世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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雷帝

妖精國を救う。という名目であつまった予言の子一同。だが、立場上常に一緒にいるというわけではなく。

 

藤丸立香のように特別な立場でもなく、戦力になるわけでもないトールやホープは、稀に別行動をする場合があった。

 

透は本来であれば、戦闘能力に絞れば、魔術も効かず、呪いなども一切通じず、モース毒も効かず。身体能力や戦闘技術は高いのだが、ホープをモース化から救う折、自身の力を全て使い切った為、無意識化で彼を守っていた電磁バリアは消え去り、逆に魔術や呪いの類を素通りするようになってしまった。故に牙の氏族のような肉弾戦ならば兎も角、その他の攻撃にはめっぽう弱くなってしまった。

 

彼自身、特にアルトリアやホープを、身を呈して庇う行動をする事が多く、怪我も多い。

 

故に怪我から回復するまで。あるいはその場にいるだけで害になるような場所に訪れる際は別行動となっている。

 

アルトリアやホープの寂しそうな表情に毎回心抉られる思いをする一同だったが、事情が事情なので仕方がなかった。

 

だから、こうして1人の人間と、1羽の妖精は、時間を持て余していた。

だからというのもあるが、彼らは、1つ、共通の目的を持ってある作業をしていた。

 

「ほら、こうやって、ここを結ぶんだ」

 

「う、うん」

 

地べたに座る透は、足の間にホープを座らせ、羽を上手いこと避けながら、肩の上から腕を出し、優しくホープの手を取り、作業の手伝いをしていた。

 

妖精という存在は基本的に何かをする時に手作業を挟む必要はない。そのような事をしなくても、魔術の類で簡単に出来てしまう。

 

それ故にこういう手作業に慣れていない為に、手取り足取り面倒を見ていた。

 

その様はまるで仲の良い兄妹のよう。

 

彼らは、何も出来ない分、アルトリアへの日頃の感謝を込めて、それぞれ、プレゼントを手作りしていたのだ。

 

ホープが作っているのは、ホープと同じ、蝶の羽をあしらった髪飾りだ。

 

透は既に完成済み。銀のブレスレット。

 

「アルトリア、早く戻ってきて欲しいな」

 

ホープはうずうずしながらアルトリア達を待つ。

 

透もこの渾身の逸品を渡したいと、同じように楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

2人のプレゼントが完成した後、透は昏睡状態に陥ってしまい、そんな場合ではなくなってしまった。

透からはもちろんホープからも、この旅の間にプレゼントを渡す機会は訪れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――本当にみっともない。

 

最後にはうずくまり、泣き喚く透を見ながら、オベロンは心底不満げに、彼を見つめていた。

 

これ以上は見ていられない。あまりにも不快だ。

 

アルトリアにも動揺が見える。このまま彼に注目させたまま攻撃してしまえば、あっさりと打ち取れる状況だったが、何故かそんな気にはなれなかった。

 

何故アルトリアに介錯を提案したのか、こちらに対して無防備に動く彼女を攻撃しなかったのか。その理由は自分でもわからない。

 

兎にも角にも苛立ちが募る。

 

 

不快な肉を裂く音の後、何事か話合った彼らは、改めてこちらに対峙した。

 

「殺した途端にやる気を出すとはね、肉塊相手なら気にする必要もないって?  あーあ、もう少し君達には傷ついていて欲しかったんだけど、結局何の役にも立たなかったなぁ彼も」

 

「……」

 

「なんだよ無視かい?」

 

応えないまま、立香は、マシュは、アルトリアは静かに構える。

 

「まあ、彼個人を気にする事はないさ! ああいう手合いを踏み潰してここまで来たんだろう? だって、これは世界を賭けた戦争なんだから。それともそんな自覚もなかったかい?今までと違って、救済の旅だと本当に思ってた? だとすればますます彼も不憫だなぁ。自覚もない侵略者に故郷を滅茶苦茶にされたんだから」

 

「……黙りなさい」

 

