「艦これで、何の艦でもいいので、もういる艦と同じ艦が手に入ったとしたらの話」
というリクで書かせていただきました。
こういうことじゃねえんじゃねえかなとも思いましたが、押し通る。よしなに。
鎮守府っていうのは、指揮官たる提督の好みや方針によって、それぞれに特色の出てくるものだ。
例えばあちらの提督さんは戦艦びいきで、装甲厚と砲火力に任せた殴り合いが好き。大口径の砲撃がずどんと決まればそりゃあ凄まじいものだけど、弾薬代も燃料代も馬鹿にならないし、航空戦力も対空戦力も、雷撃だって乏しいもんだから、うまくはまらないときはひどいって聞く。
例えばそっちの鎮守府じゃあ、大の潜水艦びいきで、鎮守府自体が半分海中に沈んでるって噂。そりゃ、気づかれなければこんなにおっかない艦種もないと思うけど、そんなにうまくいくわけもない。対策されちゃえばぼこぼこだ。まあ輸送任務でずいぶん稼いでるらしいけど。
それで、例えばうちなんかはどうかって言えば、まあ平々凡々としたものよ。
できるだけ幅広い艦種を揃えて、みんな均等に鍛えて、どんな状況にも臨機応変に対応できるようにって。
まあ、そりゃあ、理想を言えば、そうなるわよね。
でも提督さんも、昔からの古参組ってわけでもないし、資材のやりくりが上手ってわけでもない。政治力っていうの? ああいうのもない。
だから一応はそこそこ幅広くやれてはいるけど、経験もそこそこ。練度もそこそこ。
何もかも半端な感じだ。
だからちょっと詰まると、足踏みを繰り返す。
艦娘全員が高い対応力を、なんていうとご立派だけど、出撃するにしても、演習するにしても、幅広くそろえた数の多い艦娘が、枠を順番待ちして交代でのんびりやってる形になっちゃう。
新しく入ってきたり、建造されたりした艦娘は、丁寧に指導して、他の子に追いつけるようにする。
だから特別強い艦娘もいないし、特別弱い艦娘もいない。
別に悪いとは言わない。
みんながずっと強くなって、鎮守府がもっと大きくなれば、このやり方は隙のない形になるだろう。いまはまだそうじゃないってだけ。
それに、新人艦娘にとっては、どんな艦種でも丁寧に指導してくれるっていうのはありがたい。
私だってそうだった。
当時、建造されたばかりの私がやってきた頃、うちの鎮守府の空母娘は一人だけだった。それが加賀さんだ。
艦の記憶っていうのは厄介なもので、艦娘個人としては初対面なのに、自分で経験したわけでもない大昔の記憶に引きずられちゃう。
着任前の講習で、そのあたりのこともちゃんと人間のひとに教わるんだけど、頭でわかってるのと、心で感じることは、なかなか一致しない。
それでも、加賀さんは真面目な人だったし、私もなにくそという気持ちがあったから、今では練度も追いついて、新しく入ってきた空母娘──赤城さんや飛龍さんたち──とも随分仲良くさせてもらっている。
加賀さんが教育係から外れた今でも、私たちはバディとして組んでいた。
一番連携が取れるし、何か事情があって艦隊から外れる時も、ベテランが二人いれば、片方が外れてもそんなに心配はない。
いまも加賀さんは先輩面するし、私も私で反発するけど、それでも私たちは鎮守府で最高のバディだ。
少なくとも私はそう思ってる。
あー。
加賀さんは。
どうなんだろ。
今度のことでまたちょっとわかんなくなったかも。
っていうのも、うーん。
どの鎮守府でも、大きくなってくると、その問題がやってくる。
それがうちにも来たんだ。
それは二隻目の艦娘だった。
同じモデルの艦娘が新しく建造されたりして着任したとき、鎮守府によって対応は違うらしい。
ひとつは予備。
モデルが同じってことは、装備を揃えて練度さえ追いつけばおんなじことができる艦娘ってことだ。性格も基本は同じだから、同じ教育をすれば戦い方も寄せられる。
だから交代要員として育てることができる。
普段だったら、あっちにもこっちにも使いたいって困るときに、そのどちらにも出せる。
大がかりな作戦の時なら、片方がドック入りとかで出撃できない時にもう片方を出せる。
同じモデルなんだから同じ艦隊に入れれば抜群の連携が取れるんじゃないかっていうのもむかし試してみたらしいんだけど、ナントカミラー効果とかなんとかいう、まあうまくいかなかったみたい。
自分がもう一人いるっていうのは、普段ならともかく、神経使う戦闘中には頭がこんがらがっちゃうんだって。
またひとつは解体。
艤装を解体して、資源にしてしまう。
