世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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いよいよ本当の本当にクライマックス(バーゲスト編の)

1対1ならともかく複数キャラを出演させると途端に会話劇が難しくなりますね。

おかげで、バーゲストには常に空気を読んでもらわないといけないことに。




感想、評価、ありがとうございます。

本当にすごく嬉しいです。


現実

「モルガン――やっぱり、あなたなんだ。あなたがトール君の――」

 

「アルトリア――そういうお前こそ、一体いつどこで、〇された?」

 

「そんなの、話す理由なんてない」

 

「なるほど、良いだろう。元より敵対関係。むしろ新たにすり潰す理由ができたと言っても良い」

 

「—そう、あなたはまだ気づいてないんだ」

 

「なに――?」

 

「別に、まだ気づいていないのなら私から言う事なんて何もない」

 

「……この戦いに乗じて、貴様を攫い、痛ぶっても良いのだぞ?アルトリア」

 

「そんなの、トール君の前であなたは出来ないでしょう?」

 

「ほう?」

 

「別に、知っていたって変わらない。あの人が、あなたの為に生きてるって事は変わらない」

 

「……」

 

「なんだ、可愛い所もあるんだ」

 

「貴様——」

 

「怒りたいのは私だって同じ。でも今は、そういう場合じゃない。でしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

戦況はモルガンが参戦した事により、一気に優勢になった。

ハルクバスターによる取っ組み合いがバーゲストの攻撃を制限し、その間にモルガンが魔力を吸収。

この二人だけでも優性に見えるが、そこに、藤丸立香の英雄の影が動きを封じ、偶に来る攻撃をアルトリアが防御し、村正がその刀で切り伏せる。

更に、他の仲間を遠くに先導していたダ・ヴィンチも参戦し、回復役に徹する。

 

 

立香達とモルガンでは連携が全く取れていない。

どころか、特に村正の動きが何というか、目に見えて怪しいというか、モルガンの方を常に気にしているように見え、それが好意的なものではないというのが気になるが現状の戦争の構図を把握していないトオルにとっては、村正がモルガンの首を取ろうとしている事は知る由も無い。

 

お互いに世界をかけ、敵対している存在が、同じ目的をもって行動する。

その中心にいるトオルは、お互いの事情を全く把握していなかった。

 

だが、現状問題は無い。

このまま行けば、魔力切れを狙えるはずだ。

 

 

 

 

――しかしまた戦況は一変する。

 

 

 

 

 

「これはーー!!」

 

その状況に気づき、叫んだのは誰だったか。

突如周囲に夥しい量の黒い影のようなモノが現れた。

 

厄災によるの尖兵。

妖精にとっては天敵であるところのモースだった。

 

数としては一目見渡したとしても、数百を超え、大小さまざまなモース達がトオル達とバーゲストを取り囲んでいる。

 

「なんでこんな急にモースが!!」

 

その言葉を発したのは立香

 

「いやむしろ、逆だ!! ノリッジ事を思えば、今まで湧いて出て来なかった方が不思議なくらいだ!!」

 

「忌々しい――」

 

その言葉と共に、モルガンは魔術を唱える。その槍は剣へと形を変え、衝撃破を放ちながらモース達を薙ぎ払う。

圧倒的なその攻撃力に立香達は戦慄するが、驚いている場合では無い。

 

バーゲストとこの量のモース達を同時に相手どらなければならない。

その状況に今まで以上に緊張感が走る。

 

そのバーゲストを見てみれば、巨大な口でモースを喰らっていた。

 

 

「あれって回復してるとかじゃないよな?」

 

「残念ながらその通りだろうね……」

 

嫌な予感をトオルが口にするが、肯定したのはダ・ヴィンチだった。

 

食事に夢中のバーゲストを見越し、それぞれが背中合わせになりながら、モースに対処する。

 

このままではジリ貧だ。バーゲストを殺すつもりで動くのなら、モルガンや村正の攻撃で周囲のモースごと殲滅できるだろうが、今のような闘いを続けていればいつかは――

 

「そろそろ決め時じゃねえか? 坊主」

 

