やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

54 / 66


ネオユニヴァースに脳を焼かれすぎた結果ゼンノロブロイを放置プレイしてしまったマフTくんは感想欄から反省を促されて♡


「このバカボチャ!!」




if story _ ∀ 5

 

 

英雄譚、それは英雄達の雄々しい活躍が記録として残された物語。

 

例えば、国を守る兵士を夢見た少年の物語や貴族の聖騎士として跡を継いだ少女の物語。

 

田舎者の子供が王国最強の戦士となる物語や国と国の命運と平和を繋いだ行商人の物語。

 

最近は過去の世界に戻り自分の運命を変える人間の物語も多くあります。

 

もちろん実話をそのまま取り扱った作品も存在しますが、大体がフィクションとして創られることが多い。それでも物語の中に生きる素敵な英雄達に私は心惹かれていた。

 

 

憧れる、そんな雄々しい英雄達の記録。

 

なぜなら私の名前はゼンノロブロイ。

 

あの『ロブ・ロイ』と同じ名前。

 

ウマ娘として背負った、魂だ。

 

 

 

けれど…

 

現実はどうだろうか?

 

 

 

情けないことに私はその名に相応しい活躍は出来ていない。名前負けしているような有様。

 

未だ、成果も何も出せていない。

 

この中央に入学する時も滑り込みだった。

 

それもそうだ。

 

今の私は英雄という響きにしがみつきギリギリ繰り返して走っているだけ。

 

本に読み耽て英雄を夢見るだけ。

 

英雄の器にすらなりきれない弱き者。

 

名前だけが一人歩きしている。

 

私は脇役。

 

周りと比べれば情けないほどにウマ娘としてとても弱い。それは幾度なく実感してきた。

 

 

 

「でも…」

 

 

 

諦めれない。

 

私は『まだ』希っている。

 

ゼンノロブロイになれることを。

 

 

 

…

…

…

 

 

 

怖い…!

怖い…っ!

とても怖いっ!

 

今日、参加した模擬レース。

 

緊張のあまりいつものように眠れなかった。

 

わ、私、ちゃんと走れるのだろうか?

 

こんな小さな体で何を成せる?

 

ゼンノロブロイはちゃんと走れるの??

 

不安だけが埋め尽くす。

 

脚が震える。

 

体が動かない。

 

 

「…っ」

 

 

英雄を夢見る小さな魂程度。

 

周りを見渡せばその程度容易く覆い尽くしてしまうような輝かしい器で沢山ある。

 

だから誰も私なんかを見ていない。

 

 

誰も……

 

こんな私を……

 

 

 

「英雄、ゼンノロブロイ。汝はこのレースで何を示す?何を魅せる?何を持ってターフに描く?英雄を希(こいねが)うなら答えろ」

 

「っ、私は…!私だけの英雄譚を刻みます!そして私が私であるこの証明を歴史に……って、あわわわ!ト、トトト、トレーナーさん!?」

 

 

 

声と演技と共に現れたのは知っているトレーナーさん。

 

運んでいた本が落ちたところを何度も受け止めては助けてくれた人。そのまま本の整理も手伝ってくれました。そしてこのロブ・ロイの名前を聴いてくれた数少ない私の理解者。

 

それと…私の趣味も知ってくれた人。

 

それがとても嬉しくて、それで思わず英雄譚の話を熱く語ってしまいました。

 

今思い出すと少しだけ恥ずかしい。

 

 

そして、そんな私に「良い目をするじゃないか」と揶揄ってきました。

 

すこしだけ意地悪な人だ。

 

 

でもお陰で緊張が解けました。

 

あと不思議と震えも減った。

 

あんなにも不安で仕方なかったのに彼の方の言葉を聞いて落ち着いた。

 

まるでガタガタと揺れるメトロノームをその大腕で掴み、ピタリ針を静止させるような感覚。

 

あの言葉……いえ、彼の発する『促し』は普通以上の何かが備わっている、そんな気がする。

 

なんとも不思議な人だ。

 