「こんな見苦しい國を大事にするなんて、彼は元々どこか普通の人間とズレてたんだ。汎人類史に連れて行ったって、異常者として排斥されるのがオチさ! そら、君達による間違った世界を滅ぼす正義の物語は、泣き喚く愚か者を殺してこれでお終い!」

 

「黙れ――!」

 

「次の物語は、人理をかけた――っ」

 

ふと、オベロンの演説が、急に止まる。

これ迄の余裕な態度から一転。驚愕に目を見開いた彼の視線は正面にいるアルトリア達を飛び越え、その背後に向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトリア達もその視線を辿り、背後を見れば、胸を刺され、命を無くしたハズのトールが、何故か立ち上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、全く……」

 

 

身体は血に塗れ、胴体には大穴が空き、立ち上がりはしたものの、項垂れた体制に、生力は感じられない。

 

「君はもう終わってるんだ。ただでさえみっともないのに、さらに恥を晒すのはやめてくれよ」

 

一歩。片足が折れたまま、不恰好な形で前に進む。

 

「ゾンビ映画の真似事かい? いきなりそんな演出をされるとこっちが引いてしまうよ」

 

 

「――べ……」

 

 

「甘かったなアルトリア。ほら、君がもう一度介錯してやりなよ。ゾンビ退治は、頭を潰すのが基本だぜ」

 

 

「――ろべ」

 

何事か、ぶつぶつと喋る透に、オベロンは死を通り越して狂ったかと、問い返す。

 

 

「なんだって?」

 

 

 

 

 

 

 

「――滅べ」

 

 

 

 

 

 

 

雷鳴が、轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間。透の体に何百本も束ねられた雷が降り注ぐ。

 

奈落の虫という無限の空洞に、雷が落ちる異常。

 

その熱量は透を中心としたストームボーダーの表面を溶かし、余波だけで、最も近くにいたアルトリア達に圧力をかける。

 

咄嗟の判断で防御障壁をマシュが張り。

 

その防御を通してなお、眼を開ける事の出来ない程の光と熱量が襲い掛かる。

 

それを精一杯こらえ十数秒。

 

眩い程の光は、やがて収まり、ひとつの光景を映し出した。

 

稲妻の着雷地点を見れば、黒だった髪が金に染まり、稲妻を身に纏う、奈落の虫に空いた穴から見える、黄昏の空に照らされた。トールであったモノが、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレイントラストと呼ばれていた組織があった。

科学分野から魔術の様なオカルトの類に至るまで、ありとあらゆる世界中の本物の天才達が集った組織。

 

自分達の世界がいずれ滅びてしまうと、そう認識した彼らはその叡智を活用し。

仮想世界でも、電脳空間でもない。本物の、世界のバックアップを作る事に成功した。

 

並行世界すら内包する本物のセカイ。

そのセカイは大元の上位世界と同じ歴史を辿り、しかし上位世界内にいる反逆者達によって、狂って行った。

 

セカイの歴史が世界に追いつき、別の時間軸として外側から操る事ができなくなる前に、内側から歴史を修正する為、セカイの頂点に立つ創造者。

その候補としてブレイントラスト側から選ばれたのが、天野銀次。

同じ様に反逆者やブレイントラストの裏切り者から選出された者達の、セカイの頂点を決める戦いに勝利した、創世の王。

 

セカイはその王によって、成り立ちは決定された。

上位世界からも修正できぬレベルまで成長し。セカイの取り合いは一端の結末を迎え。その計画に関わった人間達の殆どがその組織から離れていった。

 

 

だが、諦めきれない者達もいた。その者達はそのセカイとは別に、また1からセカイを作り始めた。

 

しかしその計画に関わった人間達の大変はその計画から離れている。故に、その出来上がるセカイがまともに機能するはずは無かった。

 

同じように無限城を起点とした。新たなセカイ。しかし元のセカイ以上に歴史は狂い、不死身の怪物や殺戮者が跋扈する荒れたセカイ。

離れていった天才達ならば、誰もが失敗作だと、修正する価値も無いと嘆くそのセカイを修正する為、

諦めきれなかった者達に選ばれたのが、歪なセカイに生まれたトールである。

 

