキル系)で差を付けろ。

 

これまで積み重ねてきたコミニュケーション能力なら問題ないはず。得てきた経験は裏切らない。新人のレッテルはどうしようもないがウマ娘の夢を預かるくらいはできる。

 

あの時と同じだ。

 

くしゃくしゃな紙を握りしめたウマ娘。

 

一等星に思い馳せる片割れのウマ娘。

 

他にも何人かいる。

俺自らスカウトした子が。

 

比率的に逆スカウトが多かったが、しかしそれだけ必要としてくれたからトレーナー名誉に尽きることだ。それだけの経験はある。

 

 

 

 

だから、スカウトくらい!

 

なんとでもなるはずだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q__なんとでもなりましたか?

 

A__あ げ ま せ ん ! !

 

 

 

 

 

 

「なんつう即オチだよオイ」

 

 

いやまあ、スカウトしようとしたけど、それ以前に出来なかった。ちゃんと理由はある。

 

実は出走ウマ娘の参加人数、そう多くなかった。

 

新学期始まってからまだ1週間目かつ模擬レース1回目なためか、様子見するウマ娘が多い。

 

それでも選抜レースの参加者に有望株が何人かいた。中央で活躍できるレベル。しかしこういう時は大体ベテラントレーナーが(こぞ)って確保に向かってしまうため発言力の低い新人トレーナーに出番など無い。

 

当然、俺たちはどうやっても後回し。

 

マッチングアプリと化した三女神がご都合主義を抱かない限り新人に出番は少ない。

 

まあこの辺りは分かっていたことなので驚きはしなかったがココが改めて中央の世界だと再認識する。

 

 

 

 

Q_スカウトしたいですか?

 

A_いやー、キツイでしょ。

 

 

 

 

 

 

世界が分厚すぎるわ。

 

 

 

 

 

「うんしょ……うんしょ……」

 

 

 

成果的な意味で言えばスカウトは失敗。

 

これからどうしようか考えていると奥の方から小さな足取りで向かってくる生徒が一人。

 

代わりに前方の視界は本の山で見えなくなっている。やれやれ、またか。

 

 

 

「ゼンノロブロイ」

 

「ひゃい!?」

 

 

声をかけたことが失敗だっただろうか、前と同じように額の高さまで積み重なった本の山が崩れ落ちてしまう。

 

そのまま落下を見送る訳にも行かず咄嗟に手を伸ばして山から落ちる本を受け止めた。

 

 

 

「突然声をかけた俺が悪いけど、もう少し身の丈にあった運び方は無いのか?」

 

「ご、ごめんなさい!返却期限が迫ってたので焦ってしまいまして!」

 

「……まあいい。とりあえず受け止めた分はコチラで運ぼう。ちょうど暇してる」

 

「え?……あ、ありがとうございます!」

 

 

 

ふと思い、受け止めた本を見る。

 

『○○物語』のような良くありげなタイトルがズラリと並んでいる。

 

ぱっと見、英雄譚の書物だ。

 

 

 

「とりあえずココにおくぞ」

 

「は、はい!ありがとうございます!うぅ… またトレーナーさんにお手を煩わせてしまいました…申し訳ありません…」

 

「勝手にやったことだからそこは気にするな。ただもう少し安全な運び方を考えて欲しい。見ていると心配になる」

 

「あぅ…ごめんなさい」

 

 

 

この子はそういう性格なのか。

 

謝り癖がついているのか随分と腰が低い。

 

謙虚なのは美点だが、それは頂けない。

 

……とりあえず話題を変えるか。

 

 

 

「それにしても君は本が大好きなんだな。特に目立って伝記が多い。前に出会った時もこれだけの量を読んでいたのは覚えてる」

 

「っ、はい!そうなんです!わたし!逸話の中で活躍する人達が好きなんです!もちろんフィクションが多く混ざっていることも分かっています!しかしこれはそれだけ記憶に残したい証拠なんです!だから読めば読むほどその人が後世に伝えたい気持ちが伝わりまして!気づいたらその物語に身が溶け込むようなそんな感覚になるんです!」

