やってみせろよダービー!なんとでもなるはずだ!   作:てっちゃーんッ

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誤字脱字報告と促し!本当に助かります!!
物語はどんどん浮かぶくせにその他はお粗末で…

え? プロット?
なんとでもなるはずだ!!(無計画)




第9話

なんだかんだでカボチャ頭のトレーナーとして名が広まってきた12月の後半。

 

一つの大舞台を終えたところだ。

 

 

 

「ウイニングライブおつかれ。 はじめてのG1ライブはどうだった?」

 

「走りも踊りも楽しみで溢れていた。 まだ心が躍っている。 ねぇ、帰ったら学園でも走りたい。 後でまた走って良い?」

 

「そうだな、付き合おう。 見てないところで無理されても困る」

 

「やったね」

 

 

 

真夏を超えて、秋が到来。

 

それでも変わらず彼女とはイメージトレーニングで鍛え、今回初めてのG1で1着を取って綺麗に今年を終えようとしている。

 

既にG3でも結果を出していた彼女だから今回のレースも良い結果を期待できると思っていた。

 

だが走ってみれば結果は3馬身差を付けて1着でゴールインしてしまう。 G1のレベルでこんな簡単に1着を叩き出して良いのか判断に困るところだが、恐らくミスターシービーが強すぎるのだろう。 もちろんホープフルステークスにシービーと同じトレセン学園のウマ娘は多く出走していたし、同じ環境とカリキュラムの中で成長してきた生徒達だ。

 

皆中央を駆け行く優秀なウマ娘であるのは間違いない。

 

しかしミスターシービーは周りとは違う。

 

他のウマ娘がどれだけ鍛えに鍛えたとしても、それ以上に沢山の準備(究極のごっこ遊び)をしてきたミスターシービーの経験量は覆せない。

 

彼女はレース中にどんな展開が訪れたとしてもイメージトレーニング(あらゆるレース場面)で培ってきた経験量を武器に走る。

 

経験が多ければそれだけ"択"が増えるし、追い込み策のウマ娘として判断力がつきやすい。

 

 

今日のレースを思い返す。

 

 

第3コーナを曲がり始めるタイミングで仕掛け始めるミスターシービーの走りに、他のトレーナー達からどよめきが走る。

 

仕掛けるには些か早いのでは?

 

 

これまで確実性の中でレースを運んできたミスターシービーの動きに驚いていた。

 

 

__初めてのG1に緊張して掛かったか。

 

そう判断するトレーナー。

 

実況でも「これはちょっと掛かり気味か?」とミスターシービーの走りの状況を追いかける。

 

レースに熱い観戦者からもミスターシービーの走りにどよめく声が広がる。

 

しかしミスターシービーは一切掛かっておらずむしろ冷静そのもの。

 

コーナーを曲がる際に真っ直ぐ伸び始めたバ群を見て仕掛けると強引に先行まで躍り出る。 彼女の武器であるロングスパートはそこに坂があっても止まることを知らず、臨場感に踊るその笑みは自分の勝ちを一切疑わない。 それは他のウマ娘から戦意を奪うほどだった。

 

他のウマ娘は強かった。 ジュニア級に500以上居るだろうウマ娘の中から選りすぐりで出走したG1レースのウマ娘が弱いはずが無い。

 

それでもミスターシービーはそれ以上だった。

 

何せジュニア級で敵は居ないのだ。

 

 

 

もちろんこれはそのままの意味だ。

 

今の彼女はもうジュニア級で勝負はしていない。

 

いま行っているイメージトレーニングは『クラシック級』だ。

 

負担を掛け続け、体幹を崩さぬよう綺麗に整え、悪条件の中で走るイメージトレーニングを何度も続けて、出走時の弱点を減らしつつ判断力を高め、レース中の択を一つでも多く増やす。

 

彼女は既にクラシック級にハードルを上げた究極のごっこ遊びで鍛えているのだ。

 

ミスターシービーがジュニア級で負けるはずが無い。

 

 

 

 

「ところで…感想を聞きたいな?」

 

「?」

 

「ほら、この勝負服だよ。 ね、改めて見てどうだった? 特にこのシルクのフレアパンツ、アタシ的に結構好みなんだよね。 風が気持ちいい」

 

「ああ、なるほど」

 

 

その場でクルリと回るミスターシービー。

 

勝負服でウイニングライブを行う姿を見てたがとても似合っていた。

 

感想を期待するミスターシービー。

 

耳がピクピクと動く。

 

 

「シービーらしさを感じる衣装だと思う」

 

「ふんふん、それで?」

 

 

まだ強請るか?