世界をリセットするための単純なリソースが足りていなかった故に選ばれたトールは、世界を滅ぼす既存リソースとして選ばれ、天野銀二が持っていた『雷帝』の力をインプットされた。

 

全てを破壊する雷を操る暴君をその身体に宿して。

 

その任務は容易かった。元のセカイとは別に、上位世界からの介入者がいない以上、上位存在から与えられた神の如き力に、対抗できる者はいない。

 

命令通りに不死身のはずの怪物を滅ぼし、同族同士で醜く争う事しかしないバグによって変貌した人間達を皆殺しにしていく。

 

新たな世界を作る地ならし。文字通り世界中の生命体を、トールは文字通り滅ぼした。

 

その力が今、終わりを迎えたブリテンに現れた。

 

すでに滅び去ったセカイに現れたセカイを滅ぼす終末装置。

その力が向かう先は、新たな世界に他ならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トールさん……!?」

 

藤丸立香がたまらず叫ぶ。

それに応えるように、彼は右手を彼に向け――

 

「――滅べ」

 

雷撃を放った。

 

「先輩!」

 

立香への攻撃に、マシュが間に立ち、その盾でもって防御する。

 

マシュ自身も、藤丸立香も無事だ。

 

だが、長い旅路の中、ありとあらゆる攻撃を防ぎ、その全てを無傷のまま過ごしていた盾の表面が、雷の熱で融解していた。

 

「そんな……!」

 

これ迄の全ての旅において、ゲーティアの切り札ですら傷つくことが無かったその盾が、溶けるという異常事態。

 

一体彼はどう言った存在なのか。今までの英霊や、ビースト、神霊の類とはまた違う異常な圧力に、戸惑いは隠せない。

 

彼の正体に、行きあたる材料も一切無い。

 

今一度、透——『雷帝』は右手を上げ、マシュ達にその手のひらを向けた。

 

「消えろ」

 

 

「いけない!」

 

 

アルトリアは瞬時に対応し、背後に浮遊する剣を操る。目標は相馬透と思わしきナニカ。

 

 

守護者としての本能が警告する。あれは、もはやこの星の生命どころではない。人理どころか、星を超え宇宙すら滅ぼす。規格外のナニカ。

 

「……っ」

 

彼の姿を見る。自分の中にいるアルトリアの記憶が頭を巡る。

 

 

 

 

 

 

 

『何で、お前がやる必要ないじゃ無いか!!』

 

涙を見せながら嘆く彼のおかげか、不思議と自分は落ち着いていた。

 

彼は、快活な割には結構涙脆くて、皆が気を張って涙を堪える中、素直に涙が流れてしまう。変なところで気の弱い人だった。

 

『なあ、もうやめよう。戦うのをやめたって。静かに暮らすって。モルガンに宣言しよう。気づいてるだろ!?モルガンを殺したら、国中でまた殺し合いが始まるぞ!? ロンディニウムの理想なんて夢物語でしかない。今なら間に合う。予言の子が女王に組したと伝われば、争いは終わる! 女王だって悪いようにはしないはずだ。わかるだろ!? あの女王のこの國への慈悲が!』

 

『ダメだよ。そんな事をしたら他の妖精が私達を許さない』

 

『そんなの! 無視しとけば良い!』

 

そんな所が可愛いなんて思ったりもしていた。

 

『でもカルデアの皆は? このままだとモルガンに皆殺されちゃう』

 

『別に、お前が諦めて、アイツらが諦めなかったとして、それで殺されちまうならそれはアイツらの選択だ。俺は気にしない!』

 

『嘘でしょそれ』

 

妖精眼で感じるまでも無い。

 

『あはは、トール君、わかりやすすぎ、すぐ表情に出るんだから』

 

今のトール君が、彼らを見捨てる事が出来るわけがない。

 

『だったら……モルガンにアイツらの世界を侵略しないように説得する!カルデアの連中にも、帰ってくれとでも説得するさ!』

 

