やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

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シングレが完結し、閃ハサの続編が出た事でこの作品の存在を思い出し、とりあえず書いてみた。


尚、作者はこの予約投稿(20:00)と同時刻に初めて公開作を観に行ったとする。楽しみなんじゃ。



If story _ Gray

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。お断りしよう」

 

 

 

 

過去何度も着慣れているはずの黒スーツは家の押し入れに、今は都内から離れたこの田舎町に見合ったラフな恰好は、むしろその男性にとって新鮮さを齎してやや上機嫌に。

 

しかし今日この日によって、恐らくそうなるだろうという予想通りに事が起きてしまい、毎日が新鮮味に感じていたその気持ちは夜風に晒された鋼鉄のように冷たく染まる。

 

何故なら目の前には、今あるコチラの全てを上回った存在達が立場的にも、客観的にもウマとやらがヒトを見下ろしているから。

 

 

 

だから、ウマ達は意表を突かれた。

 

この場でハッキリとヒトに告げられたから。

 

 

 

 

「……それは、何故ですか…??」

 

 

無意識に脚の爪先を隠すように立て、ジリッと靴の革から小さく鳴る。ウマ娘だからこそ発せられた仕草と音を逃す事なく、未だ見据える。

 

 

 

「中央よりも地方が良いからだ」

 

 

同じターフに夢と奇跡を抱く者同士、それが例え規模や場所が違えども、しかしこの意味を理解しているならばその返事がどれほどに愚かであるのかは言わずもがな、たった一人のウマ娘のためにこの原石を灰被りのままにしておくのか?

 

 

 

「なるほど…」

 

 

 

そんな疑問は、唯一無二をその体に全て表した無敗の三冠ウマ娘にとって中山の直線よりも速く辿り着き、そして僅かに耳の先が掛かりを思い出させるように___ピクリと動く。

 

 

つまり、穏やかではない。

 

 

「!?」

「!?」

「!?」

 

 

唯一無二だからこそ、ソレは無意識だ。

 

 

ある者に言われた事がある。

 

皇帝は___誰かの気持ちを理解できない。

 

 

それを体現するようにヒトなんて種族よりも上回ったウマという種族が、そこに皇帝の絶対的二文字を上乗せる。

 

最上階からこのレース場を見渡せれる全面ガラス張りの壁も、これまで刻ませてきた栄光と証明によって全てを軋ませれるほど、いま威圧感が閃光の如く走る。一瞬で高まる緊張感。

 

地方の視察のため観戦席に座っている周りの中央のウマ娘達も、中央世界を踏み締めたエリート中のエリートだからこそ鈍感とは程遠いアスリートである。だから皇帝から放たれた一瞬の威圧感を感じ取り、空気が一変した事を知る。

 

 

 

「えっと、ルドルフ…」

 

 

その隣にいた友人がやや焦り気味になる。

 

無意識に放たれただろう皇帝の様子を宥めようと声を掛けたから。

 

しかし皇帝は皇帝であることを辞められないし、辞めることもできないし、皇帝たらしめなければこの場では偽りだ。

 

常に誇り高くあり、そして栄光の中で勝ち得てしまったこの息苦しさに負けずと身を任せているからこそ、迷いもなく言い放たれた「断る」の言葉は皇帝によって聞き捨てならなかった。

 

 

その意味を理解しているのか??

 

言わずもがな、この者なら分かっているはず。

 

 

何故か地方にいる中央資格持ちのトレーナー。

 

それもとある一族(かしもと)の者。

 

 

まだ若い筈なのに、なのに幾たびを駆けてきた老兵みたいに目を覗かせながら、それでいて言語化が不可能な雰囲気を纏っている不思議な一人のトレーナー。

 

同時に「目を合わせ間違えれば死神(はいぼく)がすぐそこに訪れてしまう」そんな警告が全身を駆け巡らせてくれる。中央を走り切ったウマ娘だからこそ分かってしまう。

 

 

 

 奴は___危険人物だ。

 中央を乱す___者だ。

 

 

 

その認識はとても正しかった。

 

 

 

 

 

だが____それではまだ浅い。

 

 

皇帝はまだ知らない。

 

 

この者がなんだったのか、を。

 

 

 

 

「……フッ」

 

 

そのトレーナーは次に、浅み笑った。

 

まるで相手を測り終えたかのように。

 

 

 

「!!」

「!!」

「!?」

 

社交の場にてあまりにも失礼な態度だ。

 

だから周りのウマ娘達もその笑みに怒りの感情を抱く。

__中央にて王座に君臨した皇帝を相手になんという態度かこの者は…!!

 

 

しかしトレーナーは非難の込められた視線の中だろうと「これが笑わずしていられるか」と視線に訴えを乗せながら、皇帝に口を開く。

 

 

 

「頷いてしまう前提だと僅かにもそう考えてしまっていたのなら、それは流石に__。」

 

 

言葉はそれ以上紡がない。

 

だがその視線に言葉の続きを乗せ、逸らすことない視界中で次のように突きつけた。

 

 

 

 

__傲慢だな、皇帝シンボリルドルフ。

 

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

視覚的にも、状況的にも、20段分の階段下に立っている男を見下ろす形で中央のウマ娘達と応対しているのに、しかしそんな状況すらもこのトレーナーにとってはどうでよく感じる。

