世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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妖精騎士ランスロット

美辞麗句を述べる言葉は様々あるが、まさしくハンサムという言葉が似合うような金髪碧眼の癖のない顔立ち。見るからにたくましい筋肉質な身体。

 

 

『これは餞別だ。トニー程派手なものでなくて申し訳ないが』

 

名前はスティーブ・ロジャース

 

『キャプテン・アメリカ』と呼ばれた男。

 

彼はそう言って、ケースに入った巨大な円形の物を手渡した。

ケースから取り出さなくてもわかる。

これは、とても受け取れるような代物ではない。

 

 

『受け取れないなんて言わないでくれ。なに、気を張ることはないさ。キミに、この盾を背負ってほしいという意味で渡すわけじゃない』

 

 

断ろうとする俺を、予想していたようだ。

その言葉に淀みはない。

 

 

『遠い地へ旅立つキミを、守り抜いて欲しいという思いをこの盾に込めて渡すんだ』

 

 

改めて受け取り、中から円形の盾を取り出す。

 

 

『君がこの盾を使う時。この国が――いや、』

 

 

真ん中に、巨大な星のマーク。赤と青で彩られたデザイン。

 

 

『この世界が、君を守るんだと。僕達が、君を守っていると、そう思ってくれれば良い』

 

 

地球に巣食う悪から、宇宙から来る巨大な敵からも、守り続けた。大国の、この星の象徴。

 

 

『僕は70年。氷漬けで、彼女を待たせてしまった。君は2000年か。だがまだ間に合うんだろう? だから、僕のように後悔して欲しくない。これは、そう言う意味での同士としての餞別でもある。』

 

その唯一無二の存在を、くれると言うのだ。

 

『だから、遠慮なく受け取って欲しい』

 

 

涙が溢れそうだった。

同時に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

自分は決して、これから先、皆に誇れるような行動をするか保証できない事が申し訳なかった。

 

そんな俺に、彼は意地の悪そうな笑みを浮かべた。

あまり見ない表情だ。

 

 

『――それに、この盾は、予備のつもりでトニーが作っていたものだ。僕が使っていたのは、ちゃんと別にある』

 

 

涙が引っ込んだ。

 

 

『……少し、意地が悪かったか?』

 

 

いたずらっ子のような笑みを浮かべる彼。

 

少しからかわれたらしい。

 

してやられた。

 

だが、大変貴重な物には変わりない。例え二つ目であったとしてもその盾に込められたレガシーに変わりはない。

 

大変なプレゼントには変わりない。

とはいえからかわれた事は事実。

何だか気恥ずかしくなったので。

「トニーのからかい癖が移ったみたい」

と言ってみた。

 

 

『おいおい、それは言い過ぎだろう!!』

 

 

心外だとばかりに声を荒げる彼に、してやったりと笑顔を返した。

 

トニーとスティーブ。互いに言い合う事の多い2人だが、互いに影響を受けている2人の関係が好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精騎士ランスロットは境界の森から自分を呼ぶ声を聞いた。

 

それは、無視するには大きすぎる声で、ランスロットに訴えかける。

 

自分が発生した大元であるアレの影響か、もしくは、過去に犯した出来事が原因か。

 

境界の森から声が聞こえたのは、初めての事だ。

 

それに導かれて来てみれば、ひとつの異常。

境界の森を、まるで追い出されたかのような配置でモースが群がっている。

 

湖水地方のモースは故あって非常に強力な存在である。それが、今まで森に隠れていたものが一気に飛び出して来たような量で、森の外に群がっていた。

かと言って森に入る事もなく、広がっていく事もなく。入りたくても入れないとでも言うかのようだった。

 

並の妖精ならば兎も角、ランスロットには差したる問題でもない。

モースを殲滅しながらも、上空から森を観察する。

 

そして見つけたのがテントなどの、人間の生活道具。

 

一度着地し、火の様子などを観察すれば、離れてから時間はそこまで経ってない様子が窺える。

 

人間の気配だ。

チェンジリングか。

目的をもってらって来た汎人類史からの何かか。

モースの異常は、ここにいた人間のものであるだろう事は想像に難くない。

 

ここに今いないとなると、心当たりは――

 

考えて焦る。あそこは、アレは、言うなれば故郷のようなもの。

人間程度に何が出来るのか、という点はあるものの、万が一はある。

何せ、モース達のあの異常を引き起こした原因でもある存在だ。

 

一刻も早くと、上空から急いで向かってみればやはりいた。

 