そんなにたくさんの艦娘を養えないところや、必要ない艦娘であったときは、仕方ないけれど、艤装を解体してしまうしかない。艤装っていうのは維持だけでもお金がかかるんだ。
本人以外には使えないから、同じモデルの艦娘の予備には使えないし、ニコイチ修復もできない。
その艦娘を必要としている他所に移籍させようにも、私たちは建造された鎮守府に紐づけられちゃって、他所には行けない。らしい。でも実際に行ったことがない。
艤装を解体された艦娘は、普通の女の子として生活することになるらしいけど、詳しくは知らない。
ほんとかどうかさえ。
私は、普通の女の子っていうものを見たことだってない。
鎮守府にいるのは、提督さんと、私たち艦娘と、妖精さんたち。これだけだ。
私たちは護るべき人たちの姿さえ見たことがない。
まあ、そう言うのはあんまり考えてもいいことはない。
それよりも問題は、うちにその二隻目が来てしまって。
それがよりにもよって、加賀さんだったということだ。
◆◇◆◇◆
ある夜のこと。
提督さんの執務室で、加賀さんと加賀さんが並んでいる。
わかってはいたけど、わかってるつもりではいたけど、同じ顔が並んでいるのは面白い。
演習なんかで、相手方に自分や仲間と同じモデルの艦娘を見ることはある。でもそれはいくら近くても砲と砲で向き合う距離で、こんなに近くはない。
加賀さんも加賀さんもその気持ちは一緒みたいで、はじめて鏡を見た猫みたいな顔だ。
加賀モデルはちょっと冷たそうに言える美人さんで、表情もあんまり出さないから、怖いと思う娘も多い。
でも付き合いの長い私には、加賀さんも加賀さんも、困惑とおんなじくらい面白そうに感じてるってのがわかる。多分だけど。
提督さんはお地蔵さんみたいに優しそうな顔をして、「どっちがどっちかわかんねーな」と顔に似合わない酒焼けしたガラガラ声でぼやいた。
その横では秘書艦の叢雲が呆れ顔だ。
「あーっと、新しい方の加賀やい」
「そっちよ」「こっちよ」
「ステレオで言うな。人間は年取ると耳が悪くなるんだ」
「こっちよ」
「よし新加賀」
「本当はこっちよ」
「マジか」
「嘘よ」
「馬鹿止めろ。人間は年取ると脳の認知機能がひどくなるんだ」
加賀さんは意外とお茶目だ。
それを加賀さんがちょっと意外そうな目で見る。
そう言えば、加賀さんも最初はほんと生真面目で冗談も言わない人だった気がする。
あれはもしかしたら緊張があったのかもしれない。
慣れてくると結構お茶らけたとこもある。
加賀さんもそのうちとぼけた顔を見せてくれることだろう。
提督さんはお地蔵さんみたいに丸めた頭をつるんと撫であげて、改めて二人を見比べた。
私には顔が同じでも加賀さんと加賀さんの区別ははっきりつくけど、人間のひとには同じモデルの艦娘の区別は全然つかないみたいだった。
そうでなくても提督さんは年のせいか駆逐艦の姉妹の区別がつかなかったり、名前が覚えられなかったりするけど。
「まあいい。新加賀、お前さんはしばらくの間、鎮守府に慣れることと、練度上げに集中してもらう」
「わかりました」
「教導艦には瑞鶴をつける」
「えっ、私ですか?」
「なんで呼ばれたと思っとったんだ。お前が一番加賀に詳しいからな。面倒見てやれ」
まあいいけど、と思ってたら加賀さんが異議を唱えた。
「自分のことは自分が一番わかります。加賀モデルの私が教導するべきよ」
「一理あるが、しかし、なんだったか、ナントカミラー効果とかなんとかいう奴があるからな。軽く型を見てやる程度ならともかく、本格的な指導は難しいらしい」
提督さんも正式名称は覚えてないらしいけど、そのナントカっていうのはなかなか難しい縛りみたいだ。
この縛りがあるから、鎮守府はたくさんあるのに、大規模な連合艦隊みたいのを組むのが難しいみたい。
「まあ同モデルを心配するのはわかる。部屋は一緒にしてやったから、生活面では面倒を見てやってくれ」
「わかりました」
「わかりました」
加賀さんと加賀さんが同時に頷いて、そして加賀さんが直後に小首を傾げた。
うん。私もちょっと「えっ」って思った。
っていうのも、加賀さんは空母寮の二人部屋に私と暮らしているのだ。
「えーっ。提督さん、なにそれ」
「お前らんとこ、それなりに広いからもう一人くらいいけるだろ」
「まあ、詰めればいけるかもだけど」
「教導艦と同モデルの先任、学ぶことは多いだろうからな」
もっともらしくうそぶく提督さんの横で、叢雲が肩をすくめた。
「ほんとは、空母寮の空き部屋、物置にしちゃってるのよ。他の置き場所が見つかるまで、我慢してちょうだい」
「えー」
「間宮券あげるから」
