やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

58 / 66


ちなみに数週間前の書き溜めなので閃ハサの2作目を観に行ってない状態(1月)での筆記なんですね。






だからロバロバからマフティー性を引き出す必要があったんですね。




 




メ ガ ト ン オ グ リ




 




ファッ!?
ンアッーーーーーーー!(大気圏突入)










てこと。



If story _ Gray 2

 

 

なんとなくだが、この魂は繰り返していることを理解する。

 

しかしこの認識はまだ浅く、やや不確かに絡みつくから頭が重たい。

 

まるでカボチャ頭を被っているかのように首が周りが重たいんだ。

 

あとなんだか眠たい。

 

故に、契約を結んだ彼女には「寝ぼけている」と誤魔化している。

 

しかし寝起きのような頭をしてるのは本当。

 

繰り返しを認識するのと同時に目覚めてからもう数ヶ月は経過しているが、しかしまだ周回前(そうだった)の状況をちゃんと把握しきれてない。

 

 

まあ十中八九、三女神が原因だろう。

 

これだけは覚えている。

 

 

ほんアイツらはよぉ……まったく。

 

ウマ娘の幸福のために使えるファクターさえ見つかれば外部からだろうと簡単に寄越してくるんだから。

 

 

 

まあ、でも不安はない。

 

何故なら走っているウマ娘を眺めていると心が慄えて仕方ないんだ。せっかくウマ娘が目の前でユメに駆けるているのにまだ寝ているなど勿体無い。だからそんな風に目が醒まされんだ。

 

 

だから彼女には___オグリキャップには征けるところまで走って欲しい。

 

 

与えられた奇跡を理由にしても構わない。

 

何処までも、駆けていくんだ。

 

この世界に生まれるウマ娘は…

 

 

 

 

 

 

それはともかくトレーナーはちゃんとやる。

 

そういう責任だし。

 

 

 

「砂地は深く掘り起こす。つま先でな」

 

「…こう、か?」

 

「そう、それで良い。それで掘り起こした部分を起点に踏み込んであとは前のめりに。体の柔らかいオグリならそのまま前屈姿勢で最初から勢いよく進める」

 

「……少し、分かりづらいな」

 

「じゃあ、ググッと踏み込んで、ググッと腰落として、ググッからのズキューン!ドキューン!っておもいっきり前に走るで良いぞ」

 

「おお、なるほど!今ので分かったぞ!ふふっ、トレーナーは凄いんだな!」

 

「素直さんか。かわいすぎかよコイツ」

 

 

 

理論よりも感覚派。

 

そう言うタイプは良くいる。ならその者のために考えを当てはめれば、あとは言語化せずともイメージだけで本人達が自力でやり切ってくれる。オグリキャップはそういうタイプ。

 

トレーナーとしてはもっと理論を突き詰めた上で納得をさせたいが、オグリキャップはそう言うのはゆっくりと段階を踏んで理解してもらうのが良いのだろう。つまり焦るなって事。

 

でもなんだかんだでオグリキャップは頭はよく回る方だ。

 

ただ経験が少ない故に数ある正しさを知らないだけ。だからこそ磨き甲斐がある。

 

コイツは間違いなく化けるぞ。

 

 

そんでもって話を理解する度に「トレーナーは頭がいいんだな!」とか「トレーナーはやはり凄いんだな!」と耳をピコピコと感情豊かにさせるコイツはとても愛嬌たっぷりなウマ娘。

 

かわいすぎかよオグリキャップ。

 

なんか___ウララちゃんを思い出す。

 

同じ地方の子だからな。愛嬌たっぷり。

 

 

 

「トレーナー、次は何をしたら良いんだ?」

 

「そうだな。階段飛びするか。無呼吸で」

 

「無呼吸?息を止めるのか?」

 

「そうだ。息が苦しいと思ったらその場で止まって呼吸する。呼吸が戻ったら階段飛びを再開する。そうした息継ぎを計二十回な。それまでやり続ける。コレできると坂路が楽だぞ」

 

「坂路ってなんだ?」

 

「坂道の事だ。慣れないと心臓壊れる」

 

「なるほど」

 

 

なんと言うか、世間知らずって言葉に当てはまる程に知らないことが多いオグリキャップ。

 

だから初めて得た知識はオグリキャップにとって正しい知識として、素直さん受け取ってしまうから…まあ見ていて心配になる。

 

実際に寮内で部屋が決まった時も一人部屋を手に入れたぞ!と喜んでたが、話を聞くと別にそうでもなかったし、それはただのイジメだったことを理解した。

 

でもオグリキャップは全く気にしてないし、あとそれが他者から受けたイジメであることも気づいてない。こうしてみるとオグリキャップは他者の悪意に対して理解が浅い。

 

傷つかないことは才能だが、悪意に対して気づかないのは頂けない。

 

世界中のどこもかしこもが優しいとは限らないからな……ほんまに。

 

そのためオグリキャップには泥水は泥水であることを知って欲しいと考えてしまう。

 

 

ま、守護らねば…!!