 

「なるほど。溶け込むような感覚か」

 

「はい!特に王道な物語が大好きです!描かれた主人公の追憶を追いかける… して、その者がどのように歩みを進めたのか?それを読めば読むほど伝記というのは気になって仕方ない!次も求めたくて病まない!そして!そして!苦闘の先で報われた英雄たらん者が旗を掲げた時が一番好きなんです!…あっ!旗というのはですね!」

 

「証明、革命、英雄たらんとする証… など、それを一つのチェックポイント、またはその先に続くターニングポイントとして主人公が掲げた瞬間が読者として最高に染まれるタイミングだろう。溶け込むってそういうことだな?」

 

「はい!はい!!そうなんです!!その通りなんです!!己がここに健在である証明!!歩みを止めなかったからこそ生まれる伝記!!それは一つの答えなんです!なんですっ!!!」

 

「お、おう…」

 

 

 

眼鏡越しのお目目がすっごいキラッキラしてる。

 

文学系あるあるなのかな?

 

好きな物を語れる喜びがあるのか、めっちゃ表情がキラキラしてる。

 

耳もピコピコと揺らして随分と可愛らしく見ていて微笑ましい限りだ。

 

 

 

「あ、あの、トレーナーさんは何かお読まれになったりするんですか?」

 

「書物はあまり手に取らなかったな。手に取ったとしてもウマ娘の育成論文とか参考書とかそっちのタイプ。しかしコレはコレで先人が得て来た記録が書き付けって形で見られるため育成者として読む分には面白いとは思っている。これもある意味…伝記じゃないか?」

 

「はっ…! 確かにです!追憶をなぞるという意味ならそれはそれで伝記かもしれません!だってそれも立派な記録ですから!」

 

「本当はストーリー性があったほうが伝記として認識されるだろうが、レポートに英雄譚が描かれてる訳でもあるまい。いや、待てよ?もしかしたら筆記者の英雄譚じゃなくとも参考書の中に武勇伝のひとつまみくらいは何処かにあるんじゃないかな?論文を書く自分に酔いしれていた、とかで」

 

「ふふふっ、なるほどです」

 

 

 

話すほどザ・文学系少女って感じだ。

掛けているメガネもポイント高い。

 

え?アグニカポイント??

オメーじゃねぇよ。300年眠ってろ。

 

それから本を種類分けしていると一冊だけ気になる書物を見つける。

 

 

 

「おいおい…これはまた難しそうな本だな。天体観測の本…?いや、違うな」

 

「あ、そちらは私のじゃないんです。お知り合いの方がそちらの本を読み終えたようなので私からまとめて返却しようと考えて一緒に持って来たんです」

 

「この一冊だけか?」

 

「はい、これだけです」

 

 

 

無理やり運ばされた訳でもなく彼女がついでで持ってきたらしい。

 

それにしてもこれ学生が読むような本じゃないな?気になって目次を開いてみる。

 

 

 

「…」

 

あー、なんというか、星座の導きが云々、宇宙の真理が云々、無重力の圏内が云々、だったり随分と空を見上げたような項目ばかり目次に書いてある。

 

てかこれ、難解本って部類の書物だよな?

 

もしくは希書と言われるやつ。

 

中央とは言えどもよくこんなのがあったな。

 

とりあえず気になって目次の先を開いてみる。

 

 

 

「うわっ、文法滅茶苦茶じゃないか…」

 

「はい。実は私も読むのに苦労しました」

 

 

 

いや、苦労したってつまり読めたんかい。

 

中央の文学系少女はすごいな。マフティーに優しくするギャルも恐れ入ったけど、中央に所属する文学系も同じくらい恐れ入ったわ。

 

しかし、これ誰が読んだんだ?