そういうことになった。
◆◇◆◇◆
建造したての着任したてだから、加賀さんにはもちろん私物なんてなかった。
戸を開けて、着替えと布団だけを抱えた加賀さんを迎え入れると、ほうと小さなため息が漏れた。やっぱり加賀さんも少し緊張してたのかもしれない。
ちょっとまごついた加賀さんに、布団はそっち置いてね、着替えはこっちの棚使ってもらおっか、ってやってる間に、加賀さんはするっと横を抜けて、洗面所下の棚をあさり始める。
あたしが加賀さんに一通り部屋の説明をしてる間に、加賀さんは未使用の歯ブラシを発掘してきてくれた。いつ買ったか覚えてないけど、そう言えばありそうな気配はあった。買い置きをだぶらせ続けた三本目の歯磨き粉とかと一緒に。
「あー、でもコップとか要りますね。あとは、とりあえずタオルに、洗顔料に、化粧水に、」
「酒保に行きましょう」
「わかりました」
「教導艦おいてかないでくださいね!?」
「早く行くわよ、五航戦」
「五航戦、早く行くわよ」
「ステレオで!」
酒保っていうのはつまり売店だ。
歯ブラシとか歯磨き粉とか、日用品や消耗品は買わないでも支給してくれる。
でも支給品って安物だから、あんまり質は良くない。
自分にあったものを使いたければお金を出して買わなきゃいけないし、酒保になければ内地に発注しないといけない。
加賀さんはなんとなくで必要なものを選んで、加賀さんがそれらをいくつか変えさせた。というのも、センスが同じみたいで、加賀さんの私物と同じ青色で揃えようとしてたからだ。
仕方がなく、加賀さんは水色で揃えたようだった。青系統ではあるけど、まあ間違えたりはしない色だ。
結局歯ブラシも新しく買って、水色の歯ブラシと、水色のコップ、それに水色のタオルが洗面所に仲間入りした。
ちょっと窮屈にごちゃっと並ぶことになって、加賀さんは微妙な顔をしている。加賀さんはそれプラス自分のせいではないっていう感じの不本意そうな色も追加で。
そうして一人分多く詰め込まれた一室での共同生活は、ぎこちなく始まったのだった。
いままで朝一番に目覚めるのは、私だった。
加賀さんは私が起きて身支度を整えているころに、もそもそ顔をあげて、しばらくぼんやりする。それで私が声をかけてようやくもそもそ起き出す。意外といぎたないのだ。
でも、加賀さんの布団が増えて、私を真ん中にしたちょっとぎゅうづめの川の字を作るようになってから、これがちょっと崩れた。
私が朝目を覚ましてむっくりと体を起こすと、加賀さんものっそり起き出す。それで私の方をちょっと見て、加賀さんをちょっと見て、寝起きの低い声でおはようございますって小さく言う。私もそれにおはようございますって返すけど、加賀さんはまだ寝てる。
新しい環境で、慣れない艦娘と寝てるから、眠りが浅いのかもしれない。そう言えば加賀さんも、最初の頃は私より先に起きてたような気がする。いつのまにかあと五分を惜しみ続けるようになったけど。
二人で順番に顔を洗って、私が加賀さんの髪を結ってあげていると、ようやく加賀さんは冬眠明けのクマみたいにもそもそ起き出して、唸るような声でおはようございますって言う。
私もそれにおはようございます後輩できたんですからちゃんと起きてくださいねって返して、加賀さんはちょっと私を見た後、加賀さんにおはようございますって返す。
加賀さんがぺちゃぺちゃ顔を洗っているうちに、私は加賀さんの髪をきれいに結い上げて、それから今日の予定をざっくりと説明した。何事もブリーフィングは大事だ。
そうこうしているうちに加賀さんがブラシをもって、ん、と頭を向けるので、私は寝ぐせも少ない髪を梳かし、頭皮をマッサージしてやり、それでいつもの結い方に整えてやる。たまには髪型変えてもいいのにって思うんだけど、弓を射るにはこれがいいんだって聞かない。
加賀さんが黙ってじっと見てくるので、私は加賀さんの頭を世話してあげながらブリーフィングを続けて、ちょっととっちらかりながらも、無事にどちらも終わらせた。
朝の支度が済めば、加賀さんは早くもお仕事だ。ここ最近では、輸送船団の護衛についていて、一日仕事になる。朝食は出がけに握り飯で済ませて、お昼は交代で船団の食堂にお世話になる。帰りは夕方になって、シャワーで潮気をさっぱり洗い流してから夕食。
船団の食事は意外に結構おいしいから役得と言えば役得だけど、長時間の航行は結構堪えるので、楽な仕事じゃない。
「……………」
「もー、遅刻しますよ」
「……気が乗らないのだけれど」
「ほらほら、帰ったら間宮行きましょ」
