転生最高司祭ちゃんが行く原作再現   作:赤サク冷奴

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前半が本編。
後半は解説しきれなかった部分の補完のようなもの


転章Ⅰ&登場人物紹介

 

 カリフォルニア州サンディエゴ。

 

 《グロージェン・ディフェンス・システムズ》の最高作戦責任者(CTO)であるガブリエル・ミラーは、自社のウォーター・クローゼット直ぐの廊下の壁に肩を預け、腹を抱えつつ自分の愚かさに自嘲した。

 

「ふ……抜かったか。作戦前だからと、舞い上がってしまったのが仇になってしまったな」

 

 独り言ちると、つい先月の事を脳裏に思い浮かべる。

 

 NSA──国家安全保障局のエージェントを名乗る二人の男は、突然この会社に訪れ、とある依頼を持ち込んできた。

 

 突然の来訪であったが、CTOのガブリエル自身が応対した。NSAは別段上客という訳でもなく、クライアントとしては初めてではあるが、たかだかいちPMC(民間軍事会社)とは格が違う相手という事を理解していたからだ。

 

 しかし、ガブリエルはその作戦の概要をエージェントより知らされ、思わず内心で溢れんばかりの歓喜を覚えた。

 

 日本が持つ《ソウル・トランスレーション・テクノロジー》という、魂を解析する技術の奪取。

 

 生涯、魂を求めてきたガブリエルには、まさに天啓──彼は特に信心深い訳では無いが──とも言えた。

 

 役員会議により依頼の受諾が決定されると、ガブリエルははやる気持ちを抑えながら静かに挙手し、《A.L.I.C.E.奪取作戦》の作戦責任者を名乗り出た────

 

 意識を目の前の現実に浮上させると、それも仕方ないかと、またも自嘲的な笑みを浮かべた。

 

 今日にもグアムに飛び、米軍基地の原子力潜水艦から、例のテクノロジーを扱った実験施設、《オーシャン・タートル》なるメガフロートに潜入する予定となっていたが、景気付けに食べた《キバオー・クラブケーキ》と名のついたクラブケーキに、何かが混じっていたらしい。「なんでや!」という謎の日本語を幻聴しながら倒れ、作戦前日にも関わらずガブリエルは入院、作戦は延期する運びとなってしまった。

 

 とんだ大馬鹿だな、と三度自嘲すると、自室のある廊下をスっと見据える。

 

 大いなる目的を前にすれば、こんな腹痛など全くの無問題。些事であった。故にガブリエルは、病院を抜け出し、作戦を開始するべく舞い戻ってきたのだ。

 

 もう一度、あの美しい光の雲を見る為に。

 

「…………君の魂は……きっと甘いだろう…………」

 

 

 ◯ ✖️ △ ◆

 

 

 西暦2026年7月6日午後22時34分。

 

 オーシャン・タートルのメインコントロールルームには、菊岡、比嘉、その他幾人かのスタッフ以外に、キリトの安否を確認すべく乗り込んだ明日奈と、その手助けをした凛子の姿があった。

 

「あら、どうしたの、明日奈さん」

「あ……いえ。ただ、変な予感がして」

 

 思わず凛子が声を掛けると、明日奈はぼうっと見上げていた天井から目を落として、不安げな声音でそう言った。

 

 凛子自身も、昨夜に謎の気配を感じて通路を見回したばかりだった。それは恐らく、明日奈の予感とやらとは違う何かだと、確信めいたものを感じているが……それでも彼女の言葉を否定して、気の利いた言葉を掛けてやることは出来なかった。

 

「変な予感……ね……」

 

 

 ──オーシャン・タートル襲撃まで、残り13時間33分。

 

 


 

 登場人物

 

 

アドミニストレータ(アドミンもしくはクィネラ)

年齢:18歳で固定(363歳

シンボル:沈丁花(チンチョウゲ)

 我らが主人公。元は、某運命なソシャゲの主題歌が三曲歌えたりするほどサブカル好きな三十路の会社員だが、なぜか死んでクィネラに憑依転生してしまった。原作再現をしようとして限りなく空回りしている。

