やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:つヴぁるnet

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If story _ Gray end

 

 

 

 

この身体に与えられた素質はウマ娘として語るにはあまりにもお粗末だから諦めすら感じた。

 

でもそれを許さなかった人がいた。

 

その人はキルケーの魔法使いだった。

 

だから魔法のように私の手を引いて、その名前に鮮やかな色を付けて、ウマ娘として誇らせてくれたんだ。

 

 

 

 

 

だから脚に、私ならではの言語化を。

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

後方から一気に前に出る。

 

やり方は___オグリキャップで。

 

地方ならではの負けん気この脚に乗せる。

 

強者を沢山見てきたこの眼を信じろ。

 

ここまで来た私なら___出来るッッ!!

 

 

 

 

『ベルノライトだ!!

後方からベルノライトが上がってきた!!』

 

 

響き渡る実況の声と湧き上がる歓声。

 

しかしそれすら把握できないほどに私の見ている光景は渇望の限りで埋め尽くされる。

 

聞こえるのは自分の心臓の音。

 

苦しくて、苦しくて。

でも歯を食いしばって前に出る。

 

やっと…!!

やっと…!!

 

私はこの場所まで来れたんだ!!!

 

 

被れ…!!

被るんだ!!

 

ベルノライトを被り続けろ!!

 

諦めるな!!

 

私はベルノライトを!!

 

マフティーを諦めちゃだめだぁぁっ!!

 

 

 

「ウァァァぁぁぁあ!!!」

 

 

 

このレースに全てを注ぐと言う頑強さ。

 

やり方は___オベイユアマスターで。

 

 

 

 

そして、景色が見え始めた。

 

 

真っ暗な世界がヒビ割れる音。

 

パキリと、その場に決定付けて埋められていた私()()を破らんと、ベルノライトが吠える。

 

もっとだ、もっと走れる。

 

ベルノライトならもっと誇れる。

 

だから。

 

だから…!!

 

 

__やってみせろよベルノライト。

 

 

 

 

「なんとでもなるはずだぁぁあ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

私だってマフティーのウマ娘になってみせる。

 

そのためにベルノライトたらしめる。

 

ただ、ひたすらに、そう願って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ、うへへへへへへへへ…」

 

「カシモト、ベルノライトが止まらん」

 

「放っておけオグリ。トレセンに着いた頃には多分戻っているはず。あ、ポテトのLを10個追加でお願い致します」

 

「私はバーガーが良い。味の濃いやつ」

 

 

川崎記念の帰り、四人乗りの車で適当なジャンクフード店にドライブスルーをする。

 

後ろの席に私とオグリちゃん。

 

助手席にオベイユアマスターさん。

 

そして運転席にカシモトさんだ。

 

細やかなお祝いとして寄り道する。

 

あとオグリちゃんがお腹空いたから寄ったのもあるらしい。ついでにジャンクフード大国の出身としてオベイユアマスターさんもバーガーを食べたく寄り道を即賛成したのもある。

 

これにはカシモトさんもドライブスルーに舵を切るしか無かったようだ。

 

 

「はぁぁぁ……えへは、アレがG1のウィナーズサークルなんだね……うへ、うへへへへへ」

 

「この満足娘がよぉ」

 

「でもベルノライト頑張った。最後の直線は凄かったぞ」

 

「……やはり最後のは領域か?トレーナー」

 

「え?ああ、そうだな。まだ完成に至ってる訳じゃないが残り数十メートルだけ片鱗を見たな。つまりベルノライトはそこに足を踏み入れれるほどの強さになっている訳だ。よく頑張ってる」

 

「いやぁ〜、それほどでもぉ」

 

「ウイニングライブ、めちゃくちゃ盛り上がっていたな。やはりあの曲だからか?」

 

「チーム"キルケ"の限定曲だ。私も昨年のジャパンカップで踊らせてもらった。良いな。ならない言葉はもう一度だけじゃない何度でも描いてみせる、やってみせる。トレーナーが考えた歌詞か……正直、センスが良くて困る」

 

「そりゃ良かったよ。ほれオグリ。注文のポテトとバーガーを10個ずつだ」

 

「ありがとう。足りるかな……」

 

「帰ったらちゃんとお祝いする。いまはそれだけにしておけ」

 

 