加賀さんはすっかり準備をととのえながらも、なんだか不満そうな上目遣いで私を見上げる。
私も昨日までは加賀さんと一緒だったから、お仕事面倒くさいのはわかる。すごくわかる。
おまけに私の代わりに入るのは飛龍さんだ。悪い人じゃないし仕事はできるけど、お喋りで私語の無線を飛ばしまくるので加賀さん的には気が乗らないんだろう。
それでも真面目な人だから、ちら、と部屋の中の加賀さんを見て、私を見上げて、渋々ながらも行ってきますと告げて出て行った。
「……あの私はものぐさなのかしら?」
「あはは、加賀さんもそうなんじゃないですか?」
「そんなことは、ないと思うのだけれど」
「まあ、加賀さんも真面目なひとですよ。でも環境が変わるの嫌いだから、艦隊の面子が変わって落ち着かないんでしょ」
加賀さんはどちらかというと保守的なところがあって、本を読み終えたら必ず本棚のもとのところにきちっと直してから次の一冊を手に取るひとだ。棚の小物の位置がずれていたら、落ち着かなくて必ず元通りに整える。
仕事の内容や面子が変わることであんまり文句は言わないけれど、でも変化に慣れて気分が落ち着くまで時間がかかる。
赤城さんが着任した時も、気を利かせて部屋を変えようとしたのに頑として聞かなかったくらいだ。
この加賀さんもそう言うところはあるかもしれないし、早めにいろんなことに慣らしてあげた方がいいのかもしれない。
なんて私が気を遣わなくても、朝食のために食堂に行けば、加賀さんはあっという間にもみくちゃにされてしまった。
「ふむ、噂の加賀だな」
「ほんとにおんなじ顔してんだな」
「はー、なんや初々しいな。加賀やんも最初はこんなんやったなあ」
「へえ? 加賀さんにもこんなかわいい頃があったんですね」
なにしろふたりめの艦娘は、この鎮守府でははじめてだ。
それも、鎮守府の中でも古参の空母である加賀さんのふたりめとなると、みんな興味津々らしい。
通りすがる誰もが声をかけていくものだから、加賀さんはさすがに怯んだみたいだった。
艦としての記憶はあるけれど、艦娘として実際に出会うのははじめてなんだから、それはちょっと気後れもするだろう。
それにしても、加賀さんが私の隣を離れず、そっと陰に隠れるようなのは意外だった。
人見知りの気があるんだろうか。
加賀さんはそんなことなかったように思うけど、でもあれは古参の艦娘として、新入りの後輩を不安にさせないようにふるまっていてくれたのかもしれなかった。
私も加賀さんを不安にさせないように、ドンと構えていこう。
鎮守府の案内をしている間も、すれ違う艦娘たちが加賀さんに挨拶したりちょっかいをかけたりしていった。
私はその都度、加賀さんの半歩前に出て盾になってあげて、この娘は誰々で、どんなやつで、というのを紹介してやり、ぎこちない挨拶の仲介をしてあげた。
こうしてみると加賀さんはなるほど初々しくて、かわいいものかもしれない。
背筋はあくまでまっすぐに伸びて、顎も引いて凛々しい目つきをしているけど、普段見ている加賀さんと比べると、とてもかたい。
加賀さんはいっそ図太いというくらい泰然としてふてぶてしいけど、加賀さんはどこか強がるような空気があった。そして、それでも強がり切れず、私の半歩後ろに甘んじている。
後輩っていいなあ、なんて、つい思っちゃった。
これはなんというか、やる気がわいてくる。
頼られたいなって気持ちになる。
そんな不遜な気持ちを察したのか、加賀さんは胡乱気な目で私を見上げるのだった。
◆◇◆◇◆
艦娘が安全に練度をあげたいと思ったら、演習が一番だ。
艦娘相手とは言え、実戦さながらに戦えるし、艦娘相手だから、その結果見えてくる反省点も共有してフィードバックしやすい。
遠征任務になると少し危険度は上がるけど、でも大体勢力圏を確保した海域が多いから、出撃任務よりは安全だ。
実戦の感覚はあまりつかめないけど、海の上を走る経験は、下手すると出撃任務よりガッツリ稼げると思う。
ただ航行するって言うだけでも、慣れない艦娘には大変なんだ。
それでそれよりも手前の部分になると、自主練になる。
鎮守府には大抵、それぞれの艦種に合わせた訓練施設がある、らしい。
他の鎮守府に入ったことないけど。
弓を武器とする空母たちのそれは、弓道場だ。
「弓の引き方は体が覚えてると思いますけど、いけます?」
「やれます」
建造されたての艦娘でも、駆逐艦なら魚雷の扱い、戦艦なら砲の撃ち方、潜水艦なら水の潜り方、そして空母なら弓の引き方を、みんな体が覚えているものだ。