 

読書というより読解だろ?元から理解させる気が無いというか、偉人かまたは異人が並ならぬ感性を持ってオセアニアじゃあ常識なんだよ!とか言い出して綴って来ただろうレベルのやつ。カエルのパレード。まぁこっちはカボチャ頭でパレードだったが。

 

 

 

「俺には無理だな。もしこれをスラスラと読めるならそいつは大したもんだ」

 

「あ、それ……実は、その通りなんです」

 

「?」

 

「お知り合いの方が理解した上でちゃんと全て読み切ったんです。ただ読まれた感想はその… 実のところそれをお読みになった本人もどこかわかりづらい方でして…」

 

「…あー、なるほど?」

 

「は、はい……そのため教室じゃ少しだけ浮いている方で……あ、いえ、違いますね!関係ない私たちがアレコレ言うものじゃないですね!」

 

 

 

どうやら彼女の知り合いに不思議な子がいるようだ。まあここは中央だからな。そのくらい普通だろう。今更そこに驚きはしない。

 

 

 

「しかしこの希書を一緒に返却しようと運んだ君のことだ。普段はその子のことを気にかけているんだろう?君は優しいな」

 

「ふぇぇ!?い、いえ、そんな!わたし、そんなやさしいなんて…」

 

 

褒められ慣れてないのか耳をピコピコ、あと指で頬をポリポリとなぞりながらモジモジと動作を見せる。

 

年相応な反応の彼女に俺も思わず笑みを浮かべてしまう。たしかに優しい心の持ち主だ。

 

……いや待て、ウマたらし言うな。

普通に褒めただけだろ!?

 

 

 

「しかし何でこんな奇書を手に取ろうと思ったんだが。しかも普通の本のように読める能力があるなんて」

 

「あ、それに関してなんですが、どうやら何かを探し求めていたようです」

 

「探す?……辞書とか参考書からじゃなくてか?」

 

「はい。その、彼女は普段は表情にあまり変化の無い方なんですけど、その書物を手に取っている間はどこか難しそうな… いえ、困っているような……いえ……ううん、ちょっと難しいですね…なんと言えましょう…………ただ…」

 

「?」

 

が聞こえたと…」

 

「___なに?」

 

「宇宙から声が聞こえた。だからこれに意味があるんだと……いや、ソコにあってほしい……そんな願望を込めて探していました」

 

 

 

こえ?

 

声だと??

 

空から?

 

いや……宇宙(そら)から??

 

これを読んだ子が?

 

 

 

 

なんだ……これはなんだ?

 

一体なんなんだ??

 

この落ち着きのないもどかしは…??

 

 

 

 

「あ、あの……どうしました?」

 

「……」

 

 

 

俺は今一度その本を手に取る。

 

そして適当にパラパラと開いてみた。

 

どこ開いても読めたもんじゃ無い。

 

だが、ページを捲るごとに少しずつ、このもどかしさに近づいているような、感覚がある。

 

 

これは____悲しさか??

 

 

 

「ゼンノロブロイ、その子はいまどこにいるかわかるか?」

 

「…え?」

 

「教えて欲しい、俺はコレを知っているかもしれない」

 

「!!……あ、その……い、いえ、ごめんなさい… わたしにはわかりません。放課後はいつも気づいたらいなくなってしまうんです。そして何処にいるすらも…」

 

「そうか…」

 

「お、お役に立てなくてごめんなさい…!」

 

「気にしなくて良い。俺()が勝手に探しているだけだから。君は何も悪くない。でも大丈夫だ。俺は英雄というには当て嵌まらない器だが、それでも案外、主人公補正とやらが都合よく効いてるらしいからな。記憶に強い」

 

「!」

 

 

 

奇書を手に取ってその追憶をなぞる。

 

しかしこれは読むんじゃない。

 

この冷たさから虚無に溺れそうな迷える熱を拾い上げる。それが出来るのは宇宙の寂しさを知っている者だけ。そしてソレを出来るのはココにいる俺だ。たった一人、マフティーを知る者。それが中央のマフTだったことも。

 

求めれば応える。

 

そうやって幾度なくウマ娘を拾ってきた。

 

 

 

「トレーナーさん…?なにを…?」

 

「……いま、探している。ここから」

 