 

 

むしろこの程では揺ることはあり得ぬとメッセージを突きつけるかのような佇まい。

 

更に言えばその二つ眼でこの場に居る全てを視ているような恐ろしさも感じさせる。

 

 

 

誰かが皮肉を込めて言った。

 

皇帝は人の気持ちを理解できない。

 

 

しかし、高みが何処なのかを理解する。

そして、高みが何処なのかを証明した。

 

 

このトレーナーはそれが理解できる側だ。

 

他の者よりも、異質極まりない雰囲気を見え隠れさせる地方の皮を被ったトレーナー。

 

 

最初に迷い無く吐かれた言葉。

 

__理解はしている。だが断る。

 

 

 

このレース業界に於いて損失の大きさの意味を分かった上で尚、この愚かな答えに僅かな怒りと同時に興味を抱かせてくれる。

 

皇帝はこの感情を止めれない。

 

だが同時に皇帝としての傲慢さも無意識ながらに止めきれずにいたし、それを指摘された事でやっと理解した。

 

しかし理解したところで、今この場でそのような感情を押し殺すことは無意味だ。

 

何せこの者は、そうした皇帝を前提に対話を行なっているからだ。隠しても無駄だ。

 

仮面も冠も剥がれ落とされる感覚。

 

 

 

「………」

 

 

沈着冷静はもう既に表面のみ。

 

内側は、普段無き焦燥感を加速させる。

 

皇帝は、皇帝たらしめすぎる。

 

 

しかし皇帝ゆえにこそ訴えは変わらない。

 

お前は、あの灰被りを「このような場所」で留めておくつもりなのか???

 

 

__その意味を分かっているのか?

 

 

中央という世界を愛する者として、中央という品格を求める者として、中央という栄光を浴する者として、立場的にも、精神的にも、常に相応しくあるべき答えを求めてやまない皇帝だからこそ理解よりも、理性による訴えが三冠ウマ娘をたらしめてしまう。

 

 

 

____良いから寄越せ。

____そのウマ娘は中央に来るべきだ。

 

 

 

 

 

あれ程の存在は恐らくいない。

 

国内にて最高水準のウマ娘だ。

 

その直感はとても正しい。

 

皇帝シンボリルドルフはそれほどだから。

 

 

 

 

 

 

 

だが、それでも。

 

 

 

 

 

 

 

「話はこれで終わりだ。担当の元に戻る」

 

 

「!!?」

 

 

 

 

__子供に付き合っていられるか。

 

まるでそのように一瞥させる。

 

 

それが絶対王者の皇帝だろうが、それが隣にいるスーパーカーだろうが、周りに中央のレベルのウマ娘達が見下ろそうが、しかしそんなのは所詮レッテルでしかない。

 

 

今この場に於いてそれらは無意味だ。

 

まるで己の事でなければ、特段どうでも良いかのように一瞥し、場を去ろうとする彼に。

 

 

 

 

「ッッ、待つんだ!!」

 

 

 

 

改め、皇帝は他者の気持ちを理解できない。

 

しかしまだ若い娘であることに変わり無い。

 

その身に受けた重すぎる意味と使命に日々悩まされながらも、しかし決して(こうべ)を垂れぬよう邁進し、手を抜かずに努めてきた。

 

それが今ある立場。

この行いに間違いなど無い。

 

だが今日初めて、誰かの前で絶対王者たる皇帝は敢然として座っていた玉座から感情のままに立ち上がってしまう。

 

しかしそこにいる若き老兵に対して感情のままに叫び止めるのは至って普通の少女であった。

 

なにせ皇帝を飾るその仮面すらも、そこにいる彼にとって全くの無意味を示すから。

 

 

 

「…」

 

 

だが、その叫びもあってか緩やかに進めていたその足は止まる。皇帝の情動によってカタリと音を鳴らして静まった。

 

 

同時に彼は『応える』者だった。

ならばウマ娘の声に脚を止めてしまう。

 

 

しかしそのことを知らぬ周りのウマ達は、皇帝による鶴の一言で呼び止めれた光景を見て「ああ流石だ」と「ああ当然だ」と、唯一無二の存在証明を疑わせないその力に関心する。

 

 

だが同時に、これまで皇帝が全く見せてこなかった焦りを引き出してしまった光景に珍しさ感じさせながらこの後の展開に身構える。

 

だって身構えていれば死神は来ないはず。

 

 

 

「話は、まだ終わっていません」

 

 

 

自分をも落ち着かせるように言葉を正しながらこの場から去る者の脚を捕まえた。

 

 

 

知らなかったのか?

 

皇帝(まおう)からは逃られない。

 

 

 

 

たしかにそうだろう。

 

 

絶対強者からは逃れられない。

 

 

どう足掻いても追いつかれてしまう。

 

 

それは長年、証明されてきた。

 

 

こう言ってはなんだが__敵わない事だ。

 

 

ヒト程度では、ウマの皇帝に敵わない。

 

 

それがこの世界の力関係だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、それがただの勇者(ヒト)ならばの話だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 な ん だ ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那____巨大な鉄の怪物(クスィー)がコチラを見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 中央()無礼(なめ)るなよ?

 

 

 

 

 

 

身構えていれば死神は来ないだと?