でも覚えてるだけだから、実際にやってみようとすると、感覚に慣れるまで時間がかかる。
まず慣熟訓練、っていうのはどの艦種でも変わらない。
加賀さんは綺麗なフォームで弓を引き、自然に脱力するように矢を射かけ、そしてものの見事に的を外した。弓道の的はどこに当たっても的中だけど、そもそもその的にすら当たってないわけだ。
一応近的場なんだけどなあ。
加賀さんは残心というには長過ぎるくらい的を凝視してから、おもむろに弓を引き、矢を射かけ、弓を引き、矢を射かけ、そうして矢筒が空になった。的は健在だった。
私は加賀さんの長すぎる残心を断ち切って、矢を取りに行かせた。
相当ショックだったろうし、代わりに取りに行ってあげてもいいんだけど、それじゃあ甘やかしすぎって怒られる。
とぼとぼと帰ってきた加賀さんは、それでも的に向き合った。
しっかと的を見据え、足を踏み開き、上体をしっかりとつくる。
弓を構え、矢をつがえ、両の手を打ち起こす。
「ハイ止めてー」
「…………なにかしら」
このあと、矢は手元を離れて、自身は残心を置くことになるけど、私はそこで止める。
射法八節で言えば、会にあたる。
これはつまり、矢もつがえて弓も構えて狙いも定め、あとは矢を放つだけっていう体勢ね。
訝し気ながらも的から目を離さない加賀さんに答えず、私はじっとそれを見守る。
加賀さんは、最初のうちはただただ不審そうだったけれど、段々そんなことを考える余裕もなくなっていった。ふるふると腕が小刻みに震え始めて、狙いがぶれる。それを押さえ込もうとして、肩が張って構えが強張る。
足元でも、手元のこらえようこらえようって言う意識が伝播して、つま先がもぞつく。
歯はしっかりと食いしばって、顔ははやくも上気して赤らみ始めた。
何分持つかなって思ったけど、実際には一分持たずに、加賀さんの矢はぺひょんと情けなく滑りでて、当然のように地面に転がった。
「ご、こうせん……ッ! なんのつもりかしら……!」
「はいはい、腕上げてくださいねー」
「くっ……ふっ……!」
矢をつがえさせず、弓だけで引分けの体勢にもっていかせる。
弓手は弓を押し、馬手は弦を引く。
とても簡単に言っちゃうと、両手を広げるだけだ。
でもその「だけ」が、結構な重労働なんだよね。
ついさっき疲れ切ってプルプルしちゃうまで会を続けさせられた加賀さんは、やっぱりすぐに腕が震え始める。
背中に回って、首筋、肩、脇腹と触れていくと、くすぐったいのか型はガタガタに崩れる。
「ちょっと……!」
「はいはい、型は崩さないでくださいねー」
「くっ……!」
見ても、触っても、やはり肩に力が入って、強張ってしまっている。
これでは滑らかに動かない。胸が開いていない。
一番最初はできていたけれど、疲れるとすぐに駄目になってしまう。
私はしばらく加賀さんをプルプルさせてから、適当なところで解放した。
「単純に、筋力不足ですね」
「きん……はっ……きんりょく、ぶそく、ですって……っ?」
艦娘は人間のひとよりよっぽど丈夫で力強いし、建造された直後からしっかり動けるものだから勘違いしがちだけど、そのまますぐに出撃して戦えるほど完全じゃあない。
まあどうしようもなく低練度で出撃しても、ある程度は何とかなるけど、それは決して安全でも万全でもない。
「しばらくは矢筒は使いません。弓だけ準備してください」
「弓だけで何をしろと言うの?」
「いまのを」
「は?」
「いまのを、ずっとやります」
冬眠明けのクマみたいな胡乱気で不機嫌そうな顔は、加賀さんそっくりだった。
とはいっても、両腕が完全にプルプルして、持ち上げるのもつらそうな加賀さんはしばらく使い物にならなさそうだったので、見本を見せてあげることにした。
私はもろ肌を脱いでさらし姿になり、ぎょっとした加賀さんに背中を向けて、弓と矢を手に取る。
「体が覚えてるから、なんとなくやってたと思いますけど、改めてちゃんと動きを覚えていきましょう。弓と矢を取って、左足と右足が的までの直線上に並ぶようにして、足を踏み開く足踏み。弓を左膝において、馬手は右の腰に。上体をきちんと作って胴造り。馬手を弦にかけます。かけるだけ。力みはいりません。手の内をととのえて的を見ます。両の手を同じ高さに揃えて持ち上げます。ちゃんと背中とか見てくださいね。筋肉が見えるでしょ。全然力んでません。触っていいですよ。ほら。触って触って。柔らかいでしょ。そうしたら弓を引き分けます。弓手を押して、馬手を引く。肩は張りません。弓手はまっすぐ、腕全体の伸びる力で押す。