オグリちゃんの膝下にドサリと乗せられた袋を見て私も正気に戻る。あーいやでも。やっぱニヤけちゃうなぁ。だって私の膝にはG1勝利の川崎記念トロフィーが乗っているんだもん。URAと彫られているその下にベルノライトと六文字刻まれた勝利者の名前。もうこれだけでお腹いっぱいになってしまう。御行儀悪いけどこのトロフィーで飲み物を飲んでみたいほどには浮かれてしまう。

 

 

 

「それはもうベルノライトのトロフィーだ。持ち回しでは無いから完全にベルノライトの所有物になる。だから入れて飲んでも良いぞ」

 

「ええ!?そ、それまずいんじゃ…??」

 

「私の国では持ち回しのトロフィーだろうとやってる奴がいたな。それで自慢しまくるものだから鬱陶しいことこの上無かったが」

 

「あー、なるほど…」

 

 

交換留学生として日本に来て一年半になるオベイユアマスターさんも日本語堪能だ。違和感なく聞き取れた日本から、過去の出来事に対する嫌悪感を耳にする。けれど…

 

 

「だが仲間の勝利なら歓迎だ。おめでとうベルノライト。勝利の美酒は美味しいぞ」

 

「ッ〜、カ、カシモトさん!私!今だけ少し悪い子になりますから!浮かれますからね!?」

 

「別に許可制じゃねーよ。オグリ、二口分くらい入れてやれ。王者ベルノライトがお待ちかねだ」

 

「分かった。バダバダガンダバガンダバ」

 

「うわわわ!?Lサイズまるまる入れるの!?」

 

「??、二口だと聞いたからな。もしかして一口サイズが良かったか?」

 

「これが二口分なら一口のそれもう半分では?」

 

 

ほんの一口だけ楽しんで、終わったら軽くウェットティシュで拭いて大事にしよう、そう考えていたのにオグリちゃんの二口分に任せてこの結果である。あー、これは完全に盃だぁ。

 

 

「う、美味すぎる、これがG1の味…!!」

 

 

あまり液体に付けているとメッキが剥がれてしまうので一気に飲み干したが、身体に染み渡る糖分と勝利の余韻は完全に美酒である。これだけでもう一度酔えそうになる。あ、だめだ。またニヤけちゃう。だ、だって!

 

 

「本当に私、勝ったんだね……ッ〜!!」

 

「喜べ喜べ。俺は誇らしいぞ。よく笠松からここまでベルノライトでのし上がってきた」

 

「トレーナーさん…」

 

「世間はオグリキャップのことをシンデレラグレイと評してるが、俺からすればシンデレラはベルノライトだな」

 

「ふぇ…??」

 

「ああ。ベルノは可愛いからな。シンデレラはベルノライトの方が似合う」

 

「ええー!?」

 

「このチームでプリティーダービーなのはベルノライトだ。私もそれで良いと思う」

 

「オベイさんまで!?」

 

 

G1勝利バの定めなのか逃げ場のない車の中で私は褒めゴロされてしまう。

 

それで段々と恥ずかしくなる私。

 

いやいやいや!オグリちゃんもオベイさんも可愛いですからね!!?

 

 

「(全員可愛いんだよなぁ)」

 

「(カシモトさん!そういうのは禁止!)」

 

「(コイツ直接脳内に!!まさかニュータイプとでもいうのか!?)」

 

「(カシモトさぁぁん!!)」

 

 

ウェットティシュで優勝トロフィーの中身を拭きながら視線を一旦外に。川崎市から離れて東京に戻っていく帰り道に揺られながら、これまでのアスリート人生を思い返す。まだまだ走りそうな脚だ。だからもう一回くらいG1を勝利して着飾ってやりたい。そう願う。

 

 

「カシモトさん。お祝いは明日にしませんか?」

 

「?」

 

「帰ったら走りたいです、私」

 

「!…ああ、良いぞ。実のところ土鍋の材料は帰りながら買う予定だったのでまだ準備してなくてな。学園に戻って走るってなら全然良いぞ」

 

「!」

 

「ベルノが走るのか。なら私も走ろう」

 

「私も、付き合おう」

 

 

私はとても恵まれている。

 

オグリちゃんに、オベイユアマスターさんに。

 

そしてカシモトさんに。

 

ベルノライトの私が出会えたことを喜ぶ。

 

…走ろう。帰ったらウマ娘として。

 

そうしたらキルケーの魔法使いは目覚めずにいられないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本に王がいるのか?