 

嘘じゃないか。

身構えた結果がこれだ。

 

こんな者が、この世に居てしまうのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな応酬が笠松レース場の関係者席で起きたこの話。

 

それはまず1年前に戻って語ろう。

 

 

 

      

これは GUNDAM に乗り終えた男の つづき でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…はっ…はっ…!」

 

 

 

 

走る。走る。走る。

 

呼吸を均等に、出来る限りをこの脚に。

 

何故なら私は奇跡の中にいるから。

 

 

 

「すぅぅぅ……はぁぁぁ……」

 

 

 

周りにとっては、自分のことではない特段関係ないだろう私だけが感じている奇跡。

 

しかしウマ娘として生まれた意味をこの脚に取り戻せた奇跡が今この場所にある。

 

 

私は産まれてからもしばらく、まっすぐ立つことが困難で、いつもヨチヨチと地を這うように低い位置から世界を眺めていた。

 

そのため母の手を借りながらなんとかして立ち上がる毎日を繰り返し、そうやっていつも不安定なこの脚に家族を困らせていた。

 

しかし家族は困ったような顔ひとつせず私の弱かった脚を支え、幾度なく助け、そして今日こうして大地を踏み締めるように駆け回れるそんな毎日が、この脚に許された。

 

 

だから私にとって走れることは奇跡。

 

ウマ娘として生まれた意味でも、私がこの脚で走れた意味でも、愛してやまない奇跡の数々なんだ。

 

そして私は母に望まれた。

 

立派なウマ娘になること。

 

だから沢山走って、沢山食べて、立派なウマ娘になって、この奇跡に恩返しをしたい。

 

 

だから、それ以上は要らない。

 

ただ行くままに走れるだけで良い。

 

 

そう考えて、今はこの奇跡が生きてる内に私はウマ娘の意味を味わうんだ。

 

どこまでも…

 

味わう………味わう………味わって…

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かとすれ違った。

 

それは、あまりに味わい深そうな__

 

 

 

 

 

 

 

 

「____ カボチャ?」

 

 

 

 

 

 

 

今日も飢えるために走り、この毎日を共に味わいを求めていれば、ふと横切ったのは私の頭よりも大きなカボチャだった。

 

 

季節外れのカボチャ。

 

まだ春先だというのに。

 

けれど私はそれを幻視する。

 

酸素の足りなさにそんな幻視を起こしたのか?

 

 

だがしかし、腹の奥からグツグツと求めて止まないか気持ちが溢れてしまう。

 

横切ったそのカボチャから目を離せない。

 

 

 

 

「…ァ…!」

 

 

 

 

そして飢えていた事をこの身体が知る。

 

 

 

 

 

 

食べたい。

 

 

食べたい。

 

 

食べたい。

 

 

食べてしまいたい。

 

 

 

美味しそうだ。

 

 

 

だから。

 

 

 

 

ああ______いただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏に駆け巡る___ 閃光 。

 

 

それは己のモノではないのに。

 

でも、駆け巡る瞬間がこの飢えを貫いた。

 

 

 

 

 

「あれ?…なにが_____ぐはっ!!」

 

 

 

 

 

次の瞬間、私は質量を残した残像に突っ込んで頭から地面に突っ伏していた。

 

 

うぐぐぐっ…痛い。

 

顎から、コンクリートに入ったか。

 

うぅぅ、後コンクリートは美味しくないな。

 

 

 

 

 

痛みと共にそんなことを考えていると。

 

 

 

 

 

「おいおい?何やってんだ、お前…」

 

 

 

横から声をかけられる。

 

カボチャを被って___いたように見えたその人は困ったような素顔を晒して地面に突っ伏した私に呆れていた。

 

 

 

「カ、カボチャ…は?」

 

「…はい?」

 

 

 

 

ああ………なんだ。

 

この飢えは気のせいだろうか?

 

……とても、美味しそうだったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その…すまない、急に飛びついて」

 

「本当に…まったくだ」

 

 

ヒトの倍以上の力があるウマ娘がヒトに危害を加えてしまう事はかなり重い罪だと聞く。

 

事故ならある程度仕方ないと済むが、しかし被害者が相手側から意図的に外傷を負わされたと訴えれば、加害者となるウマ娘はかなり重たい罪に問われてしまう。

 

それを思い出したので、走り込んで温まっていた体は急激に冷まされてしまい、ウマ耳が元気なくヘタリと落ちる。

 

 

「まあ良い。そっちこそ怪我はないか?」

 

「大丈夫だ。私は体が丈夫だからな」

 

 

コンクリートは美味しくなかったが、顎が痛い程度で対した怪我はない。

 

それにしても…

 

 

 

「君の、その…今の回避はなんだろうか?後ろからウマ娘の飛びつき突っ込んでしまったのにヒラリと避けて、なんか、こう…凄かった!」

 

「そりゃ、後ろにも目を付けてるからな」

 

「なに?そうなのか?……後ろに目…いや、君の後ろに眼なんて無いぞ?何処だ??」

 

「おいおい素直さんかよ」

 

 

後ろに回り込んでみるが眼なんてない。

 

しばらくして、もしかしたら私は揶揄われているのか?そう気づいて少しだけムッとなってしまうが、彼は小さく笑って謝る。

 

いや、飛びかかった私の方が悪いんだ。

 

ここは冗談を交わしてくれた彼に感謝するべきなんだろう。

 

 

 

「で?どうして飛びついたりしたんだ?」

 

「ぁ、えと、そ、それは…」

 

 

さて、かなり素っ頓狂な話になる。

 

彼がカボチャに見えてしまった。

 

この内容を素直に伝えるべきか迷ってしまうが、しかし理由を説明しなければ私はただ彼を襲っただけのウマ娘だ。

 

 

 

「そ、そ、その……カ、カボチャ…に…」

 

 

 

カボチャに見えたと、言うのか?