馬手は肘です。肘で引きます。肩甲骨見えますね。浮いてますよね。私見えませんけど。触ってみて……そうそれそれ。肩は張らずに、開きます。このとき矢の高さは弓手に合わせて、矢の位置は体の内側にずれていきます。型がととのったら会ですね。ただ構えが完成したというだけじゃないです。自分が弓矢という一つの装置になったつもりで、それで気力や胆力が高まって程よく整うのを待ちます。待つって言うか整えます。深海棲艦絶対殺すマンになります。ウーマンか。そのやつになります。ガールでもいいです。それで今だってなったら、胸を開いて矢が離れます。離すんでもなくなく、離されるんでもなく、自然と離れるようになります。なるといいです。馬手の離れ方は大きくても小さくてもいいです。自然なのが一番です。やってるうちにだんだんわかってきます。いまは分解して一つずつ説明してますけど、これらは分かれるものじゃなく、ひとつながりの動作なので、自然につなげるのが大事です。それで、はい、離れました、で、ほら、はい。
当たり前のように当たり前に私の矢は的に中る。当たり前だからだ。
まあこんな感じですよわかりましたかって振り向くと、加賀さんはちょっとぼんやりしたように、私の背中に触っていた手を所在なくさまよわせていた。
あんまりわかってないかもしれない。
そう言えば加賀さんもあんまり理屈で説明するの得意じゃなくて、ひたすら見せてやらせて覚えさせてっていうやり方だった。
私は感覚派じゃないから、教わったことを一つ一つテキストにして理屈に直して覚えていったけど、加賀さんには口で説明してもわかりづらいのかもしれない。
仕方ないので、私は実際にやらせることにした。
ぼんやりしてたのでさっさともろ肌脱がせたら、ものすごい目で見られたんだけど私悪いのこれ。ぼんやりしてる加賀さんが悪いんだよね。
ともかく脱がせたら、弓を持たせて、背中に回る。二人羽織でもするみたいにくっついて、両手を掴んで構えさせる。
「五航戦、その、近いわ」
「この方がわかりやすいでしょう。こんなに腕ぷにっぷになんですから大人しく練習に励みましょーね」
「なっ……ぷ、ぷにぷになんて」
「はいはい」
私は加賀さんの手足を操って何度か繰り返して射法八節を叩き込む。必ずしも実戦に即しているわけじゃないけど。でも基本を覚えていることは大事だ。
加賀さんの体はまだよわよわで、何回か繰り返すだけで汗だくになってしまったけれど、ちょっとずつ確かによくはなっている。
「ちゃんとね、型は覚えてるんですよ、身体が。でも筋肉が追いついてないし、それで惰性でやっちゃうから無理が出ちゃうんですね。しばらくはずっと引分けトレーニングです」
「……もっと実戦に即した訓練を求めます」
「不安定な海の上でこれできるようになってから言いましょうね」
「くっ……」
私は改めて加賀さんに背中を見せるようにして、打ち起こしから引分けの構えを取って見本として、加賀さんにも同じようにさせる。
文句を言っていた加賀さんも、私が黙って見本に徹していると、真面目に取り組み始めた。
背中にばりばり視線を感じる。うんうん。加賀さんはやっぱり教えられるより見て覚えるタイプかなあ。執念って言うか。自分で何とかする方が、やる気出るんだろう。
私は一日中だってそうやってトルソーになってあげても良かったし、実際その程度では全然疲れないんだけど、昼前になって加賀さんの胃袋が先に音を上げてしまった。
◆◇◆◇◆
シャワーで汗を流して、私たちは少し早めにお昼にした。
駆逐艦の子なんかだと、激しい訓練の後はご飯が喉を通らないって言う新人も多いけど、空母でそう言う娘はきいたことがない。
加賀さんも、ふらふらになって腕を持ち上げるのもつらいくらいだったけど、ご飯は平気で丼で平らげたし、おかわりもした。さすがに腕がつらいみたいで、気持ちいいくらいって言うような食べっぷりではなかったけど、それでも安心できる健啖ぶりだ。
「あら、加賀さんですね」
「赤城さん」
「あ、赤城さん、お疲れ様です」
腕がつらくて丼を持ち上げられなくても、意地でももそもそとどんぶり飯を平らげる加賀さん。
そんな加賀さんに気づいた赤城さんが、なんだか微笑ましそうにしてた。
「なんだか加賀さんの弱った姿って新鮮ですね」
「は、恥ずかしいわ、赤城さん。やめてちょうだい」
「そう言えば赤城さんが来たときには、加賀さんはもう改装してましたもんね」
同じ正規空母と言っても、赤城さんがうちの鎮守府に着任したのは結構後になってからだった。