村正の口からそんな言葉が飛び出した。

少ない言葉だったが、その意味は誰もが理解した。

 

「なんだ? 疲れたのか?」

 

その意味を理解しつつも、トオルは軽口を叩くが、村正は取り合わなかった。

 

「お前さんの信念は立派だ。そしてよくぞここまで戦った。だけどな、このまま同じ闘いを続けていたらいつか喰われちまうのは目に見えてる」

 

その言葉を誰もが噛み締める。

モルガンでさえ、言葉を発することは無い。

 

「バーゲストはもう、どう見ても救うべき奴じゃねぇ、倒すべき奴だ。自分がああなったらって事も考えてみろ。その上で、バーゲストの気持ちもな」

 

ひたすらにモースを貪り喰らうバーゲストに、もはや以前の面影は全く感じない。

 

そうなのだろう、それが当然の選択なのだろう。誰もが元より彼女はそういう運命だったと認識している。

 

運命に従うべきだと。運命に抗えばもっと酷い結末が待っているぞと、何かがトオルに囁いているように感じる。

 

本当に、胸糞悪くて、その世界の存在を、娯楽としてしか思ってない奴が考えるような、全く持って酷い物語だ。

 

「だから――「だから殺す方が救いだって事もあるって?」

 

村正の言葉を遮り、言葉を発したのはトオルだった。

 

「くだらないくだらないくだらないくだらない……」

 

今までにない感情の高ぶりを感じる。

気性は荒くなり、口調さえも乱暴になっていく。

 

「殺してやることが救いだなんてのは、殺した側が自分達の罪を軽くするために言う言葉だ。主人公に罪を被せたくない為に使う下らない言い訳だ。幽霊だのに『殺してくれてありがとう』なんて言わせて、めでたしめでたしなんていう胸糞悪い展開が……」

 

このような悲劇は、何も今回が初めてではない。

何度も何度もその運命に沿って怪物と化して殺される者達を見て来た。そして救う事が出来ない事の方が多かった。

そして、何度も何度も自分以外の人間がそういった悲しい宿命を背負った者を救う様を見せつけられてきた事もあった。

 

「俺は大っ嫌いなんだよ……!」

 

だから今度は、今度こそは――

 

ハルクバスターの各部位から機械音が鳴り始める。

 

「俺は、あんなになったアイツが、アドニスの為にこさえた花畑を壊すのを嫌がってたのを見たんだ」

 

噴射音が鳴り始める。

 

「まだアドニスへの愛が残っている姿を見たんだ」

 

掌から光を噴射し

 

「今まで前例が無かろうが関係ない」

 

背中から光を噴射し

 

「バーゲストが何もかも諦めて、殺してほしいって懇願してようが関係ない」

 

足裏からも光を噴射する。

 

「巻き込んじまって悪いが、俺は昔っから自分勝手だからな……」

 

装甲の各部が開き、同じように光を噴射する

 

「俺はやり方を変えるつもりは毛頭ない……!」

 

その言葉を残したまま、一気に空中へと飛び上がる。

 

『モルガン! アルトリア!! 障壁を張れ!!』

 

スピーカーからの乱暴な指示に、アルトリアはもちろん、この國の女王であるモルガンも従った。

 

「V2N!! 補足できるか!?」

 

『当然だ』

 

モニターにあるモース達の1体1体を補足していく。

 

バーゲストがああなった事から察するにモースの正体もおそらくは……

 

補足が完了すると同時、装甲のありとあらゆる場所から、ミサイルの、リパルサーの、レーザーの発射口がせり上がって来る。

 

――今はただ邪魔なだけだ。

 

体中の武器を一斉発射する。

 

ミサイルが消し飛ばし、リパルサーが貫き、レーザー光線が切り裂いていく。

正確に、淀みなく。バーゲストはもちろん。モルガン達の障壁にすら当たらずに、モース達を破壊していく。

 

爆音と煙に周囲一帯が包まれた。

 

しばらくの沈黙の後。

 

煙が晴れる頃には、モース達の全てがいなくなっていた。

 