「見つかる…のですか?」

 

「見つける、なんとでもなるはずだ」

 

 

 

なんてことない始まりから物語は生まれる。

 

それは英雄譚に刻まれた英雄達にも当てはまる。

 

そんな俺はこれと同じ英雄なのか分からない。

 

いや、マフティーは英雄というには程遠いか。

 

けれど物語の始まり。それは唐突に。

 

それが呪いだろうが、祝福だろうが関係ない。

 

宇宙世紀は常にそうだった。

 

それは全て、共通して宇宙か始まった。

 

 

例え…

 

ここにいる俺が『宇宙と』いう他人事ではないこの響きに惹かれ、いまこんなにも落ち着きを保つことに精一杯だとしたら、拠り所が無いと思われたこの魂は唐突に生まれたストーリーテラーに引き寄せられてるのかもしれない。

 

かもしれない。

 

何せそれはいつも急に明かされる。

 

いつだってマフティーにとって予定されてたように全てがそうだった。与えられた必然をこの魂に当てはめられてその先を望まれている。

 

 

そしてこれは初めてではない。

 

一度だけ経験したことのある騒がしさ。

 

それは、確か……そう。

 

同じ宇宙に向けての想い馳せていた琴座のアルファ彗星。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はあの星と共に生きていく

 

 

 

 

 

 

 

釜臥山展望台にある宇宙の下。

 

光のアゲハチョウを眺めながら一等星に思い馳せるウマ娘も巡り合った。

 

マフティーを知る彼女と必然的に宇宙の下で巡り合ったことを考えれば、あれば随分と仕組まれたストーリーだと呆れも含め、けれど必要だったからマフティーだったマフTはそこまでたどり着いた。その声を宇宙に届かせるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

___彼女はこっちだよ。

___私のお姉ちゃんのトレーナーさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視えた。

 

 

 

 

 

「ゼンノロブロイ、ありがとう」

 

「!」

 

 

 

 

放課後の図書室を出る。

 

外を見れば暗くなり始めようとしている。

 

あと予定通り天気も悪くなりそうだ。

 

雲行きが怪しい空。

 

しかし、この脚はそんな夜闇を気にしない。

 

常に被り続けていたあの狭い視界(せかい)を覚えてるならこの程度『なんとでもなるはず』だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__なによ、あの子?

 

__なに、を、言いたいの?

 

__なに、が、言いたいの?

 

__なに、に、言いたいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気 持 ち 悪 い

そして

気 味 が 悪 い

 

 

 

 

 

 

 

理解されない。

 

理解を得られない。

 

それを繰り返して来た。

 

心が痛む。

心が蝕む。

心が歪む。

 

異常すぎるこの魂は他者から何も得られない。

 

私の親以外、こんな自分に耳を傾けれない。

 

しかしそんな親も全てを理解しない。

 

いや、理解しようとして出来なかった。

 

高い要求値はその他を躊躇わせる。

 

しかしその要求値を下げれるほどこの魂はあまり器用じゃ無い。だから結局このまま。

 

 

 

ああ……まただ。

 

 

こんな『私』は迷惑かけてばかりだ。

 

背負えずに夢見た"私自身"を置いていった。

 

 

あんな『僕』は悲しませてばかりだ。

 

背に乗って夢見た"あの人"を置いていった。

 

 

 

まるで酸素のない宇宙のように…

 

まるで無重力圏内のように…

 

息苦しいまま世間(せかい)から浮いてしまう。

 

 

 

「………」

 

 

 

それでも唯一、走りだけは認められた。

 

それが嬉しかった。

 

皆、やっと私を見る。

 

走りを見て、ウマ娘の私を理解してくれる。

 

だから、中央にやってきた。

 

宇宙を見上げるように夢見てやって来た。

 

ココなら、もっと『コネクト』できる。

 

これが『嬉しい』として出来るなら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そ ん な 君 が 出 来 る わ け 無 い だ ろ ? ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁ!!?……ぅぅ………!!」

 

 

 

 