 

この人が??

カボチャに??

見えてしまったと、私は言うのか??

 

 

え?

 

い、言ってしまう…のか!!?

 

 

 

「カボチャ…?」

 

「う、うん。君がカボチャに見えてしまって…」

 

 

 

あまり頭の良く無い私でも自分が何を申しているのか分かっている。

 

今の私はかなり変なウマ娘だ。

ぅぅ、これでは道化だ…

 

 

 

「まあ、そう言う時もあるさ」

 

「……え?そうなのか?」

 

 

思わずツッコミを入れてしまう。

 

実は私よりも変なのはこの人?

 

……ダメだ、もう訳が分からない。

 

 

 

「しかし、おかげで目が覚めた。でも…そうか。俺はやはりそうなんだな?この繰り返しは夢でもなんでもなくて、それで事の次第ではまだまだ忘れることも出来ぬと…いや、まあ知ってはいたけれど……はぁ、ウマ娘の幸せが優先だからと好まれるのも困りものだな…」

 

「??」

 

 

何か悩ましながら自問自答する。

 

そうして、先ほどまで何処か眠たげに見せた表情はゆっくりと目を覚まさせながら空を見る。

 

 

「……」

「……」

 

 

私も彼に釣られて、空を見る。

 

隣にいる彼は、河川敷にまで届く穏やかな風を頬で感じながら遠くを眺める。まるでこの場にいる己をどれほどなのかと測るかのように。

 

空を見上げるだけで何か識ることができるんだろうか?

 

だからそのように見えた不思議さは僅かにも不気味さを交えるが、しかしそこにある全てを無条件にその身に促させてくれる、そんな難しさが…何故か分かってしまう。

 

 

私はおかしくなってしまったのか?

 

この者がカボチャに見えてから。

 

 

 

「その…君は、何者なんだ?」

 

 

私は知らない彼を尋ねてみる。

 

この問い方は、多分間違っていない。

 

 

「さて…なんだったかな。多分覚えているんだと思うけど、しかしまだ目が覚めてない故に己を正確には測れん。それでもこのもどかしさと焦燥感をどうしたらよいのかは、何故か不思議と分かるんだ。プリティーでダービーなこの世界だからこその答え…いや、応えか」

 

「…えと、その、すまない……あまり難しいことは分からないんだ…」

 

「気にするな。これは一種の病気(のろい)みたいなもんだ。しかし、ココは良い町だな。都会に疲れた心と役割を一時的にも忘れさせてくれるそんな場所だな。選んで良かった」

 

「っ、ああ!ここはとても良い場所だ!わたしの大事な生まれ故郷なんだ」

 

 

空にあるナニカを感じ終えた彼は朗らかに笑みながらこの町を誉めてくれる。

 

それを聞いた私はとても嬉しくなり、そして彼にこの町をますます気になって欲しいと願ってしまう。

 

だから体の冷めた熱はもう一度、この喜びと共に熱くなる。

 

 

「ウマ娘の走ってる姿はいつ見ても良い。君は走ることが好きか?」

 

「ああ、もちろんだ。この脚は私にとって奇跡だ。走れるだけでも嬉しいんだ」

 

 

 

生まれつき、立つ事も困難だった私の脚。

 

母が毎日脚をマッサージをしてくれたりと、そうした周りの助けがあったお陰で今の私は許されている。

 

ウマ娘として生まれた以上、走ることが使命であり、権利である。

 

そう願われて、そう願って良いことを教えられて、私の今があるんだ。

 

 

 

「あ、すまない。私はそろそろ行く。それと、その…先ほどはすまなかった」

 

「気にするな。ウマ娘の不思議は慣れている」

 

 

 

そうして私は取り戻した熱と共に、再び地面を蹴って駆け出す。

 

 

その時、ふと気づく。

脚がとても軽い。

 

 

…軽い??

 

 

いや、少しだけちがう。

足取り軽く進めているのは確かだ。

 

でも、なんと言うか……なんというか、だ。

 

不思議と湧き上がる喜ばしさと共に背中を押してくれてる、そんな感覚に胸が高鳴る。

 

 

 

「どうした?もっと走らないのか?」

 

 

「!」

 

 

 

静かな時間だから、少し離れても彼の声がよく聞こえる。

 

それにしても……なるほど。

 

そうか。

そう言うことなんだな。

 

 

「…ふふっ」

 

 

 

誰かに私のこの走りを見てくれてるから、気持ちが昂まって、足取りも軽いのか。

 

 

別に走りを見られる自体は何度もある。

 

でもこれはそれ以上に込められた熱を感じる。

 

 

心が__奮える。

 

飢えていたお腹が満たされる。

 

もしくは、もっと飢えて仕方なくなる。

 

 

そんな不思議が背を押してくれるんだ。

 

先ほどまで立っていた場所から。

 

 

 

「……」

 

 

 

そんな不思議が気になった。

 

だから私は走りながらも少しだけ後ろに振り返ってみる。

 

今の彼はどのような姿をしているのか?