これは本当。

でもそれは無理なのだと、私は知ってる。モルガンが許してくれたところで、彼らの本当の願いはこの間違った世界が滅びる事。

彼らの言う崩落を阻止したところで、モルガンが侵攻をしなかったところで、この妖精國が維持されてしまえば彼らにとって困った事になる。

 

『なあ、頼むよ……諦めるって、言ってくれ……!』

 

どう足掻こうとも相容れない。

 

だったら、きっと、ホープにとっても、彼にとっても、汎人類史に住んでもらう方がきっと良いのだ。

 

だって、この妖精國は間違った歴史なんだから。こんな、無理やり生き延びている世界より、正しい世界の汎人類史の方がきっと良いに決まってる。

 

だから自分は彼らの為に頑張るのだ。

 

だってもう自分は幸せだから。ホープがいて、自分の為に涙を流してくれる彼がいて。こんなにも大切にしてくれて。

 

彼らが幸せに暮らしていけるなら、こんな事なんてヘッチャラだ。

 

わかるのだ。きっと、ホープも、トール君も、逆の立場だったら同じ選択をしてくれるって。

 

今回たまたま、自分がそういう立場なだけ。だから、自分の中にいる2人を、裏切る事なんて出来ないのだ。

 

土壇場になって、ひょっとしたらまた、自分を犠牲にする事が怖くなっちゃうかもしれないけど、それでも今は頑張ってみよう。

 

あんな王様みたいに不特定多数の誰かの為にというのは訳がわからないけど、自分を思ってくれる人の為だったら頑張れる。

 

それが正しい選択だって信じてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――どこで間違えちゃったのかなぁ

 

それは、もういないはずの”彼女”の慟哭か。

 

 

 

「……っ!」

 

 

一瞬の躊躇を見せたものの、アルトリアは、構わずその剣を放つ。

 

 

「撃て、マルミアドワーズ!」

 

 

掛け声と共に疾走する剣達は、しかし、透の手前で勢いを無くし、そのまま、なんの抵抗も見せず消滅した。

 

 

「っ!」

 

 

驚愕に染まるのも束の間、次なる手を放とうとした、アルトリアの目の前に、雷帝が立っていた。

まさしくその速さは雷そのもの。

あるいは、光にすら届いているのかもしれない。

 

それ程の超スピード。英霊である彼女ですら知覚できない程に早く、彼女の前に移動していたのだ。

 

 

「消えろ」

 

 

その一言ともに雷撃の乗った拳をアルトリアに放つ。アルトリアは拳の着弾地点に全ての剣を置き、防御する。

 

「ぐぁっ――」

 

 

しかし、その剣の全てが砕かれ、防ぎきれなかった衝撃に、まともに吹き飛ばされた。

 

 

あわやストームボーダーから投げ出されそうになるがどうにかして最後に残った手元の巨大な剣。透を突き刺した『マルミアドワーズ』をストームボーダーに突き刺すことで堪えて見せた。

そのまま着地し、透を見れば、既に彼は藤丸立香とマシュの目前。

 

 

 

この距離では何もしようがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)!』

 

 

 

マシュが宝具の真名を解放する。

現れる白亜の城。キャメロット。

一切の敵意を寄せ付けない無敵の城塞。

 

雷帝とマシュ達を分断する、絶対の壁。

 

 

 

その筈だった。

 

 

 

雷帝は、マシュの構える盾にゆっくりと手を触れる。

再び、四方から雷帝に稲妻が落雷。

 

それはまさしく充電だ。別次元から雷を呼び、その力を蓄える。

 

無限の空洞というルールを、概念を、容易く食い破り、その雷は奈落の虫に穴を開ける。

 

所詮概念という曖昧なルール。世界のルール―をハッキングする術を持つトールに概念などという曖昧なルールは意味は成さない。

 

充電は完了とばかりに、透の体表面の稲妻が更に激しさを増す。

 

 

「あああああああああああっ!!」

 

 

その余波だけでも衝撃は堪らず、マシュはそれに抵抗するだけで身動きが取れない。ひたすらに心を強く持ち、魔力を注ぎ、盾を構え続けるしか出来ない。

 

 

