やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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それっぽく書いてりゃマフティーだろ精神。
だってマフティーだし。

《追記》
ランキング上位かよ!?
ウッソだろお前!!(Vガン)

《追記》
なんか文章バグってる??
文章が連続してるのおかしい…



第7話

「あ、暑すぎる…」

 

「それ外したら?」

 

「無理。 外すと大変なことになる。 いや、外してぇ…」

 

「と、取り繕う余裕も無いんだね…」

 

「違う、マフティー性が熱で失われているんだ。 後で冷却スプレーでチャージする」

 

「凍傷に気をつけてね?」

 

 

 

あ、先に言っておく。

 

ミスターシービーにはマフティーって象徴は全くの演技であり、そう言うもんだってのはもう既にバレている。 口調も性格も本物じゃない事は折り畳み傘の時には既に悟られていたようだ。

 

まあ俺自身がそれをやり通せる精神力が有るかというとそうでもないし、まずミスターシービー自体が察し良く、あと普通に賢いためマフTがカボチャで無理してるのは把握済みらしい。 なんか恥ずかしいなそう思われると。 でも仕事モード的な感じだと思ってくれてるのでそう悩ますほどの問題でもないらしい。

 

まあ俺自身もスイッチのオンオフでマフティーするかしないかだし、そもそも致し方なくそうしてる訳だから俺の本心がマフティーな訳では無い。 何というか憑依が始まってから混乱しそうになる俺を鎮めるのに都合良かったし、マフティームーブしていれば凡そ舐められないと思ってるし、何よりこのカボチャとマフティー性の相性が合い過ぎて、俺自身が何故だか止まらないだけだ。

 

むしろこうしてマフティーしていれば口も中々巧みに進むし、頭も穴あきカボチャのようにスッキリしていてビジョンも描きやすい。

 

あと狭い視界だからこそ、それ以外が研ぎ澄まされているこの感覚は心に余裕が持ちやすく、程よい緊張感でトレーナー業に挑める。 ミスターシービーとの波長も合わせ、トレーニングに勤しみやすいこの感じはマフティーならではだ。

 

コンビニみたいに便利なマフティーだがそれを演じるためのマフティー性はチャージ式なので定期的にカボチャの中を冷却しないとオーバーヒートを起こして性格がハイジャックしてしまう。_神経が苛立つ!

 

 

プシュュュー

 

 

「……冷たっ!」

 

「あははは、シュールすぎでイメージトレーニングにおターフが生えてしまいそう」

 

「やかましいぞ、ミスター茂ビー」

 

「ダートから採れるカボチャに言われたく無いよ」

 

 

ミスターシービーとの関係は非常に良好であり、張り詰めすぎない感じにゆるりとしている。

 

トレーニングも至って真面目で、既に力の抜きどころを心得てるミスターシービーだからこそ張り詰め過ぎずに自身を鍛える。

 

あと究極のごっこ遊び(イメージトレーニング)が彼女の得意技なので比較的公式戦に近い雰囲気の中を走る事で、その経験を体に落とし込む。 そして更にそこから別のイメージを重ねることでこれまでのイメトレと照らし合わせ、そうしてレースの試行回数を増やし、それをまた究極のごっこ遊びに加える事で必要性の有無を暴き出し、走りの中で排除するべきか取り込むべきかを考えて、難易度を上げつつ理想に近づける。 そう描く。

 

しかも実際に本気で走ってるため鍛えられてるし、追い込みとしてのスタイルを持つ故が状況判断能力はジュニア級で収まらず既にクラシックレベルはある。 気が早いだろうが日本ダービーのイメージトレーニングもしたことがある。

 

過去の映像を見て、出走したウマ娘達の大まかな情報を整理して、ホワイトボードにそれらをまとめれば、あとはお菓子や飲み物を構えつつ1時間か2時間いっぱいを使って論争と提案、試走時の設定と攻略法、内枠か外枠の対策、王道か邪道で行くかなど、ミスターシービーとの時間を濃厚に設けて、この時にやっと彼女は走り出す。

 

ちなみにイメージトレーニングの中で日本ダービーを設定して試走したけど結果は大敗だった上に怪我する可能性が高いのでやめさせた。 まだG1レベルのフルゲートは慣れてないことが原因だ。 そこはミスターシービー本人も納得したし、想像として強く描けるからこそ危険だと言った。

 