 

村正達がいる場所にハルクバスターを着地させる。

 

驚いた表情をする村正に、声を掛ける。

 

「悪いな村正。嫌な役やらせて……」

 

誰もが言い出しにくい事だっただろう。忠告役をあえて引き受けたのは、見た目に反するじじくさい性格故だろうか。

 

「お前さん、その鎧。どれだけ絡繰を隠しもってやがるんだぁ?」

 

呆れた様子の村正にハルクバスターの砲門をありったけせり上げる事で答える。

 

「改めてなんだが、これは俺の自分勝手な戦いだ。バーゲストでさえ望んでないかもしれない俺のワガママによる闘いだ。アルトリアはああ言ってくれたがな。やっぱりお前達に手伝ってもらおうなんて思えない」

 

「だから、できれば逃げて――「トオルさん」」

 

トオルの言葉を今度は立香が遮った。

 

「ここまで来て、そんな寂しいこと言わないでください」

 

その一言に、すべてが込められていた。

 

アルトリアも村正も、ダ・ヴィンチも。同意するように頷く。

 

少し離れた位置にいるモルガンに顔を向ける。

 

「私にはなんら問題はありません。私はあなたを裏切らない。あなたが音を上げた時も安心なさい。代わりにあの厄災に対処する手はずは整っています」

 

――本当に、優しい女王様だ。

 

「あぁ、それなら安心だ」

 

言って再びバーゲストと対峙する。

 

二転三転した戦況も、いよいよもって最終局面に入っていく。

 

思いは全て出し切った。

 

後は諦めずに戦うのみ。

 

皆が皆、誰の犠牲も払うことなく。バーゲストを救う事が出来るだろう。と考えていた。

 

そんな不思議な希望が全員にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、一人の(ニンゲン)がただ加わった程度で、1万4000年の絵本が貪り食われる悲劇を覆せるほど、現実は甘くは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の覚悟は決まり、あとは、消耗戦を残すのみ。

 

そこに、ひとつの知らせが届く。

 

『トオル、バーゲストの全解析が終了しました』

 

それはまさしく最後の希望だ。この消耗戦に終止符を討つためのより最良の方法を見出す為の希望。

 

「どうだ!? 止められる方法はありそうか?」

 

期待を込めてV2Nに尋ねる。

 

『……』

 

「V2N!?」

 

答えない相棒を急かす。

 

嫌な予感が拭えない。

 

『現状、魔術及びあなたが異世界より賜った装備では不可能です』

 

もう一度問いただせば、あっさりとその答えが返って来た。

 

 

 

 

 

――ああ、やっぱりか

 

 

 

 

『あの呪いはバーゲストが死亡するまで消える事は無く、魔力が尽きる時、彼女の命は消え去る』

 

それは最悪の宣告だった。呪いが音を上げることもなければ、魔力切れでどうにかする。なんていう事も不可能という事だ。

それこそ今までの全てを台無しにするような分析結果。

 

『根本から彼女の在り方を変えない限り、助かる道はないわ……』

 

それが最終宣告。本当の意味での終わりを告げる言葉。

 

周りには、未だバーゲストを抑えようとしてくれいる者達。

 

この茶番に突き合わせてしまった。心優しき善人達。

 

絶対に諦めないと誓った。

 

ただ、実現不可能という現実を前に意地を張れるほど、向こう見ずでも無かった。

 

心に浮かぶのは懺悔の言葉。どうしようもできない自分の無力さからくる。贖罪の気持ち。

 

 

――ごめんなさい

 

自分が、あの妖精達の蛮行に気づかなければ、こんな事は起きなかったのに。

 

――ごめんなさい

 

自分がバーゲストに世話にならなければこんな事にはならなかったのに。

 

――ごめんなさい

 

自分が妖精國に来なければこんな事にはならなかったのに。

 

――ごめんなさい

 

自分がそもそも存在しなければこんな事にはならなかったのに。

 

 

 

例え異世界に行こうと、例えどんな武器や力を手に入れようと。肝心な所で救えない。

破壊という結果しかもたらさない。そのために生みだされた自分の運命から抗う事ができない。

 