 

 自己犠牲の精神が強く、アドミンに転生してから本性が現れた。

 よく転生憑依ものにあるような死亡フラグ回避みたいな事は端から考えておらず、自分がキリトに殺されるのは予定調和だと諦めている。

 その上でストーリーのラスボスとして立ちはだかり、主人公に抗うことが今世での望みとなっている。

 

 原作アドミンの容姿より2〜3歳若い時に容姿を固定しており、気高く幻想的な雰囲気が和らぎ、かなり少女じみている。というより、永遠の18歳のまま三百年間過ごしているので、素の振る舞いからしても完璧に女の子にしか見えない。

 

 また前世から漠然と持っていた少女趣味も加速し、沈丁花*1という花をいたく気に入っては、自身のプロパティにその花の香りを組み込んだり、お菓子作りや料理作りに精を出している。

 

 最近、クリスチャンとの関係を揶揄されて、自分が既にメス堕ちしている事に気付いてしまった。日記には衝動で書いた何かを黒塗りで消した跡がチラホラと……

 

 つい虐めたくなるクールポンコツ女王様系美少女ラスボス。

 

クリスチャン・シンセシス・ゼロ cv:鈴村健一or櫻井孝宏。

年齢:18歳で固定(327歳)

シンボル:梔子(クチナシ)

 ウォールなマーケットのドンみたくホヒホヒうるさいチュデルキンに代わって選ばれた執事。大貴族の妾腹の子。望まれぬ子で、幼少を息苦しい環境で過ごしてきた。苗字のシンセシス・ゼロは飾り。

 

 ベルクーリを凌ぐ人界最強の剣士。SAOのソードスキルを自己流で身につけ、連続剣を得意とする。心意力はベルクーリ以上キリト、アドミン以下。

 

 外面はいかにもな執事として振舞っているが、内面は普通の青年。一度おじいさんだったので老成しており、物事を達観しているが、その長年の付き合いの中でアドミンの事を好きになってしまい、気取られぬように隠している。

 また少々Sっ気が強く、相手を弄ったり、時に意味深な助言をしたり、何かと引っ掻き回すことが好き。主に弄りがいがあるのはアリス。次点でキリト。たまにアドミンも弄り倒す。

 

 彼の母替わりだった世話係が丹念に育てていた梔子*2の花を好んでいる。彼の執務室には小さいながら梔子の鉢植えがあったり。

 

 腹違いの弟であるフェノメアとは、主に罪悪感とか、複雑な想いから意図的に関わらないようにしている。

 

 イチャイチャしてるのにヘタレて告白しないドS溺愛万能執事。

 

キリト・シンセシス・サーティスリー

年齢:20歳

シンボル:夜空の剣

 我らが原作主人公。整合騎士キリトになっちゃった人。

 

 初日から最高司祭怖ぇとか、カーディナルの話を聞いて警戒していたが、意外と抜けてたりクリスチャンのことを揶揄されて顔を真っ赤にするアドミンを見てすっかり当初のイメージは消えた。

 

 アドミンとは絶対に分かり合えると信じており、カーディナルとの話し合いを深めるべく、今日もケーキの試作に励んでいる……アスナどこ……?

 

 一生アドミンのせいで苦労する見習いパティシエ兼見習いパシリ兼見習い騎士系主人公。

 

ユージオ・シンセシス・サーティツー

年齢:20歳

シンボル:青薔薇

 我らがヒロイン。ずっと整合騎士ユージオな人。

 

 アドミンとキリトに振り回される不憫な子。最近、アドミンの優しい面を見て、もしかしたら、頼めばアリスを元に戻してくれるのではないかと思い始めた。

 

 ひそかにアドミンによって、女の子にしたら面白そうランキングのトップ5に入れられている。

 アドミン曰く、どう見たってメスみがつよいらしい。

 