最初に加賀さんが着任して、軽空母の龍驤さん、続いて隼鷹さん。それでちょっと間をおいて私が着任して、加賀さんにしごかれてる間に飛龍さんと蒼龍さんがそろって着任。
それで、空母が安定してローテーション回せる頃になって赤城さんと翔鶴姉が着任して、最近ようやく改装した。
だから赤城さんにとって加賀さんって言うのは、いつも先陣を切る古猛者なわけだ。
その加賀さんと同モデルの、着任したての新人艦娘って言うのは、まあ、面白いよね、正直。
恥ずかしさと悔しさで頬を赤らめる加賀さんをつついていじって、ようやく満足して赤城さんは去っていった。
「ふう……ちょっと、五航戦。赤城さんを止めてくれても、よかったのじゃないかしら?」
「かわいかったのでつい」
「か、かわ…っ…ご・こ・う・せ・ん?」
「あはは、ごめんなさい。でも慣れといたほうがいいですよ」
小首を傾げた加賀さんの向こうに、飛龍さんと蒼龍さんが見えて、私は肩をすくめた。
二人もまた加賀さんにしごかれた古参組だ。
散々にいじられる加賀さんを尻目に、私はどんぶり飯をおかわりしたのだった。
お昼を済ませてからまた弓道場に向かおうとしたんだけど、加賀さんはいじられ続けてすっかりむくれてしまったし、なによりすっかり腕が上がらなくなってしまったので、鎮守府の案内に移ることにした。
といっても、そんなに案内する場所があるわけでもない。
艦種ごとの寮は、用がなければ出入りすることもないからざっくりと教えて、空母寮も、ほとんどみんな出払ってるから、誰の部屋なのかを教えるだけ。
一応喫煙所もあるので、煙草を吸うか聞いてみたけど、答えはノーだった。
「あなたは吸うのかしら?」
「ええ? いえ、私は吸いませんよ。煙いだけですし」
「そう……なら私も吸わないわ」
艦娘は肺も強いけど、まあ趣味の領域よね、喫煙は。
酒保は昨夜案内したから飛ばして、施設を案内していく。
明石さんがたまに奇声を上げてる改修工廠や、誰でもお世話になる入渠ドック、出撃時に使う出撃ドック、燃料弾薬補給所、艦娘が利用する施設は結構多い。
直接はかかわることは少ないけど、艦娘の建造ドックや、装備開発工廠など、重要施設も案内しておく。
いつも肩で風を切って歩いていく加賀さんの姿を見知ってるだけに、私の後ろをちょこちょこついてくる加賀さんの姿は新鮮だ。かわいい。疲労でつらいのか大人しいけど、がんばってついて来ようとするのがまた健気だ。
私も着任したての頃は加賀さんの後ろにくっついてたなって思うと、なんだか面映ゆいやら面白いやら。
そうやって案内しているうちにいい時間になって、私たちはのんびり食堂に向かおうとして、加賀さんに捕まった。
「瑞鶴。と……あなた。加賀」
「あれ、加賀さん? 早かったですね」
「慣れない教導はあなたには荷が重いと思って、急ぎました」
「むぐ、まあ慣れてないのは確かですけどー」
「ご心配なく。五航……瑞鶴はよくしてくれているわ。あなたはゆっくり仕事に励んでもらって大丈夫よ」
「そう……そうですか」
加賀さんと加賀さんは、おんなじ加賀モデルははじめてだからか、やっぱりちょっとぎこちない。お互いになんだか反応を伺うようなとこがあるわよね。
せっかくの同モデルなんだから、早く仲良くなれるといいんだけど。
「ほら、加賀さんも汗流してきてくださいよ。これからご飯行くとこだったんで、一緒しましょう」
「ええ、すぐに」
「ゆっくりでいいですよ。ご飯終わったら間宮行きましょっか」
「いいわね。少しだけ待っていて、瑞鶴。……それに、あなた、加賀」
「はいはい、ごゆっくり」
「ええ、瑞鶴と待っていますから、ゆっくりどうぞ」
「……すぐに戻るわ」
加賀さんは言葉通り、すぐにシャワーを浴びて、ドライヤーもかけない洗い髪のままで小走りに帰ってきた。
うーん、悪いことしちゃったかな。それともそんなにお腹空かせてたのかな。
私はハンカチで加賀さんの髪の水気を取ってあげながら食堂に向かった。
「ゆっくりしていてよかったのよ」
「いいえ、待たせては悪いもの」
「瑞鶴と二人だから暇は潰せました」
「…………」
「…………」
うーん、加賀さん同士が気を遣い合ってる、のかな。
私は加賀さんと加賀さんに挟まれて、ちょっと気まずさを感じながら夕食を平らげた。
加賀さんは普段は食事中はあまりしゃべらないけど、まだ慣れてない加賀さんを和ませようというのか、今日の任務でのあれこれを事細かに教えてくれたし、珍しいことにジョークらしいことも口にした。