だがその抵抗も、虚しいモノだった。

 

 

 

雷帝の掌が赤く光る。その熱は盾を瞬く間に溶かしていき、手が盾の中にめり込んでいく。

 

同時に、マシュの背後に聳え立つキャメロットに、稲妻ががまとわりついた。

 

徐々に、城塞が原子以下のレベルで破壊されていき、粉状になって分解されていく。悪しき物を通さないその城塞も、概念(ルール)ごとくらい尽くす稲妻の前にはただの建築物でしかない。

 

 

その現象に言葉も出ない。

 

 

彼が何者なのか、これがどの様な力なのか、分析をしてくれそうな頼もしい仲間もいない。

 

城塞は消滅。

それと同時に、雷帝はもう片方の手を盾に添える。同じように熱で溶かしながら盾を侵食し。そのまままるで紙でも破るかの様に、盾を引きちぎった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盾が引きちぎられ、稲妻の圧力によって、マシュは吹き飛ばされ、後ろにいた藤丸立香を巻き込んでいく。ゴロゴロと数メートルほど転がり、苦しげに起き上がるしかない。

 

今の彼らは無防備だ。対抗する為に放った立香のガンドも、雷帝には何の効果も示さない。

 

もはや、立香達を守る為の手段は無くなった。

 

 

ひたすらに立香は考える、なぜこんな事になってしまったのか。

 

世界を賭けた敵として、真正面から堂々と妖精國に宣戦布告でもすれば良かったのだろうか。

 

元々滅ぶのだから、圧政から解放してやるからその時まで楽しく生きてくれとでも言って妖精達を、彼を、説得するべきだったのだろうか。

 

さまざまな代案がぐるぐると頭を巡るが、どれも不可能な事だ。この世界の住民を騙す様な手段でしか、この異聞帯を攻略することは不可能だった。

 

モルガンとの直接対決では全く歯が立たなかった。

モルガンがこの世界を維持する存在だという事を知らせなかったからこそ他の妖精がモルガンを殺し、カルデアは勝利を手に入れる事ができたのだ。

 

このような手段を選ばぬ方法でしか、勝利は無しえなかったのだ。

 

かと言って世界を取り合う大事なのだからどんな手を使ってでも勝利を目指すのは当然だと、驕り高ぶる事が出来る人間でも無い。

 

あの時の勝利の乾杯が、どれだけ愚かな行為だったのか。実感する。

 

この世界の住民を騙し、世界を滅ぼした報いだとばかりに襲い来る現実に、もはや、抗う事は不可能だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと、透は地べたに座り込む2人の前に立つ。

 

「オレを――」

 

透はこの姿になって初めて、意思があるかのような言葉を吐き出した。

 

「オレを苦しめるモノは、全て灰になれ……」

 

だが、それは決して説得が出来そうだとか。そういう希望を抱ける様な言葉では無かった。

 

 

「俺は『雷帝』」

 

 

プラズマが立香達を包む。

 

 

「無限城の支配者――」

 

 

高周波により立香達の身体が内部から熱を持ち始める。

 

「うあァァァァァァァァつ」

 

血液の温度が上がり、沸騰しかけるという現象に、立香達の喉から、声にならないが声が出た。

 

 

「セカイを破壊するモノ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうにかしようと駆け出すが、サーヴァントの性能を持ってしても間に合わない。

 

剣を飛ばす暇もない。

 

――やめて

 

宝具の展開は確実に無理だ。

 

――お願い

 

そもそも何をしたところで、あの雷には意味がない。

 

「トール君! ダメェ――――――っ!!」

 

そう、叫ぶしかなかった。

 

叫んだのは、守護者としての自分なのか、彼女がそうさせたのかはわからなかった。

 

魔術というわけでもない、何か特殊な効果を持たせた叫びでもない。

 

だが、その叫びは、雷帝、相馬透の動きを止める事を可能とする、絶大な力だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




雷帝:文字通りの創世の神。出来ない事は存在しない。

怒りと悲しみのまま死亡した事により目覚め、破壊のみを目的とした終末装置と化した。

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