世界そのものを破壊するよう作られた自分に、ヒーロー達が傍にいない自分に誰かを救うことなどできはしない。

 

そう贖罪の思いに駆られ、自身の出生すらも恨めしいと思ったその時。

 

 

――ふと失われていた一部の記憶が蘇って来た。

 

 

自身を作り出した創造主への反抗を企て、セカイそのものを分析し、ハッキングした無限城の倉庫(アーカイバ)にある記述。

 

破壊による支配だけが使命ではなかったと知り、だからこそ怒りに打ち震えたあの記述。

 

――ああ、そうか

 

根本からというのならば、これが自分にできる最善の方法だ。

 

 

決断は早かった。

 

 

 

「V2N。俺を外に出してくれ」

 

『何を考えて――』

 

予想通りの反応を示すV2Nの言葉を聞かずに、体内から生み出した電流で、プログラムをハッキングする。

 

ハルクバスターの全面が開き、アイアンマンスーツもナノマシンが剥がれ落ちていく。

 

そのままハルクバスターを降り、ゆっくりとバーゲストの方へ歩いて行く。

 

『バカな事をしないで!!』

 

即座に前面を閉じたハルクバスターはV2Nの操縦により、トオルを捕らえようと動くが、再びの稲妻により動きを抑制され、その目的を果たすことは出来ない。

 

「わるいなV2N(ヴィヴィアン)

 

その尋常ではない様子に、戦場にいる誰もが、後方にいたトオルに振り替える。

 

「トール!? 何をやっているのです――!?」

 

最初に叫んだのはモルガンだ。

 

焦りを見せる様子に、もはや冬の女王としての矜持はは皆無だが、それ以上に眼を引く存在により、その場にいる誰もが気にする様子はなかった。

 

誰もが一時的に、動きを止めざるを得ない。

 

その一瞬の隙をついて、バーゲストの口から熱光線が放たれる。

 

狙いは寸分違わず。生身のトオルへと向けられ、その場にいる誰も対応する事が出来ない。

 

発射された光線はトオルへとまっすぐ向かい。直撃をする。

 

「トール君!!!」

 

一瞬でその身体を蒸発させるかと思われたそれは、トオルの体から発せられる稲妻にぶつかり、触れたその部位から消失していた。

 

数秒の間照射され続けた熱光線は目標に届くことなく消失する。

 

その攻撃を意に会する事なく、突き進むトオルの体には先ほど以上に稲妻が纏わりついていた。

 

「トオルさん、雷の魔術なんて使えたの!?」

 

「でも魔力も何も感じないぞ!? また別の科学兵器!?」

 

「そもそもアイツ! 何をしようとしてやがる!!?」

 

 

立香達がそう会話を進めている間にトオルは右手をバーゲストにかざす。

 

すると、その右手から、光を纏った粒子のようなものがバーゲストを透過する。

電子風を通し、バーゲストそのものをその根本から解析していく。

V2Nによる解析とは別のアプローチ。

世界の根幹を揺るがす雷によって構成される電子風スキャンは

その存在の物理的構成から概念に至るありとあらゆる全てを解析する。

 

「成程、そういう構造なのか……」

 

 

解析は終了し、再びバーゲストへと近づいていくトオルが纏う稲妻は、さらに広がっていき、最早彼本人を視認する事すら困難になる程だった。

 

 

「なんて稲妻だ!! 魔力の類は測定できないけど! でもこの圧力は、オリュンポスの時のような――!!」

 

 

ダ・ヴィンチの叫びに内心で同意する立香。第5異聞帯であるオリュンポスで経験した。機械神ゼウスによる雷。

 

魔術的な要素を感じることは出来ず、そもそも具体的な出力や威力は計ることは出来ないが、生命体としての本能が、その稲妻に警告を発していた。

規模こそは及ばないものの本能的に感じるその圧力は、最大のものだと思っていたゼウス神の稲妻以上のものような感覚さえ覚える。

 