 

そうだな…

 

 

「まず解放的なトップスはポイントが高い。 あと薄い緑色はターフを連想させてくれて、君の求めるモノを映し出してるようだ。 ピッタリな色だな。 あとコルセット風なのは趣味か? とても良いと思う。 身軽さも兼ね備えて、鍛え抜かれた体を良く見せる。 とても良い勝負服だ」

 

「ふぇ?」

 

「いまの君はまだ中等部、この先で高等部に成長して今ある大人っぽさをもっと引き出せば魅力は引き立つ。 そうなればその勝負服はミスターシービーってウマ娘を思わせてくれる。 小さなシルクハットも君を表している。 その勝負服と共に成長すればもっとより良く映るだろう。 だからその勝負服はとても素敵だと思うぞ、シービー」

 

「!! ……ぁ、ぅ、うん、ぁ、ありが…と…」

 

 

 

勝負服が届いた時はすごく喜んでいて、お披露目してもらったことがあるが、走っている姿は今回初めて見せてもらった。

 

G1レースと言う絡み切った緊張感の中でも解放感を忘れないその姿が先頭に乗り出した時、ミスターシービーって存在を観客の瞳に刻ませてくれる。 そんなビジョンが既に俺の中で浮かんでしまっているし、それを疑わない。

 

あとさっきも言ったように今はまだ中等部だが、彼女が高等部になって大人っぽさをより引き出せたのなら違う魅力を引き出してくれるだろう。 シニア級になった時の彼女の姿がとても楽しみだ。

 

 

「しかしこの後はインタビューか。 やれやれ、商店街での人気は諦めたから良いが、今から世間的にも注目を集める羽目になるのか。 些か面倒だ…」

 

「……………はっ!? ……え? イ、インタビュー? ぁ、うん、そ、そうだね。 G1とってしまったトレーナーである以上避けられない道だもんね? もう諦めてマフティーするしか無いんじゃないかな?」

 

「マフティーするしかないのか…」

 

「うん。 それにさ、今回のインタビューで慣れた方が良いと思うよ」

 

「……それはどうしてだ?」

 

「これからもアタシがG1取っちゃうからだよ」

 

「……ふっ、言ってくれる」

 

「マフティーならアタシをそうさせてくれるでしょ? なら、覚悟決めるしかないよ。 ほら、カボチャと背中は押してあげるから行った行った! あと、後ろみないで……いま顔が熱いから…」

 

 

少し慌てさせられる形でミスターシービーに背中を押されて控室を出る。

 

そのまま報道陣の前まで躍り出た。

 

 

「「「!!」」」

 

 

 

シャッターの音が激しくなった。

 

通勤中に撮られる光よりも眩しく、沢山のカメラマンや記者で多い。 あと記者に関してはトラックマン(競馬記者)と言ったか? でも競馬の概念は無いからトラックマンでもただの記者になるだろう。 もしくはウマ娘記者? そのままの意味になるな。

 

 

 

「待たせて申し訳ない。 既に知っている者も居ると思うが改めて自己紹介を行う。 俺はマフT、トレセン学園のトレーナーだ。 こうしてレース後に報道陣の前へ姿を晒すのは初めてだろう。 しかしこれからはこの場に出る回数が増えると思う。 以後お見知り置きを」

 

 

わかる程度にお辞儀する。

 

するとまたシャッターの数が多くなった。

 

そんなにカボチャが何かすると不思議か?