 

そう問われたら私はこう応える。

 

代わりにカボチャ頭が王たらしめていたと。

 

 

 

「日本に来てもう1年以上が経っているのか…」

 

 

交換留学生として日本に参加することになったのは一年半前のジャパンカップだ。

 

日本の芝なら私の脚にあっている。

 

そうトレーナーからアドバイスを貰い、ジャパンカップに進路を合わせた。

 

そのためには出来ること全てやってきた。

 

しかし負けた。

 

芦毛の怪物……いや、笠松の怪獣によって私達は領域ごと食い破られてしまい、その背を目で追うことしかできなかった。

 

オグリキャップというウマ娘に、私の渇望は飲み込まれたんだ。

 

あのウマ娘の方が飢えていたから。

 

それが敗因。

 

そして、トレーナーの樫本。

 

この者によって私の支配していた情報は無意味となったんだ。あまりにも無慈悲だった。

 

だからもう、情報も、偽りも、被れない。

 

たった一度のためだけに偽りのオベイユアマスターを作り上げたから。

 

しかしそれはもう通用しない。

良くも悪くも目立ったから。

 

 

 

 

___ならば、そのままで良い。

___そのオベイユアマスターでやる。

 

 

 

そのままのオベイユアマスターでジャパンカップをリベンジすれば良いと、任せろと手を差し伸べたのはオグリキャップのトレーナー樫本だった。

 

それから私は交換留学生として日本の中央トレセン学園に脚を付け、樫本トレーナーの担当ウマ娘として日本の芝で本格的に走ることになった。やはり日本の芝にあっている。

 

ここでなら偽りを被らずとも、普通のオベイユアマスターとして走れる。

 

 

それからはG2レースを主軸に走り、途中ファン投票によって出走した宝塚記念は入着に迫るまで走れたりと、着々と日本の芝に適応した私は再びこの日本で秋の季節を肺に詰め、そして…

 

 

『オベイユアマスター1着ッッ!!

見事リベンジを果たしましたッッ!!』

 

 

その勝利に私は吼えていた。

 

それまでは一度のみに全て注ぎ込む。

私にはそれしかない。

そう考えていた覚悟と諦めがあった。

 

 

でもこの二度目は可能にさせた。

 

偽り被ったオベイユアマスターではなく、この日本の芝に脚を従わせたオベイユアマスターとして勝利を得ることができたんだ。

 

 

不思議なトレーナーだ。

 

前々回のジャパンカップで全てを終えててしまったと思ったウマ娘に、リベンジと言う形で支払ってくれた。それを果たした。

 

 

 

「マフティーか…」

 

 

ウマ娘に名前が付くように、樫本トレーナーにもマフティーという名前が付いた不思議な人。

 

その名があるからこそウマ娘のために正しく狂えると喜ぶ歪さはあの時の私以上。

 

本当の被り者を目の当たりにした。

 

あのようなトレーナーもいるんだ。

 

恐ろしくもあり、でも頼もしい。

 

 

 

「あと数ヶ月か」

 

 

 

交換留学生としての期限が迫る。

 

次の3月が終われば4月には戻る。

 

……たこ焼き、美味しいから帰りたくない。

 

共にジャパンカップを走ってくれたタマモクロスが作る郷土料理(ソウルフード)はバーガーと同じくらいに美味しんだ。

 

正直に言うとこの国を離れたくない。

 

もっと日本の芝で走っていたい。

それが出来るなら、私は被り物を必要としない素顔でオベイユアマスターのままで走れる。

 

 

 

「オベイ。こんなところにいたのか」

 

「トレーナー。どうしてココが分かった?」

 

「俺の担当だからな。分かるよ」

 

「……本当に、よく分からないトレーナーだ」

 

 

質問の答えになってないが、でもそれがこのトレーナーと知ってからは半分ほど諦めている。

 

だから私は諦めたように笑いながら夕焼けのターフを屋上から眺めている。

 

 

「貴方は充分に支払ってくれた。感謝している」

 

「そうなのか?そりゃ随分とコスパが良いな」

 

「ジャパンカップを勝たせてくれた。それ以外にも幾つかレースを。充分に頂けたと感じる…」

 

「相変わらずストイックな奴だ。でもG1の勝ち星がジャパンカップのみとはいえ国内最高峰のレースを勝利した実績は本物だ。ウマ娘によっては充分と思うかもしれないな」

 

 

金網に寄りかかった彼は言う。

 

彼からすればG1レースは幾つも…と、言うよりオグリキャップの出るマイルレースは全て勝っている状態だ。芝もダートも問わず前々回のジャパンカップからマイル路線に切り替えてから負け無しである。