もしそれでもやるなら俺が必ず付いていることが条件だと言って、ミスターシービーも頷いてくれた。 自由奔放な雰囲気漂わせといてけっこう素直なんだよね彼女。

 

あと話聞くかぎりイメージトレーニングばかりしてるように聞こえるが、これでも坂路でスタミナつけたり、プールで泳ぎまくって肺活量を増やしたり、バーベルで足腰に負担をかけたりと、鍛えるところはしっかり鍛えてる…てか、普通に優秀。

 

天才ってこの子の事を言うんだなとしみじみ思う。 しかしそれらを軽く凌駕するマルゼンスキーってウマ娘はよくわからん。 メジロアルダンも相当。 まあこの2人はクラシック級なのでジュニア級と比較するのはおかしいか。 強いやつはマジで強いんだなと。 なるほど中央を無礼るなよ…と。

 

ちなみにトレーニングの時間は普通に長いぞ? トレーニングのために外へ出ている時間は確かに周りのウマ娘と違って短く、むしろトレーナールームで活動してる方が長い。 もちろんレースのために鍛えているのだが、他トレーナーからは勘違いされてあまり良い顔をされていない。 こう言う時はマフティーして牽制すればある程度は無力化できる。

 

あとレースの出走数は指で数える程度だが全部1着でほとんど3馬身以上なのがミスターシービーだ。 これまで得てきた実績や結果は口だけのトレーナーを黙らせれるのに充分だった。

 

 

「夏はあまり頑張りたく無いな…明日は互いに休みにするか?」

 

「トレーナーのくせに不真面目だね」

 

「必要最低ラインやってる。 それに夏は凌ぐ時期だ。 体調管理に気を遣って程よく練習していれば秋に入っても持続する。 暑さの中で根性を鍛えるのも一興だがジュニア級でやる必要は無い。 必要なのは"慣れ"だ」

 

「そう。 じゃあ明日は休もうかな。 あ、一緒に出かけたりは?」

 

「勘弁してくれ。 カボチャが溶ける」

 

 

やはり呪いの関係でカボチャは外せず、家の中でしかキャストオフできない。 そのためオフ中はあまりシービーと一緒にならないし、そもそもカボチャ頭と出かけるなんて彼女にとってあまりよろしく無い。 あまり変な噂立てたくないし、トラブルも避けたい。 カボチャ被ってトレセン学園に赴くときはレースの時だけでそれ以外は無い。

 

なので俺の休日は基本的に家で過ごす。 元アウトドア系の俺としては辛いところだった…が、案外家にこもってのオンラインゲームは結構楽しい。 ウマ娘の世界だけど道楽は前世と同じくらい充実。 2リットルの麦茶を用意してクーラーをガンガン効かせた空間は快適と言えるだろう。

 

明日はフレンドの『Taishin』と『Festa』ってプレイヤー2人と交えてオンラインゲームだな。

前は『564』ってヤベーヤツも交えてオンラインしたけどめちゃくちゃ笑えて『Taishin』のチャットが芝でいっぱいだったな。 どんだけ笑ったんだよ。

代わりに『Festa』が半ギレだったのは本当に面白かった。 いや、ごめんて。

 

 

 

「ねぇ、マフTはいつになったら救われるの?」

 

「マフティーがそう思った時だ」

 

「具体的には? どうしたらそのカボチャはマフTをマフティーたらしめる事をやめるの?」

 

「……さぁな。 ただ、これは脱ぐのは先の話だ」

 

「それはアタシが関わってるのかな?」

 

「……」

 

 

 

関わっている。

 

彼女の活躍次第で俺はカボチャを脱げるのだ。

 

俺のコレは、シービーによって…決まる。

 

 

 

「どうかな?」

 

「……ああ、そうだ。 君も関わるさ」

 

「そう。 じゃあ今を続けていればいずれあなたはそのカボチャを外せるのかな?」

 

「悪いがその保証は出来ない。 だが、外せる時が来ると信じている…って、マフTそう思うよ。 だがその時が来てしまったとしてもマフティーである事をやめないだろう。 このカボチャは哀れな存在を便利に仮初めてくれるが、自他含めマフティーを求められた時に示さなければならない。 マフティーとはそうでもあるから」

 

「そっか。 そうなんだね」

 

「…」

 

「でも良いよ。 それでもアタシは変わらずだよ。 マフTがマフティーを続けるなら、アタシはアタシでマフTのミスターシービーを描き続けるよ。 鳴らない言葉があるなら一度だけじゃなくなんでも描く。 マフTがアタシに描かせてくれるなら、いつまでもね」

 

「そうか」

 

「うん」

 

「……そう…か」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

__ありがとう。

 

 

 

 

 

そう言えたらどれだけ良いだろうか?