 

 

うん、不思議だよな。

カボチャ頭がトレーナーなんだもん。

 

 

「あの!質問です!マフTさんは何故カボチャを被っているんですか??」

 

 

ほれ来た。

 

絶対来ると思った質問。

 

 

「被る必要があるからだ。 別に日差しがダメだとか、アレルギーを持っているとは関係ない。 だが過去に生み出した罪に対して救いを願ってこのカボチャを被っているだけだ。 これもまたマフティーと言う。 ちなみにこれは冬用だ」

 

 

「ふ、冬用??」

 

 

ざわざわ_どう言うことだ??

ざわざわ_戒め? そして救い?

ざわざわ_なんだよ冬用って…

ざわざわ_面白い人が出たな…

ざわざわ_ふざけているのか?

 

 

三者三様な反応は予想通り…と、言うか商店街で自己紹介した時の反応ににている。 いや、もう放送事故という名の事故紹介になってるがマフティーを辞める理由にはならない。 もうこのカボチャを被ってから半年以上が経過している。

 

あ、今被ってるのは冬仕様であり、普通にあったかい。 夏よりも需要ある被り物だと思ってる。 カボチャ頭最高。

 

※ちなみにこの発言で冬用のカボチャ頭が発売されるのは未来の話。 ウマ娘用もあり。

 

 

 

「マフTさん質問です。その姿に抵抗は無かったんですか?」

 

 

「無い。 あるのはこれを被るまでの後悔。 そうしなければならなかった己の脆弱さ。 そうしなければ求められない己の貧弱さ。 そうしなければ進めない己の軟弱さ。 全ての怠惰と拭えきれぬ罪の形を穴あきのカボチャにした。 故にマフティーと名付けてこの厳しい世界へ挑む事を決めた。 これは覚悟でもある。 トレーナーとしての。 あとは……好きに解釈するが良い」

 

 

「「「「……」」」」

 

 

歓声も無ければ声援も無く、罵倒すら無い。

 

あるのは理解し難い空気感と、マフティーと言う独りよがりな孤独感だけ。

 

それでも俺はマフティーとして堂々とする。

 

理解できないからする必要はない。

 

これは俺だけの戦い。

 

だがこのマフティーにナニカを求めるなら、マフティーは恐らく動くだろう。

 

 

「ほかに質問はあるか?」

 

 

「「「!!」」」

 

 

 

それからインタビューは続く。

 

 

何故マフティーなのか??

マフTとマフティーはどう違うのか??

なぜカボチャを選んだのか??

マフティーを名乗る先に何があるのか??

 

 

俺ばかりの質問が飛び交う。

 

もっとG1を獲ったミスターシービーとの話をしてくれても良いだろうにさっきから俺の事ばかりになる。

 

少し面倒な表情を出してしまうがカボチャの中で分かるわけもない。

 

ため息は押し込むとマフティーモードに切り替えて次々と答えた。 もちろんマフティーを理解できる人など一人も居なかった。 しかしこの覚悟は何人か受け止めてくれたような気がした。

 

すると一人の女性記者がミスターシービーと今後の進路を尋ねてくれたので、マフティー性を高め、マフティーである意味を示してくれるレースに挑み続ける。

 

そう説明したのだが拡大解釈した上に何故だが絶頂したかのような顔で「素晴らしいですぅ!!」と一人盛り上がっていた。 なんだコイツ? あと美人が台無しだ…

 

 

それから時間になってインタビューは終了する。

 

終始堂々としたマフティー性の高い姿勢でやり通して報道陣の前から姿を消して舞台裏へ。

 

 

待っていたミスターシービーの前まで来ると一気に力が抜ける。

 

 

「だぁぁぁ、づがれだ…!」

 

「お疲れ様。 とてもマフティーだったよ」

 

「しかしこれで有名人の仲間入りか。 ますますマフティーが止まらなくなるな」

 

「アタシもレースで止まんないからよ。 だからよ、止まるんじゃねぇぞ、マフティー」

 

「おい、その先は地獄だぞ」

 

「いやいや、希望の花だよ」

 

 

 

着替え終えて荷物を纏めていたミスターシービーから俺の荷物を渡される。

 

それを受け取ってからスタッフに伝えてレース場を後にすると、外がやや騒がしい。

 

どうやらレースのファン達が待っているようだ。

 

何故出てくるタイミングは知られているんだ?