 因みに青薔薇の花言葉は、『夢叶う』『神の祝福』『奇跡』『神秘的』など。

 

 整合騎士になってからも気苦労の多い誠実不憫系オスみつよつよ剣士。

 

アリス・シンセシス・サーティ

年齢:18歳で固定(20歳)

シンボル:金木犀*3

 整合騎士第三位の座をフェノメアから掻っ攫った人。手塩にかけられ過ぎて、アドミンを母親的な友人的な上司だと思ってる。が、正史と性格はそう大差ない。

 

 事あるごとに弄ってくる元老長を、ホヒホヒ言ってる方とは別の意味で嫌っていて、怒って大声を出したり、呆れたりして心労が多くなっている。

 

 色々な人に愛され過ぎな絶対服従系美少女騎士。

 

カーディナル

容姿:10歳で固定(193歳)

シンボル:蝋梅(ロウバイ)

 ラノベには欠かせないのじゃロリキャラ第一号。相変わらず打倒アドミニストレータを掲げ二百年以上も引きこもっていたが、最近はアドミンと接触し、自分に刻まれたアドミンの記憶は、アドミンの手で都合良く消され改竄された残骸なのではないかと気付き始めた。

 

 元となったフラクトライトがあのアドミンの為か、蝋梅*4という花の匂いを気に入って、匂いが漂うように自身のプロパティに書き込んでいたり、お菓子作りをしたりする。

 

 アドミンにはやたら人間じみた面があることを確信し、策を考えているようだが、その実態はアドミンを差し置いて、クリスチャンと抜け駆けできる方法が主。

 アドミンがあのザマなので、反比例的にかなり黒い性格になった。

 

 宿敵が想い人である人物に恋してしまった敗北者系のじゃロリ賢者。

 

フェノメア・シンセシス・スリー cv:竹達彩奈or大久保瑠美or堀江由衣。

年齢:20歳で固定

シンボル:宝石

 枢機卿という公理教会のNo.3で、あまりに高過ぎる権限レベルと禁忌目録違反故にシンセサイズされた騎士最強の術士。生成されたアバターは男なのに、フラクトライトは女性として成長してしまっている稀有な例。

 

 艶やかな黒髪を肩まで伸ばし、オニキスの様に輝く黒の双眸の、可愛さに全振りしたような愛らしさをした美少女にしか見えないが、男の子である。初見で性別を見破れたのはアドミンとクリスチャン、ベルクーリ、シェータの四人のみ。

 フード付きローブを身に着けているが、ヒラヒラしている上にスカートを穿いているのが見えるので、間違えられるのも仕方ない。

 

 朗らかな性格で、誰であろうと分け隔てなく話しかけたり、常に笑顔を絶やさない。本人も、出来る限りポジティブでいようと心掛けているが、その姿が無理をしているとしか見えず痛々しく、色々な人から心配されがちになっている。

 

 整合騎士にも関わらず、出自が出自なので剣も弓も槍も全く使えない。物理攻撃をするなら本で殴ることぐらいしか出来ないが、卓越した神聖術行使権限で、以下省略タイダルウェイブ的な攻撃を降り注がせるので必要ない。

 

 現在は、枢機卿、整合騎士、神聖術師の三足のわらじ。常に仕事に追われているブラックな日々を送る。

 寝食も忘れて仕事をしている結果、隠しステータスの健康値が下限近くまで落ち込み、よく廊下で立ちくらみを起こしていたり、突然ぶっ倒れるほどに病弱。

 

 クリスチャンにあからさまに避けられているのを、割と悲しいなぁとか思ってる。

 

 いつも笑顔を貼り付けた過労貧弱系ブラック男の娘マジシャン。

 

ベルクーリ・シンセシス・ワン

 我らが団長諏訪部さん。一時期アドミンがエミヤ化計画を考えていたが、断念されている。アドミンがポンコツだと気付いている一人。

 

 元老長クリスチャンとは腐れ縁で、たまに試合をしては訓練場をボッコボコにしている。

 