胸を抑える。

 

拒絶が入り込もうとしている。

 

だから宇宙を見て私は誤魔化す。

 

同じような自分をココから見つめる。

 

でも、それしか得れるモノは見当たらない。

 

 

 

 

 

__何も良いことなかったじゃないか……

 

不死鳥(フェネック)に手を伸ばせなかった青年のように呟く。

 

 

 

 

 

違う、違うの。

 

聞きたいのはそんな声じゃない。

 

もっと、もっと、こんな自分を理解してくれる。

 

もしくは正当化してくれる。

 

それが独りよがりな始まりだとしても、この自分を見て、それで…

 

 

 

 

頷いて、求めて、応えて、語って

 

繋いで、笑って、促して、飲んで

 

砕いて、語って、伝えて、開いて

 

広げて、応えて、触れて、求めて

 

押して、決して、継いで、話して

 

交えて、伝えて、握って、触って

 

視えて、堪えて、頷いて、求めて

 

触れて、飛んで、願って、上げて

 

注いで、求めて、応えて、応えて

 

答えて、応えて、答えて、応えて

 

応える、応える、応えて、応えて

 

答えて、応えて、答えて、応えて

 

応える、応える、応えて、応えて

 

答えて、応えて、答えて、応えて

 

応える、応える、応えて、応えて

 

応えて、応えて、応えて、欲しい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうか、ココに存在してる、私を。

 

どうか、この世界線にいる、私を。

 

どうか、見上げれなくなる、私を。

 

その『声』は聞き届けてくれるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「… (あなた) は……何処に???」

 

 

 

 

 

 

 

 

都合よく見つかるわけがない。

 

だってこの宇宙はあまりにも広すぎる。

 

じゃあ、アレは…

 

私の聴き間違えだったのだろうか?

 

 

 

 

そんなの…

 

そんなの…

 

そんなの……

 

 

寂しいよ________マフティー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つけたぞ、ウマ娘

 

 

 

 

時間は夜の8時。

 

隠れスポットの展望台。

 

宇宙に無縁たる者には踏み入れない場所。

 

なのにもう一人だけ現れた。

 

くしゃくしゃな切符を握りしめて。

 

 

 

「だ…れ?」

 

「俺の名はマフTまたはマフティーだった者」

 

「っ!」

 

「歪を知った彷徨える魂。このマフティー・エリンを通して、そう語られる名にその声は届いた。そう言えば分かってくれるだろうか?」

 

「!!!」

 

「その反応。どうやらそうみたいだな。ならよかったよここまで聞こえて。つまりカボチャ頭を外しているただのトレーナーで正解だった訳だなマフティー・エリン

 

 

 

要求値の高い、この改札口。

 

辿り着かない切符ばかりの販売機。

 

それを握りしめて……彼はそれを千切った。

 

そして、無理やりこじ開けた。

 

独裁者とばかりに彼も同じく周りを置いて。

 

歪な魂は____私に立ち並んでくれた。

 

それが答えであり、応えとばかりに。

 

 

 

「こ、これは"QUET"……?…貴方は?間違いない……聞こえた…声?」

 

 

「そうだ。俺は聞き届けた者だ。カボチャ頭を外せたからよく聞こえるようになった。つまりその日まで()()()()()裸の王様だ」

 

 

「それは"ZERO"…何も無い『フルフロンタル』…」

 

 

「ああ。今はただ独りよがった英雄譚の追憶なぞるだけのファクター。けれど今もソレに染まり足りているならなんとでもなるはずだ!と君に促しにやって来た『正統なる予言の王』になれるこの俺はマフティー・ナビーユ・エリン。誰にも()()()()()()歪なメドレーだ」

 

 

「!、!!!」

 

 

 

 

世界には同じ顔が3人いる。

 

しかしそれはたまたま折り重なったDNAが天文学的な確率で奇跡に奇跡を重ねて現れる。

 

けれど、魂はどれもオンリーワン。

 

ロマンス溢れるこの言葉の裏側には、誰にもならない、誰にも染まれない、そんな残酷の残酷も込められている。

 