この愛嬌たっぷりオグリちゃんを!!

 

 

 

「そうだトレーナー、なぜ私をスカウトすることにしたんだ?」

 

「強いからな」

 

「そうなのか?私は強いのか?」

 

「かなりな。今はフィジカルだけで押し切ってるにすぎないが実は才能もたっぷりだ。磨けば化けるのは間違いない」

 

「なに…?化けるだと??私はゴシゴシ磨かれるとお化けになるのか??それは怖いな…」

 

「安心しろ。その時は俺もカボチャ頭を被ってジャックオーランタンとして化けてやるさ」

 

 

それからも着々と力を付けるオグリキャップ。

 

何度もいうが、とぉぉっても素直さんなウマ娘なので黙々と練習を熟してくれる。

 

手間が掛からないのは良いことだ。

 

 

「トレーナー、私をスカウトしてくれた理由は分かった。けれど私をスカウトした先で何をしようと考えているんだ?」

 

「普通に考えれば担当ウマ娘共に大きなレースに勝ちたい。有名な歌詞にあるように『キミと勝ちたい』がトレーナーの使命だし、夢だ。けれど俺はこの寝ぼけている頭を覚ますためにもウマ娘が走っている姿を、それを近くで見ていたい」

 

「そうなのか?わかった。カシモトの希望があるなら私は沢山走るぞ」

 

「ありがとう。でも最近は大きなレースじゃないと目覚めも悪くてな。だから大きなレースに出よう。頼むよ?」

 

「ああ、それで行こう」

 

 

頼もしい表情で任せろと言ってくれる。

 

しかしこんな風に言ってくれた担当ウマ娘はこれまであまりいなかったな。

 

賭け事好きのアイツは「まあ見てろ」って感じにしていたが、オグリキャップのように俺の望みに応えるべく走ってくれる子は……

 

 

 

「そういやあまり居なかったな。それともココではそうされるべきだからこそ…なのか?」

 

 

相変わらず、何故この魂が繰り返しているのかもわからない。知る手段も無いが。

 

ただ同一人物___つまり繰り返す前の一度目の俺とは別人の感覚があるんだ。

 

てか、そうだと魂が知っている。

 

ならばそうなんだろう。

 

 

ま、こう言うのは大体は三女神が原因だ。

コイツらに悪意はないだろうが、厄介だ。

 

……まぁいい。

 

ここのウマ娘達は中央と違って地方はとてものびのびと走ってくれるようだ。

 

そうだな、マフTも働きすぎだ。

 

しばらくこうしてるのも良いだろう。

 

ならばこの繰り返しは長めの休暇を得るために導かれたと、そう言うことにしよう。

 

 

 

 

「トレーナー……カシモト?どうかしたのか?」

 

 

っと、練習中はトレーナーと呼ぶようにオグリキャップに教えたが、心配させすぎて呼ばれ方がカシモトになっちまったな。

 

まったく。

指導者が教え子を不安にさせるなっての。

 

寝ぼけてるのは致し方ないとしてもウマ娘の前ではトレーナーであること果たせ、俺。

 

 

 

「次のレースを考えていただけだ。たしかフジマサマーチだっけか?アレはかなり強いぞ」

 

「ああ、私も知っている。ゆっくり走ってると追い抜かれそうだな」

 

「いや、そこはむしろゆっくりで良い。てか勝つならそれで行こう。なので作戦は差し。少し後ろ目から脚を溜めて最後はドカーン!だな。これにはゾルタンもニッコリ」

 

「なるほど。後ろからドカーン!だな」

 

「ああ。でも瞬間火力は欲しいな。なのでちょっと俺が手伝ってやるよ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ……」

 

「ほれほれ、どうしたウマ娘。そんなんじゃ俺の尻尾は掴めれないぞ」

 

 

上も下も黒のジャージを着こなしたカシモト。

 

あと何故か被っているカボチャのお面。

 

運動着は分かるが、そのお面は何故だ??