 

 

あ、そっか。

 

そういやレースや会見も生放送だったな。

 

根強そうなファンなら会場から出てくるタイミングも測って待ち構えるか。

 

 

「「あ! シービー!」」

「おお!ミスターシービーだ!」

「レースかっこよかったよー!」

「次も頑張ってくれ!」

「マフT! またはマフティー!」

「おいおい、ネタじゃないのかよ!」

「本当にカボチャをかぶってるぞ!!」

「ママー!ハロウィンのマフティーだよ!」

「キャロットマンの方がかっこいいもん!」

「ウェェイ!!今日もカボってるー!」

「シービー!マフT!応援してるよ!」

「帰り道に気をつけろよ!」

「ハロウィンは終わってるぞマフティー!」

「マジかよ!本当にアレで帰るのかよ!?」

「おいおいおいおい、アイツカボチャだわ」

「アレが冬仕様なら逆に暑さ対策した夏仕様もある筈」

「どうした急に?」

 

 

ミスターシービーの姿を見たファン達は一気に沸き上がり、ミスターシービーもファンサービスで手を振る。 あと俺にも歓声が湧き上がる。

 

商店街の時と同じ感覚だ。

 

やっぱりトレーナーもウマ娘のように人気を集めてしまうのかな?

 

ただの悪目立ちなんだけど、これもウマ娘って世界なんだろう。

 

あとネタ的な意味でも若者受けになりそうだから大人だけじゃなくて少年少女も多い。

 

なんならカボチャのお面付けてる人も居る。

 

どれだけマフティー気に入ったんだよ。

 

 

ちなみに今回は東京レース場なので電車移動だ。

 

もし新潟まで行くことになったら車安定なんだけど外にいる時はマフティーする必要があるのでカボチャ頭で運転なんて出来ない。

 

なので長時間移動の電車で視線を浴びる他あるまい。 まあ、もう慣れたけど。

 

 

いや、考え方を変えれば車でも移動はできるよな? 少し経験が必要だが。

 

うん、少したづなさんと相談するか。

 

だが、シービーとの問題もある。

 

要検討だけどトレセン学園なら可能かもな。

 

 

まぁ、とりあえず…

 

今年は乗り切ったとしようか。

 

カボチャ頭があったかくて助かる。

 

 

ちなみに商店街へ寄り道したらマフティーセールで野菜が安く、カボチャのお面を掛けた子供達に群がれてしまった。

 

 

こんなつもり無かったんだけどなぁ。

 

どうしてこうなった??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシがマフティーと出会い、そして世間的にもマフTの存在が知られるにはそう時間はかからず、年を明けて春になった頃には全国に名は広まっていた。

 

それもそのはず。

 

カボチャ頭のトレーナーってジャンルだけで注目を集めてしまうのはそうだが、彼の演説が強かった。 あと存在そのものも影響が大きい。

 

ウマスタやウマイッター、若者に人気のウマウマ動画やウマチューブでは彼に因んだ動画が多い。

 

なんなら"在宅太陽神"ってアカウントの人が投稿した動画では、まだマフティーが商店街レベルの人気を集めていた頃に、ハロウィンの時期に皆でカボチャのお面をつけた踊っていたレア映像がある。 もう既に何千万回と再生されている動画で、それに合わせてBGMを流したりと派生する動画は多い。

 

あとその動画にはチラリだがアタシも写っている。 嘘でしょ…

 

いや、あのね?

去年ミノフスキークラフト(小型扇風機)で過呼吸にしてくれたマフTに向けての仕返しのつもりと、カボチャのお面つけて踊るのが案外楽しいことが理由で踊っていた。 丁度ハロウィンだったし、楽しいかなって軽い気持ちで。

 

でも、まさかこうなるとは思わなかった。

 

ああ、もう…

めちゃ恥ずかしいな! 黒歴史間違いないよ!

