世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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主人公プロフはメリュジーヌ編が終わってから投稿する予定です。


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ロンディニウム

ミラーが消滅、いや、成仏とでも言えばいいのか。いなくなってから1日。

 

昨日1日は本当に何もする気が起きなかった。

 

異聞帯と言う。間違った歴史を辿ったと言うこの世界の()()もそうだが、その滅びを住人である妖精も望んでいるらしいというミラーの言葉。

 

頭の中を色々な考えがぐるぐると巡る。

 

だが、自分の考えは変わらない。いくら間違っていようと、自らの滅びを肯定するなどふざけた話だ。

 

 

 

 

 

 

 

ホロマップ投影機を照らす。

 

過去の映像を映し出す。宇宙盗賊ラベジャーズでは定番のガジェットだ。

 

終わりの鐘という単語を巡礼の鐘と結び付け、何か情報がないかと、この場に来たらしい、カルデアとミラーのやり取りを再生する。

 

そこに気になる会話があった。

 

『エインセルと一緒に焼けちゃったー。代わりのを探してねー』

 

どうやら巡礼の鐘の一つ、鏡の氏族が所有する鐘は、現状どこにあるかが分からないらしい。

 

ならば、今自分がやるべき事は、その鐘を探し出し、隠すか、破壊する事だ。

 

これまで、予言などという眉唾物なモノを信頼していなかったが、世界を滅ぼすカルデアが、これを全力で成し遂げようとしている辺り、放置するわけにもかない。

予言を、終わりの鐘とやらを鳴らさせるわけにはいかない。

 

本来であれば異聞帯。間違った歴史は消えるべきという、ルールを敷いた神の如き存在。()()()()()()()()()なのだが、現状情報は何もない。言うなれば物語を作った作者を殺しに行くようなものだ。今の自分にそんな上位存在に干渉出来るような力はない。そもそも存在すら認知できていないのだから。

 

そういう意味ではその尖兵のようなものであるカルデア陣営を殺すべきではあるが……

 

再びの頭痛。再びの嫌悪感。どうやらカルデアを傷つける選択は自分は選べないらしい。

 

そもそも、カルデアも、いわば巻き込まれた側だ。いざと言う時は自爆覚悟でやらざるを得ないだろうが、その選択はまだ早い。

今はまだ、巡礼の邪魔をすれば良い。

 

妖精國中に敷いた目と耳から入る情報を処理していく。

鐘だ。鏡の氏族の鐘。本来ならばここにあった筈のもの。

スピード勝負だ。カルデアよりも鐘を早く見つけなければならない。

 

そこに、一つひっかかる情報があった。

 

巡礼の鐘は妖精の氏族長が死亡した時に生み出されるというモノ。

 

カルデアとミラーの会話の中に、鏡の氏族が全滅したことに対する疑問を浮かべる場面があった。それに賭けるしかない。

 

その間に、ホロマップ投影機の操作を間違えてしまった。

 

投影機に映し出される過去の映像。誤操作でだいぶ遡っていたようだが、そこに気になる存在を見つけてしまった。

 

 

妖精騎士ランスロット。

 

彼女が、ここに住まう妖精達を虐殺している映像だった。

 

自分と戦った時と同じように、拳を振るい、鞘の鯉口から放たれる剣を振るう。

 

一方的だ。

 

だが、これは終わった事だ。殺されたミラーも気にしないと、恨んではいないと言っていた。今の自分がとやかく言う事でもない。

 

だが、一つ引っかかる事はある。

 

バイザーの下から見える彼女の表情。

 

割と長い間、一緒にいたのだ。どう言う思いなのかはある程度わかる。

 

その苦しげな表情だ。

 

自分はてっきり、王命による戦争行為の1つだと思っていたのだ。

 

女王は意味のない虐殺はしない。妖精は救わないと嘯きながら、圧政を敷きながら気まぐれに妖精を滅ぼす事はしない。それは、彼女の慈悲であり、ブリテンへの愛故だとランスロットは言っていた。 

 

後に後悔しようとも作戦中は心を殺して実行に移す。それが彼女だ。

 

女王のイデオロギーに同意している上に、完璧な兵士である彼女が、この作戦行為に、このような感情を見せるはずはない。

 

 

であれば、彼女がこんな虐殺をする理由は――

 

 

「鏡の氏族の誰かが、オーロラに生意気な口でも聞いたってか?」

 

 

だが、ランスロットは、オーロラに心酔していた筈だ。彼女の命とあらば、同様に心を殺すことは出来るはず。

 

あるいは、ランスロットはオーロラを美しい存在だと褒め称えていた。

そんなオーロラがこのような私情で虐殺を命じるだけでも、色々とショックではあるかもしれない。

 