硬直していた筈のこの脚は今とても軽い。

 

 

 

「ゼンノロブロイらしく走っておいで」

 

 

 

その言葉だけを残してターフを去る。

 

私らしく…

ゼンノロブロイらしく…

 

脇役のウマ娘にそう言ってくれる。

 

 

「っ、はい……!」

 

 

トレーナーさんは既に観客席まで離れてしまったからここにいる私の声は聞こえない。

 

でもゼンノロブロイにかけてくれたその言葉に応えようと一人勝手に返事する。

 

走ろう、私。

 

どれだけ惨めな結果になったとしても、ターフで走ることをしない限りロブロイから何も生まれない。なら走るしかない。元から夢を見ていたのなら尚更です。

 

私は震えを奮えに変えながら、ゲートに進もうとして……

 

 

 

急にひとりのウマ娘が現れました。

 

 

 

 

「ふぇ、ユニさん!?」

 

「ゼンノロブロイ……会えたね……」

 

 

同じクラスでお隣の席に座っているユニさん。

 

またの名は『ネオユニヴァース』さん。

 

彼女を一言で表すなら非常に不思議なウマ娘。

 

喋り方がかなり独特であり、会話の中であまり聴きなれない単語を使うためユニさんと会話をするときは常に高い理解力と読解力が試されます。そのため皆から敬遠されてしまいクラスの中で浮いてしまっている。

 

でも誤解なんです。

 

ユニさんは分かりづらいところがありますが実はとても聞き上手な方です。

 

それと頭がとても良いんです。本当はすごいウマ娘なんです。私なんかよりも。

 

 

 

「ユニさん?そのまま走るんですか?」

 

「『コネクト』……それとランデブー……私は走るをして皆にネオユニヴァースを……見てもらいたい……」

 

 

ゼッケンもなにも付けずそのままゲートに収まったユニさん。

 

ネオユニヴァースの急な参加に対して周りは困惑しているが、そんなユニさんは気にせずゲートの中で落ち着いている。

 

やはり不思議な方です。

 

今は何を考えているのでしょうか?

 

 

 

 

そして…… ガコン とゲートが開く。

 

 

 

「!!?」

 

 

 

落ち着いていたはずの心拍数。

 

しかし慣れない緊張感と経験の少なさは誤魔化しが効かない。

 

凡ゆる要素が重なり私は大きく出遅れた。

 

なんともひどいスタートだ。

 

最後方からウマ娘を追いかける。

 

 

「っ!っっ!ッッッ!!」

 

 

されど、私は、必死に、必死に、走る。

 

ただ、ただ、追い縋ることだけを、考えて。

 

この模擬レースをありったけで駆け抜けた。

 

 

…

…

…

 

 

レースはユニさんが一着でした。

 

そんな私は後ろから二番目。

 

とてもとても情けない結果。

 

ロブロイを名乗るに相応しくない。

 

背中を押してくれたのに何も成せなかった。

 

レース結果を噛み締め、私は顔を歪ませる。

 

 

ああ、こんなにも…

こんなにも悔しいと思えるんだ。

私、今すごく悔しがっているんだ。

 

 

……弱いから。

 

色々諦めたつもりでいた。

 

 

でも…

 

走れてよかった。

 

ひどい結果だったけど、ゲートを飛び出してこのレースを必死に走れたことに後悔はない。

 

走らない選択を取るよりも走った方がほんの一滴だけでもゼンノロブロイらしかった。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ!」

 

 

 

呼吸を整え顔を上げる。垂れたままの頭なんて英雄を求めたウマ娘の姿なんかじゃない。

 

お借りしたターフを見渡そうと思って…

 

 

 

 

 

 

優しくない現実を目の当たりにする。

 

 

「どうして……?……違う………違う………ぅ、ちが、ぅ……ネオ…は…」

 

 

 

 

「ユニ…さん??」

 

 

一着になったはずのユニさん。

 

褒められるべき結果。

 

しかし周りから問い詰められていました。

 

原因はレース中の不自然な動き。

 

あと何故が握っている折り畳み傘。

 