友人のシンボリルドルフにはバレてるし。

 

マフTからも「こっから地獄だぞ」と煽られた。

うるさいな! こうなったのもマフTが悪い!

 

 

まあ、そんな感じにホープフルステークスからマフティー性が世間に広まり、年を明けてもテレビではマフTの話題で持ちきりだ。

 

マフTが名乗る『マフティー』について考察するために評論家や専門家、なんなら有名なオカルトマニアすらテレビに出てマフティーの意味を探る始末。

 

 

少々度が過ぎるし過剰では?

 

でもこうなった原因はマフTのこの言葉。

 

 

 

 

__好きに解釈すれば良い。

 

 

 

 

春が訪れたら普通はお花見の話題になってもおかしく無いのに皆はマフTのマフティーに夢中だ。

 

話題は広がる。

 

何故マフティーって名前なのか? それがどう救いに繋がるのか? 本当にマフティーと言う名で通しているのか? などなど本人自身の事だけではなく、その名前に対しての追及が激しかった。

 

一部諸説があるとしたらアラビア語の『マフディー』は救世主を意味すると言っていた。

 

これにはテレビでも衝撃が走ったようで、マフTが願う己に対する『救い』の意味が少し理解できたと感じていた。

 

 

己に対しての救い……それは願い。

 

 

しかし何故こうなったのか?

 

本当にマフTの未熟さがそうしたのか?

 

実は己と言うのは別の意味でメッセージを渡したのでは?

 

己とはマフTの事だけではなく、マフティーの名を知り、救世主と言う象徴を見ている自分達にもそれを示してるのでは?

 

マフTはマフティーとして言った。

 

 

 

__解釈しろ。

 

 

 

私たちに答えを委ねた。

 

考えた。 考えてから、とある答えに行き着く。

 

自分達にも救いを求められると言うことなのだろうか? マフT自身が己の中に救いを求めるのは、マフティーと言う名を持っているから。

 

 

理解しようと広めようと動きだす。

 

 

カボチャを被れば皆は自分をマフティーと言う光景。

 

そして例の動画。

 

ハロウィンでカボチャのお面を付けて踊る姿。

 

何よりその光景を見せた『在宅太陽神』と言う名のアカウント名。

 

考察は広がる。

 

太陽神も『救い』と言う存在。

 

夜を照らして明るくする神様。

 

闇をも暴いてしまうそれは人に道を示す。

 

やはり意味は『救い』なんだ。

 

そして答え合わせは始まる。

 

マフティーは己に救いを求める形。 そうなると救いを求めるのは他者に対してではなく、自分の中にできたマフティーと言う形に対して求めること。 己は己で救うことはできる。 しかしそれは容易ではない。 むしろどこまでも孤独である。 けれど太陽神の様に形あるものをそこに作れば光はある。

 

それは遠回しなメッセージと受け止めた。 内なる元にマフティーと言う存在を編み出せば、罰した自身を救える。 そこにマフティーとして備わり、マフティーとして歩める。

 

そうだ。彼は敢えて言った。

 

 

__解釈すれば良い。

 

 

救いは示すものだが結局は己の中で考え、選び、最適に向かい、己を救うこと。 けれど生き物は弱い。 だから過程でマフティーを作り上げてより明かしてしまう。

 

そして救いをより強く求め、作り上げたマフティーにより、マフティーの力で報われようとする。

 

またこうも言った。 これは挑む姿だと。

 

救いはただ救われるだけじゃない。 楽な道など永遠と続かない。 挑みを与えて苦楽を体に染め上げる。 ただ助かることを求めず、また救世主と言う言葉に甘んじず、己の未熟さと罰を理解して行く。

 

だからマフTはマフティーを己の中に作り上げた。 罰も、救いも、挑みも、全てを、カボチャと言う形にしてマフティーを作った。

 

 

そして彼は__トレーナー(指導者)である。

 

 

人に道を導き示す者。

 

マフティーの理由もそうであり、そう解釈させて、人々に考えさせる。

 

 

まるで何かを【促す】ごとく…

 

マフティーはあの時そう言った。

 

そうやって世間に名を広めたのだと。

 

 

 

マフティーとは?