 またキリトやユージオ達のチーズケーキ作りにこっそり現れて、ちゃっかり試食してたり、かなりお茶目な性格。

 

 原作だと、物憂げで飽きっぽい気まぐれなお姫様とアドミニストレータを評しているが、こちらのアドミンに対しては、最高司祭という重責を背負わされてしまった女の子というふうに感じており、時折諦めた様な表情を浮かべるアドミンに心を痛めている。

 

 一緒にワインを飲んでくれる上司思いな信頼系イケおじ戦士。

 

ファナティオ・シンセシス・ツー

 副だんちょ。最凶人妻の一角。自分が女だと知っても分け隔てなく接してくれるフェノメアを友達だと思っている。が、フェノメアが公私混同しなくなった原因が彼女にあるくらい、規律や礼儀に厳しい。

 

 アドミンとは、機会があれば一緒にお菓子を作ったりして、クッキーが大量生産されてはカセドラルにばらまかれている。

 

 愛が深すぎるちゃらゆる人間成敗系女騎士。

 

イーディス・シンセシス・テン

 ソシャゲより襲来した、銀髪紅眼のみんなのおねーさん。たぶん整合騎士第五位くらい。いつもアリスにべったりしているので、エルドリエからは蛇蝎の如く嫌われているし、嫌ってる。チュデルキンではなくクリスチャンが元老長を務めるこの世界では、物凄く居心地がよさそう。

 

 非常に優れた勘を持ち、アドミンやフェノメアの外面と内面の不和に勘づいているが、アドミンだけはクリスチャンとのイチャイチャした暮らしぶりから確信が持てずにいる。

 

 最近、アリスがキリトやユージオと居る時間が多くなってきて、少し寂しい思いをしている。

 

 推ししか勝たんになった過去暗い系姉属性シスコン魔法剣士。

 

シェータ・シンセシス・トゥエルブ

 性癖:斬る を地で行く人。黒百合の剣を貰って、意味深発言を言われた時のミステリアスな雰囲気が印象的だったので、眠っていた間に随分変わったなぁ、とか呑気に思ってる。

 

 キリトとユージオの指導役を受け持っているが、予想以上にキリト達が成長するので、無音と言われる所以となった無口さガン無視で無理難題を押し付ける。

 

 リアル無双ゲーを繰り広げる天然系コンプレックス持ち剣士。

 

シャーロット

 実は人型に変身できる最強の蜘蛛。本来のIF世界線ではお茶会に参加してケーキの美味しさに魅了されるが、この世界ではその席をフェノメアに譲り渡しているので、褐色美女に変身する機会はあんまり無いと思われる。

 

 あまりのアドミンのポンコツぶりに、あれも演技のうちなのではと勘繰っていたり、最近様子のおかしいマスターに悩まされている。

 

 甘いもの大好きなアドバイザー系褐色美女蜘蛛。

 

ガブリエル・ミラー

 石田さんのせいでラスボスの風格が出てしまった狂人。この世界線では、サンディエゴの高級イタリアン・レストランの人気メニュー、《キバオー・クラブケーキ》を食べて食中毒になってしまう。しかし、体調不良を押し切って《オーシャン・タートル》に乗り込もうとしている。

 

 原作よりも一日作戦開始が遅れることによって、意図せずしてアドミンの計画を狂わせていくとは露知らずに……

 

 より一層怪しくなった狂人の中の狂人系イケボラスボス。

 

*1
四大香木が一つ。かなり遠くまで匂いが届くほど強い匂いを発する。花言葉は『栄光』『不滅』『勝利』『永遠』『不死』など。本編でさりげなく描写がある。

*2
四大香木が一つ。花言葉は『とても幸せです』『喜びを運ぶ』『洗練』『優雅』『純潔』『夢中』『胸に秘めた愛』など。

*3
四大香木が一つ。花言葉は『謙虚』『気高い人』『真実』『陶酔』『初恋』など

*4
四大香木が一つ。花言葉は『慈愛』『先導』『先見』『ゆかしさ』など。


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