 

ついでに出走する人気投票レースも全て1着で同時にグランプリ四連覇と日本の脳を焼き焦がしている。なんなら今年で六連覇にしてやる予定らしい。お陰でオグリキャップの土鍋ガンダム?は、まだまだ大きくなるらしい。

 

 

土鍋か、美味しかったな。

 

冬集まって3人で食べた土鍋。

 

川崎記念を通して初のG1勝利ウマ娘となったベルノライトを祝うために、トレーナールームにコタツを用意すると肉やら蟹やら、あとオグリキャップのためにお米も10合分を二回も炊いたりと、冬の終わりを鍋で囲っていた。

 

 

始まりがあれば終わりもある。

 

それに私の場合は、もう終わったと思っていた物語に続きを与えられ、勝利を支払われた。

 

贅沢だ。すごく贅沢なんだ。

 

オベイユアマスターは沢山を与えられた。

 

 

だから…

 

ああ、だから…

 

しっかりと胸を張って、別れ___

 

 

 

「ああそうそう伝えることあったんだわ。オベイの交換留学期間は再更新したから。なので来年もジャパンカップな。目指すは2連覇だからよろしく」

 

 

「_____ゑ??」

 

 

 

瞳に星を入れれるくらいには豹変させれる私でもこんな風な目を点にするのは初めてだ。

 

いや、待て待て待て待て!!

 

今この人は何を言った!!?

 

 

 

「どういうことだ!?樫本トレーナー!?」

 

「んぁ?どう言うも何も普通にそう言う話だ」

 

「そうじゃないんだ!その…な、何故っ!??」

 

「何故って…オベイは日本の芝適正が高いんだから走るなら日本だろ。ゲームに例えたらSランク超えたSSランクくらいには芝の適正能力あるんだぞ?てかここまで育てたのに期限だからバイバイさせるとか勿体無さすぎるわ。それで帰るってんなら止めないが。一応支払い終えてるらしいからな」

 

「な、ぁ…ぁ……えと…」

 

 

空いた口が閉じない。

 

そんな私に樫本は悪いことするように笑う。

 

 

「オベイはその脚が尽きるまで日本で走り切れ。それまでは支払い続けてやる。この俺がな」

 

「!!」

 

 

伝えることが終わったのか樫本は屋上を去って姿を消した。私は思考が追いつかずしばらく固まっていたが、国外行きの飛行機が真上を通り過ぎた辺りで私はまだこの日本に脚を付けていられることを知って、心臓が強く叩く。

 

 

 

「そう、か。まだ、私は…」

 

 

いや、まだ、じゃない。

 

これからも終わるまで、この場所で。

 

ウマ娘のオベイユアマスターは走れる。

 

 

 

「ッ〜!!」

 

 

耐えれずにグッと拳を握りしめて、身体全身を震わせて、喜びに焦がされる。

 

だ、だめだっ、被っている時のオベイユアマスターのように喜んでしまいそうだ!

 

っ、ぅ!!

 

てか、さ!!

 

あ、あのトレーナーっ!!

 

前から思っていたがズルくないか!?

 

なんでこうもうウマ娘のために…!!

 

ああ、もう!!

 

こんなの私のキャラじゃない!!

 

 

 

「すぅぅゥゥ……はぁぁぁぁ…」

 

 

 

被れ、被れ、被れ、冷静を被れ。

 

いや、違う。

 

そういうのはだめだ。

 

もう被るとかはするな。

 

樫本トレーナーはオベイユアマスターのままを求めているんだ。

 

 

「……」

 

 

 

金網に手をかけて、日本に置いて行かれた私は国外行きの飛行機を眺める。

 

まだ戻ってくるな。

もしくはまだ戻らせない。

 

そんな風にこの身体を叩いてくれる。

 

あの人が支払い終えるまではオベイユアマスターを王たらしめるマフティーは覚えてくれる。

 

 

 

「今年もジャパンカップ。なら…!」

 

 

この脚を止めてられない。

 

私は走るんだ。オベイユアマスターで。

 

あの人が見てくれる、この場所で。

 

やってみせよう、マフティー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…はっ…はっ…!」

 

 

走る。走る。立っては走る。

 

それが私にとっての奇跡。

 

そして、その奇跡は軌跡となった。

 

私はオグリキャップとして走っている。

 

笠松から中央に、思い切って走る。

 

 

 

「ごく、ごく…ぷはぁ…」

 

 

自販機から購入した水を一気に飲み干して燃料を投下する。まだまだ走るために。

 

でも少し休憩だ。

 

河川敷の斜めの芝に寝転がり、大の字になって東京の空を見上げる。

 

 

「……」

 

 

笠松とは違う、少しだけピリッとした空気。

 

都会の空気というべきか。

 

田舎の柔らかくて大らかな空気とは違う。

 

しかしこの環境だからこそ、何も知らなかったオグリキャップを強めてくれたんだ。

 

そのお陰でこの場所まで辿り着いた。

 

 

 

「あれ?もしかしてオグリか」

 

 

「え…?あ、カシモトじゃないか…!