 

 

 

だがそう言うのは間違いだ。

 

俺はこの呪いを解くためには大いなる栄光を必要とする。 日記帳にはそう書かれていた。 だから俺はミスターシービーを使って呪いを解こうとしなければならない。 控えめに言って利用している立場だ。 トレーナーと言い難き存在なんだろう。 だから俺はマフティーで誤魔化してこの場所に立っている。

 

そしてミスターシービーが惹かれたのはマフティーと言う象徴があるからだ。 マフTを器として、中身にマフティーが備わることでミスターシービーは理想を描ける。 マフティーならミスターシービーを走らせられるからだ。 だからマフTとしてのお礼は出来ない。 俺は彼女に告げることは叶わないのだ。

 

そしてマフティーは見返りを求めない。 マフティーである事で己を救いを見出し、また他者の救いにもなり、求めたモノにもなる。 恩を作らずただそこに、そう在るだけ。 だからマフティーはミスターシービーに『ありがとう』を言わない。

 

そしてマフTはそれを言う資格がない。

 

間違いだから。

 

 

 

「こっからが地獄だぞ」

 

 

メイクデビューを終え、夏を超えて秋がくればこれまで以上にマフTは動き、マフティーとして働く。

 

脆い器(マフT)神酒(マフティー) を溢さぬように、俺はこれからも呪いを飲み込んで虚栄を築き上げる。

 

 

だから、狂う準備は終えてるぞ…

 

 

 

 

 

マフティー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて事ない日常。

 

そんな時こそターフに足をつける。

 

ウマ娘の本能そのままに身を任せる。

 

ただただ走るだけ。

 

アタシはウマ娘だから走って満足する。

 

それが好きなんだ。

 

だって楽しいから。

 

しかし皆はアタシの走りを凄いと言う。

 

アタシはそんな言葉が欲しい訳じゃない。

 

ただ走って満足を得たいだけなんだ。

 

でも中央ではそれは許されない。

 

結果を出すための走りだと思われているから。

 

アタシはこの満足感を高めたくて中央に来た。

 

走るだけの行為にもっと意味を見出したいから。

 

でもそれは叶わないみたいだから一年を越した。

 

スカウトも断って学園生活を送るだけの生徒。

 

走ると目立つから散歩もする様になった。

 

足を動かすのは楽しい。

 

でもアタシが何かすると皆は期待する。

 

だから注目を浴びない様に雨の中で描く。

 

あまり履かないトレーニングシューズ。

 

既に一年を越したんだと感じながら走る。

 

雲行きの怪しい空の下でアタシは自由を探る。

 

やはり楽しい、走るのは楽しい。

 

けれどもっとこの感情を突き詰めたい。

 

でもアタシだけでは限界なんだこの場所は。

 

中央と言う存在が楽しさよりも誉を押し付ける。

 

知ってるよ、そのためのトレセン学園なんだ。

 

自己満足だけで走ることは許されないんだ。

 

それが許されるのは最初のうちだけ。

 

だから気づいてしまう、この学園じゃない。

 

アタシはこの学園でそれ以上は求められない。

 

ああ、わかってる。

 

求められるそれは悪い事じゃない。

 

間違いでは無い、ここはそう言う場所だ。

 

憧れと栄光を求めて数多のウマ娘がやって来る。

 

けどアタシはただのわがままから始まっている。

 

自己満足を建前に好き勝手やってるウマ娘。

 

 

まぁ…でも、アタシにも目的や憧れはあるよ。

 

 

あのレースは走ってみたいと思ってる。

 

アタシの母が走った全力のG1レース。

 

もっとも速いウマ娘が勝つと言われるレース。

 

昔の映像を見てこれだけは憧れだった。

 

あんなに歪み切った様な笑みで走った昔の母。

 

ウマ娘としての喜びも。

 

己が描く理想が走りになった喜びを。

 

全部が敷き詰まったようなレース。

 

先頭に躍り出た母の眼は濃ゆかった。

 

そこは間違いなく楽しくて仕方なかった筈だ。

 

母からも直接聞いた。

 

あのレースは張り裂けそうな程楽しかったと。

 

あんなにも震えて奮えて慄えた事はないと。

 

鳴りを潜めていた母の眼だが一瞬だけ染まる。

 

描き切ったような景色で染まっていたから。

 

穏やかな母があんな笑みと眼を浮かべたんだ。

 

アタシは描きたくなる。

 

その舞台にはどれほどの楽しいを詰めたのか?