あらゆる要素が引き金となりユニさんは同じレースに出走したウマ娘やこのレースを取り締まる競技委員に捕まっています。また観客席からもユニさんに対してどよめきが生まれていました。とても怖い現実がそこにありました。

 

 

 

「ユ、ユニさん…!」

 

 

ユニさんは基本的にポーカーフェイスです。

 

感情をあまり表情に出しません。

 

それが誤解となっているのか、周りの人達はネオユニヴァースがこの状況に大して何とも感じていない、そんな佇まいを見せているため着々と反感を集めてしまっています。

 

そんなユニさんはどうしてそうなっているのか全く気づいていません。

 

 

 

「違う……違う……ちが、ぅ………」

 

ユニさんはこの状況を怖がっている。

 

小刻みに体が震えている。

 

私にはわかります。

 

でも他の人はユニさんが分からない…!

 

 

 

「っ!!」

 

 

今この場で私だけがユニさんを助けれる!

 

彼女の味方になれるのはわたしだけ……!

 

 

 

「脚っ、動い…て!」

 

 

ありったけを引き出して脚に力が入らない。

 

しかし一番の原因はこの状況に対してすくみそうになっている、この脚の弱さだ。

 

 

お願いっ!ロブロイ!動いて!

 

 

なんとか全身を奮わせ、立ち上がる。

 

一刻も早くネオさんの元まで駆け寄り、皆の誤解をなんとかしないと…!!

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待て、それは俺が説明する」

 

 

 

人並みを掻き分けてネオユニヴァースの前に現れた一人のトレーナー。

 

その者はこの波に臆せず、堂々とネオユニヴァースに詰め寄る人達の前に立ち塞がる。

 

ネオユニヴァースに降り注ぐ視線をその威圧感で遮りながら、逆にそのトレーナーさんが飛ばした視線だけで周りを牽制し、その足を止めさせる。すごい……昔見た皇帝を思い出す。

 

 

そしてユニさんに手を差し伸べる。

 

ネオユニヴァースは悪くない。

 

トレーナーさんはそう紡ぐ。

 

そうやって彼女に理解を示し、周りに促すしなながら、ユニさんが握っていた折り畳み傘を受け取ると「君をスカウトする」と言い、その手を引いてこの場から外に連れ去ろうとする

 

 

 

「!!!」

 

 

まるで物語の主人公。

 

私の眼にはそのよう映し出される。

 

なんて……【無条件】なんだろう。

 

 

「ま、待て!」

「お、おい!」

「どこに行く!?」

「ちょっと待ちなさい!」

 

 

その場を切り抜けても観客席からは多くのトレーナーが二人に詰め寄ります。

 

その光景を見てユニさんは怖がる。

 

しかし、私は確信する。

 

そこには物語の主人公のような人がいます。

 

もし、この考えが正しいのなら…

 

主人公は……

 

いえ、ウマ娘のために現れた英雄は…

 

 

 

 

「こ の マ フ テ ィ ー の 前 に 立 ち 塞 が る か ?」

 

 

 

 

 

ターフを震わせるようなプレッシャー。

 

並々ならぬ威圧感が頬を撫でる。

 

一瞬だけ息が止まりそうになった。

 

 

 

ああ…

 

もう誰もこの人を止められない。

 

そう感じて仕方ない。

 

私にはそう見えるから。

 

 

 

「トレーナーさん……」

 

 

 

英雄?

 

主人公?