つまり他者と同じは望めない。

 

分かり合えない。

 

だって外側は似せても、内側は別人だから。

 

だから私はそう刻まれる。

 

世間に、世界に、理解されない者として。

 

 

 

 

「貴方は……あなたは……」

 

 

 

けれど、もし…

 

もしも、私と同じように理解されなかった誰かに都合よく届くなら、会いたいと、求めたいと必ず思える。

 

 

 

 

__マフティー・ナビーユ・エリン。

 

宇宙から聞こえた歪なメドレー。

 

 

 

だから宇宙に向かって訪ねた。

 

__ねぇ、マフTって……なにかな?

 

 

 

 

そのメドレーは宇宙から返ってきた。

 

だから宇宙に向かって耳を傾けた。

 

 

 

 

 

__倍速に揺れ動く、瞬く暇も無い、歪な促し。

__俺はそれを。

__閃 光 の ハ サ ウ ェ イ って考えているよ。

 

 

 

 

 

聞いたことのない、言葉。

 

それはとても『スフィーラ』に響く。

 

ドキドキした。

ワクワクした。

 

まともじゃないメドレーに興味を抱いた。

 

もっと、知りたい。

もっと、解りたい。

 

理解し得ないメドレーに触れたい。

 

 

 

 

「貴方はもしかして____ハサウェイ?」

 

「!!」

 

 

 

その言葉に彼は驚く。

 

まるでそう訪ねられることを予想してなかったように。

 

でも…

 

 

 

「さて、それは一体どうかな…」

 

 

 

この質問に彼は戸惑いを見せ、苦笑いした。

 

その質問は少しは正しい()()放任的に。

 

つまり、答えは委ねられた。

好きにしろと。

 

そう促された気がした。

好きに捉えろと。

 

 

 

「ココはまだ宇宙がよく見えるな」

 

 

 

彼は見上げ、宇宙を眺める。

 

見ている先に何が見えているのだろうか。

 

それは彼のみ理解し得ない答え。

 

すると彼は言葉をつづける。

 

 

「向こうでは抱いた概念をカボチャ頭に詰めながら身を投じて狂気を正常にしてきた。でも今はエリンを通して降りてきた一つのファクターとして()()()()()と言える程度の自分なんだ。だからコッチではなんと呼ばれながら促すべきかまだ正直分かっていない」

 

 

 

彼も、私と同じように迷っていた。

 

理解されないモノを改めて理解しようとして再びカボチャ頭へ込めるべきか、それとも繰り返さない自分の【世界線】を選ぶべきか、地球の引力と共に縛られながら宇宙に想いを馳せる。

 

 

私と……同じ。

 

とても同じ、魂だ。

 

 

 

 

「意味を求めようと宇宙を見上げたウマ娘ってのは特段賢いことを俺は知っている。つまり君は賢いウマ娘だ。なら多くを伝えることはない。単刀直入に聞こう」

 

 

「なに…を?」

 

 

「簡単だ。君はそのをどうしたい?」

 

 

「っ!……わた…しは……」

 

 

 

取るべき体の引き出しは全て分かっている。

 

何が正しくて何が間違いか。これは無条件だ。

 

それほどに、簡単に示される。

 

 

 

 

「私は………わたし、は……」

 

 

 

喉の奥に釣っかかる声。

 

ああ……とても気持ち悪い。

 

このつっかえを諦めて飲み込んだとしても、この魂はいまココで彼に訴えろとソレを吐き出そうとしている。躊躇うことは許されない。今こうして返ってきたんだから。

 

 

 

「繋がりたい…っ…」

 

 

 

しかし、とびだしたのは普通の言葉。

 

伝えるには足りなすぎる。

 

けれど…

 

 

 

「もっと、もっとっ、知って欲しい……っ…!」

 

 

 

胸を抑えながら、私は嘆いた。

 

こんなにも落ち着かない『メトロノーム』は初めてだ。どう向き合うべきかわからない。

 

けれど…

 

 

 

 

「なんだ、普通に叫んで言えるじゃないか」

 

「……!!」

 

 

 

彼は満足そうに耳を傾けていた。

 

あれ?今のは……自分…?