 

 

 

「この時の俺は最恐だったからな」

 

「そう、か……はぁ…はぁ……」

 

 

私の頭の中を読むように応えるカシモト。

しかも最強ではなく最恐らしい。

多分何かしら意味があるのだろう。

 

 

「はぁ、はぁ……くっ!ウマ娘相手に随分と余裕そうだな…!カシモト!」

 

「そりゃこのくらい出来ないと中央(むこう)では長くやっていけないからな。知らんけど」

 

 

数分前まで、フィジカルでモノを言わせれるだろうと考えていた私自身を殴りたい気分だ。

 

目の前のカシモトは余裕げで、それで腕をシャカシャカとマラカスのように忙しなく動かしていたり、塩を撒くような動作をしたり、手をヤレヤレ気味に構えたポーズで体を左右に揺らしたりと不思議なダンスで私の呼吸を待つ。

 

それでいて、カシモトの腰には尻尾がユラユラと揺れていた。

 

厳密にはテープで付けているだけの手作りの尻尾だが、黒のジャージに紛れた黒色の尻尾なので視覚的に捕まえることで困難している。

 

 

「まだやるか?」

 

「…や、る!」

 

 

私は息を入れながら続けることを応える。

 

 

 

 

さて、いま私は何をやっているのか?

 

私はカシモトと遊びに近いトレーニング。

 

尻尾取りゲームとやらをしている。

 

遊び方は知っているが……いや、悔しい!

 

これが捕まらないのだ…!!

 

まるで先読みするかのように私の行動をヒラリと回避してくる!!

 

 

 

「くっ…!こう言ってはなんだが、ヒトを舐めていたぞ!」

 

「普通はそれで正しい。でも覚めた時の俺は普通よりもすごいんだ。流石に肉体的な進化は無いが、しかしそれ以外ならウマすらも凌駕するこの頂…!この凄みを別枠から持って言い表すならニュータイプとでも言おうか!」

 

「乳、タイプ?…なるほど!つまりその強さの秘訣はカルシウムと言うことか!」

 

「それも大事だな。朝飲むと良いぞ」

 

「もちろん毎日飲んでいるさ!2リットル!」

 

「そりゃあ、丈夫なウマ娘になるわな」

 

 

さて、先ほど話した瞬間火力とらを極めるためにも尻尾取りゲームをしようと提案したカシモトに私は少しだけ首を傾げていた。

 

正直、フィジカル面で勝負するとなると有利なのはウマ娘だ。

 

稀にヒトでもウマと遜色ない強さを持つ者もいるらしいが、カシモトに関しては別にそう言う類ではない。

 

だから順当なら私がこのまま圧倒してしまうと思っていた。

 

 

 

 

しかし……始めたら、これはなんだ??

 

まったく捕まらない。

 

私の伸ばす手を巧みに躱し続けている。

 

コチラの動きを全て読んでいるかのように。

 

ぐぬぬ…!!

 

 

「カシモトっ、少々手荒にいくぞ!」

 

「おお?芦毛の怪物が本気出すか?ならばコチラも強化パーツとしてカボチャのお面の口元をガチャりと展開させてからのM.E.P.E!!」

 

「なに!!質量を持った残像だと!?」

 

「ふははは!怖かろう!」

 

「いやっ!その残像とやらでカボチャが何個もあってむしろ美味しそうだ!」

 

「あ、そう?ついでに脳波コントロールできるって自慢しようかなと思ったけどオグリの脳波をコントロールしても意識を誘えるのは腹ペコくらいか。さすがオグリ」

 

「カシモト!一口だけ貰うぞ!」

 

「おいこら!狙うのは尻尾にしろ!つくづくウマ娘というのは御し難いなぁ!」

 

「そうさせているのは、仮面を外さないカシモトだ!」

 

「まだ言うか!」

 

 

 

っと、危ない。

 

カシモトと初めて出会った時のように真上から襲いかかってしまうところだった。

 

 

 

「尻尾を取る時は瞬間火力だぞ。同じペースで追い続けるんじゃなくて、ココという瞬間でやる」

 

「意味はわかるが、少しうまくいかないんだっ!」

 

「仕方ない。なら尻尾の先端に飴ちゃんでも吊り下げるか……ほら?これでどう__」

 

「ふっ!できた!」

 

「できちゃったかー。てか俺のインチキと違ってマジで残像見えたぞ。すげーなオグリ」

 

「もぐもぐ……ちゅるるるる…」

 

「おい!尻尾ごと食うんじゃねぇ!」

 

 

こんな感じに、たまにカシモトは普通の練習から外れた内容を私に課せて鍛えてくれる。

 

しかしこういった出来事を通して、私は確かに強くなっていることを実感しているんだ。

 

この走りが、次へと繋がる。

 

 

「カシモト!強くなれるってこんなにも楽しいんだな!知らなかったぞ!」

 