 

彼を表すならなんだろう。

 

恐らくどれでも当てはまる。

 

ユニさんにとっていまはそう映る。

 

もし私がユニさんの立場ならそう思う。

 

 

しかし…

 

何故かこのような言葉が頭に浮かぶ。

 

それはこの頬にプレッシャーが触れたから。

 

あまりにも歪極まった魂の共振。

 

ゼンノロブロイはそれを受け止める。

 

私は見送ったその背中に対して、小さく…

 

 

 

 

 

 

「独裁者……?」

 

 

 

ただ一人だけの___独りよがり。

 

それがあの存在。

 

出会ってしまった、無条件な王。

 

ウマ娘のために恐れない促し。

 

私はその追憶を眺めてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまいか?」

 

「スフィーラ……」

 

 

ちゅるちゅるとラーメンを啜るネオユニヴァースはポーカーフェイスでわからないところは多いが、尻尾の揺れからしてこのラーメンは美味しいと受け取ってるみたいだ。

 

適当な屋台に潜り込んだがお気に召したのならそれは何よりだと思う。

 

 

まあ、それにしても…

 

 

「アイルランドに屋台でも作る気か?見間違いでなければ暖簾にラーメン試作二号店サイサリスって書いてるのだが…」

 

「そうだよー、祖国の皆が舌鼓するような屋台ラーメンを考えているんだ。でもそのためにまず私が現場に立ったこの味を知らないとね!ほら見てこの湯切りの技術を!それ!それ!横格闘!後ろ派生!前派生!うおお!ニッポンよ!私はアイルランドから帰ってきたー!」

 

「芝(くさ)」

 

 

 

湯切りってだけでめっちゃ盛り上がってるアイルランド王室の次期女王候補のウマ娘。

 

スタイリッシュな湯切りと共にスタイリッシュ国際問題している。おもしれー女。

 

 

「ところでネオ、約束の時間まで暇つぶしに行きたいところとか無いのか?」

 

「"WALK"……どこでも行けるとネオユ……ネオは伝えるね」

 

「わかった。なら適当にウィンドショッピングとするか」

 

「むむむ!!きさまー、もしや我の湯切りちゃんと見てなかったと申すかー!ぷんぷん!」

 

「ごめん、半分見逃してた。でもあの木陰に隠れているSPが湯切り見てくれてていただろ」

 

「え… ええええ!?す、すごーい!な、なんでわかったの!?私のSPさん達すごく巧妙に隠れているのに!」

 

「ニュータイプ舐めんなよ」

 

「乳…タイプ?…… ああ、そういうこと! ラーメンに使うんだね!ならアイルランドに良さそうな乳製品があったはず!よーし、今度試そうかな。次またお店を開く時は三号店だから… ええと、仮名としてステイメンで!」

 

「スターダストメモリーかよお前ん家」

 

 

 

それからラーメンで腹ごしらえを終わらせると街中まで歩く。一つの場所に留まっていると見つかる可能性もあるから。

 

しかし特に決めてもない。

 

なので適当にウィンドショッピングへと洒落込むことにした。

 

アウトレットモールに足を踏み入れ、目についた百均などを見て回るとネオユニヴァースは万華鏡を手に取って興味を示す。変わらずポーカーフェイスだが、万華鏡を覗いて耳をピコピコと動かす。随分と楽しそうに眺めていた。

そしてその近くに太陽神を筆頭にギャルを率いて楽しそうに買い物をしている姿が見られる。

 

 

途中、はちみードリンクを買ってネオユニヴァースに飲んでもらった。耳をピーンとさせてとてもスフィーラだと気に入ってくれた。一気に飲み干してしまう。ただ普通サイズを頼んだが量が足りないらしい。追加で買った。

そしてその横ではシチーガールを追いかけるカチューシャのウマ娘と友人として付き合う尾花栗毛の美しいウマ娘が見られる。

 

 

次に家具を売っているお店に入った。癒し空間が広がる中ハンモックを揺らす自由な三冠ウマ娘を横目にネオユニヴァースもハンモックに揺られる。寝心地が良いのかネオユニヴァースは寝落ちしそうになっていた。お腹を満たした後だからか疲れが出てきたみたいだ。

そして少し離れたところにふわふわクッションに自由を奪われている一等星の姿が見られる。

 

 

それからゲームセンターに寄って適当に遊ぶことにした。キラキラと眩い空間はネオユニヴァースにとって新鮮みたいだ。色んなゲームを試した中でユーフォーキャッチャーが結構上手だった。意外な特技を見つけたな。