逆にいえば、ランスロットは完全に盲目に成る程、オーロラを愛せてはいないのか。

 

ままならないものだと、思いながら。ホロマップ投影機のスイッチを切った。

 

 

いつもちょろちょろとうろついていたミラーはもういない。

 

孤独感が自分を襲う。耐えられないわけではない。元よりこの妖精國で誰かと生きていけるとも思っていない。

 

だが、今はランスロットに会いたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鐘の調査を始めてからしばらく。

 

その間にランスロットがこちらに来ることはない。

 

いよいよ持ってカルデア、予言の子の巡礼の鐘も佳境にかかってきたらしい。

 

女王側も同様という事だろうか。忙しいのだろう。

 

こちらとしては、残すのみはミラーの言っていた。鏡の氏族の鐘のみだ。

 

改めて情報の精査をしたその時、怪しい動きを捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一回ロンディニウムに立ち寄っときゃ良かった!」

 

 

空を飛びながら、独りごつ。

 

 

今の自分では立ち寄った事のない場所に、スリングリングによる転移は使えない。

 

情報の精査が甘かった。もっと真剣にやるべきだった。

 

怪しい動きがあったのだ。

 

軍隊が、少人数ではあるもののなぜかロンディニウムへの侵攻を開始している。

 

それと同時に、ミラーの波長から読み取った。鏡の氏族の波長を分析できたのは同時だった。

 

 

カルデアの人間達と協力関係にある反乱軍の住まうロンディニウム。

それを襲う兵士達。女王軍かとも思ったが。

このタイミングでロンディニウムを落としたところで戦略的にも旨味は無いし。意味がない。

 

そもそもその軍隊は人間しかいない。女王軍であれば妖精達を主体として編成になるはず。

 

きな臭い話だ。

 

現状でロンディニウムを襲う理由があるとすれば、単純な反乱軍の鎮圧以外を考えれば、戦局を動かしそうなのは、鏡の氏族の鐘。つまり鏡の氏族の死だ。

 

巡礼には鐘が必須と考えるのであれば――

 

果たして首謀者は何者か。この戦いにおいて、最も得するのはカルデアではある。

この鏡の氏族であろう妖精は、カルデアの陣営と共に旅をしていたタイミングもあったのだとか。

そういう意味では預言の子も情が沸いて殺す事が出来ない。と言う事もあるだろう。

そこに目をつけた何者かが、自然に鏡の氏族が死ぬ様に仕掛けた。という解釈も出来なくはない。

 

カルデア全員の総意ではなくても、一部のキレモノがということもあるだろう。

 

 

どいつもこいつも、この世界の住人は、カルデアの正体を知る事なく、自ら滅びへの道を促す様に動いている。

 

あまりにもカルデアに都合よく。それもカルデアの手を汚さずに、コトは動いている。

 

この、カルデアの人間を殺したく無いという拒否反応。ミラーの言う滅びたがっていると言う事に関係があるのだろうか。

 

どちらにせよ、阻止するのみだ。

 

ロンディニウムに辿り着く。

 

向かっていた兵士はまだついていないはずだが、既に、戦闘は始まっていた。

同じ装備の兵士同士が戦っている。

 

「内乱か、それとも潜伏か」

 

何にせよ、今の目的は、鏡の氏族の妖精だ。

そいつを見つけなければ――

 

一刻も早く鏡の氏族の妖精を見つけ出そうと、辺りを見舞わすと、

 

眼下に、今にも兵士に切られようとしている老婆の姿が見えた。明らかな非戦闘員。

 

無視するべきだ。第一彼らは反乱軍。女王派である自分からすれば、敵のような物である。非戦闘員とは言え、国に逆らう反乱軍に所属している。覚悟を持ってのものだろう。

 

今はそれよりもやるべき事があるのだ。

 

そう、やるべき事が――

 

「あぁ――クソ!!」

 

ジェット装置を操作する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おばあ――」

 

「だめだ! サマリア!静かにしないと」

 

「でもおばあちゃんが!」

 

かまどの中に隠れながらその様子を見る。

体がとてつもなく熱いが、今はそれよりも目の前で行われようとする光景に比べれば、瑣末な事だった。

 

突然、ロンディニウムの一部の兵士が暴れ始めたのだ。

 

突然の出来事に、為すすべもなく、斬られる兵士や大人達。

 

かまどに隠れるよう促してくれたばあちゃんは、その行動によって

自分自身が隠れるチャンスを逃してしまった。

 

走り迫ってくる兵士は既にそこまで来ており。今まさにばあちゃんに斬りかかろうとするところだった。

 

その瞬間を目にする事など耐えられず、思わず目を瞑る。

 

――瞬間。

 