 

それを思わせるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、テレビで熱く語られていた。

 

 

 

 

「 あ ほ く さ 」

 

 

アタシの自慢するトレーナーはタブレットで例のテレビ放送を見る。

 

今日は練習がオフの日でマフTはトレーナールームでノートパソコンを開きながらトレーニングメニューと究極のごっこ遊びのデータをまとめて、それを再び活かせるように再構築する作業を進めていた。

 

そんなアタシは散歩も自主練も飽きてトレーナールームのソファーに寝転んで、だらしなくくつろぐ。

 

それでふと思いだして、前に放送されたらしいマフTの特集をマフTに見せてみた。

 

 

それで反応待ちだったのだが…

 

 

 

「こ れ は ひ ど い…」

 

 

「それ、すごいでしょ?」

 

マフティーの事についての考察がまるまる一時間も続くと言う不思議な番組。

 

しかし視聴率はまあまあ高く、これでまたマフTと言う名のトレーナーが広まった。

 

 

お陰で今のトレセン学園でマフTの名を知らない生徒はあまり居ないと思う。

 

マフTが学園の廊下を通るたびにマフTに視線が集まり、マフTが通ればそこは道は開くし、マフTの話題も広がる。

 

でも兼ね備える威圧感は近寄り難く、マフTに触れる事もしなければ、そのカボチャを外そうとするウマ娘はいない。

 

いや、それでも頑張ってカボチャ頭を外そうとしたウマ娘は何人かいた。

 

 

だがしかし、それは叶わなかった。

 

何せマフTの勘はとんでもなく鋭くて、後ろを見ずともカボチャ頭を外そうとするその手を掴んで止めてしまう。

 

それでもウマ娘としての筋力なら強引にその手を動かすことはできるだろうが…動かない。

 

まるで分厚い鎖で縛られたような感覚に囚われて、指一本動かせず全てが硬直してしまう。 静寂の中に聞こえるのは自分の心臓の音だけ。 そしてカボチャの眼の奥から覗かれた視線は全てを暴かれてしまった感覚に襲われる。

 

前も説明したとおり。

全てが丸裸にされてしまった感じだ。

 

何もかもがマフティーに覗かれている。

 

 

恐怖以外の何でもない。

 

手を出してしまったことに後悔するウマ娘。

 

だがマフTはその手を掴んだだけで特に何もしない。

 

イタズラ心でカボチャ頭を外そうとしたウマ娘のその手を優しく下ろして、解放するだけ。

 

そうして何も言わずに去るだけのマフT。

 

しかしその後ろ姿は目を疑うようなモノが見えてしまう。 禍々しい紫色のオーラを放つマフTの姿。 だがそれは彼に触れられてしまったウマ娘だけが見えてしまうオーラ。 周りで見ていただけの他のウマ娘に見えない。 だから彼にイタズラを仕掛けたウマ娘はこう捉えた。

 

 

__周りからは、見えない、わからない。

__つまり…自分だけに、そう訴えた。

__次、マフTに手を出したらどうなるか…

__まるで 支配 されたような感覚だった。

 

 

そう怯えるように語るウマ娘。

 

マフTの恐ろしさはまた別の形で学園内に広まり、彼のカボチャ頭を外すウマ娘は一人も現れなくなった。 下手に手を出すウマ娘がいなくなり、マフTを恐れる。

 

だが逆も然り。

 

そんなマフTに尊敬をいだくウマ娘も現れる。

 

実際に話しかけてみれば、会話の中で受け答えはしてくれるので何かを尋ねれば答えてくれる。

 

恐ろしく思うだけで実は無害なのでは?