そしてその奥ではヒリ付きの病まないニット帽のウマ娘が飴玉を転がしながら挑戦者を薙ぎ倒している姿が見られる。

 

 

しばらくして小腹が減ったので少しだけ街を外れると小さな喫茶店を見つけたので入る。豆の良い香りに包まれながら漆黒のウマ娘からコーヒーをもらう。試しにネオユニヴァースに渋みを嗜んでもらったがどうやら好みのようだ。

そして会計を済ませて店を出ると見えないもう一人がコチラに手を振ってる姿が見られる。

 

 

 

「これは……楽しい……?……とても"ENJY"」

 

 

学業も、業務も、気にしない時間を過ごす。

 

色んなものが彼女にとって新鮮。

 

 

ただネオユニヴァースがここまで楽しんでしまうとは思わなかったが…まあいい。

 

 

 

そして…

 

気づいたら夜になっていた。

 

しかしまだ学園には戻らない。

 

俺にはやることがある。

 

賑やかだった街を後にすると俺たちは星空が見えやすい展望台までやってきた。

 

ここはネオユニヴァースの追憶を頼りに初めて出会った場所だ。

 

しかし連日ここに来るとは思わなかった。

 

昨日と同じ折り畳み傘も持ったまま。

 

つまり前日と何ら変わりない俺たちは昨日の続きとして集われた。

 

これは偶然?それとも都合よく用意されたマフティーだった者に対する新たなストーリーテラーか?確かめようがないことだ。

 

 

 

「ネオユニヴァースは……あなたと多くを『コネクト』したね……とてもスフィーラ…」

 

「楽しんでもらえて良かったよ。目的はあの場所から脱する事だったんだが」

 

「うん……だから少し危険だよ……あなたは……CIRC……拒絶はコネクトを生まない……その先はネガティブ……」

 

「さっきも言っただろ。それはどうでも良い」

 

「でも……」

 

「これでも俺は多くの『敵』を作ってきた。あの程度の数どうてことないな」

 

「それは"HERO"……?」

 

「いや…… ただの独裁者だよ。カボチャ頭を目印にしたまともじゃない器。それでも正当化を繰り返してその世界にマフティーを確立させてきた。なあ知ってるか?この世界ってウマ娘が存在しているからか影響されやすいようになっているんだよ」

 

「アファーマティブ……ネオユニヴァースはそれを肯定する…」

 

「俺の知っていた価値観や倫理観は意味を持たない。力を示せばそれは正義になる。世界が知らなかったマフティーはそうするに便利なんだよ。だからこそ… 自由を愛する彼女と共に『なんとでもなるはずだ』と身を投じることができた」

 

「けれど……それは、苦痛を隣にする……ネガティブ……」

 

「もう終わったことだ。考えても仕方ない。まあ、それでも… あの時よりも苦しまずに打破出来る手段があるなら聞きたいってマフティーは言うよ」

 

「あなたは、その…すごく頑張ったんだね……」

 

「かもな…」

 

 

 

頑張った……ああ、そうかもな。

 

わからない事だらけの中でもがいた。

 

それでもカボチャ頭に閉じ込めて促した。

 

前任者の願い、三女神の願い、ウマ娘の願い。

 

持ち込んだ概念はその世界で革命まで起こすことになった。

 

ほんと……ひどい物語だ。

 

 

 

「わたしも……出来るかな?」

 

「何をだ?」

 

「"LINE"……私が『僕』だった"WORD"……それは『世界線』と飾られる……ネオユニヴァース達に用意された……結末……」

 

「結末?」

 

「"OBSE"……ネオユニヴァースは視える……違う私の世界が走るところを…」

 

「視える……??」

 

 

いや、待て。

 

今、この子。

 

さりげなく凄いことを言わなかったか?

 

え?なに??

 

ネオユニヴァースは別の世界線が分かる?

 

そういうことか??