 

もしかしたらまたカボチャに見える不思議を私に幻視させるのか?

 

そういぅた興味を先行させながら振り返る。

 

 

 

しかし…

 

ソレは期待よりも上回っていた。

 

 

 

 

 

「!!、??」

 

 

 

 

 

彼は立っていた。

私を見ていた。

 

 

しかし、彼の周りには___見たことないナニカが幾つも並んで立っていた。

 

 

 

「!?」

 

 

 

驚き、そして私は目が眩む。

 

この光…は?あの人から??

 

……いや違う、これはただの朝日か。

 

もうそんな時間か。

 

 

しかし、この幻覚はなんだ??

何故こんなにも既視感がある??

まさかのぼる朝日に目が眩んでいるのか?

お腹が空き過ぎて私はおかしくなったのか?

そうなのか?そうなったのか??

 

 

だから、今見てる光景が段々と怖くなる。

 

眩しくて目が痛いのに、でも眼を離すことが離すことができない…いや、したくない。

 

そんな不思議な気持ちが湧き上がる。

 

 

でも同時にありとあらゆる『無条件』が私を許してくれるような気がし、それは心強さになっていたことを知った。

 

 

「あっ、…ああ!不思議だ…!あの人は何者なんだろう…!!なぜこんなにも…!!」

 

 

高揚感が体に熱を注ぎ続けるが、途中躓きそうになったので私は眼を逸らして前を見る。

 

 

でも進める足が少しも止められない!

 

そして後ろの数々が気になる!

 

もう一度振り返れば見えるだろうか??

 

 

いや、それよりも今は前を走りたい!!

 

だって後ろから見ている彼に、この脚で応えたくて堪らない気持ちで溢れる!!

 

この脚は奇跡のために止められないから!!

 

 

 

「は、ははは…!!あははは…!!」

 

 

 

カボチャに見えてしまった不思議な人だ。

 

それでいて更に不思議を魅せる人だ。

 

 

もしこれが、私の眼がおかしいだけならそれだけで話は終わってしまうだろう。

 

 

でもこの幻視が嘘ではなくて。

 

のぼる朝日が理由でもなくて。

 

確かにあるこの飢えと鼓動から彼と交わした時間が本物ならば、この身体に投じられた熱量は私がウマ娘である理由を促してくれる!

 

そんな気がして嬉しいんだ!!

 

 

 

 

 

 

__ そうだよ。ウマ娘は自由なんだよ。

 

__ ウェーイ!もっともっとパリってけ!

 

 

 

声が聞こえる。

 

誰かの声が聞こえる。

 

やっぱり今日の私はとてもおかしい。

 

でも、今とても、心に満ち足りてゆく!!

 

もっと、もっとだ!もっと来い!

 

 

 

走れ…!!

 

走れ…!!

 

走れ…!!

 

 

あの人が見ている内に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、不思議な朝を体験した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人と話すのは少し苦手だ。

 

私は会話はあまり上手い方では無いから。

 

だから「泥うさぎ」ってなんだろうか?

 

そんなことを言っていたウマ娘がいる。

 

それよりもそんなウサギが存在するのか?

 

見れるなら少し見てみたいな。

 

泥のうさぎ……そのままの意味か?

 

 

と、私はそんな事を考えながら使い込んだジャージを着こなし、与えられた一人部屋から出るとそのまま寮を飛び出して、いつものコースに駆け出す。

 

 

 

今日は……いや、今日こそ。

 

そこにあの彼はいないだろうか??

 

 

 

もうしばらく前の事だ。

 

あの不思議なヒトに会いたくて、トレセン学園に入学してからは、更に早い時間帯を走っては探してみた。朝日が昇る前から。

 

しかしこの10日は収穫はなし。

 

あの日以来、見かけたことがないんだ。

 

 

それともあの不思議は朝日に目を眩んだだけの幻だったのか?

 

 

 

……いや、そうなのかもしれない。

 

だって歩いてるヒトがカボチャに見えて、それで飢えに従って飛びついてしまったなど、普段の私なら考えられない……ことはないか。

 

一度だけ、お腹が空き過ぎて足元の雑草をムシャムシャとしたことある。本当の意味で道草食ってしまったが、まあそのあとはお腹を壊したので流石に拾い食いは自重している。でも腹ペコになりやすい私は何処でも変わらない。

 

でもだからと言って、すれ違ったヒトがカボチャに見てしまったやはり私が変だからか?