「そりゃそうだろう。オグリは生まれつきウマ娘なんだから。走る事に意味と価値を見出すほどその名を背負ったウマソウルは喜ぶ。それは必然なんだよ」

 

 

与えられた奇跡に感謝するだけではない。

 

コレを与えられたからこそ、この奇跡が永久に続くことを願いながらウマ娘はユメに駆けれることを、今こうして実感する。

 

それをカシモトが私にそうさせてくれる。

 

 

 

 

 

「さて、と___そろそろ声掛けてやるか」

 

「?」

 

 

そう言ったカシモトはカボチャのお面を外しながらとある方向に顔を向けると遠くに呼びかける。

 

 

「おーい、先ほどから柱の裏でコッソリと見ているは誰だい?」

 

「!?」

 

 

 

カシモトと走り回っていた河川敷。

 

町と町を繋ぐ鉄橋の柱の裏に一人隠れていることをカシモトは察知して、声をかける。

 

すると一人のウマ娘が顔をヒョコッと出した。

 

 

 

「ええと、その…」

 

 

 

それは私も知っているウマ娘だ。

 

たしか彼女の名前は…

 

 

 

「バベルの塔だったか?」

 

ベルノライトです!」

 

 

 

違ったようだ。すまない。

 

それよりもカシモトは気づいてたのか。

 

私は何も気づかなかった。

 

ふふっ、私のトレーナーはやはりすごいな。

 

 

 

「どうしたんだ?もしかして入部希望か?」

 

「ふぇ!?!? え、え、えと…そのぉ…べ、別にそんなんじゃ…ないことも、ないけど…」

 

「ベルノライトもチームに入るのか?それはいい。カシモトはとても良いトレーナーだ」

 

「え、オグリキャップさんが決めるの!?」

 

「俺は別に構わんぞ?一人も二人も変わらん」

 

「いや、普通に負担はありますよね?」

 

「素直な子だったらあまり変わらん。なので素直さん筆頭のオグリが0.5なら、素直さんその2のベルノライトも0.5、合わせて1人分だ。ならそこまで負担に感じないな」

 

「そ、そうなんですか…?」

 

「ただしベルノライト以外にもまた担当が増えるならタブレットPCの一つは必要だな。責任増えるし、脳内だけで半端にやれん」

 

「タブレット?…ああアレか。歯応えは好きだが一粒が小さいからお腹いっぱいにならなくて私はあまり好きじゃないな…」

 

そっち(食べる方)のタブレットじゃない。俺が言ってるのはPCの方だ。トレーナーをする樫本(カシモト)は徹底管理主義、つまりデータに落とし込むことには長けているんだよ」

 

「データ主義…!」

 

「そうだ。ウマ娘の成長を全て数値化する。だからチーム作る程度なんてことない」

 

「サラッと凄いこと言ってますね……チームって結構大変な筈なのに…」

 

「ああ。私のトレーナーはすごいんだ!」

 

「誇らしそうにしやがって…まあいいさ。とりあえず今日の練習は終わりだオグリ。それと明日はシューズと俺のタブレットPCを買いに行くから練習は休み。3人で街まで遊びに行くぞ」

 

「遠出か?それは良い。楽しみだ」

 

「え?3人?…って、私もですか??」

 

「入部希望なんだろ?なら3人じゃん」

 

「え、いや、でも、わたしまだ、何もトレーナーさんには……」

 

 

ウマ耳と尻尾を落ち着かせないベルノライトを他所に、カシモトは練習道具をまとめると河川敷の階段に足をかけて数段ほど上に。

 

するとカシモトは見下ろすようにベルノライトに振り向くと、そのタイミングで穏やかなオレンジに染めていた夕焼けは眩しく彼を照らしながら、そして…

 

 

 

 

「___ベルノライト」

 

 

 

「!」

 

 

 

カシモトの真後ろに光る夕陽。

 

この時間の夕焼けは目をくらませる程の光は放たれてないが、しかし同じ太陽でることを理由に直視するには痛いほど光っている。

 

そんな風に見えてしまう。

 

 

しかしベルノライトはそんな眩いはずの光の中で目を見開いて、彼を見ていた。

 

 

__ああ、やはりあの日と似ている。

 

トレセン学園に入学する前にカシモトと初めて出会い、そして同じ太陽を彼と重ねた日を思い出す。

 

それはまるで、私の中に落とし込まれた奇跡を紡いでくれる『魔法使い』のような訪れでもあったから印象深く覚えているんだ。

 

 

だからベルノライトも、私と似て……

 

 

 

魔法使い(キルケー)……?」

 

「……ベルノ?」

 

「_____ふぇ?……え、あっ!いや!」

 