 

母と同じその場所を駆けたいと密かに思う。

 

 

でも…

 

そこはトレーナーと目指すべき舞台だ。

 

1人だけで歩むには重たすぎる。

 

トレーナー名簿だけ借りて出走はできるよ。

 

そうして走るウマ娘は少なからずいる。

 

だがそんな風に出来るビジョンは浮かばない。

 

G1の世界はそれほど甘く無い場所だ。

 

理想で描くだけじゃ走れない。

 

1人では限界もあるんだ。

 

でもここには自由奔放で困ったアタシがいる。

 

そして困ったくらいに高望みする問題児。

 

燻る様を誤魔化す様に楽しみを探るアタシ。

 

こんなウマ娘に合うトレーナーはいるのかな?

 

アタシが足並みを合わせればなんとでもなる。

 

アタシが妥協すれば良いだけの話なんだ。

 

でも…それでこれまでの築きが壊れないかな…?

 

走るこの理由を勝つためだけに収めたく無い。

 

栄光を勝ち取る中でも楽しさで心を奮わせたい。

 

アスリートとしての闘争心は忘れない。

 

でもアタシはミスターシービーなんだ。

 

一度しか訪れない機会だって己を忘れずに走る。

 

だから…

 

 

身勝手に走らせるこの筆に、これまでに無いほど濃ゆくて、眼奪う程に狂ったような色をしている、そんな色で染めさせてくれるトレーナーは現れないかな? こんなアタシを狂うように楽しませてくれる普通じゃないトレーナーはいるかな。

 

 

 

 

 

「楽しそうだ…」

 

 

 

 

 

あ、ああ……!

 

いた!

 

いるんだ!!

 

いるんだね!!?

 

いたよ! あそこにいる!

 

いた! いた! いたいたいたいた!

 

いたよ! いるんだ!! いたんだ!!

 

アタシのトレーナーがそこにいた!!

 

 

 

「マフティーと呼べば良い」

 

 

 

ああ、彼だ、彼しかいない!!

 

だから聞いてみた。

 

期待を持って尋ねた。

 

アタシの走りを…

 

アタシのターフを…

 

そしてこれまでにない答えが返ってきた。

 

 

 

「凄いのか?」

 

 

!!

 

 

ううん、すごくなんかないよ。

 

アタシはすごくなんかない。

 

すごく楽しみたいだけのじゃじゃウマだよ。

 

アタシの走りじゃない、アタシを見てほしい。

 

そんな我が儘を待ち望むウマ娘だよ。

 

カボチャから見えるその眼はどう写る?

 

アタシの描くソレをあなたは見える?

 

 

 

「わかった、明日見に行く」

 

 

 

渡してもらった折り畳み傘。

 

それが指先に触れる。

 

 

ッ!!!?

 

 

 

なにこれ?

 

なにが起きたんだ?

 

まるで拒絶するかのような感覚。

 

ウマ娘を遠ざけてしまいそうな憎悪。

 

いや、でも、なんだろう…

なにか少しだけ違う。

 

 

まるで…見抜かれたような悍ましさだ。

 

正面だけじゃない。

 

全てが丸裸にされたような感覚と、実際に丸裸にされてしまったアタシを見られたような背筋を冷たくなぞる感覚。 真上から見下ろされてしまい、細いこの腕と尻尾で得体を抱きしめて、その場に縮こまりそうだ。 恥ずかしさよりも恐怖心が駆け巡る。

 

震えが止まらない。

 

 

でも、何故かな…

 

アタシだけじゃない。

 

アタシの描くソレも、見ている気がした。

 

独りよがりも。 自己満足も。

この身勝手も。 望み高き理想も。

 

ああ、何もかも、そうだよ…

 

マフTと名乗る彼はアタシを見てくれている。

 

いや、違う、正しくは『マフティー』がアタシを見てくれたんだ。__楽しそうだ。 この言葉の中には色んなものを暴いた上でアタシを見てくれた。 だって皆はいつも「すごい」と言って走りの方を称賛して、誰もマフTのような言葉は言わない。 友人のシンボリルドルフもそう言わなかった。 でもカボチャを被り、それをマフティーだと描くマフTは違った。

 

アタシを見たんだよ。

 