 

 

大の字に寝転がったまま顔を上げればカシモトが見下ろしていた。

 

休日に出会えた事がなんだか少し嬉しくなってしまう。

 

それにしてもランニングコースとして使っている河川敷で偶然彼と出会うとは。

 

散歩だろうか?

 

 

「いや、最近ここら辺に面白いウマ娘がいるって聞いたからな。気になって調べに来た。お出かけコマンドって奴だ」

 

「面白いウマ娘?聞いたことないな」

 

「話によるとそのままの意味でむしゃむゃと道草食ってるウマ娘がいるらしいが…」

 

「道の草…??ああ、それなら食べれそうな野草があのあたりにあったから、小腹を満たすにちょうど良いぞ。食べてみるか?」

 

「いや正体オメーかよ。マジで道草食ってんじゃねーかオグリ。てか携帯用の補食は一体どうした?いつもなら__」

 

「夜、お腹が空いて…」

 

「アレはランニング用の補食だ、ドアホ」

 

「す、すまない…」

 

 

やれやれと項垂れるカシモト。

 

し、仕方ないじゃないか!

そこに食べれるものがあるんだ!

食べなければ失礼だ!

 

 

「食べれる野草だろうと道草を食うのはやめておけ。てか現代マイラー最強のグランプリ四連覇ウマ娘が変なことすな」

 

「それなら体育祭で全身黒のジャージとカボチャ頭を付けて踊っていたカシモトの方がよっぽど変だと思うが…?」

 

「アレは儀式だよ。定期的に三女神に反省を促さないと調子に乗るからな。あと普通にファンサービスとして盛り上がっていただろ?」

 

「それはそうだな。なんだったらタマモクロスが笑い転げていた。とても盛り上がったな」

 

 

中央は興行が多い。

 

そのためいろんな経験ができるから楽しい。

 

特に前の体育祭ではトレーナーと担当の二人三脚レースではカシモトはオベイユアマスターが組んでぶっちぎりの一着だったりと盛り上がった。

 

そのあとのパン食い競争では私が一番__にはならず、ベルノライトが一番だった。

 

 

『いや、オグリちゃん。全部食べるんじゃなくて一口でも齧ったら先に進むんだよ??』

 

『お残しなんて失礼じゃないのか??』

 

 

ルールをあまり知らなかったため一番にはなれなかったけど、でもパンは美味しくて体育祭は楽しかった。笠松の体育祭も楽しかったが中央も中々に楽しい興行だった。また今年も体育祭に参加したいものだ。

 

 

「しかし、笠松に比べて背が伸びたな」

 

「私がか?そうだな。中央に来て一年半だ」

 

「あと数ヶ月もすれば2年目か。オベイも気づいたら1年経ってたし。時の流れは速い」

 

「ふふっ、でも毎日が目まぐるしくて楽しいぞカシモト。中央に来て良かった」

 

 

笠松の頃のこぢんまりとした環境も好きだったが中央の忙しさも嫌いじゃない。知らないことを沢山知れる幸せと、それから中央だからこそ腹の底から飢えを感じれるレースにも出れる。

 

それを私はカシモト達と共有しているんだ。

 

 

「じゃ、俺はそろそろ行くよ。帰ったら積みゲーしないと」

 

「なぁカシモト」

 

 

 

去る前にカシモトの背を引き留める。

 

 

 

「どうした?」

 

「私の土鍋はまだまだ大きくなるぞ」

 

「オグリ基準なら随分と大きいだろうな」

 

「ああ。食べきれない程に、だ」

 

「オグリが食べきれない程?それは本当に大きいかもな。もしかしてその土鍋って32.5メートルくらいあったらしてな」

 

「ガンダムとやらがどれほど大きいのか分からないからなんともいえないが、でも私の願うドナベガンダムは絶対に大きくて美味しいぞ」

 