「ベルノ?きるけー、とは?なんだ?」

 

「ぅえ!?あ、いや!こ、これは、その!!」

 

 

 

ウマ耳は小声も容易く拾ってしまう。

 

だから私はベルノライトの言葉を繰り返す。

 

そんなカシモトは眠気を飛ばしたかのように驚いて眼を見開いてたが、軽く笑みんで。

 

 

 

「急になんだい?もしや俺がウマ娘を誑かす悪い魔法使いにでも見えてしまったのかい?酷い奴だなぁ」

 

「いやいや!?ちがいます!違いますよぉ!?これは…そのっぉ!なんと言いますか!勝手に浮かんだと言いますかっ!いやですね!最近ちょっと読んだ本と言いますか!だから、ええと、その…ぅぅ…」

 

「はは、そうかい。まあ知識深いのは良いことだ。その強みはこの先も活かせよ。じゃあまた明日の放課後に会おう2人とも」

 

「!!」

 

 

 

そう言ってカシモトは再び眠たげな雰囲気を纏わせなが姿を消す。そうして私はベルノライトと河川敷に取り残されていた。

 

ちょっと、動けなかったから。

 

 

 

「ベルノライト、キルケーってのは一体なんだ?」

 

「え?えと、キルケーですか?…そうですね。簡単に言いますとギリシャ神話時代に登場する魔法使いの事ですね。あと魔女とか女神とか言われてます。それで、その………」

 

「?」

 

 

ベルノライトは何かを考え込む。

 

私は彼女の隣で夕風を浴び、体に灯されていた熱が少しずつ落ち着くと湧き上がる疲労が帰りを促してくる。

 

しばらくするとベルノライトは口を開いた。

 

 

「ごめんなさい。まだギリシャ神話の本をちゃんと読んだ訳じゃないので正しく説明できないかもしれません」

 

「そうか」

 

「はい。だから今日帰ってキルケーのことは全部読み調べます。そしたら明日の買い物でちゃんと説明しますね!」

 

「いや、そこまで頑張らなくても…」

 

 

ほんの少し気になっただけだ。

 

時間を取らせるようなことはしたくない。

 

でも、ベルノライトは…

 

 

「多分ですけど___オグリキャップさんも、視えましたよね?」

 

「!!」

 

「横顔、そんな風に感じたので…」

 

「そうなのか。よく見ているんだな」

 

 

 

その言葉に私は眼を見開いて驚き、ベルノライトは苦笑いする。

 

 

「私も、あの人に…カシモトさんに。陽の下で見開かれたその眼で覗かれた時、同じように眼を見開いて。そしたら体の内側が段々と騒がしくなって、激しくもなって、それで気持ちが耐えれなって。でも同時に視ました。カシモトさんの周りには妖精のように沢山の影が立って走っていた。それはまるで魔法使いのように…!」

 

「なんだか、絵本の御伽話みたいだな」

 

 

知らない事の多い私でも、絵本の中にある魔法使いや妖精のことは知っている。御伽話の中に生きる登場人物達。なのにそれがカシモトかもしれない。そう眼に映って仕方ない。

 

 

「ふふっ、ベルノライトも同じなんだな」

 

「っ、うんっ!正直まだこの気持ちを言語化するには大変難しい重さだけど、でも苦しくなんかない。ちょっとだけ怖く感じてしまったけど不思議と安心してしまう。ねぇ、カシモトさんって何者なのかな?」

 

 

何者__か。

 

それはまだ色々とわからない。

 

なにせ私はお粗末にも頭が良いとは言えないウマ娘だから。

 

難しいことは分からないし、知らないことの方が多いことをカシモトと共にして再認識した。

 

でも、心の中に生まれた熱がこの答えを知ろうとしていることは私にも分かる。

 

 

「今はまだ分からない。だからこそカシモトを知りたいと思う。そうして分かったその時にこの味を決めたいと思うんだ」

 

「!」

 

 

先ほどベルノライトが感じ取ったモノも、数ヶ月前に私が感じ取ったモノも、どちらも一致して心が騒がしくなる。

 

 

でも、苦しくない。

 

むしろ、ここから先が___と、促す。

 

 

 

恐ろしくも感じてしまう、追体験。

 

でもカシモトと共に私たちがウマ娘であることに偽らなければ、恐らくそれで大丈夫な筈。

 

 

 

これはただの直感。

 

それ以上を私は持ち合わせていないから。

 

だからこのようにしか表現できない。

 

 

 

でも…

 

 

__ウマ娘が走っていると目が覚めるんだ。

 

 

 

 

「…」

 

 

 

ウマ娘と、強調して求める彼。

 