執拗に自身であったアルビオンの死骸を観察しながら、何事か作業をしている男。魔力の類は感じられない。大した事のない人間だろうが油断はしない。

 

一先ずは警告。従わないようなら実力行使。話を聞くのは倒した後で良い。死んでしまったならばそれはそれでしょうがない。

 

作業行程を頭の中で組み立てながら、件の男の目の前に着陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉薄する少女の突撃を体ごと避ける。

 

つい、先日のあの街の妖精の蛮行や、泥を被らされた事による苛つきで、一言物申してしまったが、こんな全力での戦闘をしたい程、この場所に固執しているわけでもない。

 

どうにかして、対話したいところでもあったが、軍人然とした彼女を見ながら即座に分析する。

 

こちらの目的を聞く事もなく、警告だけして、向かって来た辺り、アレは、目的を遂行する為ならば相手の事情など気にしない。軍人の中でも機械的なタイプ。

 

そもそも、土地への不法侵入者をわざわざ生かしておく理由もないし。警告に一度でも反抗すれば当然の反応ではある。

 

 

気まぐれな妖精の中にも仕事熱心な奴はいるもんだなと。妖精國への発展に、感心しつつ。

 

自分の短絡的な行動に、一手目を間違えたとひとりごちながら、攻撃をいなす。

 

 

――強え!

 

 

全力で攻撃を避けながら、思う。

 

この少女、体の割に、いや、この体だからか、スピードも速い。

未だまともに受けてはいないが、力も十分だろう。

 

戦術にやや単調さは見られるが、攻撃の正確性と、鋭さは驚異的だ。

 

両腕に装備されている剣の抜けた鞘の意味がわからないが。一体化されているナックルパーツによる拳は痛そうだ。

 

考えながら、少女から繰り出される拳を、避けきれないと判断し、円形のシールドで防ぐ。

小気味良い金属の音が響いた。

 

並の盾であれば、それごと破壊する攻撃だが宇宙でも最強とすら謳われるヴィブラニウムという金属には、一切問題のない攻撃だ。

 

その盾は、一切の傷もなく少女の攻撃を完全に吸収し、むしろ、少女を弾き返した。

 

そのまま後方に弾き出され、体勢を崩しながら驚愕した表情になる少女に向かって自身も後ろに下がりながら盾を投げる。

 

盾は更に少女を後方に弾き、そのまま跳ね返り、自分の元へ戻ってくる。

 

一旦の間合いを開け、息を整える。

 

「やるな。ところで、その腕の鞘、剣は忘れてきたのか?」

 

何かのきっかけになればと話しかける。

少女はこちらの様子を一瞥した後、会話には全く乗らず、同じ様に向かってきた。

 

 

「戦闘中のジョーク、スパイダー坊やにならっとけばよかった」

 

 

滑ったなと1人ごちながら構える。再びの攻防、回避を基本にこちらは動く。

 

 

幾度かの攻防を経て、彼女はやがて先程と同じように、向かってきた拳を盾で防ぐ。

 

しかし、衝撃がすぐにはやって来なかった。

あろうことか、彼女は

繰り出した拳を、盾に当たる手前で止めたのだ。

 

 

何をと思えば、突然腕に付いた剣の鞘が光り始めた。

 

マズイと思った時にはもう遅い。その鞘の鯉口から眩い光が放たれる。

アレは剣を入れる穴ではなく、銃口だったのだ。

 

襲い来る衝撃。着弾地点で爆発でも起こったかのようだった。

 

ダメージは盾が防いだものの、その衝撃は、こちらの体ごと持ち上げ、吹き飛ばす。

 

彼女も同様に吹き飛ばされたが、空中で体勢を立て直したようだった。

 

それを見ながら、自身も、スイッチを入れ、足に取り付けた、ジェット装置を作動する。

 

とある星(ザンダー星)で買った、軍の正規品。量産品なので特別性能が高いわけではないが、安定性は抜群だ。

 

お互いに空中で持ち直す。

 

こちらの空中制御に驚いたようだが、その気配も一瞬だ。

やはり彼女は軍人として優秀らしい。冷静に対処する事を心に決めている。

あまりにも妖精らしくない妖精だ。

 

一旦の呼吸の後。

 

そのまま空中でのぶつかり合いが始まった。

 