 

言葉にするとやはり意味がわからないな。

 

 

 

「気のせい……だったのかもな」

 

 

 

でも素敵な時間だった。

 

たとえあれが幻でも、この場所を__カサマツを好きになってくれたあの朝日に降り立った一時(ひととき)は、私に熱を与えてくれたんだ。

 

 

 

「何処かで見ているのかな?なら…」

 

 

 

ああ、今日も走ろう。

 

奇跡をもらったこの脚で。

 

できれば___長い時間を、多く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていたが案外近くにいた。

 

私は準備運動をそっちのけに足取り軽く彼の元まで駆けていく。

 

 

 

「待て、何故ココにいるんだ??」

 

「トレーナーだからな」

 

 

 

朝日が登れば、それはただの太陽。

 

だから後も先も同一人物。

 

ならは私が見ていた一時(ひととき)は偽物でもなく、この身体に灯された熱は本物だった。

 

 

何故なら___同一人物たる彼がいたんだ。

 

このカサマツトレセン学園に。

 

 

「その……えと、また会えて嬉しい?」

 

「そうなのか?ま、俺もだけど」

 

「そうか。ふふっ…なんだキミもこの学園の生徒だったんだな。どこのクラスなんだ?」

 

「いやトレーナーだよ?生徒じゃない」

 

「??…まさか、もしかして不審者なのか?」

 

「いや、この学園のトレーナーだってば」

 

「??…トレーナーってなんだ??」

 

「いや、そこからかよ!」

 

 

なにやら呆れたような表情をしている。

 

それから軽く説明を受けた。

 

トレーナーとは衣類じゃなくて、ウマ娘の指導者のことらしい。なるほど…

 

 

 

「それで先ほどから聞こえる『スカウト』ってなんだ?トレーナーと関わりがあるのか?」

 

「スカウトとはチームを組む事だな。で、俺達はトレーナー。君達は競争ウマ娘たるアスリート選手。それぞれが一緒のチームとなって組めば大きなレースとかに出れるようになる。あと走りの面で強くなれる」

 

「強いとは、つまり脚が早くなるのか?」

 

「なる。何故ならトレーナーだからな。見る専門家なんだよ俺達は。試しに組んでみるか?」

 

「試しに?分かった。組もう」

 

「おいおい、ミリとも悩まない娘だな」

 

「…変なのか?」

 

「ちょっとだけな」

 

 

 

何故か心配そうに目を向けられてしまう。

 

組もうと言ったのは彼の方なのに。

 

よくわからないヒトだ。

 

 

 

「ところで君は何というか名前なんだ?」

 

「俺か?____樫本(カシモト)だ」

 

カシモト?なるほど。___私は」

 

オグリキャップだろ?入学生のデータベースで見た。よろしくオグリ」

 

「ああ、よろしく___カシモト」

 

 

それから私は早速、カシモトをトレーナーとして担当してもらうことになった。

 

同じクラスの子やカシモトと同じトレーナーの人達は「もう組んだのか!?」と非常に驚いたような反応をしていた。

 

む…変…なのか??

あまりよく分からないな。

 

でも隣の席同士のベルノライトってウマ娘が「いやいや早いよオグリちゃん!?」と授業も始まってないのにスカウト成立したことに対して大変驚いていた。ならおかしいのか。

 

 

でも、彼が___カシモトが私をこれから見てくれると思うと、とても嬉しいな。

 

 

ああ、やはり。

 

この高揚感はあの日と同じだった。

 

つまりあの朝日もいつもの太陽に変わりない。

 

これはそういう事なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから全ての授業を終え、放課後になるとカシモトから漂う不思議な感覚を頼りに探した。

 

地図が苦手ゆえに来たばかりの学園の道を迷ってばかりの私だけど、でもあの日から感じ慣れたカシモトの凄みとやらはもう覚えている。

 

感覚を頼りに進めば、昼間の授業で使っていたターフを眺めながら私を待っていたかのように振り返り、差し出された紙に名前を書いた。

 

 

「よし、カシモト!早速練習だな!」

 

「もうなのか?まあ良いけど」

 

 

日を跨ぐようなワンクッションも挟まずに私は昂る高揚感に任せてターフに入った。

 

だって早くカシモトに私の走りを見てほしい。

 

そんな気持ちに溢れているから、誰の合図もなく走り出した。

 

芝の匂いが喜びをもっと誘う。

 

 

 

「ほぉ?前も土手で見たけどやっぱ早いな。てかなんだその前屈姿勢は?すごい柔らかいな」

 

「そうなのか?でもたしかに体の柔らかさは少しだけ自慢だったりする。でもそれほどに誉められるとは思わなかった」

 

「才能だな。あと赤子みたいなんだな」

 

「赤子?私はもう学生の年だぞ、カシモト」

 

「そういう意味じゃないな。まだまだ使い始めたばかりの体。でもそれ以上に才能も後押ししているし、奇跡を得るまで培ってきた努力。となると()()()()()()()()ってところか」

 

「痛みを知る?それはだめだ。赤ちゃんは大事にしないとダメだ」

 

「それは…まあ、そうだな」

 

 

気を取り直して私はカシモトの前で走る。

 

何故ならカシモトは私のトレーナー。

 

そしてこれから、もっと良くなるんだ。

 

 

「走る時、首が傾いてるな。癖か?」

 

「そうなのか?……ちょっと傾いてるかもな」

 

「変な癖は取り除くぞ。怪我につながる」

 

「分かった」

 

 

 

これまではただ走っていただけ。

 

しかしトレーナーという指導者によって私はただの走りから、質の込められた走りとやらに変化することになる。見る専門家による指導。

 

 

「やはり、私は世間知らずなんだな…」

 

「これから知っていけ。それで良い」

 

 

カシモトは頭がいい。

 

だからカシモトから飛び出すレースの専門用語とかは全く分からなかった。

 

なのでとても戸惑った。

 

でも走りにも種類がある事をカシモトから聞いてからは色々と興味が湧いた。

 