今、叫んだのは自分だったのか……??

 

私は、理解されなかった私自身に驚く。

 

自分でも知らなかった。

 

こんなにも奥底から声を引き出せることに。

 

 

 

「わ、わたし…」

 

 

 

ああ……そうなんだ。

 

そうなんだね。

 

自分を忘れて、叫んでみてしまう。

 

無意識に引き出された自分。

 

例えるなら、指を引っ掛けるべき体の引き出しは分かっていても、その引き出しの奥には忘れていた小道具が潜んでいた。

 

それだけの話なんだ。

 

しかし彼は引き出し中身に飽き足らず引き出しごと全てその棚から取り出した。

 

選抜なんてしない。

 

全てを拾い上げる。

 

 

 

ああ、これがマフティー、だ

 

私が聞こうとした【マフT】って人物なんだ。

 

 

 

 

「君とはもっと色々話したい。だがそろそろ天気が悪くなってしまう」

 

「天気?」

 

 

 

上を見る。

 

いつのまにか雲が夜空を包んでいた。

 

星々は役割を終える。

 

『交信』できる時間も今日で閉幕。

 

少しだけさみしい。

 

 

 

「次また会えるよう、これを渡しておこう」

 

 

 

すると彼はとあるモノを取り出した。

 

それはなんてことない、折りたたみ傘。

 

 

 

「ウマ娘の足なら門限も同時に間に合うだろうが一応持っておけ」

 

 

どうやら引き出しの奥には折り畳み傘が転がっていたようだ。彼のお陰で見つかった。

 

私は差し出された折り畳み傘に手を伸ばす。

 

すると彼の指先が触れて……

 

 

 

「__!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

__君もトレーナーさんかな?

__どう? 楽しい走りに見えたかい?

__それとも…

__ただ、すごかった様に見えたかな?

 

 

 

 

 

 

マフティーを通して視える、とある追憶。

 

もしくはとある歪な英雄譚。

 

お互いの想いを乗せ、世間にマフティーたらしめたシルクハットがトレードマークのウマ娘。

 

彼にとっての、全ての始まり。

 

ウマ娘に正しく狂い、応える存在として確立された彷徨えるジャック・オー・ランタン。

 

そんな声と追憶が重たくのしかかる。

 

 

 

 

「"REQU"……貴方と、また『交信』したい………だめ…かな?」

 

「俺もまたキミと話がしたい。だからまた学園でな?」

 

「っ…!!ッッ、うん!…うん!貴方と"ANOI"……ふふっ、また声が聞きたい」

 

「わかった。……ああ、そうだ。ひとつだけ忘れていたよ」

 

「?」

 

「君の名前、聞いて良いか?」

 

 

 

その言葉は私のことを知ってくれる、意味。

 

それは折り畳み傘を受け取ったあのウマ娘の時のように私はこの名を紡ぐべき。

 

存在意義をこのトレーナーに『求める』ため。

 

 

 

 

「私は____ネオユニヴァース

 

 

 

 

 

夜空が好き。

 

曇りは少しだけ苦手。

 

見えなくなるから。

 

 

でも今日はこの折り畳み傘が好きになれる。

 

もう、遠くまで思い馳せずとも…

 

並び立った魂が声を聞いて辿り着いたから。

 

 

 

 

 

next

*1
因みにアチラでは『フウウンサイキ』ってウマ娘が超級覇王電影弾でぶち抜いて日本初をしている







一話の時点で分かっていたトレーナもいると思いますが声の正体は『ネオユニヴァース』でした。マフティー的にはかなりぶっ刺さった。


因みに天井(IFバリア)を突破して引きました(半ギレ)
でもシナリオが良すぎてプラマイゼロでした(尊死)
だからネオユニヴァースを書いたぞ(俗物)
当たり前だよなぁ???(促し)

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