向こうに遠距離武器は無いようだ。あの銃口から出るナニカも、鞘から出ると言う事は、つまりは近接用と言う事だろう。遠距離武器があるなら最初から何度も使ってるはずだ。

牽制にと、盾を投げつければ、そのまま弾かれ、明後日の方向へ飛んでいく。跳ね返りはあくまで、計算によるものだ。想定外の衝撃が加われば、当然そうなる。

 

――キャップのようにはいかないな

 

迂闊だったと焦りながら、彼女の拳を全力で避け、その腕を掴み、その場でこちらに当てようとする左腕も掴む。

銃口をこちらに向かわせるわけにはいかない。盾が無い今、そもそもとして攻撃をさせるわけにもいかない。歯を食いしばりながら力づくでこちらに銃口を向けようとするのをどうにかして抵抗する。

 

 

目元はバイザーでわからないが、露出している口元からは、力を入れて歯を食いしばっているのがわかる。

 

それにしても、力が強い。この体のどこにそんな力があるのか。

 

お互いに密着しながら、力比べ。頭突きなどをして牽制すると言う手もあったが、何故かお互いにそれはしなかった。

 

暫くの硬直状態。やがて、透の方で、ジェット装置による空中での姿勢制御が、崩れてしまう。

 

「うおっ」

 

「くっ――」

 

腕を掴んだまま体が崩れ、それに、少女も巻き込んでいく。

 

お互いの空中制御をしようとする力場が干渉し、更なる混乱を招いていく。クルクルと360度、全方位に回転していく。ぐんずほぐれつ絡み合う。

 

ひとしきり回転した後、やがてお互いが弾き飛ばされた。

 

そのまま自分は、地面に投げ出され、転がりながら倒れ込む。2〜3回転の後、全身の痛みに耐えながら、体勢を立て直し、膝をつきながら起き上がれば、彼女は、空中での姿勢制御に成功していた。

 

 

 

空中での勝負は、彼女の勝利。と言っていい結果となった。

 

 

 

だが、そうは問屋が卸さない

 

ジェットの制御装置を操作する。

フルスロットルでの噴射を指示。

 

すると、()()()()()()噴射剤が飛び出した。

 

自身の足につけていたジェット装置を、取っ組み合いの際に彼女にさりげなく取り付けていたのだ。

 

彼女の位置は沼の上。

突然の噴射は上を向いており、地面に落下するように仕向けられている。突然の噴射に耐えきれず。

彼女は、派手な音を立てながら、沼へと突っ込んだ。

 

 

――一先ずは時間稼ぎだ。

 

 

彼女ならばすぐに、沼から上がってくるだろうが、ひとまずは、息を整える時間を得たと。荒い呼吸を整え、盾を拾いにいく。

 

彼女は、とんでもなく強い。

単純にこのまま戦った場合、勝利は難しいだろう。今まで健闘していたのが信じられないほどだ。

どうにかして、説得などはできないか、考えながら、彼女を待つが、一向に上がってくる様子は無い。

 

 

「あ?」

 

 

疑問が声に出る。このまま待ってても仕方ないと、ジェット装置を操作すれば、沼から上がったのは彼女から外れた装置のみ。

 

「おいおいおいおい」

 

 

確かに、割と沼の中心あたりにはいたが、そこまで深くはないはずだ。

まさか泳ぐのが苦手なのか、一向に上がってくる気配がない。

 

マズイ、と思った時には、沼に向かっていた。

確かに戦いはしたが、悪いのはこちらだ。流石に沼に沈んで彼女がお陀仏というのは勝手ながらも気分が悪かった。

 

ナノマシンで構成されるヘルメットを作動する。頭部のみだが宇宙服代わりの代物だ。水中でも役には立つだろう。

 

作動しながらそのまま沼に跳び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらと渡り合えるほどの身体能力や判断力。

アロンダイドすら防ぐ盾。飛行を可能とする装備。

 

人間としてあり得ないほどの強さもそうだが、その装備も含め、不可解な部分が多すぎる。

 

とは言え一連の攻防で確信を持ったが、負ける気はしなかった。

 

このまま殺してしまうか、負けを認めさせて拘束するか、まあ、どちらでも構わない。

 

そう思いながら戦闘を続け、お互いに空中で揉み合い、相手は地面に投げ出され、こちらは体勢を維持したまま。

 

勝敗は決したようなものだ。

 

そう思った瞬間、腰からの衝撃に、面食らう。

いつの間にか、彼の飛行装置が腰に取り付けられていたのだ。

その事実に気づいた時には、沼に落とされていた。

 

 

 

 