だからいざ見開かれた時のカシモトの眼は、私たちがウマ娘って理由だけで何処までも心を騒がしくしてくれる不思議なトレーナー。

 

 

「ベルノ、また明日の…えと、放火後に?」

 

「いや燃やしちゃだめだよ!?」

 

 

 

朝の日の出も、真上に登る日も、いまある夕陽も、結局は同じ太陽であるように私達もそれぞれ違う毛色だろうと、カシモトからすれば全ては同じウマ娘であることに変わりない。

 

なら彼の前でウマ娘の私が走って、その眼を眠気から覚ましてあげよう。

 

 

 

それで行こう__オグリキャップ。

 

 

 

考えるよりも、この脚で応えよう。

 

___なんとでもなるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オグリキャップ1着!』

 

 

 

レース場から響き渡る実況、あと歓声。

 

走り切った先で沢山の声に歓迎される。

 

 

 

 

「なかなかいいぞ、オグリ」

 

「カシモト!」

 

「オグリちゃーん!」

 

「ベルノ!ふふっ、君が選んでくれたシューズのお陰でとても走りやすかった。ありがとう!」

 

「へ?ぐえっ!!あががが!!」

 

「仲良いな、お前ら」

 

「どれーなぁー!みでないでだずげぇでぇ!」

 

 

勝利の喜びと共に抱き心地の良いベルノライトを抱き上げて分かち合う。ふかふかして、あと柔らかい。ベルノは良いウマ娘だ。

 

 

 

 

 

 

 

ベルノライトが選んでそれをカシモトから買って貰ったこのシューズはもう前月の話。

 

履き心地も、使い心地も良い。

 

あと放課後のお出かけは中々楽しかった。

 

 

でもその時に改めてベルノと話した。

 

カシモトもタブレットPCを探しに別行動でいなくなったタイミングにベルノからキルケーに関する内容を説明してもらったんだ。

 

 

 

まず最初にベルノライトは言った。

 

__昔、ウマ娘は存在しなかったらしい。

 

不確な故に『らしい』という扱い。

 

 

だとしてもウマ娘というのは一体何処からか現れたことになっているのか??

 

ある学者は()()()()の仕業だと言った。

 

その「とある者」とは【キルケー】という魔法使いの仕業ではないか?と唱えたようだ。

 

まずキルケーとはギリシャ神話に出てくる魔法使いであり、人間を獣の姿に変えてしまう力があると言われている。

 

あと非常に嫌な性格をしてるとか。

 

なので気に入らなければ魔法を使って簡単に人間を獣の変えてしまう、そんな気難しい存在。

 

そしてある日、それほどの力を持った魔法使い(キルケー)はひとりの人間を魔法でこの世に存在しない動物に作り替えてしまった。

 

作り替えられたその動物は他と同じ、四足歩行の生き物として地を這うことになった。

 

 

しかし___世界がその存在を否定した。

 

存在してはならない。

 

()()()()()()らしいから。

 

 

そのため四足歩行の動物になる筈だったその女性は世界の抑制力によって半端な獣として新たに作り替えられてしまった。

 

 

その時に現れたのが【ウマ娘】らしい。

 

そんな逸話がある。

 

 

しかしこれはあくまでギリシャ神話の伝説。

 

つまり不確かな記録だ。

 

しかも何故『()()むすめ』って名前になったのかも不明だ。

 

一部では「変身で()()くいかなかった()()()」って意味じゃないかと言われているが、ベルノが「ギリシャ神話に日本語が介入するの?」と不思議がっていた。

 

なので名前の由来は違うんだろう。

 

 

そんな諸説はともかくとし、繰り返すがギリシャ神話は御伽噺だ。強引に紐付けれるのはそうした設定のみで他は言うほどの信憑はない。

 

神話という二文字のロマンスだけが独り歩きしてる世界で、キルケーの名があるだけ。

 

だがベルノライトはギリシャ神話の本を読んでいたことでウマ娘の初出と、そしてキルケーに纏わる内容らをたまたまあの日意識していた故にカシモトから受けた不思議な感覚がベルノライトを襲い、またそこにある不可思議をあの時の私のように目の当たりにして重なり合った。

 

アレはそれだけの事だ。

 

急な巡り合わせに処理が追いつかないが、でもそれを言ったら早朝ランニング中にたまたますれ違った彼に齧りつこうと飛び込んでしまった私もいるんだ。私は食欲。ベルノライトは知識欲。それだけの違い。

 

でも引金は全て、カシモトからだ。

 

 