全部を掌握したかのようにマフTはミスターシービーってウマ娘を暴いた。

 

 

ああ…

 

すごいなぁ…

 

すごいよ…

 

すごすぎる…

 

 

 

 

 

 

 

まるでウマ娘を支配したかのようだ。

 

 

 

 

久しぶりに傘をさしてアタシは寮に戻り、シンボリルドルフが迎えてくれる。 タオルを用意してくれた彼女に向けてついはしゃぎそうになってしまう。 けれどこの楽しみは明日に取っておきたい。 ポーカーフェイスが得意でよかったと思いながらも部屋着に着替えてからうずくまる布団の中で尻尾だけは興奮が収まらない。 ほんの少しだけお腹の底が熱い。 そんな興奮を抱えながら次の日の選抜レースで見てもらった。

 

 

マフTはいた。

 

約束通り見てくれた。

 

試しに楽しみよりも優先したすごい走りをしてみたけど、マフTは「すごかったのかわからない」と言って、むしろ危険だと最初に心配した。

 

ああ彼の視点は周りとちがうんだ。 アタシと同じようにズレているんだ。 でもそのズレはアタシと同じ方向だった。

 

それからマフTを逆スカウトをしてアタシは好きに走る。 自分の事を身勝手なウマ娘だと自負しても尚彼はアタシを変えることもなく好きに走らせて、見守ってくれている視線の中でアタシは描く。 少しだけど満ち足りてきた。 ここで満足しそうになった。

 

でも、そこから先は違った。

 

裏切られた。

 

でもすごく良い意味で裏切られてしまった。

 

マフTはアタシと同じように描く。

 

レースの背景も、理想も、想像も、紙にペンを走らせて、ホワイトボードに刻んで、マグネットでなぞり、アタシの描くソレを再現して、実際に外で走ってみればその通りになり、アタシが描いた中で走ることができる!

 

ウマ娘としての幸福感がこれまでにない程満たされた!

 

しかもマフTは次々とアタシの要求を暴き、ウマ娘と走らせて、ミスターシービーを走らせてくれる。 アタシはこれが運命の出会いなんだと理解した。 ロマンチストなのは嫌いじゃない。 むしろ理想主義に等しいアタシにとって運命と言う材料は必要なんだ。

 

そしてそれを満たすのはマフTであり、彼自身も理想のように描くマフティーと言う存在だ。 それを演じることができるマフT自身もアタシはすごいと感じている。 ただカボチャ頭を被っているだけじゃない、ソレを形にした結果がそうなんだ。

 

 

 

「マフT、次は何をすれば良い? 何をすればソレに行き着く? マフTが言うならなんだって描けるよアタシは」

 

 

「そうだな。 じゃあ次は__」

 

 

 

マフTから出される課題を力に変える。

 

マフティーが示すソレをアタシは描く。

 

 

アタシを走らせるマフティーはすごいけど、夏の暑さに萎びてしまいそうなマフTの姿もまた人間らしく可愛らしい。 そう思うとマフTもそこらと変わらない人間だと思い、ホッとしてしまう。 でも彼がマフティーとして全てを揺れ動かす時にまた期待してしまう。

 

鳴らない言葉をもう一度だけじゃない。

何度も描いてくれる彼は…マフティー。

 

 

 

後にURAの危険人物だと恐れられるが、それでもアタシにとって、マフティーと言うのは救いだ。

 

 

 

 

 

「ミスター・パンプキントレーナー、アタシを楽しませてね。 あなたのマフティーで描かせるんだから」

 

 

 

 

汚れを知らない真っ白なシルクハット。

 

しかし目の前のターフを色とりどりに染まる。

 

アタシの眼は楽しさで濁っているから。

 

 

 

 

 

つづく






《ミスターシービー》
控えめに言って天才。 彼女の中では走る楽しさが第一であり、過程は案外どうでも良い放任的な性格。 想像力が豊かであり、走る時に見える景色は空想や妄想で多く、そこに楽しさを第一に追求する。 マフティー性を兼ね備えたマフTと関わった結果、ある意味固有結界的な世界を視覚的に生み出して、そこに自己投影して走ることができる様になった。 故に究極のイメージトレーニングを編み出してしまう。
そのため練習毎の経験量(SP)が半端ない。



ではまた

原作:閃光のハサウェイを読んだ事あるニュータイプの方はいますか?

  • 読んだ事ある。
  • 読んだ事ない。
  • ゲームや映画や動画並みの知識。

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