――ああ、そんな

 

あの時の事を思い出す。

 

生命とはとても呼べない、ただの肉塊だったあの頃。

 

それを掬い上げてくれたひと。

 

初めて見た美しいもの。

 

ああなりたいと憧れて。

 

そして今は――

 

今の状況が自身にとって満足のいく物であればこの程度の記憶の想起など何ら問題はなかっただろう。

 

だが、今は、今の自分にとっての、彼女は――

 

この沼は美しいひとを見た場所であり、この地は自らが罪を犯し、そして現実を知ってしまったあの出来事のきっかけでもある場所。

 

自身の過去(トラウマ)を想起するには絶好の状況と言えた。

 

思考に埋没していく。ここは元々自分であった場所だ。

肉体的には何ら問題ない、しかし、精神的な理由故に体が動かなかった。

 

彼女への愛は揺らがずとも、今の状況が苦しいのは確か。

このまま意識を手放した方が楽なのではないかと、いっその事思う。

 

原初の輝かしい記憶が現実というものに汚されている事実に嘆きながら、沼の底から上を見る。

 

浅いはずの沼底は、あまりにも汚らしい物に汚染されてしまっているおかげで、空の光さえ届かない。

 

まるで自分の未来のよう……

 

 

 

 

 

そこに、赤い、二つの小さな光が見えた――

 

 

 

 

 

その光はだんだんとこちらに近づいて来て、自身の体を持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈んでいる彼女の体を持ち上げ、足に取り付けた飛行装置を作動して、陸に飛ぶ。

使うまでもない深さだが、この方が早かった。

 

腕の中にいる彼女は無事らしく、バイザーで目元は見えないがひとまずは呼吸もしているようだ。

 

大人しく動かない彼女を抱いたまま地面に着地する。

座るか立たせようとしたいが、全く力を入れる様子がないので、仕方ないので、腕に抱いたまま、腰を落とす。

 

彼女の首に腕を通したまま、片膝だけ立たせ、その腕を膝の上に乗せる。

 

 

「おい、大丈夫か? 生きてるか?」

 

ナノマシンヘルメットを耳につけた装置に収納し、声をかける。

 

生きてはいるようだが、こちらを見たまま放心しているのか全く反応がないので、思わず聞いてしまった。

 

 

「何故――」

 

「ん?」

 

「何故、助けた? 僕と君は敵同士なのに」

 

喋り始めたと思えば上がってくるのは疑問の声。

理由を改めて聞かれても、正直なところ、そこまで深く考えていなかたのだが。

 

「いやまあ、元々許可も取らずにここにいたのは俺だし、沼に落としちまったのも俺だし、このままお嬢さんが溺れちまったら、気分が悪いから。何だが……」

 

「そんな理由で、あの沼に飛び込んだっていうのかい? 敵である僕を助けるために……?」

 

言われると、何だか間抜けな印象を受けるが、やってしまったものはしょうがない。

 

「そんな事言われたって、思わずやっちまったんだからしょうがないだろ……」

 

ちょっと拗ねた感じになってしまった。

 

返答の後、彼女のバイザーが首元に降り、胸元に移動した。

 

(そういう仕組みだったのか)

 

どこか、抜けた感想を抱きながら、あらわになった彼女の顔を見る。

 

雰囲気通り、整った顔立ちで、人間とは思えない程に美しかった。

 

彼女は力を入れ、自ら立ち上がる。

 

こちらから見て正面に立ち、手を差し出しながら。

 

「僕はランスロット。妖精騎士ランスロット」

 

自身の名を告げる。

 

和解の握手。という事で良いのだろうか。

 

様になる自己紹介。少女の姿という意外性やこの鎧姿も相まって色々圧倒されるが、自己紹介を受けた以上。こちらも

答えねばなるまい。

 

「あーっと、俺は、透だ。相馬透」

 

彼女のように様になる自己紹介はできないが、最低限の礼儀を意識しつつ、その手を握り返す。

 

 

これが、妖精騎士ランスロットとの初めての出会い。

 

彼女が自身の存在を確立する物語の始まりだった。

 




改めまして、ここまでお読みいただきありがとうございます。

ところでなのですが、

主人公の設定資料。のようなものが欲しいというご意見などはありますでしょうか?
そこまで深い設定があるかと言われると、お恥ずかしい話ではありますが、
そちらの方があれば、読みやすいかなぁとも考えております。
もしよろしければアンケートに答えていただけると幸いでございます。

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