また加賀さんの方でも、加賀さんが心配しないようにって言う気遣いなのか、午前中の鍛錬のことについて語り、また、私の背中が綺麗だったとか手取り足取り教えてくれたのでわかりやすかったとか、私のことも持ち上げてくれた。
うんうん、加賀さんってちょっととっつきづらいところあるけど、やっぱり自分同士だからかな、お互いに歩み寄ってくれてるみたいでよかったよかった。
夜だから控えめに、どんぶり飯を三杯ばかりで締めた後は、待ちに待った間宮だ。
太るかもとは思いながらも、やっぱり甘いものの誘惑には勝てない。
艦娘の中には、甘いものよりお酒って言うひともいるけど、私は断然甘味だ。
いや、お酒も好きだけどさ。でもお酒の好きはまた別ものだ。
甘いものへの飢えは、甘いものでしか癒せない。
加賀さんはどちらかというと辛党みたいなんだけど、私が間宮行くときはいっつもついてくるので、甘いものも好きなんだろう。
今日は叢雲からもらった間宮券があるので、タダなのも嬉しいところ。
私は二人に挟まれてアイスクリームを頂いて幸せになるばかりか、何と加賀さんから羊羹を、加賀さんからは饅頭を分けてもらって、士気高揚せざるを得なかった。
二人とも全然食べてないけどいいのかなとは思いつつも、甘味の誘惑は、あまりにも強かったのだった。
◆◇◆◇◆
加賀さんは順調に練度をあげていき、いまでは演習もこなし、実際に何度か出撃もしている。
まだ私が教導艦として付いていき、実戦形式の訓練ってかたちではあるけど、それでも驚くほどの成長速度だ。
最初は全然見てられなかったけど、やっぱり加賀モデルは優秀で、教えたら教えただけ、学んだら学んだだけ、ぐんぐんと伸びていく。
「瑞鶴、あなたのおかげよ」
ってそう言ってくれるけど、やっぱり加賀さんってすごいよね。
私はたくさんたくさん努力してやっとだけど、加賀さんモデルは天才肌って言うか、呑み込みが早いし、応用力も高い。もちろん、本人の努力があってこそだけど。
ちょっと劣等感あるかも。ちょっとだけね。
でもやっぱりうれしい気持ちの方が強いかな。
加賀さんも、自分でも上達がわかるみたいで、その度にあなたのおかげよって言ってくれて、なんか照れちゃうよね。
加賀さんがすっかり一人前になって、加賀さんとローテーション組んで主戦力になる日も遠くないと思う。その頃には瑞鶴モデルの新人も来て欲しいけど。
そうそう、加賀さんは遠征からは外れたみたいだった。環境変わるのやっぱりあんまり好きじゃないみたいで、仲がよくて連携もとれる飛龍さんと蒼龍さんに譲って、待機組に移ったんだって。
まあ、加賀さんが出張らなきゃいけないほどのことってそんなにないしね。
それでまあ、加賀さんは最近、私の教導を手伝ってくれてる。
朝もちゃんと起きるようになって、なんとこの前は私の髪を梳かして結ってくれた。いつもありがとうなんてらしくないこと言っちゃって、でも嬉しいかな。
そしたら加賀さんも、お世話になっているから、次は私が、なんて。
それで加賀さんと加賀さんで、いえ私が、いえいえ私がって、なんかコントみたいで笑っちゃった。
同じ加賀モデルってことで、やっぱりなにか感じるものとか、触発されるものがあるのか、加賀さんは熱心に訓練してくれるし、それを見て負けられないって思うのか、加賀さんも励んじゃって、私ものんびりしてられないわね。
ご飯食べる時だって、まるで競い合うみたいにどんぶり飯を平らげるもんだから、見てて気持ちいくらいの食べっぷりよね。
いやほんと、仲のいい姉妹みたいね。
なんかそう考えると、バディだったはずなのに私ひとり置いてかれてるみたいでちょっと寂しいけど、まあ仲良きことは美しきかなってやつよ。
「……ねえ、瑞鶴さあ、あれ見てどう思う?」
「あ、飛龍さん。あれって……あれ? なんか微笑ましいですよね」
「それマジで言ってる? あれ見てそう思うの?」
「え? ええ、まあ。姉妹みたいで」
「えー……私見てて胃が痛くなるんだけど」
「え、食べ過ぎですか?」
「ちがう。ちっがーう。え? なに? 加賀さんと加賀さんのこと何とも思ってないの?」
「もちろん加賀さんは尊敬できる先輩ですし、大事なパートナーです! 加賀さんも頼もしい後輩ですし、慕ってくれて嬉しいですね!」
「ああ、うん、そう……」
「「ちょっと、瑞鶴」」
「あ、加賀さんたちが呼んでるので、戻りますね」
私はおかわりのどんぶりを片手に、ふたりのもとへと急いだ。
加賀さんと加賀さんと私。
さあ、今日はいったいどんな一日になるんだろうか。
私は自然とほおがほころぶのを感じるのだった。