 

 

 

「だから『声』を拾えたのか?」

 

「アファーマティブ……私は宇宙を通して外を視える……"TELL"……僕(・)の『追憶』を中心とした"STOR"……その先が視えるよ……」

 

「それは…君だからか?」

 

「私の名はユニバース……それは宇宙……それは世界……それは森羅万象……"ANOT"はネオユニヴァースだから……僕(・)の追憶が視える……」

 

「それは本気か?ネオユニヴァースってウマ娘だから許された視線か?そうなんだな?」

 

「ほんとう……貴方は…信じてくれる?」

 

「信じる」

 

「"SPED"……即答…」

 

「意味のない嘘を付くように思えない。ならネオユニヴァースは真実だ。俺がそう判断した」

 

「!!………ふふっ…ありがとう……ネオユニヴァースはトレーナーに感謝を伝えるね……」

 

 

 

それから更に彼女から話を聞いた。

 

どうやらネオユニヴァースは自分に用意された未来が視えるらしい。そしてその結末を変えるために試行錯誤しているらしい。

 

また朧げながらも本(・)当(・)の(・)ネオユニヴァースも分かると言っていた。

 

なんというか、凄いなこの子。

 

だから『声』を知ったんだろう。

 

しかしそんな異能性を秘めた結果として浮いてしまっている。

 

本人もそのことには気づいているみたいだがうまく周りと調和出来ない。

 

そこに苦労しているみたいだ…

 

どうにか支えてやらんとな…

 

 

「"TIME"……約束の時間だね……」

 

「ああ。良い感じに宇宙が見えてきたな」

 

 

時間が経てば空は暗くなり、昼間見えなかった星空が見えやすくなる。

 

そのお陰かネオユニヴァースは元気になっているような気がした。

 

相変わらずポーカーフェイスで、よく観察しないと分からない部分はあるが、会話は弾んでいる辺り良好みたいだ。

 

 

 

「宇宙が見えやすい…」

 

「ああ」

 

「…トレーナー」

 

「分かってる。昨日と同じなら続きだな?」

 

「"INTI"……ネオユニヴァースは宇宙の下でトレーナーをもっと知るをしたい……どうしたら良い…?」

 

「これを使おう」

 

 

 

折り畳み傘を取り出す。

 

首を傾げるネオユニヴァースに苦笑いしながらマジックテープを剥がして傘を広げる。

 

 

「更に暗くするぞ」

 

「うん」

 

 

広げた傘をネオユニヴァースと俺の上に掲げて覆いかぶせ、元々暗かった世界がもっと暗くなる。するとネオユニヴァースの青い瞳だけがその中で光る。宇宙のように綺麗な眼だ。

 

 

 

「宇宙を見るようにこの魂を観測してみろ」

 

「観測…?」

 

「マフティーだったこの魂にはマフTとしてのたらしめた追憶がこのファクターに刻まれている。この俺はそういう存在。そ(・)う(・)だ(・)っ(・)た(・)と言える程度の過去形が生きてるだけ」

 

「"SEAT"……私は貴方を探すね……」

 

 

 

折り畳み傘の下で彼女はコチラに見る。

 

真っ暗闇に青い瞳だけが取り残される。

 

しかし微動だもせずこの魂を探る。

 

そして……意識を繋ぎ始める。

 

段々と彼女の鼓動の音が聞こえてきた。

 

今ここには俺たちしかいないから。

 

 

 

 

「視(・)えるか?」

 

「もう少し………あと、もう少し……」

 

 

 

彼女は集中する。

 

探り当てる。

 

見つけ出そうとする。

 

少し動けば互いに触れ合える距離。

 

しかしどこまでも遠くに置いてある。

 

そんな感覚。

 

だからネオユニヴァースはコチラを見続ける。

 

見続けて。

 

観続けて。

 

視続けて。

 

…

 

…

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カボチャ………頭……??」

 

 

 

その眼に映るのは__カボチャ頭の人間。

 

ソレを形作った、とある日の独裁者の器。

 

マフティー・ナビーユ・エリンの姿がネオユニヴァースの眼に映っていた。

 

 

 

 

 

つづく

 







圧倒的なウマたらし。

ウマ娘に応える存在と化した末路。

ゴールドシチーは訝しんだ。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。