『オグリちゃん私はね。カシモトさんと眼を合わせたあの時にね、あの人の立っているその周りには姿の分からない数々のナニカが立っていたんだよ。今にも走り出しそうなナニカ。けれどあの時間は目に優しい夕焼けだった筈なのに昼間の太陽のような陽光で目が眩んだから、正しく捉えれることは叶わなかった。でも心が分かる。アレは確かに私達と同じだった…』

 

『それは…うまむすめ、だったのか?』

 

『それは…まだ断言できない。でもそうなんじゃないかなって思っちゃう。変かな?』

 

『…』

 

 

変かどうかは分からない。

 

私達にとっては共通する事実。

 

こうして語り合えて、理解し合えるほどに。

 

でも周りからすれば異常だ。

 

正常から離れた、この心の騒がしさ。

 

魔法使いに見えて、周りには妖精がいた。

 

全てが御伽話みたいだ。

 

 

 

『ねぇ……オグリちゃん。魂って信じる?』

 

『え?』

 

 

脈絡のない質問に戸惑った。

 

でもベルノライトはあの日受けた現実を疑わないからリアリストだからこそ、感情の処理を追いつかせて理解しようと取り組んでいる。

 

それがこの質問。

 

そうしてベルノライトは答える。

 

 

『昨日考えてみた、私なりの答え』

 

『答え?』

 

『うん。例えば私がベルノライトで、オグリちゃんはオグリキャップ。この世界にない外の世界から受け継いだ私達ウマ娘の名前であり、今日この日まで受け継いでいる。脈絡のない私達の始まりだし、受け継ぐその造形も、ストーリーテラーも分からない。けど不思議と分かって背負えちゃうこの名前達はやはり私たちがウマ娘だからなんだよ』

 

『?、??』

 

『あはははっ、ごめんね。なんか難しく言い過ぎたね。でも難しくなっちゃうのは当然。だってオグリちゃんは何故オグリキャップって名前になったのか、説明できるかな?』

 

『何故、オグリキャップ…なのか』

 

『私も何故ベルノライトなのか分からない。お隣さんに住んでる人は普通の名前なのに私はベルノライト。でも理由付けをするならばそれは私がウマ娘として生まれたから。オグリちゃんもウマ娘として生まれたからこその名前。理由はそれだけ』

 

『その…なんだ?つまり、ベルノは何が言いたいんだ?』

 

『……私は思うんだ。カシモトさんの周りにあった見えないナニカ達をウマ娘だと思っちゃうのは私たちが同じウマ娘だから。だって今もあの瞬間を思い出せばこんなにも惹き寄せられて心が騒がしくなってしまう。走れ。ウマ娘で走って良い。そんな訴えが()()()()()()()()()

 

『!!!』

 

 

 

ああ、分かる。

 

だって___だって、私も。

 

 

__オグリキャップで走る。

__だから、その眼で見ていてほしい。

 

 

初めて出会ったあの日にそう感じた。

 

その背を見守るように眺めてくれるあの高揚感は嘘なんかじゃない。

 

嬉しくなって、騒がしくなって、落ち着かなくて、だから何処までも何処までも、思うがままに走る。

 

それらが無条件に許されてたまらないあの瞬間は__ああ、間違いなく。

 

 

 

オグリキャップ(う ま む す め)___だから、か」

 

 

 

なら、カシモトから感じ取れたあの不思議な感覚と、不可思議に包まれたあの光景も私たちがウマ娘としての理由になっているなら、姿形が分からない影達も多分恐らく…

 

カシモトに集われたウマ娘なんだ。

 

 

 

 

ああ、なるほど___これが直感、か。

 

ベルノライトが言ってた意味を理解した。

 

確かに、この脚で走るだけが捉えになっている知識浅い私にはできない、ベルノライトならだせる答えだ。

 

 

『ふふっ、ベルノライトも凄いんだな』

 

『ふぇ?え、え?どうしたの突然?むしろ私ってなんか変じゃないかな?』

 

『いや、そんな事はないさ。君も凄いと私は思うんだ。もしかしたらベルノライトもカシモトみたいに凄くなるのかもな』

 

『ええー!?わ、私は無理だよオグリちゃん!?だってあのトレーナーさんは名門樫本の出の者だよ!?なんで地方にいるのかは分からないけど…でも私程度のウマ娘がカシモトさんのように凄くはなれないよ!?それに、私はウマ娘として走りなんてお粗末で…』

 

『ならカシモトの元で強くなれば良い。そしたらベルノライトの凄いところは…!……その、凄くなれば…凄いのが、えと…ともかくちゃんと凄くなるだ、ろ?!?』

 

語彙力ぅ(トプロぉ)…』

 

 

 

でもベルノライトがカシモトを一眼見てそう感じたことを、私は後手になって理解した。

 