そうやってわたしはカシモトからいろんな指導を受けていく。

 

 

私はとても体が柔らかいようだ。

この辺は自分でも理解している。

 

 

けれどこの柔らかさは非常に強力な武器だとカシモトは楽しげに笑みを浮かべながら携帯片手に私の走りを録画し、修正するべきところを見つけるとその都度に指導を受けた。

 

 

 

「あー、なんか色々思い出して……ああそうだ。あの太陽神(パリピ)が先行だったな。あと気性難かつ起床難がやや先行よりの差しだったな。へっ…なんだ、結構(記憶が)当たんじゃねぇか…ライドォ…」

 

 

 

それはともかく、カシモトはちょっと変だ。

 

なんだったらカシモトは自身を「寝ぼけている」と言ってる。あと実際に眠たげな雰囲気を纏っている。寝不足なんだろうか?

 

まあだからなのか、たまに変な寝言(?)を独り言として口から飛び出していた。

 

しかし、寝ぼけ気味のカシモトはウマ娘の走りを見れば見るほど「眼が覚めてくる」と何処か確信気味に言っては、私の走りに釘付けになる。

 

走りを見て欲しいと願ってたが、しかしこれはこれで、なんだかこそばゆいな…

 

でも「己はこれで正しいんだ」と告げては私の走りを見逃さない。

 

 

むむ……うん、私にはよく分からないな。

 

難しいことは特に分からない。

 

 

けれどカシモトはウマ娘の走る姿を見て何処か嬉しそうにするんだ。

 

普段は言葉通りの眠たげな表情で、それであまり変化が無い顔。

 

でも私にはわかる。

 

私を___オグリキャップを見てくれる彼に心が奮えるし、彼も同じらしい。

 

 

何故かは分からない。

 

どうしてかはわからない。

 

 

でも彼が見てくれるだけで、ポカポカを超えグツグツと湧き立つこの感覚はとても良い。

 

だから()()()()()()んだ。

 

彼に___カシモトに。

私が一人のウマ娘として。

 

 

 

「オグリ、飛ばしすぎだ。まだ始めたての練習なんだから出力は8割で良いんだよ」

 

「ああでも…!カシモトにジロジロと見られるせいで気持ちが盛り上がってしまうだ!ああ良いな!この感じ!なんだか最高だ!もっとだ!もっと私を見てくれカシモト!」

 

誤解(ごかい)を招きそうな表現だな…」

 

五階(ごかい)??ここは一階のグラウンドだぞ?」

 

「いや違う、そうじゃないって…」

 

 

 

あ、また眠たげな顔になった。

 

私が走らなくなったからか?

 

ふむ……よし!

なら沢山走ろう!

 

そしたらカシモトも目を覚ましてウマ娘を見てくれるだろう。

 

なにせ目を覚ましたカシモトに見られるのはとても心が温まるからな!!

 

 

 

 

「だーかーら、飛ばし過ぎだー!」

 

 

 

 

ちょっと怒られちゃった。

 

しゅん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カシモト、私はこの先どうなるんだ?」

 

「オグリ的にはどうなると思う?」

 

「どうなる…………どて煮、とか?」

 

「そういや美味かったな。どて煮」

 

 

 

確かに、あれはとても美味しい。

 

どて煮だけでご飯が何杯もいける。

 

だからアレは良いものだ。

 

近所に住んでるマクベさんもそう言っていた。

 

 

 

 

「さて、どて煮になるのも素敵だと思うが、まず契約を結んだウマ娘ならば大舞台を目指して走るべきだな。でなければ意味がなくなる」

 

「大舞台?」

 

「レースだよ。地方なら東海ダービーだな」

 

倒壊(とうかい)ダービー?…なにか崩れるのか?」

 

「まあ、ある意味では夢とか希望とかはレースで負ける事で崩れそうだけな。でも誰かと競うからにはそれは承知の上さ。そんなわけでトレーナーと契約を結んだオグリキャップは本格的なレースに出るべき」

 

「レースか……分かった。カシモトに任せる」

 

「もう少し自我の籠った意思表示欲しいなー」

 

「なら私はレースに出て!どて煮になる!」

 

「俺も人のことを言えた存在ではないけど食べ物になるのはまた別枠でな?」

 

「なっ!それはつまり!何処かでならどて煮になれるという事か?!」

 

「その気になれば、どて煮でも、カボチャでもなれるさ。因みにソースは俺な?」

 

「なに!ソース!?もしやカシモトはどて煮のカボチャソースだったのか!?ああ!それは美味しそうだ!!」

 

「もうやだぁー!このウマ娘ぇー!尻尾とお手手ブンブンで期待しやがってよぉ!地方バはほんまかわええなーァ!」

 

 

 

む、なんか可愛がられてしまった。

 

でもカシモトになら悪い気がしないな。

 

因みにどて煮のカボチャソースはないらしい。

 

カシモトは時々イジワルをする人だ。

 

 

 

「でも惰性で走るのは好まれないな。レースに出るからには原動力が必要。オグリはどうして大舞台に走るんだ?」

 

「私が走る理由…?理由か……恩返しとか?」

 

「その心は?」

 

「……お母さん」

 

「ほぉ。つまり誰かのためって事だな」

 

 

 

誰かのため……ああ、たしかにそうだ。

 

私は奇跡を得て走りを許された。

 