聞こえてきたのは、大きな物が落ちた音と、男の苦しげな悲鳴だった。

 

目を開けると、ばあちゃんに斬りかかろうとしていた兵士は、倒れ伏しており、代わりに、別の男の人が立っていた。

 

丸い盾に不思議な形の兜。目に当たる部分は赤く光っていて、顔は見えない。

 

ばあちゃんは無事だった。あの男の人が守ってくれたと、思っていいのだろうか。

 

「おばあちゃん!!」

 

「あ、バカ! サマリア!」

 

我慢できなくなったのか、かまどからサマリアが飛び出してしまった。

 

まだ、あの人が味方かどうかもわからないのに。

 

ばあちゃんと抱き合うサマリア。

 

何者かわからない男の人は、その様子を見るだけで、何もしてこなかった。

 

ひとまずは安心する。かまどから身を乗り出し、2人へと近づいていく。

 

ほっとした瞬間、目から涙が溢れて来た。

 

「う、う、うぁ、ばあちゃん! ばあちゃん」

 

「あぁ、セム! サマリア!!」

 

サマリアと一緒に抱きしめてくれるばあちゃん。

ほんの少し前まで二度と味わえないと思っていた暖かさに、涙を止めることができない。

 

「ありがとう、ありがとうございます!」

 

礼を言うばあちゃんを習って、お礼の言葉を男の人に言おうとしたら。

 

複数の足音と大きな声が聞こえてきた。

 

「まだいたぞ!」

 

「ここにいるのは衛生兵だ! 戦闘訓練を続けてきた我々の敵ではない!」

 

「ガキが2人、ババアが1人、男が1人だ!」

 

叫ぶ兵士たちに体が強張る。

10人はいる。人数が違いすぎる。

どうしようと戸惑っていると、男の人がこちらに向かって。

 

「動かないでくれ」

 

優しくて、安心する声でそう言った。

 

瞬間、男の人は駆け出した。

兵士の1人を盾で殴ると兵士が吹き飛んでいった。

凄い力だ。

 

「な、なんだこいつは!」

 

戸惑う兵士に向かって、あろう事かその男の人は盾を投げた。唯一の武器を投げてしまったのだ。

どうしてなのかと思っているうちに、その盾は、兵士の1人に当たって吹き飛ばし、跳ね返って、そのまま別の方向に飛んでいき、また別の兵士に激突する。盾は尚も別の兵士を吹き飛ばし、そのまま男の人の元に戻っていった。

 

「す、凄い」

 

関心している間に、男の人は再び盾を投げつけ、そのまま投げた方向とは正反対の方向の兵士に殴りかかり、蹴り飛ばす。

その盾は先程と同じように兵士を数人吹き飛ばし、何度か壁にぶつかったと思ったら。

逆方向に向かったはずの男の人の元にまた戻ってきた。

まるで盾が生きているようだった。

 

襲いかかって来た兵士は皆倒れている。

 

3人で呆然としていると、男の人が近づいて来て。その場に片膝をついてしゃがみ込んだ。

 

「坊や、名前は?」

 

「セ、セム」

 

「いいかセム。空から見たが、あっちの方向に兵士はいなかった。このまま2人を連れて逃げろ」

 

「え、で、でも」

 

「まだ友達がいるの!」

 

戸惑っている間に、サマリアが叫ぶ。

 

「わかった。お友達はなんとかする」

 

「ほんと!? ありがとうお兄ちゃん!」

 

「セム」

 

「う、うん」

 

男の人は自分を呼ぶと、手に持っていた不思議な盾を渡してきた。

真ん中に大きな星がついていて、赤と青と銀色の丸い盾。

大きさの割にとてつもなく軽くて驚いた。

 

「万が一兵士が隠れている可能性もある。この盾を貸すから、2人を守ってやるんだ」

 

「え――」

 

「できるな?」

 

男の人の力強い言葉に、自分は頷かないわけにはいかなかった。

 

「う、うん。俺が、2人を守る!」

 

「よし」

 

そう言って、男の人は乱暴に頭を撫でる。

 

不思議と、勇気が湧いてきた。

 

その後、男の人は立ち上がる。

 

「貸すだけだからな。後で返すんだぞ」

 

「わ、わかった」

 

言葉を返すと、満足そうに頷いて、男の人は向こうの方へ振り向いた。

 

「あ、あの!」

 

思わず声をかける。

 

そうだ、まだ伝えれていないことがあるのだ。

 

「本当にありがとう! その、兄ちゃんの名前は?」

 

尋ねてみると、兄ちゃんは、心底、迷うような素振りを見せて、しばらく唸っていたが、意を決したように。

 

「キャプテン・アメリカだ」

 

そう言って、男の人、キャプテン・アメリカは空へと飛んで行った。

 

 

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