あれはただの稲妻ではない。触れただけで万物を破壊するモノ。生命体がもつ原初の恐怖をその場で見させられたような迫力に、誰もが眼を見張る。

 

その稲妻に本能的に恐怖を感じ取ったのかはわからないが、あの厄災となったバーゲストが怯えているようにも見える。

 

「この稲妻、名前がトール。まさかだけど彼は雷じ――」

 

ダ・ヴィンチから発せられた言葉が最期まで続くことはなかった。

 

いつの間にか、ハルクバスターに体を掴まれ、空中に運ばれていたのだ。

 

「なになに!?どういう事!?」

 

見れば巨大なハルクバスターの手には立香と村正の姿もあった。

 

つまりは逃げろと。そういう事なのだろう。

 

「だとしたらアルトリアは――?」

 

「アイツなら上手い事交わしてったぞ!!」

 

「トオルさん!? そんな!! トオルさぁぁぁぁん!!」

 

最期まで付き合わせてすらくれないのか。その叫びも空しく、立香達は戦場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

トオルが一体何を考えているのか――そもそもなぜ今更あのような行動を起こすのか。V2N以外は理解をすることが出来ない。

 

だが、妖精眼をもつ二人には。詳細はわからないまでも、どのような覚悟を以てあの行動を開始したのかは理解した。

 

いや、してしまった。

 

モルガンは、トオルによって操られているハルクバスターによる回収作業も予測し、回避する。

 

()()()()()()()()()()()稲妻を放出する彼に駆け込んでいく。

 

せっかく出会えたのに、せっかく戻って来てくれたのに、結局行ってしまうのか。

たまらずトオルのそばに駆け出そうとするモルガンだが、あまりの熱量に近づく事は叶わない。

思いつく限りの魔術を放っても、全てが稲妻に阻まれてしまう。

 

 

嫌だ。絶対に嫌だ。もう、絶対にあなたを失いたくない――!!

 

 

意を決したモルガンは、自身が傷つくことも構わず、その稲妻に飛び込んでいく。

全力で治癒魔術を自身にかけながら、縋るように手を伸ばす。稲妻によって指先から焼き尽くされるが、そのそばから再生していく。

だが、どう見繕っても治癒魔術では間に合わない。トオルに辿り着く前に自身は消失していってしまうのはわかりきっている。

 

それでもあきらめる事はできなかった。

その痛みと恐怖すら、精神でねじ伏せて、突き進もうとした瞬間。

 

横合いから突き飛ばされ、その進行は阻まれた。

 

「この――放せ! アルトリア!」

 

モルガンを突き飛ばし、組み伏せたのはアルトリア。

敵対しているはずの少女に、命は救われ、そして目的は邪魔された。

 

余計な事をとアルトリアを睨めば、そのエメラルドグリーンの瞳からは涙があふれていた。

 

「貴様——」

 

「止めて! あなたが、あなたが傷ついたら! 一番困るのはトール君なの!! あの人の為を思うなら! あなたは大人しくしていて!!」

 

「お前は何を言っている!!?」

 

「お願いだから我慢して! これでトール君が無事だったとしても、あなたが傷ついていたら! あなたが死んじゃったら! トール君はまた傷つくの!! もうあの人が自分で自分を傷つけるのは見たくないの!! だからお願い!!」

 

その口から、その心から伝わる悲しみに、モルガンも充てられ、アルトリアと同様に涙を流す。

 

アルトリアは何を知っているのか、何故それを自分は知らないのか。あまりにもくやしくて、あまりにも悲しい。

 

自身の無力さに苛まれ。感情はぐちゃぐちゃになっていた。

 

耳に飛び込む爆音に、発信源を見れば、トオルは怯えたように咆哮を上げるバーゲストの口の中に、その稲妻ごと飛び込んでいく所だった。

 

 

「トオル――!!」

 

 

その叫びを受け取ったのは、その場にいるアルトリアだけ。

 

トオルがバーゲストの体内に入って尚、バーゲストには稲妻が纏わりついている。一拍置いた後、その稲妻がプラズマ化し、周囲一帯が眩い光に包まれた。

 

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