「ああ。すごく楽しみにしている。オグリキャップの夢は土鍋になることだからな。どのように味付けされて、どのように箸を突いて食べるのか、笠松も皆もオグリの完成を楽しみにしてくれているよ」

 

 

そのためには沢山走り、沢山勝つんだ。

 

それが沢山の人達の恩返しになる。

 

もちろんカシモトにも、感謝の証になる。

 

 

「カシモト」

 

「?」

 

 

河川敷を照らす目に優しい夕焼けを背にして私は振り返る。ここまでオグリキャップのためにマフティーたらしめてくれた私の最高のトレーナーに向けて感謝を伝えるんだ。

 

 

 

 

 

「私を愛してくれてありがとう」

 

 

「___ああ、俺も」

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘として走ってくれてありがとう。

 

___オグリキャップ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の走りはまだまだ続く。

 

時々箸休めは必要になるが、しかしこの飢えはいつだって本物。

 

だから私はその度に満たされようと願って走り続けるんだろう。

 

魔法使い(キルケー)として素敵な魔法を与えてくれるこのカボチャ頭を味わうために。

 

この空腹はオグリキャップだけのものだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ IF STORY Gray ~

 

 ~ お わ り ~

 

 

 

 







【カシモト】
その後もチーム"キルケ"の名で中央のトレーナーを続けたし、中央に疲れた時は地方に出張してしばらく寝ぼけておくなど、一周目に比べてかなり自由にトレーナー人生を謳歌する。そんな彼の活躍にキルケーの魔法使いとして異名かつ威名が付くも、それはその名で誇れる走りを与えるトレーナーとしてウマ娘から求められる彼はこの世界でもウマ娘に応え続ける、正当なる予言の王マフティーだからである。

【オグリキャップ】
その脚が尽きるまで飢えを満たし続けようと走り、マイルレースでは無敗の最強の座を掴み取り、また全てのグランプリレースも無敗の8連覇を更新するなどして中央の脳をこんがりと焼いた。しかしそれは夢を乗せてほしい人達から愛されて選ばれたから応え続けたという意味。そうやって笠松から訪れた『灰色の怪物』は時に『笠松の怪獣』として歴代最強のウマ娘として名を刻み続けた。最後は夢のドナベガンダムになれたらしい。

【ベルノライト】
オグリキャップのように地方の笠松から中央に移籍したウマ娘として最終的にはG1レース(川崎記念とエリザベス女王杯)を2回勝利するなど上々の結果を残し、地方の希望となった。その後オベイユアマスターのように海外に留学することを選ぶと指導者として勉強を始め、そして日本に帰ってくると恩師の樫本トレーナーの元でサブトレーナーとして再び中央に脚をつけた。次はウマ娘に与えられたその名に誇りを抱かせる素晴らしいトレーナーになったらしい。あと何気に地方上がりのG1勝利者となったウマ娘トレーナーはベルノライトが初めてだったりと、マフティーのウマ娘として唯一無二になる。

【オベイユアマスター】
予定よりも1年多めに日本で在学すると最終的にジャパンカップを2連覇を達成し、ラストランとして選んだ有マ記念ではオグリキャップに迫ったワンツーフィニッシュで結果を残すなど、チームキルケを代表とするウマ娘として日本にその名を刻んだ。そうやってマフティーたらしめる樫本によって充分に支払われたりとオグリキャップとは別ベクトルで飢えを満たされた彼女は故郷へ帰る前に仲間達と土鍋を囲い、そして樫本の「支払い完了」の言葉に感情を決壊させながらも最後はその名を誇りに走り切ったマフティーのウマ娘として胸を張り、皆に見送られて母国に帰ったのだった。








てな訳で、シンデレラグレイ完結記念と閃光のハサウェイ第2部上映祝いによる短編はこれにて以上となります。

最後はあっさり目ですが、まあ特段語る必要もなくマフティーの元に集ったウマ娘は味わい深いカボチャ味として保証されている。

そういうことですね。


自己満足の作品に更に自己満足を追加した作品でしたが10日間本当にありがとうございました。

沢山の感想と評価、また更新の度に手厚く誤字と脱字の報告をしてくれるなど作品を支えてくれた読者に感謝致します。

またどこかの小説でお会いしましょう。


じゃぁな!!









で、ドナベガンダムって結局なんだろう??

………まぁええか!!
オグリキャップだし…ヨシ!!





  ~ 完 ~

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