 

それを加速させるのがそこそこ付き合いがながくなるだろうあのパリピギャルウマ娘。

 

彼女のせいでマフTの近寄り難さは程よく軟化してるため、マフTに興味を持って話しかけてみるウマ娘もそこそこいる。

 

秘書のたづなさんに頭を下げてお願いする姿なども見られているため、社会の中に生きる人間らしさもマフTにあるんだと安心させていた。

 

怖いけど、決して化け物ではない。

 

 

ただ、すごくマフティーしているだけ。

 

 

そのような認識に収まった。

 

まあ、そんな感じにマフTはカボチャ頭を外されることなく今もトレセン学園で活動する。

 

本当はアタシが牽制して止めようと思っていたけど、マフTはすごいから自分でなんでも解決してしまう。 だからアタシはアタシのできる特技で楽しみを追及し、強くしてくれる彼に走りで応える。

 

トレーナーと担当、至って普通なこの関係は年明けしても変わりない。

 

 

 

「来月になるとシービーも中等部の3年か? 1年経つの早いな。 よく頑張ったよ」

 

「いや、マフTもすごく頑張ってるよ?」

 

「それはシービーのお陰だ。 俺が独りよがりで頑張ってもこうはならない。 だから君が走ってくれるお陰だ」

 

「ううん、違うよ。 こんな面倒なアタシの事を理解してくれて、アタシをしっかり見てくれたマフTがいるからアタシは満足に走れる。 あなただけだよ? アタシの描くソレを共有するかのように理解するすごい人は? それもまたマフTの描くマフティーだから?」

 

「そうだな。 マフティーならやってしまう。 そう信じてるし、俺はそう求めている。 世間がどれだけマフティーに期待して、拡大評価してるかは知らんが、でもまずは俺の独りよがりから始めさせてもらう。 それがマフティーの形を創り描いた理由。 けれどそんなマフティーに求めるなら、マフティーでナニカを描きたいなら…」

 

 

マフTはノートパソコンのエンターキーをカタンと押して作業を終えて、アタシを見る。

 

 

 

「マフTがマフティーを求めるように、ミスターシービーがミスターシービーとして走りたいのなら、マフティーはミスターシービーを描くとしよう」

 

 

 

カボチャはいつもギザギザで笑う。

 

だから表情に変化はひとつもない。

 

でも今だけは分かる。

 

 

 

中身の彼はアタシに笑ってくれている。

 

 

 

「っ」

 

 

 

ああ、アタシのトレーナーはマフTだ。

 

そう思わせてくれるオフの日。

 

姿勢を正してアタシは口を開く。

 

 

 

「なら、こんなアタシでも密かに抱える"夢"は描いても良いよね、マフT」

 

 

「夢?」

 

 

「楽しいだけを求めてたアタシでも憧れくらいはあるんだ。 究極のごっこ遊びでは描けないアタシが夢見る_

大きな 栄光

 

 

「!」

 

 

「だからミスターシービーはマフTに求める」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三冠ウマ娘

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラシック級として本格的に始まる。

 

 

 

つづく

 




.

しかしねぇ…
どうであれパリピギャルウマ娘の罪は重いのだから。





そんなわけで次回からミスターシービーは2年目に突入。

既にステータスがオールCくらいあるかな?

天才ゆえに初期値が元々高くて、マフティー補正でブーストして、究極のごっこ遊びでガンガンSP貯めて、走るウマ娘のコツを吸収して、有りっ丈スキル習得して、散歩好き故に調子がいつも上がって、マフティーしてるから、強い感じ。
ジュニア級はステータスでゴリ押せたが、クラシックは通用するかわからないね。
スペかゴルシくらい何かないと基本的に負けないけど。


あとこれだけシービー促してるのに実装されないのマジ?
でも3D出てるから確定なんですよね。
アオハルしながら、ジュエル貯めて待つぜ!


ではまた

フルアマーフクキタルは引けましたか?(震え声)

  • 単発で引けた。
  • 10連で引けた。
  • 20連以上で引けた。
  • 100連から数えてない…
  • 当たるまで引けば確定だから(天井)
  • 今回は狙っていない

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