言語化されたベルノの感覚。

 

私はそれを理解したからこそ、ベルノライトはオグリキャップには無いとても凄いところを知った。だからベルノライトもカシモトの担当ウマ娘となってその眼で見てもらうべきだ。

 

 

『あはは…なんか、話逸れちゃったね』

 

『構わない。だって難しい話はお腹が空いてしまうからな』

 

『いや、耳澄ませると今もお腹キュルキュルと小さく鳴っているけど…?』

 

『む、確かにそうだな。出かける前にオヤツのおにぎり50個は足りなかったか…』

 

 

 

結局のところ、難しいことはそのまま。

 

でもベルノライトの「恐らく」というのは私の追憶体験を考えればそうなのかもしれない。

 

断定も、断言もできないが、けれど間違いなくカシモトから発せられた出来事に変わり無い。

 

同室のノルンに言っても理解してもらえるかは自信ないが…まぁ、良い。

 

カシモトの凄いところは私とベルノだけが知っていれば良いんだ。いや、皆にも知ってもらいたいけど…ま、それは東海ダービーだな。走ればウマ娘を筆頭にトレーナーも有名になると聞いた。ならオグリキャップだからこそ出来ることを熟そう。カシモトが見てくれる側で。

 

 

 

___

__

_

 

 

そうした、数ヶ月前の記憶。

 

そして今日、レースに勝てた。

 

カシモトが見てくれる場所で。

 

 

 

「カシモト」

 

「どうした?」

 

「いや……ふふっ!なんでもない」

 

「なんだ?なんだぁ?急に愛嬌たっぷりオグリちゃんになりやがってよぉ?」

 

 

 

ああ、嬉しい___嬉しいんだ。

 

カシモトがオグリキャップを見てくれる。

 

この真実がとても嬉しい。

 

 

 

っ…だめだ!

 

言葉にしても「嬉しい!」しか言えない!

 

だって今はそれほどに!なんだから。

 

 

 

「そ、それより、わだじは、ぐるじぃ…」

 

「そろそろ解放してやれ、オグリ」

 

「む、すまない。いやベルノは抱き心地が良いからな。特に正面がふかふかなんだ。カシモトもギュとしてみるか?」

 

「なら頭だけ貰うか。頭部を破壊すればガンダムファイト国際条約的にもウマ娘に勝てるし」

 

「カシモトさん?私に何か恨みでも??」

 

「いや別に?ただベルノにオグリのシューズを任せたとはいえちょーっとシューズ代がお高く付いたかなー、くらいの恨めしい気持ち。これは何かで建て替えないとな」

 

「それ私の頭部で補う気ですか!?」

 

「それなら私はベルノの身体を貰うぞ。カシモトと仲良く分けっこだな」

 

「この手が真っ赤に燃える!」

 

「ええええ!?ぐええぇっ…!!」

 

 

 

 

この喜びを、ここにいる3人と共に。

 

いつか……どて煮に、なれたらな、と。

 

 

 

 

 

つづく






ああー、この感じとてもガンダムだね〜^
脈略なく始まるこの展開の速さ。
なんかとてと懐かしい気分っす。


でもマフティーしてた彼にキルケーの幻覚は原作考えたらあまりにも皮肉過ぎるやろ。なんだこの設定たまげたなぁ。



【樫本(カシモト)】
この世界ではマフTを名乗ってないのでオグリキャップからは「カシモト」って呼ばれている状態。おかげで結構力抜いて普通(?)のトレーナーとして務めれている。それでも異質な雰囲気を纏ったいるためかオグリキャップを除いて他のウマ娘らがあまり近寄りたがらない。仕方ないね。

【オグリキャップ】
世間知らずのとても可愛い芦毛のウマ娘。カシモトが色々と分かりやすく教えてくれるので好感度高め。魂レベルでマフティーに惹かれているが本人は自覚無し。なので最後までずっとこの距離感。

【ベルノライト】
初対面のカシモトのことを「キルケー」と当て嵌めたりといきなりタイトル回収させてしまった感情を持ったリアリスト。正直ガンダム適正が高い性格をしていると思う。感情に素直でそれが原動力にもなるし、気持ちの言語化が上手かったりと頭も良い。フォント・ボーかな??



あ、キルケーの魔女は前日に観てきました。
IMAXレーザーで戦闘の音感がとても良かった。
お金かける価値あるのでまだの方は是非。


あと毎日投稿は決まって【20:00】なのでよろしく。


じゃぁな!

閃光のハサウェイ"キルケーの魔女"は観に行きましたか?

  • 観に行った
  • 観に行ってない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。