でもその奇跡は、紡いでくれた人達がいる。

 

それはお母さんだけじゃない。

 

色んな人が私を助けてくれた。

 

だから私は___オグリキャップをしている。

 

 

 

 

「ああ、その魂だ。それがウマ娘だよ」

 

「カシモト?」

 

 

 

 

今日はまだ走ってないのに、でもカシモトは私を見て、目を覚ましている。

 

寝ぼけていたような表情からこれまで見た事ないほどに、なんというか深い場所から表情を覗かせていたんだ。

 

 

「よし。決まりだな。これからのオグリは誰かのためにその奇跡に応える。それがその身に込められた意味なんだろう。あとはキャップだけに奇跡を被るんだ」

 

「奇跡に応える……それを誰かのために」

 

 

 

言葉にすれば、脚に満たしを感じる。

 

あと腹の奥に。それと心臓にも。

 

そう実感するほどに熱くなる。

 

 

ああ、なるほど。

 

これが『応える』という力なのか。

 

悪く……ないな。

 

 

 

「カシモトは、すごいんだな」

 

「?」

 

 

 

私は取り立てて賢いウマ娘じゃない。

 

難しいことは分からなくて、知らないことが沢山ある、それだけのウマ娘。

 

でもカシモトはそんな私に満たし与える。

 

 

紡がれた奇跡に熱を打ち、硬化する。

 

 

だってこんなにも、脚が重たい。

 

けれど重たい脚が、私をたらしめてくれる。

 

 

__背負って駆けたい、このユメを。

 

それがウマ娘ならば…!!

 

 

 

「決めた。私は皆のために。そして……っ!」

 

 

 

 

__カシモトのためにも東海ダービーを獲る!

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

生まれて初めて。

 

私は応えたいという気持ちを知った。

 

 

 

だってこんなにも眼を見開いてくれたんだ。

 

なら、もう寝ぼける暇など与えない。

 

 

オグリキャップで走る!

 

私がそう決めた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、因みに東海ダービーで天下獲っても、どて煮にはなれないからな?」

 

「!!??、!!?、!???!??」

 

「受けすぎだろ、ショック」

 

「カシモト、私の心は倒壊ダービーだ…」

 

 

 

 

 

 

 

オグリキャップのやる気が下がった▽

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 







雰囲気的にはシングレ時空(つまり史実)なんだけどこの作品はとてもマフティーしちゃってるのでそれほど関係ないと思われ。

ちなみにキタハラとか居ない程で書いてる。
ここにはマフティーがいるから。



【樫本(マフT)】
閃光のハサウェイが上映された4年前に作者のマフティー性によって編み出されたこの作品の主人公。トンチキな内容の中でもGUNDAMをやり遂げてくれた中央トレセン学園のトレーナー。現在は何処ぞの猫トレみたく一つのファクターとして世界を跨ぐ存在と化した。結果オグリキャップと出会う。どうせ三女神が原因でしょ。

【オグリキャップ】
無自覚愛嬌たっぷりな笠松の星。この世界では雰囲気をシングレに、史実通りの道を歩んでいるが、マフティーたらしめていた樫本と出会ったことで色々と流れ変わったな(UC)
ハーメルンではよくある展開なのでへーきへーき。

【三女神】
アプリゲームで三女神のシナリオが出るまでのハーメルン界隈ではスピリチュアル的な存在であり、場合によっては厄介な存在として扱われていた。この作品でも表面上はそんな感じ。なので外から持ち込まれたマフティー性がウマ娘の幸せを育める要素として喜ぶと因子継承を理由にファクター化し、ダイイチルビーの世界線やら、ネオユニヴァースの世界やらにマフティーを飛ばしている。今回はオグリキャップの世界線だった。

【シンボリルドルフ】
中央としての立場と役割を果たしているだけ__の、つもりでいたけどカシモトから無意識に見え隠れさせていた傲慢さを見抜かれてしまい、逆にプレッシャーに喰われそうになった。皇帝として頑張ってただけなのにちょっとかわいそう。でも中央側としてはオグリキャップ程のウマ娘を見逃しちゃうのは業界を盛り上げる立場としてあまりにも不出来なので、スカウトのため前のめりになるのは至極当然である。ただし対話の相手があまりにも悪すぎた。




【作者】
実はこの作品を自分で読み返すことが非常に苦痛になっているアホの子。何処ぞの絵師さんみたくミスターシービーに焼かれたとはいえ、競馬の歴史とか全く知らなかった手探り状態かつ場当たりで書き殴った故のお粗末さはもう許せるぞオイ!!

いや!マルゼンスキーが在学している時点で色々とツッコミどころ多いアプリ時空だからこのくらいへーきだよね!って理由にしてたけど未だにマンハッタンカフェよりも後にアドマイヤベガを出したあの流れはもう頭ゼクノヴァだよね??なんならミスターシービーと同期にあるカツラギエースとかいうジャパンカップで三冠馬二頭をまとめて逃げ抜いた名馬とかも書き終えてから知ったんだよ!マフティーが!頭空っぽにして追いかけろって言ったじゃないか!だからターボもう知らないもん!!



ちなみに全て筆記済みです。
終話まで10日連続投稿だ。
しばらくよろしく頼む。


ではまた

閃光のハサウェイ"キルケーの魔女"は観に行きましたか?

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